(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 軽度な股関節唇損傷では、保存的な治療が選択されますが、股関節の運動制限や鎮痛消炎剤が処方され、丁寧なリハビリが行われます。「その内に、治る。」として、放置されることは、保存療法とはいいません。受傷から1カ月を経過するも、股関節部に運動痛があるときは、専門医を受診しなければなりません。
 
Ⅱ. 選択すべき治療先は、内視鏡術を得意としているところで、人工関節の施術数を自慢としているところではありません。人工関節は、最終的な選択であり、関節鏡術は、それに至るまでの積極的なオペとなります。当然、高度で熟練した技術が必要であり、どこでも良いのではなく、医大系の総合病院で、股関節部の関節鏡術の症例数の多いところを選んでください。
 
Ⅲ. 「その内に、治る。」 放置され続けた結果、歩行に杖や片松葉が必要で、座っているだけでも、股関節部に痛みが生じる段階となると、古傷化で、関節鏡術を受けたとしても、スッキリと改善はしません。そんなときは、症状固定として、後遺障害の申請を優先させます。股関節唇損傷は、MRIで立証します。平均的には、股関節の可動域で12級7号が認定されています。
 
Ⅳ. 股関節の可動域が4分の3以上で、機能障害に該当しないときでも、疼痛の神経症状で12級13号が認定されています。損保の多くは、100万円の後遺障害慰謝料に、5年程度の逸失利益を提案しますが、それでは、頚椎捻挫の12級と同じ扱いがなされたことになります。こんなときは、交通事故に経験則を有する弁護士に依頼し、MRIで他覚的所見が認められていることを強調して、290万円の後遺障害慰謝料と、10年以上の逸失利益を請求、獲得しなければなりません。

 いずれも、示談締結後に、健康保険適用で関節鏡術を受け、さらなる改善を目指します。
 


 
Ⅴ. 変形や可動域制限なく、手術適用もない・・ただし、痛みはある。その場合は、症状の一貫性を訴え、おなじみの14級9号に収めます。医師から「後遺症はないよ」と言われても、簡単に諦めないことです。早期のご相談をお待ちしています。
  
 医師に怒鳴られたけど、認定を取った例 👉 14級9号:股関節唇損傷(30代女性・愛知県)
 
Ⅵ. 放置された結果、股関節唇の裂けた軟骨が関節の中に入り込み、軟骨が股関節表面を傷つけているとき、変形性股関節症と診断されたときは、関節鏡術ではなく、人工関節置換術の対象となります。このときは、置換術を先行し、その後に症状固定とします。人工関節の置換により、10級11号が認定されます。順序を間違えてはなりません。
 
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