<第2問> 「ゴールデンカムイ」から
 

 
 こちらも大人気、アイヌブームの火付け役『ゴールデンカムイ』、もはや令和のスカーフェイス代表、ご存じ「不死身の杉元」登場!

 キズ=線状痕は長さで判断します。杉本の場合は、横1本縦2本ざっくりいってます(図の赤線)。彼の場合は日露戦争(有名な二百三高地)での負傷です。 実際、明治政府は日露戦争後の傷痍兵(しょうい軍人)へ、初めて国家の制度として補償を行った記録が残っています。

 さて、杉元 佐一の線状痕は何級でしょうか?
 
 ヒント:通常、複数の線状痕が近接している場合、長さを合計して判定します。
 
 
 これも、基準表を見ないとわからないでしょう。

自賠責保険 醜状障害の新認定基準後遺障害認定等級(平成23年改正)

等級

醜状障害の内容

7

12号 外貌に著しい醜状を残すもの、

「外貌」とは、頭部,顔面部,頸部のごとく、上肢及び下肢以外の日常露出する部分をいう。原則として、次のいずれか に該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。
c_g_s_1(ア) 頭部にあっては、てのひら大(指の部分は含まない。以下同じ。)以上の瘢痕 又は てのひら大以上の欠損
(イ) 顔面部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没
(ウ) 頸部にあっては、てのひら大以上の瘢痕

9

c_h_8516号 外貌に相当程度の醜状を残すもの、

 外貌における「相当程度の醜状」とは、原則として、顔面部長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のものをいう。

12

kaizou14号 外貌に醜状を残すもの、

 外貌における単なる「醜状」とは、原則として、次のいずれかに該当する場合で、人目につく程度以上のものをいう。
(ア) 頭部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨鶏卵大面以上の欠損
(イ) 顔面部にあっては、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
(ウ) 頸部にあっては、鶏卵大面以上の瘢痕

 
 
 
 
 
(答え)
 
  不死身の杉元の切り傷 ⇒ 9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
 
 線状痕は3cm以上で12級14号、5cm以上で9級16号と決定します。元々、線状痕は男女によって等級差があり、また5cm以上は7級判定でしたが、平成23年の改正で男女別は廃止、線状痕も9級が限度となりました。ただし、傷が太く複数ある場合は、面積を合計して瘢痕7級が検討されます。 杉本は顔の傷3本が目立ちますが、顔のみならず全身傷だらけで、上肢と下肢でもそれぞれ12級相当が取れそうです。
 
 ちなみに、ゴールデンカムイは傷痍軍人、身体障害者がたくさん登場します。杉元に敵対する、陸軍第7師団の鶴見中尉は前額部の頭蓋骨(前頭骨の下半分位)が吹っ飛び、ホーロー製の人工骨をおでこにはめています。たまに、脳髄液が漏れてきます。これで生きているのが不思議ですが、頭部・顔面部の変形から醜状痕として「7級相当?」が確実に認定されます。

 一方、問題は劇中に現れている易怒性や情動障害です。CTもMRIもない時代ですが、これは前頭葉の損傷からくる高次脳機能障害と思います。等級は7級4号でしょうか。軍務にあまり支障がない?ようなので、7級が限度かと思います。したがって、鶴見中尉は、併合5級の認定になるはずです。
 
<第3問>黒い天才外科医