今回3つのパターンを紹介しますが、⑴、⑵に依頼すると残念な結果と迷走が待っています。
 
(1)交通事故経験の少ない弁護士

 患者の言う事と医者の診断書を信じすぎる傾向にあり。
 
(2)そこそこ経験がある弁護士

 必要無い検査や画像鑑定を行い、結局は事故との因果関係を的確に立証できない傾向
  
(3)秋葉事務所の場合

 多くの被害者さんは悲惨な結果になってから、やっとセカンドオピニオンで秋葉事務所に来ます。「相談が遅すぎて手遅れ」と、涙で枕を濡らすこともあります。

 

肩腱板損傷の取り組み、2つの典型例と秋葉の対策

 ※「後遺障害が取れたら、またご連絡下さい」と言う弁護士は論外とします

 

(1)交通事故案件の経験少ない弁護士の場合

 診断書を見て、「腱板損傷」を最初から丸ごと信じます。「肩関節の可動域制限が1/2ですので、後遺障害は10級10号が見込めます!」と息巻きます。今後、請求する慰謝料や逸失利益を計算して、「これは利益の大きな案件だ」と張り切ります。

 しかし、自賠責の等級は「非該当」もしくは大サービスで「14級9号」となるはずです。そこで、腱板損傷で10級取り、3000万を超える慰謝料が貰えると、期待させた依頼者から散々責められて・・面目立たずに委任解除となります。または、引っ込みがつかなくなった先生は、軽薄な診断書一枚を持って裁判に持ち込みますが、有効な立証などできようもなく青色吐息、画像所見は相手損保の顧問医の意見書から否定され、負けは必至となりました。毎度お馴染みですが、裁判所の和解案にすがり、「この辺で手を打つよう」必死に依頼者の説得にかかります。結局、低額の和解(実際はボロ負け)=最初から裁判の必要などない結果(獲得額)となります。

 交通事故に限らず、弁護士先生は、医師の診断書(その他の公文章)を信用し過ぎる傾向があります。依頼者の訴えを信じることが第一歩である代理人ですから、その姿勢自体は間違っていません。イノセントとは言えますが、経験不足は否めません。このようなケースを何件もみてきました。
 
(2)交通事故にそこそこ経験ある弁護士の場合

 「ちょっと待って、診断書の診断名や可動域の計測値はさて置いて、MRIで腱板断裂の所見は得られているのでしょうか?」からスタートします。そして、訴える症状を検証しますが、微細な断裂、深層断裂、疎部損傷?・・よくわかりません。流行の画像鑑定なども考慮します。つまり、事故受傷との因果関係から、臨床上の診断名が賠償上維持できるか慎重になります。

 結局、自賠責の認定結果を待って、認定等級を前提に賠償交渉を計画することになります。おそらく10級どころか、12級もつかないでしょう。運よく14級9号が関の山です。画像鑑定をかけて異議申立、依頼者の期待に応えようと頑張りますが・・問題は腱板損傷」の診断名にこだわる依頼者をどう説得するかでしょうか。
 

(3)秋葉事務所の場合
 
 まずは、ご自身の診断名を実績投稿から検索、様々なパターンをご覧ください。

 秋葉事務所 上肢(鎖骨~腕)の認定実績
 
 弊所は最初から「腱板損傷」の診断名に懐疑的です。前提として、受傷機転と治療経緯を慎重に検証します。「その程度の衝撃で棘上筋が切れるの? 直後は激痛で動けないはずなのに運転して帰った? 病院に行ったのは3日後? MRI検査や確定診断も数ヵ月後?」・・これらの事情を聞けば、事故外傷による腱板損傷と直ちに信用できなくなります。

 町の個人開業医は画像読影もせずに(多くはMRI設備がない)、「腱板損傷」と診断名を付ける傾向にあります。正確に言えば「腱板損傷の疑い」のはずです。肩関節の専門医ほど検査を重ね、慎重に確定診断を下します。審査をする自賠責側、その顧問医も同様です。

 相談会でも、MRIの画像所見を見出すまでは診断名を妄信しません。画像所見の次に、肩関節の可動域をゴニオメーターで計測します。診断名+画像所見+可動域の数値、これらの整合性を検証します。そもそも、町の個人開業医に専門的な読影を求めるのは酷です。案の定、画像所見は微細、微妙、不明瞭、”疑い”の域をでていません。せいぜい、痛みを裏付ける炎症所見(水分反応+)は見いだせるかもしれませんが、多くは「陳旧性」の損傷が疑われます。陳旧性とは本件事故ではない、もともとあった古傷や、年齢変性(歳を重ねて筋繊維が傷む)を指します。

 さらに言えば、自賠責の審査は因果関係を重視しますので、受傷機転(どにような事故状況で、肩関節にどれだけのダメージが加わったか?)を後遺障害認定、その判断材料の第一に置いています。例えば、自動車のバンパー修理費20万程度のむち打ちの衝撃で、肩腱板がちぎれるのか?を考えているのです。
 

 自賠責の後遺障害認定基準は、診断名や画像所見以前に、まず、常識判断をしているものです。

 

 この前提は重視されます。相談会でも、「この程度の追突の衝撃で腱板損傷は説得力がありません。もし、衝突の衝撃で棘上筋が切れたのであれば、激痛で救急搬送は必至、大の男でもハンドルなど握れず、運転どころではないですよ」と続けます。
 
 以上を踏まえ、3つの対応を選択します。

 

真性の腱板損傷:後遺障害10級レベルの立証

 本件では可能性が極めて低いのですが、もし、事故受傷による棘上筋断裂であれば、肩の専門医の診断を乞います。肩関節の1/2制限など、本来、手術が適用される重度損傷です。

 秋葉事務所が指定した専門医のもと、すでにMRI撮影済みでも再度3.0テスラMRI検査、あるいはエコー検査を重ね、専門医の診断(書)と検査所見を完備します。

 それまで通院した小池クリニックの診断や精度の低いMRIはあくまで、治療経過を辿る補強的な医証へ下げます。そして、間違いのない10級、あるいは12級レベルの医証を固めてから弁護士につなぎます。具体的には、専門医の診断書とMRI・エコー画像に、治療経過としての診断書・MRIを揃え、説得力のある受傷機転の説明を加え、可動域制限を裏付けるリハビリ記録、手術を検討するカルテの記述など、あらゆる証拠を収集します。これは、ある意味、審査側をも助ける作業になるはずです。


 

陳旧性の腱板損傷:現実的戦略と回復努力

 被害者さんの受傷機転と直後の治療経緯から 、恐らく陳旧性の病変と予測できた場合。被害者さんのスポーツ歴、職歴を尋ね、確信を得たら、元々事故前から肩に変性があったと説明、前原さんの理解を促します。

 ここでもし本当に肩関節の可動域に2分の1制限があったとしても、10級を主張すれば詐病者扱いになる場合があるのです。

 肩関節:外転80°の計測記録でも・・・最悪、「非該当」の結果が返ってきます。自賠責の怒りを買った結果です。可動域の数値通りに肩関節の障害とみてくれません。

 そんな、無謀な申請は敬遠させます。先程の通り、自賠責の視点を知っているからです。受傷後に肩関節の痛みから、あまり動かさすにいた為に関節拘縮が進んだ場合であれば、専門医へお連れして、理学療法を工夫して継続、可動域の回復へ向かわせます。お金を取ることだけが秋葉事務所の仕事ではありません。

 このように、被害者さんに現実的な等級認定・解決への理解と、回復への努力を促します。そして、次の③に進ませます。

 

事故直後から肩の痛みが発症した場合・・後遺障害14級9号だけでも確保

 陳旧性損傷や年齢変性であっても、事故前は何ともなく、事故後から痛みを発症するケースもあります。これはムチウチに同じく、引き金論(元々あった損傷が事故を契機に痛みを発症)として、医学的に説明がつきます。事故の衝撃でインピンジメント症候群を発症したケースも数件、経験しています。簡単に言うと、歳をとって棘上筋等のささくれが肩関節を動きを邪魔し、場合によっては関節部に石灰化が起き、中高年のいわゆる四十肩・五十肩の症状となります。これは経年性の内在的な病変ですが、運悪く、事故を契機に痛みを発することがあります。これを、自賠責は「外傷性の肩関節周囲炎が惹起された」とギリ推測、14級だけは認定してくれました。この件は、歩行中に車にはねられて肩を強打したケースでした。自動車搭乗中にコツンと追突されてでは・・一笑に付されます。この手の多くは、「頚肩腕症候群」と言って、頚部神経症状由来の肩の痛みが多くを占めます。可動域制限については、痛みから余計動かさなくなることで、関節拘縮が進行するケースが多いようです。
 

 したがって、外傷性肩関節周囲炎にしろ、頚肩腕症にしろ、真面目にリハビリを継続し、適当な時期に症状固定、先生に診断書の記載をお願いします。ここで、過度な可動域制限の数値などは敬遠させます。できるだけ、肩の可動域は自助努力で回復させるべきです。すると、症状・治療の一貫性から、神経症状の14級9号認定の余地を残します。ややグレーながら、症状の一貫性と信憑性があれば、自賠責も鬼ではありません。
  
 

まとめ

 例え14級であっても、主婦なら300万円もの賠償金を手にする可能性があります。現実的な解決に導くことが、交通事故のプロであると思います。結論として、本件の前原さんは、受傷機転と直後の治療経緯から、事故との因果関係どころか信憑性も程遠く、「肩が半分も挙がらない」からと言って、「著しい機能障害:10級10号」や「機能障害:12級6号」の認定は絶望的に難しいと思います。
 
 これまで秋葉の方策をご理解下さり、現実的な解決に舵をきり、14級で解決した方は大勢います。解決後を追跡すると、数か月も後になれば、痛みは和らぎ、肩関節も半分以上挙がっています。それ以外の少数の方は専門医の手術により回復しています。自賠責が認めないからと言って、裁判で10級12級を争う愚を犯させません。事故受傷による完全な肩腱板の断裂を証明できない限り、厳しい戦いになります。負け戦は時間と費用と気力の無駄です。勝ち負け、その見極めも大切なことです。もちろん、受傷機転に無理なく、画像含め医証が強固で勝てると踏めば、連携弁護士につなぎ裁判へ一直線です。
 
 交通事故の専門家は、診断名だけで判断せず、陳旧性か事故受傷に起因する所見かを区別する必要があるのです。そして、適切な解決と回復への誘導をしなければなりません。一歩間違えると、(1)の弁護士さんの例のように、診断名が迷走、結果として相手保険会社との泥沼の紛争に留まらず、依頼者さんからの信頼も失われ解任・・事故解決は遠のくばかりです。