一昨日の⑤廃用性症候群でも語りましたが、関節可動域制限の認定には「曲がらなくなった原因」をしっかり説明することが重要です。可動域制限の数値は審査上、最後に確認する数値です。自賠責調査事務所は先に画像を精査して可動域制限の等級を予断しています。私達、立証側もこれと同じプロセスでアプローチしています。そうしないと立証側と審査側で等級が一致しなくなります。受傷様態~症状固定までの画像、術式、経過をみて目標等級を策定します。

 基本中の基本なのですが、これを励行している業者は極めて少ないようです。相談会では毎度、等級を読み違えた他業者に対する苦情系の相談が多いからです。
 
    c_h_17-2 完治が目標!だけどね・・

10級11号:足関節開放脱臼骨折(30代男性・埼玉県)

【事案】

自転車で交差点を横断中、左折するトレーラーに巻き込まれ、右手関節(尺骨遠位端、手根骨、第二中手骨)、右足関節(両顆部)を骨折した。手関節、足関節共にプレート固定を施行した。

【問題点】

本人の回復努力と長期のリハビリから、ケガの重篤度の割に骨癒合は良好、回復は順調であった。医師も可動域制限など残さずに治す執念を持っていた。それは当然のことであるが、これだけのケガで後遺障害を残さず完治するわけはない。中途半端な回復で手首12級、足首12級の併合11級の可能性があった。

【立証ポイント】

適切な時期に相当の等級に収めるべく、病院に同行し症状固定に進める。また関節可動域計測に立ち合い、面倒がる医師に計測を促す。また、可動域制限の原因として骨折だけではなく、アキレス腱の手術について術式内容をしっかり記載いただいた。これが足関節の可動域に影響しているとみたからである。10級レベル(2分の1制限)の等級を確保するにあたり、「骨癒合良好」では可動域制限の説明とならない。
さらに申請後、足関節部の醜状痕の大きさについて計測の依頼があり、同じく病院同行して測っていただいた。結局、医師もこちらの熱意に根負け、重ねて協力していただけた。

結果は機能障害で10級11号、醜状痕でも14級5号を確保。これに、手関節の10級10号が併合され併合9級とした。目標通りの等級に届いた。