鎖骨骨折・脱臼では、弊所は15年間無敗記録を更新中です(すべて等級認定)。
しかし、この15年の鎖骨骨折をみていますと、医学の進歩を実感します。折れた鎖骨を手術で金属プレートを固定する術式が確立して以来、鎖骨の変形での認定は減少傾向です。かつては、手術は余程の骨折でない限り選択されず、外側からぐるぐる巻きで固定していました。すると、骨折部が盛り上がって癒合、ややズレて癒合、結果として変形癒合の認定となりました。そのような変形癒合を防ぐために、手術で金属を貼り付けることが必要なのです( ↓ レントゲン)。
そのプレートも日進月歩、プレートの形状が向上しています。鎖骨のカーブに沿って曲がりを加えたもの、そのバリエーションが増えたと思います。鎖骨にジャストフィットすれば、きれいに接合しますし、仮骨形成で太くなることも防げます。良い事ですが、これは12級5号「鎖骨の変形」が認定されないことに繋がります。事実、本件を含め、鎖骨の変形癒合は減少していると思います。
それでも、骨折するほどの衝撃が加わった人体への破壊です。骨癒合が良好であっても、痛みや不具合は数年は残るものです。その後遺症について、丁寧に14級9号「神経症状」をつける仕事が望まれます。弊所の無敗記録は、実は、この「せめて14級9号を抑える作業」に支えられていると言っても過言ではありません。
癒合は良かった・・でも痛みは残ります
14級9号:鎖骨遠位端骨折(40代男性・山梨県)
【事案】
交差点を原付バイクで直進中、対向右折車と衝突し、負傷した。直後から右肩の痛み、神経症状に悩まされる。
【問題点】
救急搬送された総合病院のみの通院となったが、普段の生活がリハビリであるという医師の指導により、リハビリ通院ができなかった。また、事故から1年で抜釘の予定だったが、仕事の都合により3ヶ月延期となってしまった。
【立証ポイント】
受傷初期からご相談を頂いていたため、症状の経過を把握することができていたことが大きかった。また、回復が非常に順調だったこともあり、早期の抜釘も検討したが、主治医が「執刀から1年」という基準を固持したため、医師の意向に沿って動くこととした。
プレート固定したため変形はなく、疼痛のみが残存したため、自覚症状を丁寧に医師に伝え、50日で14級9号の認定を受けることができた。医学の進歩により、鎖骨骨折は後遺障害と無縁なケガになりつつあるが、しっかりとしたプランを立てれば、まだ獲得可能であることが改めて実感できた案件であった。