開放骨折の場合は、骨が皮膚の外に出てしまいます。これは骨の中にばい菌が入り、感染を起こす可能性が非常に高くなります。処置はデブリードマンと言って、傷口はおろか骨までガリガリ削るように洗浄します。それで一安心ではなく、その後も骨折部位に直接にプレートや髄内釘を接触させた結果、感染を起こし化膿性骨髄炎を引き起こす可能性を残します。ひどいと切断の可能性も予想されます。
 kaihou開放骨折のガステロ分類
 感染症はMRSA(methicillin‐resistant Staphylococcus aureus メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)と呼ばれ、抗生物質が効きづらいので、開放骨折の場合は医師から最も警戒されます。
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黄色ブドウ球菌は、基本的に弱毒菌のため、私たちの抵抗力がしっかりあれば、特に重症化することはありません。 MRSAはこの黄色ブドウ球菌の仲間で、性質は黄色ブドウ球菌と一緒ですが、耐性遺伝子を持っており、抗生物質が効きにくくなっています。その為、治療が思うように進まず、患者の抵抗力だけが頼りになる場合が多いのです。重症化すると敗血症、髄膜炎、心内膜炎となり、骨髄炎などに陥って死亡する事もあります。
 
緑膿菌は土壌・水中・植物・動物(ヒトを含む)などあらゆるところから分離される常在菌で、ヒト・動物はもちろん、植物にも病気を起こすことがありますが、その病原性は低く、抵抗力のある人はデブリ洗浄で傷口をきれいにすれば、通常は発病することはありません。
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 緑膿菌はもともと、他の細菌と比較すると抗菌薬に強い傾向があるために有効なものが限られており、以下の3系統の薬剤が”特効薬”として用いられてきました。

① フルオロキノロン系抗菌薬:シプロフロキサシン、レボフロキサシンなど
② カルバペネム系抗菌薬:イミペネム、メロペネムなど
③ アミノグリコシド系抗菌薬:アミカシンなど

 しかしながら、「多剤耐性緑膿菌(MDRP)」(たざいたいせいりょくのうきん)は最悪の菌で、最大の特徴は強力かつ広範な抗菌薬への抵抗性にあります。「多剤耐性緑膿菌」は上記3つの薬剤全てに耐性を持ち(本当に最悪です)、感染症法で「薬剤耐性緑膿菌感染症」として、5つの定点把握疾患の一つに指定しています。

 現在受任している被害者さんは脛骨骨折後にこの菌に感染、長い期間、隔離部屋?から出られずに大変苦労しました。私も面談の際には、看護師の許可を取り、消毒をして、手袋と頭からビニールを被され・・無菌状態でやっと部屋に入れました。
 
 ちなみに上記のような面倒な感染症に使用する薬の多くは健康保険適用外で、なおかつ、イリザロフ伸張術などの治療法のほとんどが自由診療扱いとなります。一括対応している保険会社さん泣かせです。感染症、もしくは骨延長術となれば毎度、相手保険会社の担当者と主治医を交えた三者面談を行います。自由診療支払いへの理解のため、猛説得が必要となるからです。