(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ.  まぶしさ

 外傷性虹彩炎では、軽度なものが多く、後遺障害を残すことは稀ですが、虹彩離断となると、かなり高い確率で、視力低下、複視、まぶしさ、瞳孔不整形の後遺障害を残します。

 まぶしさ=羞明については、瞳孔の対光反射が著しく障害され、著明な羞明により労働に支障を来すものは、単眼で12級相当、両眼で11級相当が認定されています。

 瞳孔の対光反射は認められるが不十分であり、羞名を訴え労働に支障を来すものは、単眼で14級相当、両眼で12級相当が認定されます。 いずれも、対光反射検査で立証します。
 


 
Ⅱ.  視力低下

 視力は、万国式試視力表で検査します。等級表で説明する視力とは、裸眼視力ではなく、矯正視力のことです。矯正視力とは、眼鏡、コンタクトレンズ、眼内レンズ等の装用で得られた視力のことです。ただし、角膜損傷等により眼鏡による矯正が不可能で、コンタクトレンズに限り矯正ができるときは、裸眼視力で後遺障害等級が認定されています。

 眼の直接の外傷による視力障害は、前眼部・中間透光体・眼底部の検査で立証します。

 前眼部と中間透光体の異常は、細隙灯顕微鏡で調べます。

 眼底部の異常は、眼底カメラで検査します。

 視力検査は先ず、↓ オートレフで裸眼の正確な状態を検査します。

  

 その後、万国式試視力検査で裸眼視力と矯正視力を計測します。前眼部・中間透光体・眼底部に器質的損傷が認められるとき、つまり、眼の直接の外傷は、先の検査結果を添付すれば後遺障害診断は完了します。

 失明や視力障害の立証は、眼球破裂、視神経管骨折、角膜穿孔外傷、外傷性黄斑円孔、続発性緑内障、眼底出血 網膜出血・脈絡膜出血の傷病名でも詳細を解説しています。参考にしてください。
 
Ⅲ.  複視

 複視には、正面視と左右上下の複視の2種類があるのですが、検査には、ヘスコオルジメーターを使用し、複像表のパターンで判断します。

 正面視の複視は、両眼で見ると高度の頭痛や眩暈が生じるので、日常生活や業務に著しい支障を来すものとして10級2号の認定がなされています。左右上下の複視は、正面視の複視ほどの大きな支障はありませんが、軽度の頭痛や眼精疲労は認められるので、13級2号が認定されています。

 10級2号に該当する複視は、症状固定とし、等級が確定した後に受けることになります。このことを忘れてはなりません。

 複視の後遺障害は、動眼神経麻痺、ホルネル症候群、外転神経麻痺、滑車神経麻痺において、詳細な解説をしています。参考にしてください。
 
Ⅳ.  瞳孔の不整形

 瞳孔の不整形は、顔面の醜状障害として、後遺障害を申請することができます。視力低下、複視、まぶしさなどで認定される等級と比較し、いずれか上位を選択することになります。つまり、顔面の醜状として、9級16号以上が見込めるときは、そちらを選択することになります。
 
Ⅴ.  手術の適用

 虹彩離断は、虹彩剥根部の縫合術で改善が得られるのですが、手術では、高い確率で水晶体も摘出されることになり、眼内レンズを挿入することになります。眼内レンズの挿入により、被害者は、眼の調節力を失います。
 
※ 年齢ごとの調節力

 眼の調節力は、年齢の経過で低下し、平均的には55歳になると、実質的な調整機能を失います。したがって、被害者の年令が55歳以上では、調整力障害は等級認定の対象になりません。しかし、被害者の年齢が20、30代であれば、調節力を失うには、早過ぎるので、緊急かつ危機的な状態でなければ、医師も勧めないし、被害者にも躊躇いが生じます。手術には、このような問題があることを認識しておくべきです。

 なお、眼の調節機能は、水晶体が果たしており、水晶体は、近くのモノを見るときは膨張、遠くのモノを見るときは縮小して、奥の網膜に像を結びます。カメラに置き換えれば、ピント合わせのことです。調節力は、ジオプトリ(D)の単位で表します。
 

 検査には、アコモドポリレコーダーが調節機能測定装置として使用され、調節力が年齢ごとの調節力の2分の1以下となったものが後遺障害の対象となります。
 
◆ 眼の調節機能障害


 
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