本日の病院同行は、頚椎捻挫、腰椎捻挫の症状固定の診断です。それぞれ神経学的所見について検査を行います。
 これらの所見は後遺障害診断書に書ききれないので別紙「神経学的所見」に記載します。以下は頚部神経症状に対する検査です。診察でお忙しい中、医師にあますところなく検査・記載いただくのは申し訳ない作業です。

1、ジャクソン、スパーリング検査

 単なる首の痛みではなく、放散痛(首から腕~手指にかけて電気が走るような)をみているのです。
 ここで「イテテ!」と言っても神経症状とはいえません。これは単なる首の痛みです。長年の肩こりなどと同視され、後遺障害の対象から少し離れてしまいます。 
    

2、握力

 握力計で左右を測ります。神経症状があれば極端に低下します。しかしこれは演技ができること、利き腕やスポーツ歴の影響があるので参考程度にしかなりません。ちなみに私は右利きですが、左の方が握力があります。

 

3、徒手筋力テスト
 
 先生がぐいっと患者の腕を引っ張ったりします。これも左右差をみています。

 そして握力同様、参考程度とみています。

 

 

4、筋萎縮検査 (上腕周径、前腕周径)

 左右腕の太さを計測します。長い期間、神経症状に悩まされるとその腕はみるみる痩せていきます。神経因性の筋委縮なら有用な所見となります。しかし廃用性委縮(痛み等で動かさなかったために筋肉が痩せてしまう)はリハビリをサボったとみなされることがあります。これは上肢骨折の予後の経過でよくあることです。

 

5、知覚検査 (触覚、痛覚)

 針や毛筆で左右の腕や手、場合によっては左右の頬などをチクチク刺激します。やはり神経症状があれば左右どちらかの感覚が鈍くなります。これは患者の回答で判断しますので、他覚的所見(医師の客観的な診断)とは言い難いものがあります。

 

6、腱反射 (上腕二頭筋、上腕三頭筋、腕橈骨筋) 

 これは比較的有用な所見となります。左右どちらかの神経根に圧迫があれば、低下、消失となります。また脊髄に圧迫あれば亢進を示します。原則はそうなりますが、経験上必ずしもその反応や頚椎の病変部と一致するわけでもないようです。専門医も教科書通りの反応とはならないこともあると言っています。

 

 
 ざっとこれらを診て頂きます。ホフマン、トレムナー、ワーテルベルグは脊髄損傷の初期診断にすべきもので、脊髄損傷がないとわかりきった症状固定時にやる必要はありません。
 また手巧緻運動(10秒テスト・・・10秒間でグーパーを何回できるか)など末梢神経障害(手指のしびれ)がない場合、省略します。

 検査立ち合いをする私の仕事はこのように必須の検査、省略する検査を医師に伝えることです。その省略すべき代表的な検査は頚部の運動障害(前屈、後屈、左右屈、左右回旋)です。これは多くの医師が真面目に計測、記載する傾向がありますが、頚椎の骨折等がない限り、書く必要はありません。むち打ちでの可動域制限など調査事務所はまったく考慮しないからです。
 そして多くの場合、それぞれの検査数値の左右差が有為な所見となるということです。