(2)恥骨結合離開・仙腸関節脱臼
 
① 病態

 骨盤は左右2つの寛骨が、後ろ側で仙腸関節、仙骨を介して、前側で恥骨結合を介してジョイントしており、左右の寛骨は腸骨・坐骨・恥骨と軟骨を介して連結し、寛骨臼を形成しているのです。この輪の中の骨盤腔は内臓を保護し、力学的に十分荷重に耐え得る強固な構造となっていますが、大きな直達外力が作用するとひとたまりもなく複合骨折をするのです。
 

 
② 症状

 骨折部の強い痛みで動くことができず、内臓損傷では、腹痛、血尿、排尿困難、排尿の制御ができなくなり失禁することや下血、性器出血を伴うことがあります。仙骨神経に損傷が及べば、排尿・排便障害となることがあります。「頻尿」は常に尿意があり、回数が増える。または尿漏れ。逆に「閉尿」は尿が出なくなります。便ですと、それぞれ頻便、便秘です。仙骨神経の損傷から下肢のしびれ、ひどいと麻痺で動きが悪くなります。
 
③ 治療

 上図のような不安定損傷になると、観血的に仙腸関節を整復固定すると共に、恥骨結合離開についてはAOプレートによる内固定の必要が生じます。

 上のイラストは、右大腿骨頭の脱臼も伴っています。大腿骨頭の納まる部分である、寛骨臼の損傷が激しいときは、骨頭の置換術に止まらず、人工関節の置換術に発展する可能性が予想されます。


 
④ 後遺障害のポイント
 
 安定型の骨折でも触れましたが、骨盤の変形を問うことになります。そこを参照下さい。
 
 👉 骨盤骨折 ④ 後遺障害のポイント
 
 ただし、骨盤の一部とも思える仙骨は、脊柱として判断されます。つまり、「脊柱に変形を残すもの」=11級7号の認定になるわけです。↓ の認定例は、仙骨と腸骨が骨折し、双方がズレて転位が起きたケガでした。金属で固定する手術を行い、認定となりました。
 
 👉 11級7号:仙骨・腸骨骨折(50代女性・茨城県)
 

 変形以外の障害について、続けて次回に解説します。
 

 ⇒ ⑦ 後遺障害のポイント(不安定型)Ⅰ