老眼は正式には『老視』と言う眼の老化現象で、眼のピントを調節する機能が衰え、近くが見えなくなる症状です。正確には、近くだけでなく、普段ピントを調節しなければ見れない範囲は全て見にくくなります。最近私も老眼気味?で本が読みづらいことがあります。まぁ新聞の文字は問題ないのでもう数年は大丈夫かと思います。  さて交通事故外傷においても、眼球自体の直接的な受傷はもちろん、顔面のケガ、とくに眼窩底骨折やルフォーⅡ型~Ⅲ型の頬骨の骨折でこの調節能力に障害を残すことがあります。高齢ですと元々老眼であるケースが多いため判別が難しくなりますが、やはり専門的な検査で立証する必要があります。代表的な検査方法を3つ挙げます。

1、石原式近距離視力表

 この検査で異常があれば、各種の精密な調節検査を行います。この検査は老眼鏡を処方する場合の検査に必須です。眼前30cmの距離で明視できる最小の字づまり視標でその眼の近距離視力を求めます。5mの遠距離視力が裸眼または矯正眼鏡にて1.0であるのに、近距離視力が同じ条件下で1.0より低ければ調節障害となります。

2、石原式近点計

 調節障害が疑われた場合に調節の近点がどの位置にあるかを調べます。接眼部の試験枠にレンズを加入することによって、人工的な近視を作れば、この機械にて遠点も計測できます。調節幅の測定は精密な調節機能を知るために必要です。調節幅の検査では、被検眼の矯正視力、被検者の努力、注意、集中力、視標を移動させる速度、視標の大きさ、コントラスト、明るさなどが影響する。また、ピントがぼけ始めた点を正確に答えるのもむずかしい、さらに調節lag(lag of accommodation)として、正確に調節を行っていなくてもピントが合ったように見える現象がある場合があります。この調節lagには、ピンホール効果としての小瞳孔や乱視の存在などが影響しており、自覚的検査での調節幅は、他覚的に求めた真の屈折力の変化としての調節幅よりも大きな値となります。

3、アコモドポリレコーダー

 毎度カミカミでうまく言えません。この検査は遠方と近方に置かれた視標にピントが合うまでの時間の長さから調節障害を診断する専用の機器のことです。内蔵された視標はレンズによって光学的に遠方と近方に設置され、電動式に遠方視標と近方視標が交互に点灯するようになっている。視標にピントが合うまでの時間を調節時間として反復測定する。近方視標にピントが合うまでの時間を緊張時間、遠方視標にピントが合うまでの時間を弛緩時間として調節時間の現れ方をいくつかの型に分類し、調節障害の性格を明らかにすることができます。  この検査も自覚的な検査であり、被検眼の矯正視力、被検者の努力、注意、集中力が影響し、ピントがぼけ始めた時点を正確に応答するむずかしさが課題です。また、調節lagも混入することは石原式と同様ですが、調節幅を求める検査ではなく、調節時間の型からどのような調節障害かを診断することを目的となります。検査結果の再現性が得にくいこと、正常者あるいは異常者であっても、いくつかの型に当てはまってしまうために、検査結果(アコモドグラムパターン)だけから診断することは難しいとも言えます。したがって検査は治療の初期から症状固定まで3回ほど行い、あまり数値に変化がないことが望ましいのです。

後遺障害の判定と等級は

調節機能に関すること

11 級 1 号 両眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの、アコモドポリレコーダーによる調節力が 2 ...

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 今日の病院同行は脊髄損傷で車イスの方です。本人、ご家族と一緒に主治医から今後の見通しを聞きました。医師は苦渋の表情で「残酷な事ですが・・・回復はほぼ不可能と言わざるを得ない・・・」と説明しました。続いて私と治療や検査の内容について淡々と話が進みます。その間、ご家族は落胆の表情です。当然ながらご本人もショックと思います。しかしかなり根性のある方でより回復に向けての闘志は失っていませんでした。

 この数年の人身事故・年間数110~120万件のうち後遺障害認定となるのはわずか6万件ほどです。その6万件のうち約60%がむち打ちによる14級9号です。腰椎捻挫やその他神経症状で14級9号を加えれば、約70%近くが14級9号となります。14級が軽い障害とまでは言いませんが、数年で回復する方、日常に影響しないくらいに回復する方が圧倒的多数です。13級以上はそれなりに長く、もしくは一生障害が続く方です。30%≒年間約1万8千人がひどい障害で苦しんでいます。

 今年私に依頼された方で13級以上は受任数の50%ほどで、残り半分を14級9号が占めています。対して多くの弁護士、行政書士事務所の受任内容はやはり60%以上が14級、そして物損事故なども入れれば、13級以上の重篤者は20~30%ほどではないでしょうか。その比較から私は重篤な被害者の受任が多いと言えます。実数は控えますが、今年の受任の半分が骨折や神経麻痺、高次脳機能障害、脊髄損傷など重篤な障害や見逃されやすい障害です。この仕事は何より経験則が大事です。私は多くの経験を積み、重篤な障害の方にとって力のある事務所を目指しています。今年のデータからその手ごたえを感じています。

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 ある日突然、交通事故でケガを負います。相手の一方的な過失で重篤なケガを負わされた被害者は理不尽の極みです。

 最近の相談者で目立つのは、頑張って治療努力を進め、受傷から数年経ってようやく症状固定となる方です。後遺障害の認定は症状固定時の状態で判定します。例えば骨折後、関節の曲がりが悪くなった、顔に傷が残ってしまった・・・このような被害者さんも医療技術の進歩も相まって、月日を経るごとにどんどん回復に向かいます。  できるだけ回復させるまで症状固定としない、これはまったく正しい行為です。しかしある程度、回復のスピードが一定となったら症状固定とすべき理由もあります。それは補償問題として考えるなら、より障害が顕在である時の方が等級認定しやすいという事実があることです。

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 土曜日は都内、台風近づく日曜は埼玉で2日連続相談会。合計16人で少なめでしたが、新MC候補さん2名を伴い、充実した内容でした。地方開催も新鮮ですがホームもいいものです。恒例の所感を。

画像勝負です!

 MRIで精査した結果、リスフラン関節(足首~足の甲)の靭帯損傷が判明しました。しかし自賠責の回答は「画像上、判然としない・・・」が「治療経過から推定が及ぶものとして・・・」14級9号とされました。器質的損傷が明らかであれば12級13号の可能性もあります。これはズバリ画像勝負です。虎の子の放射線科医に鑑定をお願いしますが、ここで一つ私たちのネットワークの優位を誇らせて下さい。  それは画像鑑定費用です。単純読影で21000円、もし有用な所見が得られ、鑑定書に仕上げればさらに21000円という2段階シムテムです。これなら最悪、画像勝負を諦めるにしても出費は21000円で済みます。このような被害者に優しいシステムは他では聞きません。(エヘン)

脊椎圧迫骨折の判定

 脊椎の圧迫骨折は縦の衝撃で椎体がつぶれる骨折です。例えば車にはねられ尻もちをついた、車の運転中、出合がしら衝突で車が横転~1回転し、頭を天井に打ち付けた、このようなケースでの受傷を多く経験しています。単純な追突事故では受傷の説明として、どうのように縦の衝撃が加わったのかよくわかりません。受傷機転を明らかにすること、これがまずスタートです。  さらに陳旧性(古傷)か否かも丁寧にチェックします。高齢者には自然に圧迫骨折している方も少なからず存在します。MRIで陳旧性か新鮮骨折を観察しますが、まず受傷直後のXPを見てみないと判定できません。受傷直後から陳旧性っぽければ事故での受傷を否定されます。

以上2点、相手保険会社の反論がきてからあたふた説明しているようではダメなのです。

関節可動域、5°の勝負

 真面目にリハビリを行い、機能回復することは被害者の務めと思います。後遺障害はそれでもなおかつ治らなかったものです。真面目な被害者は本当に必死にリハビリを行います。この日の被害者もひどい骨折ながらよくぞここまで直したと、根性を讃えるべき方です。しかし・・・足関節の可動域制限を測定したところ、わずか5°で10級を逃し12級に・・・。この角度5°で最終的な賠償金は500万円位減ると予想します。関節可動域の5°は長さにしてわずか5mmです。医師の測り方で1cm程度の誤差、言い換えれば計測値の違いがあっても不自然ではありません。この被害者さんの場合、骨折の様態、癒合具合から私は10級11号と思います。つまり計測の瞬間がこの被害者にとって最大の勝負どころなのです。

 何が勝負所なのか?まずこれを理解する必要があります。一生懸命治したのに賠償金は少なくなる・・・それは正しいことですが、ちょっとかわいそうですよね。

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 両日ともに相談者が10名を割り、少し寂しい相談会でした。年間を通して5月は毎年少ない印象です。しかしお困りになっている被害者さんはそれぞれ必死に解決を模索しています。こちらも否応なしに気合が入ります。恒例の所感をいくつか。  

■ ポイントをずらした後遺障害診断書

 肩が痛み、拳上困難が長く続いた被害者さんです。対して医師はまず肩甲骨、上腕骨、鎖骨などをXP(レントゲン)で確認しました。異常がないので、「様子をみましょう」と言い、保存療法の継続です。つまり打撲・捻挫の類と考えました。その後、症状が長引くため、腱板損傷を疑い、MRIを撮ります。しかしそこでも原因が特定できません。そして受傷後6ヵ月が経ち、症状固定を迎えることになりました。  後遺障害診断書でも「肩部打撲」のままです。一貫して治療・リハビリを続けて、通院も相当な日数です。しかし残存した症状について、結果は「非該当」。打撲・捻挫の類では極めて少ない例外を除き、ほぼ後遺障害は認められないのです。

 この相談者さんは実は14級9号を取りそびれています。受傷機転から頚部捻挫があり、肩の異常は頚部神経症状が原因と疑われるものです。外傷性頚部症候群、もしくは頸椎捻挫により、ヘルニアや骨棘で圧迫されている神経根が病原となります。昔から「頚肩腕症」という診断名がありますが、これの多くは頚部神経の根症状タイプです。上腕神経につながっているC4/5、5/6あたりの神経根に圧迫があると、首から肩にかけて、痛みや拳上不能など神経症状が起こる症例です。  どうやら本件の医師もそのような認識を持っていたようなのです。

  もし医師が神経症状に注目し、症状の主訴を頸椎捻挫からくる頚肩腕症としていたら、「局部に神経症状を残すもの」として14級9号の認定が得られた可能性があります。本件は医師の捉え方、診断書の表記で運命が分かれたケースと思います。  

■ 嗅覚障害と味覚障害

 匂いがしない?頭部外傷により、嗅覚喪失を訴える被害者さんがいらっしゃいました。詳しく聞くと「味」もしないそうです。しかし診断書上は「嗅覚喪失」とだけ書かれています。

 嗅覚障害を訴える被害者さんの対応で注意があります。嗅覚障害が残るような脳損傷、もしくは嗅覚神経の遮断が起きた場合、味覚障害も伴うケースを多く経験しています。嗅覚、味覚、どちらかに異常があれば、必ずセットで検査をすべきと思っています。

 ここで説明を一つ加えますが、通常、嗅覚に異常があると「風味障害」とも言うべき症状がおきます。人間の味覚は舌の神経による反応のみならず、香からくる「風味」とでも言うべき感覚に味が左右されることもあります。例えばコーヒーの舌上で感じる感覚は「苦味」が中心です。しかし風味で「香ばしさ」を感じ、これがコーヒーの美味さにつながります。  したがって嗅覚が減退、喪失すると味覚も当然に一部減退します。だからと言って嗅覚障害患者のすべてに対し、味覚障害は嗅覚障害からくるものと特定するのは早計です。嗅覚神経と味覚神経は頭蓋低骨の隙間を隣り合って通っています。外傷により、どちらかに損傷があれば、もう一方もやられている・・・決して珍しくありません。また脳の前頭葉にびまん性損傷があり、嗅覚を感じる脳組織が壊れた被害者で、味覚も一緒にダメになったケースを2件経験しています。

 両方に対し、しかるべき検査を行い、嗅覚「脱出」12級、味覚「脱出」で12級、併合11級とせねばならないのです。

 

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 顔面骨折も少ないながら数例経験しています。顔面は複数の骨で形成されており、まずそれぞれの名称を確認します。 顔面骨折は複数の骨折が生じることが多く、状態を表現するために3分類します。

1、Le Fort(ルフォー)I型  鼻骨(びこつ)骨折、下顎骨(かがくこつ)骨折、頬骨(きょうこつ)骨折、眼窩底(がんかてい)骨折、上顎骨(じょうがくこつ)骨折。

2、Le Fort II型  鼻骨、上顎骨前頭突起、涙骨、篩骨、眼窩底、上顎骨頬骨縫合部、翼口蓋窩-翼状突起に達する骨折、上顎から眼窩にかけての骨折。

3、Le Fort Ⅲ型  鼻骨を横断し、眼窩後壁を経て下眼窩裂、頬骨の前頭突起を通り後方へ向かい、上顎骨と蝶形骨の間を通過する。顔面骨が頭蓋底と分離する。 続きを読む »

 遅れがちの日誌も追いついてきました。

 さて今年を振り返る時期です。今年もたくさんの交通事故相談会に参加しました。正確な集計データは年明けに発表しますが、ざっと数えただけでも30回、一回平均12人としてもおよそ360人の被害者さんとお会いしたわけです。

 ほとんどの被害者は何らかの解決策を講じて前へ進ませます。しかし、どうにもこうにもらちがあかない被害者さんもいます。それは謎の重症、因果関係のはっきりしない症状を訴える患者です。この方たちのほとんどが骨折や入院などの重症事案ではなく、むち打ちや打撲捻挫を契機として、受傷から日を追うごとに悪化し、ひどい症状に陥ります。当然、加害者側の保険会社は詐病(うその病気)、心因性(心の病気)として、冷たい対応に切り替わります。保険会社だけではなく、病院ももてあまし気味、さらに自らの職場や家族にとっても困った存在に陥ります。

 

そこで心因性?と疑われる、今年の被害者、難病・奇病 年間ベスト10

 

1 MTBI 脳の傷病名もなく、些細な衝撃で脳障害を訴える… 今年、堂々の1位を獲得! 不定愁訴を訴える患者はすべてMTBIと診断する医師の活躍のおかげか?この業界での勢いはAKB48並み。 2 脳脊髄液減少症 ムチ打ちで脳の髄液が漏れた! 続きを読む »

 今日は江ノ電に乗って某病院へ。

 目的は腰椎の骨折の病態を聞くために主治医に面談です。

 CR画像(レントゲンをコンピューターで画像処理したもの)を診ながら説明をいただきました。骨折の状態は圧迫骨折でした。

 腰椎の圧迫骨折は上下の衝撃により椎体がつぶれる骨折です。自賠責の評価では一定の変形が残存すれば11級7号の評価となります。後遺障害の立証と治療の両面から、以下いくつかの条件を吟味する必要があります。

1、受傷機転から推察できる骨折か?

2、陳旧性(古い骨折)で事故での骨折ではない?

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 脳に損傷を受けたり、頭蓋底骨折(脳の下とあごの骨の間にある薄い骨)があると、視覚、嗅覚、味覚、聴覚などに障害を起こすケースがあります。脳そのものの損傷の場合、それらの感覚を認識する「回路の故障」です。頭蓋底骨折の場合は、その周辺部において、脳から通じる神経が切れたり、損傷を受け、神経伝達が絶たれる事を原因とします。これは「ケーブルの断線」ですね。  いずれも眼科、耳鼻咽喉科にて受診し検査をします。回路の故障かケーブルの断線か、原因の特定は脳外科ですが、匂いがしない、味がわからないといった障害の有無、程度の検査はそれぞれの専門科になります。

味覚検査

1、電気味覚検査

 まず首にアース極線の首輪をはめます。続いて舌の前後左右の表面に電極を当て、微弱な電気を流します。ピリッときたら手持ちのボタンを押します。「ピーッ」と鳴ります。このように舌の神経が生きているか否かを判別します。  こっちまでピリッとしそうです。最初は恐る恐る検査していた患者も徐々に慣れてきます。所要15分程度でしょうか。

              

2、ろ紙ディスク法

 ピンセットの先の脱脂綿?に薬をつけ、順番に舌に当てていきます。そこで感じた味を申告します。これも舌の左右に分けて判定します。味を変えるたび、頻繁にうがいをします。

 甘味、塩味、酸味、苦味の4種の識別です。回答には無味も含まれます。素朴な疑問として四川料理の好きな私は「辛みはないのですか?」と検査中の看護師に質問しましたが、「辛みはないです」と冷たくあしらわれました。

 検査表はカラーで色を塗ったものや、下図のようなグラフを用います。

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 昨日は都内の某耳鼻科へ。脳の障害を原因する嗅覚、味覚の異常を訴える被害者さんをお連れしました。

 医師から検査の立会についてご許可を頂きました。私は出来るだけ検査に立会うようにしています。まさに被害者と一心同体で進める立証作業です。しかしそれだけではありません。実際に体験、見学すると障害への理解がぐっと深まります。書物だけの知識ではぼんやりしたイメージしか持てませんが、見たもの、体験したものは段違いです。

嗅覚

1、T&Tオルファクトメーター

 甘い匂い、焦げた匂い、腐敗臭 等々・・・5種類の匂いを試験管のような筒の先につけて、それを嗅いでもらい、濃淡0~5まで段階評価します。特に腐敗臭は同じ部屋にいても匂ってきます。この強烈な匂いが匂わないの?・・・嗅覚が完全脱出した被害者さんもいました。時間はおよそ20分程度です。           

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 では、肝心の後遺障害等級は?

 咀嚼、言語の機能障害を準用します。

咀嚼・言語の機能障害

1 級 2 号

咀嚼および言語の機能を廃したもの、

咀嚼機能を廃したもの? 流動食以外は摂取出来ないもの、

3 級 2 号

咀嚼または言語の機能を廃したもの、

言語の機能を廃したもの?  4 種の語音の内、 3 種以上の発音不能のもの、

4 級 2 号

咀嚼および言語の機能に著しい障害を残すもの、

咀嚼機能に著しい障害を残すもの?  粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの、

6 級 2 号

咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの、

言語の機能に著しい障害を残すもの?  4 種の語音の内、 2 種の発音不能のもの又は綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないもの、

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食事場面を見ていても判断しにくい嚥下障害の検査法について

1、スクリーニング検査  口腔内を湿らせ、唾液を嚥下させ30秒間で可能な空嚥下の回数を評価する反復唾液嚥下テストを行い、30秒間で2回以下を異常とする。

2、ビデオ嚥下造影検査(VF)  バリウムなどの造影剤を含んだ模擬食品をX線透視下に嚥下させて透視像をビデオで録画し、 誤嚥があるかどうかのチェックと共に口腔・咽頭・食道の動きを観察する

3、単純X線撮影  造影剤を嚥下させる前後で、咽頭・喉頭部の単純X線撮影を行い比較して誤嚥の有無を判定する。

4、嚥下内視鏡検査(VE)  鼻咽腔内視鏡で咽喉頭粘膜の状態や声門閉鎖機能、分泌物の貯留・気道への流入の有無を確認し嚥下機能を評価する。

 この中で障害の立証上、最も有用なのは「 嚥下造影 ( VF ) 」です。

VF は、X 線透視下で造影剤を飲み込んでもらい、口・のどの動き、構造の異常、食べ物の動きを評価する方法です。 VF の目的・特徴は、診断的 VF ...

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■ 嚥下障害とは?

聞き慣れない言葉ですが「えんげ障害」と呼びます。これは食べ物や飲み物を普通に呑み込めなくなる障害です。飲み込む力が弱まったり、食道と気管を分ける弁の働きが悪くなったりする・・・むせたり、咳がでる、固い物が食べられないなどの症状に悩まされます。原因は大きく分けて3つあり、それぞれ病名も多肢に渡ります。

 今週、嚥下障害の造影検査についてお聞きすべく専門医に面談します。したがって今日・明日の日誌は予習です。  

■嚥下障害の原因

1、 質的原因・・・食物の通路の構造に問題があり、通過を妨げている。

・舌炎,口内炎,歯槽膿漏

・扁桃炎,扁桃周囲膿瘍・咽頭炎,喉頭炎

・頭頸部腫瘍(口腔・舌癌,上顎癌,咽頭癌)

・食道炎,潰瘍

・食道の蛇行,変形,狭窄

・腫瘍

・食道裂孔ヘルニアなど

2、機能的原因・・・食物の通路の動きに問題があり、上手く送り込むことができない。

・脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷

・パーキンソン病,線条体黒質変性症,進行性核上性麻痺など

・脊髄小脳変性症

・筋萎縮性側索硬化症,進行性球脊髄性筋萎縮症

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 先日の弁護士研修会の最終日、「排尿障害の検査」について20分ほど講義をしました。そのレジュメから転載します。    排尿・排便障害は、腰椎圧迫骨折や仙骨骨折の場合に発症するケースが多く、脊髄の腰~お尻の部分=馬尾神経が病原となります。この神経に圧迫、損傷があると下肢のしびれ、歩行障害と並び排尿・排便に異常が起きます。稀に頚髄(首の辺りの脊髄)損傷でも発症します。このように腰椎捻挫、むち打ちを原因として排尿・排便障害に悩まされる被害者さんを多く経験しています。

 事故後に「おしっこが出辛くなった、回数が異常に増えた」被害者さんが行う検査とは・・まずは、膀胱内圧検査です。さらに、原因を追究すべく、より専門的な検査としてウロダイナミクス検査があります。しかし、ウロダイナミクス検査は、普通の泌尿器科では設備がありません。解読・診断できる専門医も限られます。何より、紹介状を書いてまで他院へなど、積極的に検査を行いません。「おしっこが出ないからここ(病院)にきたんでしょ?」=「今更、出ないことを検査してどうするの?」・・・このような受け取り方なので、検査は限定的な場合しか行いません。    しかし!    お医者さんは患者について「おしっこがでない」事を疑いませんが、保険会社、自賠責・調査事務所や裁判官は証拠を出さなければ信じてくれません。立証上、検査は必要なのです。     さらに!検査の必要性はそれだけではありません!!  昨年お会いした泌尿器科の専門医の考えは違っています。排尿障害といっても内圧の不調によるものか、括約筋の不全を原因とするのか原因は一つではなく、それに見合った治療が必要であると指導しています。

 例えば、カテーテル(導尿パイプ)を使用している閉尿(おしっこの出が悪い)の患者さんに対し、お腹を押して排尿を促すような指導が実際に行われています。この場合、閉尿の原因が括約筋不全であるなら逆効果で、さらに増悪する危険性があるそうです。数十年前の知識で治療をしている泌尿器科医も多く、間違った治療と相まって検査の重要性の認識が希薄なのです。

 現在、膀胱の内圧を計測するだけではなく、いくつかの検査を総合した「ウロダイナミクス検査」が最先端です。しかし町の泌尿器科の多くは設備がありません。大学病院クラスの検査先の確保が必要です。

 明日から「ウロダイナミクス検査」を解説します。研修では詳細まで踏み込む時間がなかったので、ここで責任回答させていただきます。

   ← 男性用導尿カテーテル    

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今朝から病院同行、ただ今事務所に戻りました。午後は出張相談です。

 今朝の案件は女性の顔面醜状痕について医師面談&診断書の依頼です。金属製のノギス(計測用定規)をペタッと顔に当てるのは本当に気が引けます。「キズなんて治ったよ、目立たないよ」と言ってあげたい反面、被害者のためには後遺障害の認定にはキズがしっかりあった方がいい。この業務はアンビバレントな気分なのです。

そこで過去の名作業務日誌を再UP → 女心と醜状痕

この日誌のエピソードの時は旧基準の認定等級でした。 後遺障害認定等級について昨年改正されています。以下新基準を記載します。

自賠責保険 醜状障害の新認定基準

等級

醜状障害の内容

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 昨日は「腓骨神経麻痺」の疑いのある被害者さんと主治医面談でした。足首が完全に動かないわけではないのですが、背屈(足首を上にそらす)が不能なので「不全麻痺」が正確な表現でしょうか。しかしその可動域の制限だけでは後遺障害の認定は得られません。それを裏付ける検査数値と確定診断が必要です。そこで主治医先生にタイトルの検査依頼となるわけです。

 中には「なんで治療が終わったのに検査するの?必要ないよ」、「保険請求のため?それは医者の仕事じゃないよ(・・めんどうだなぁ)」という対応の医師もいます。ましてや、「むち打ち」ごときでは、通常、医師の協力は得られません。

 医師の言う事もごもっともと思いますが、後遺障害を残した患者にとっては切実な問題なのです。毎度苦労させられますが、昨日の医師は検査の必要性に御理解をいただき、誠実に対応して頂けました。本当にありがたいです。    では針筋電図について・・・   ■ 筋電図とは  筋線維が興奮する際に生じる電気活動を記録することで、末梢神経や筋肉の疾患の有無を調べる検査です。筋電図検査といった場合には,筋肉の活動状態を調べる針筋電図と筋肉・末梢神経の機能や神経筋接合部を検査することができる誘発筋電図の両者を含める場合もあります。   ■ 脊髄損傷に対しては  脊髄にある前角細胞と呼ばれる運動神経以下の運動神経と筋肉の異常を検出するために行われます。これらの部位に疾患がある場合には,その障害がある部位や,疾患の重症度などを評価することもあります。異常を示す筋肉が限局している場合には,その分布により末梢神経が原因か脊髄が原因かなどをある程度推定することができます。   ■ 顔面神経麻痺に対しては  表面筋電図検査は四肢や顔面などに不随意に起こる運動が見られる場合に時として有用です。この検査の利点は、針電極や電気刺激を用いないので、疼痛を伴わないことです。                                     

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 今週は歯科医にも同行しています。今日は歯の後遺障害について。

 歯牙の欠損は以下のように明確に定められています。欠損とは歯肉から上、4分の3以上折れてしまった事を指します。

10 級 4 号 → 14 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

11 級 4 号 → 10 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

12 級 3 号 → 7 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

13 級 5 号 → 5 歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

14 級 2 号 ...

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脊髄シリーズ、今日で終了です。神経の後遺障害はとても深い領域です。私のわずかな経験では語り尽くすことはできません。より経験を積んで学習を深めていきたいと思います。

 最後に画像以外での判定、診断について昨日の見学から報告です。この患者さんの症状は脊髄損傷を示していますが、画像所見では判然としません。既に受診した2~3名の医師も「う~ん・・・」状態でした。このような不確定な状態で漫然と治療を続けていても不安です。ついにその分野の第一人者たる専門医の診断を仰ぎました。  

<検査と診断>

 頚部神経症状か脊髄損傷か・・・上肢、下肢のしびれ、めまい、ふらつき、不眠等、神経症状の原因をまず判定しなければ治療方針も定まりません。

 この専門医師はしばらく患者の話を黙って聞いています。そしていくつか質問を行い、以下の検査、数項目をはじめました。 

1、首の左右の神経根圧迫の様子をみる

 まずはジャクソンテスト、スパーリングテストと呼ばれる検査です。医師が頭を上から垂直に押すジャクソン、首を左右に傾けて押すスパーリング、その結果で左右の神経根圧迫のサイン(指先にビリビリと痺れが走る)を観察します。  昨日の医師の場合、「首を左に傾けて下さい」、「次は右」、「指先まで痺れがきますか?」。それだけです。患者にまったく触れません。                 

                  

2、腱反射

 ゴムハンマーで膝などをコンッと叩く奴です。 上腕二頭筋と腕橈骨筋を叩きました。 神経根圧迫の場合、反射は「低下」、「消失」といった、無反応にちかい反応を示します。脊髄損傷の場合は「亢進」です。亢進とは異常反応のことで、ピクッと筋肉が緊張します。                 3、病的反射  (トレムナー、 ホフマン、ワテンベルク )

 ・ホフマン ・・・ 手の平を上に向け、中指を曲げて手のひら側にピンッと弾きます。  ・トレムナー ...

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<後遺障害>

寝たきりとなり介護の必要なものから、上肢・下肢にしびれが残存するもの、痛みや可動域制限の残るもの等、症状・軽重の幅が広くなります。系統的には神経系統の障害に属します。

等級 内容 喪失率 自賠金額 1級1号 (別表Ⅰ) 神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 100% 4000万円 2級1号 (別表Ⅰ) 神経系統の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 100% 3000万円 3級3号 神経系統の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 100% 2219万円 5級2号 神経系統の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 79% 1574万円 7級4号 神経系統の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 56% 1051万円 9級10号 神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 35% 616万円

   ムチ打ちで診断書に「脊髄不全損傷」と書かれても、画像所見が乏しいと12級13号、14級9号で判断されます。両上肢や下肢にしびれが残存する、排尿排便障害が残る、これらは脊髄損傷の症状ですが、「局部に神経症状を残すもの」で括られます。後にも先にも画像所見が決め手です。

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<損傷部位の分類 >

1、上位脊髄損傷

 首は7つの骨が積み重なっています。上からC1~C7です。このC1(環椎)~C2(軸椎)に並走する脊髄に損傷が起こると、その支配する肋間筋と横隔膜の運動不能となります。これは呼吸するための機能が失われることを意味します。多くは死亡となる深刻な部位です。  助かったとしても自然呼吸ができないため気管切開し、人工呼吸器を通すことによって生命維持をはかります。

2、下位脊髄損傷

 首の部分では頚髄損傷、胸の部分では胸髄損傷、腰の部分では普通に脊髄損傷と呼びます。  多くは両上肢、両下肢、排尿排便障害の症状となります。寝たきりで随時介護が必要ななものから、一定の仕事の影響を及ぼす程度のものまで軽重の幅があります。

3、中心性脊髄損傷

 器質的損傷を伴わず、脊髄の損傷自体も発見づらいが上肢にのみ症状がおこる場合があります。首や胸や腰といった脊髄の位置をさすのではなく、円柱型の脊髄を輪切りにしてその中心部と外側(辺縁部)をわけて損傷部位をみます。神経線維は中心よりに上肢、外側よりに下肢とつながっています。したがって病変部を探し当てる?MRI撮影が必要となります。

                      脊髄に少し脊椎やヘルニアが圧迫しているだけで脊髄損傷と診断する医師がいると聞きました。見ての通り脊髄の損傷は生命や四肢運動に関わる重篤な障害です。患者の自覚症状をしっかり観察し、画像の精査と描写の工夫が大事であると実感している次第です。

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