相変わらずJAさんの認定はキビシイです。誰が見てもおかしな判定を異議申立で正しました。

  【事案】

歩行中、後方よりの自動車に撥ねられ、頭部と首を受傷。数日後、慢性硬膜下血腫を併発、またCT検査で頚骨の椎弓骨折が判明。幸い予後の経過よく、手にしびれを残すも仕事・日常生活に復帰する。

【問題点】

相談のきっかけは相手保険会社であるJAから140万円ほどの示談金提示があり、「この数字で示談して良いのか?」見て欲しいとのこと。後遺障害等級は14級9号。ケガの重篤度と残存する症状から、「これはないな」と直感。

【立証ポイント】

椎弓骨折と頭部の内出血、つまり器質的損傷がある上、しびれなど自覚症状も重篤であること。これでなぜ12級とならないのか憤慨。早速、主治医と面談、再検査等を踏まえ、周到に医証を収集し異議申立。依頼者さんは穏やかな人柄で、「14級でもいいですけど・・」と謙虚。しかしあるべき結果、12級13号の認定に変更させる。

続いて連携弁護士に引き継いだ。しかし弁護士の請求額とJAの回答は桁が違うほど相容れない。したがって紛争センターにて逸失利益の赤本満額獲得を争点に戦う。弁護士は秋葉から引き継いだ「異議申立で明らかとなった障害の原因、経過、程度」を理路整然と主張。画像所見を突きつけ、JAの見解、JA顧問医の意見書を一蹴。このように医学的考察を踏まえた交渉を続けた結果、見事、満額の慰謝料はもちろん、67歳まで満額の逸失利益を勝ち取る。金額は1500万を超えた。最初の140万提示はなんだったのか。

後遺障害等級を軽く判断されたら大変なのです。そして後遺障害に精通した弁護士が妥協なき交渉をしなければ、なめた金額で示談させられる現実があります。

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 東京研修会、お疲れさまでした。研修会のレポートは後日まとめます。

 今回は2日間、みっちり高次脳機能障害です。参加された弁護士先生の感想も概ね好評でした。とくに「弁護士会主催の研修では判例研究に終始しているが、こちらは実践的で即、役にたつ」「等級認定がいかに大事か、他の研修では等級獲得という視点が欠落している」・・・手前味噌ですが、被害者を救済するための実戦力を付けて頂くための研修を行っています。判例・法律研究も大事ですが、まずは目の前の被害者を助けなければなりません!

 さて、研修内容からその実践力を示す一例を挙げます。今研修では脳障害で少なからず併発する嗅覚障害の判定について、演習問題を実施しました。

 どのホームページでも嗅覚障害についての記載は、

 数値5.6 以上 嗅覚脱失 = 12級相当

 数値2.6 以上 5.5 以下 嗅覚の減退 =  14級相当

 とあるだけです。でも検査表の見方、わかっているのかなぁ?きっと専門書や交通事故110番のHPを写しただけじゃないですか。一体どれくらいの専門家さんがこの数値を理解しているのかとても心配です。

 以下、テキストから抜粋します。研修会では表の見方、数値の計算方法を伝授します。本気で後遺障害に取り組みたい先生は今からでも大阪研修会にお申込み下さい。  

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 本日のニュースはSK氏の記者会見一色でしたね。やはり聴覚障害に触れないわけにはいかないでしょう。

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       さて、本件で問題となっているのは身体障害者手帳の等級です。

 自賠・労災よりはシンプルです。そして全ろう、それに近い重篤な難聴しか認定等級がありません。手続きですが、医師の診断書とオージオメーター(聴力検査)の検査表を市役所に提出すれば該当の等級が認定されます。問題はオージオメーターは本人の意思で嘘の検査値を出すことが可能な事です。これについては耳鼻科の医師によると、経験にもとづいて嘘を見抜くことはできると言っています。

 等級は以下の通り、平衡機能の障害と一緒の表になっています。  

等級

聴覚障害

平衡機能障害

1

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 昨日に続き先天性の体幹(骨)の等級表といきたいところですが、見ての通り体幹とは限定されていません。病気による障害も含むため、症状のカテゴリーが広範囲になるからです。また交通事故の自賠責、労災には先天性(生まれつき)という概念がないため、単純な比較は困難です。まったく別の等級表と思って下さい。?

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 今日はくたくたで仕事になりません。なんとか急ぎの事務だけはこなしておきたいところです。

 2連日の相談会ですが、やはりむち打ちが半数を占めています。むち打ち以外の傷病名を列挙しますと・・・

 頬骨骨折と嗅覚障害、TFCC損傷、骨盤(恥骨・坐骨)骨折、高次脳機能障害、顔面神経麻痺・・・顔、頭のケガが多かったように思います。頭部や顔面のケガは視覚、聴覚、嗅覚、味覚に障害を残す可能性があります。これらは異変があっても見逃されやすい症状です。それは脳神経外科、整形外科、形成外科、耳鼻科と受診科が複数にわたり、相互の情報伝達が潤滑でなければ患者の訴えが届かないことがあるからです。整形外科医:「匂いがしない?それは耳鼻科で診てもらって」・・・極端な言い方ですが整形外科医は骨折の癒合にしか興味がありません。また他の専門分野に言及することに慎重です。患者がうまく医師に症状を伝え、他の科に受診するときにしっかり「匂いがしません」、「嗅覚の検査を」と話を向けねばなりません。

 いつだって自らを治す責任は被害者にあります。また障害の立証(挙証)責任も被害者にあるのです。被害者だからと言って安穏とはしていられませんよ。

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 老眼は正式には『老視』と言う眼の老化現象で、眼のピントを調節する機能が衰え、近くが見えなくなる症状です。正確には、近くだけでなく、普段ピントを調節しなければ見れない範囲は全て見にくくなります。最近私も老眼気味?で本が読みづらいことがあります。まぁ新聞の文字は問題ないのでもう数年は大丈夫かと思います。  さて交通事故外傷においても、眼球自体の直接的な受傷はもちろん、顔面のケガ、とくに眼窩底骨折やルフォーⅡ型~Ⅲ型の頬骨の骨折でこの調節能力に障害を残すことがあります。高齢ですと元々老眼であるケースが多いため判別が難しくなりますが、やはり専門的な検査で立証する必要があります。代表的な検査方法を3つ挙げます。

1、石原式近距離視力表

 この検査で異常があれば、各種の精密な調節検査を行います。この検査は老眼鏡を処方する場合の検査に必須です。眼前30cmの距離で明視できる最小の字づまり視標でその眼の近距離視力を求めます。5mの遠距離視力が裸眼または矯正眼鏡にて1.0であるのに、近距離視力が同じ条件下で1.0より低ければ調節障害となります。

2、石原式近点計

 調節障害が疑われた場合に調節の近点がどの位置にあるかを調べます。接眼部の試験枠にレンズを加入することによって、人工的な近視を作れば、この機械にて遠点も計測できます。調節幅の測定は精密な調節機能を知るために必要です。調節幅の検査では、被検眼の矯正視力、被検者の努力、注意、集中力、視標を移動させる速度、視標の大きさ、コントラスト、明るさなどが影響する。また、ピントがぼけ始めた点を正確に答えるのもむずかしい、さらに調節lag(lag of accommodation)として、正確に調節を行っていなくてもピントが合ったように見える現象がある場合があります。この調節lagには、ピンホール効果としての小瞳孔や乱視の存在などが影響しており、自覚的検査での調節幅は、他覚的に求めた真の屈折力の変化としての調節幅よりも大きな値となります。

3、アコモドポリレコーダー

 毎度カミカミでうまく言えません。この検査は遠方と近方に置かれた視標にピントが合うまでの時間の長さから調節障害を診断する専用の機器のことです。内蔵された視標はレンズによって光学的に遠方と近方に設置され、電動式に遠方視標と近方視標が交互に点灯するようになっている。視標にピントが合うまでの時間を調節時間として反復測定する。近方視標にピントが合うまでの時間を緊張時間、遠方視標にピントが合うまでの時間を弛緩時間として調節時間の現れ方をいくつかの型に分類し、調節障害の性格を明らかにすることができます。  この検査も自覚的な検査であり、被検眼の矯正視力、被検者の努力、注意、集中力が影響し、ピントがぼけ始めた時点を正確に応答するむずかしさが課題です。また、調節lagも混入することは石原式と同様ですが、調節幅を求める検査ではなく、調節時間の型からどのような調節障害かを診断することを目的となります。検査結果の再現性が得にくいこと、正常者あるいは異常者であっても、いくつかの型に当てはまってしまうために、検査結果(アコモドグラムパターン)だけから診断することは難しいとも言えます。したがって検査は治療の初期から症状固定まで3回ほど行い、あまり数値に変化がないことが望ましいのです。

後遺障害の判定と等級は

調節機能に関すること

11 級 1 号 両眼の眼球に著しい調節機能障害または運動障害を残すもの、アコモドポリレコーダーによる調節力が 2 ...

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 今日の病院同行は脊髄損傷で車イスの方です。本人、ご家族と一緒に主治医から今後の見通しを聞きました。医師は苦渋の表情で「残酷な事ですが・・・回復はほぼ不可能と言わざるを得ない・・・」と説明しました。続いて私と治療や検査の内容について淡々と話が進みます。その間、ご家族は落胆の表情です。当然ながらご本人もショックと思います。しかしかなり根性のある方でより回復に向けての闘志は失っていませんでした。

 この数年の人身事故・年間数110~120万件のうち後遺障害認定となるのはわずか6万件ほどです。その6万件のうち約60%がむち打ちによる14級9号です。腰椎捻挫やその他神経症状で14級9号を加えれば、約70%近くが14級9号となります。14級が軽い障害とまでは言いませんが、数年で回復する方、日常に影響しないくらいに回復する方が圧倒的多数です。13級以上はそれなりに長く、もしくは一生障害が続く方です。30%≒年間約1万8千人がひどい障害で苦しんでいます。

 今年私に依頼された方で13級以上は受任数の50%ほどで、残り半分を14級9号が占めています。対して多くの弁護士、行政書士事務所の受任内容はやはり60%以上が14級、そして物損事故なども入れれば、13級以上の重篤者は20~30%ほどではないでしょうか。その比較から私は重篤な被害者の受任が多いと言えます。実数は控えますが、今年の受任の半分が骨折や神経麻痺、高次脳機能障害、脊髄損傷など重篤な障害や見逃されやすい障害です。この仕事は何より経験則が大事です。私は多くの経験を積み、重篤な障害の方にとって力のある事務所を目指しています。今年のデータからその手ごたえを感じています。

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 ある日突然、交通事故でケガを負います。相手の一方的な過失で重篤なケガを負わされた被害者は理不尽の極みです。

 最近の相談者で目立つのは、頑張って治療努力を進め、受傷から数年経ってようやく症状固定となる方です。後遺障害の認定は症状固定時の状態で判定します。例えば骨折後、関節の曲がりが悪くなった、顔に傷が残ってしまった・・・このような被害者さんも医療技術の進歩も相まって、月日を経るごとにどんどん回復に向かいます。  できるだけ回復させるまで症状固定としない、これはまったく正しい行為です。しかしある程度、回復のスピードが一定となったら症状固定とすべき理由もあります。それは補償問題として考えるなら、より障害が顕在である時の方が等級認定しやすいという事実があることです。

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 土曜日は都内、台風近づく日曜は埼玉で2日連続相談会。合計16人で少なめでしたが、新MC候補さん2名を伴い、充実した内容でした。地方開催も新鮮ですがホームもいいものです。恒例の所感を。

画像勝負です!

 MRIで精査した結果、リスフラン関節(足首~足の甲)の靭帯損傷が判明しました。しかし自賠責の回答は「画像上、判然としない・・・」が「治療経過から推定が及ぶものとして・・・」14級9号とされました。器質的損傷が明らかであれば12級13号の可能性もあります。これはズバリ画像勝負です。虎の子の放射線科医に鑑定をお願いしますが、ここで一つ私たちのネットワークの優位を誇らせて下さい。  それは画像鑑定費用です。単純読影で21000円、もし有用な所見が得られ、鑑定書に仕上げればさらに21000円という2段階シムテムです。これなら最悪、画像勝負を諦めるにしても出費は21000円で済みます。このような被害者に優しいシステムは他では聞きません。(エヘン)

脊椎圧迫骨折の判定

 脊椎の圧迫骨折は縦の衝撃で椎体がつぶれる骨折です。例えば車にはねられ尻もちをついた、車の運転中、出合がしら衝突で車が横転~1回転し、頭を天井に打ち付けた、このようなケースでの受傷を多く経験しています。単純な追突事故では受傷の説明として、どうのように縦の衝撃が加わったのかよくわかりません。受傷機転を明らかにすること、これがまずスタートです。  さらに陳旧性(古傷)か否かも丁寧にチェックします。高齢者には自然に圧迫骨折している方も少なからず存在します。MRIで陳旧性か新鮮骨折を観察しますが、まず受傷直後のXPを見てみないと判定できません。受傷直後から陳旧性っぽければ事故での受傷を否定されます。

以上2点、相手保険会社の反論がきてからあたふた説明しているようではダメなのです。

関節可動域、5°の勝負

 真面目にリハビリを行い、機能回復することは被害者の務めと思います。後遺障害はそれでもなおかつ治らなかったものです。真面目な被害者は本当に必死にリハビリを行います。この日の被害者もひどい骨折ながらよくぞここまで直したと、根性を讃えるべき方です。しかし・・・足関節の可動域制限を測定したところ、わずか5°で10級を逃し12級に・・・。この角度5°で最終的な賠償金は500万円位減ると予想します。関節可動域の5°は長さにしてわずか5mmです。医師の測り方で1cm程度の誤差、言い換えれば計測値の違いがあっても不自然ではありません。この被害者さんの場合、骨折の様態、癒合具合から私は10級11号と思います。つまり計測の瞬間がこの被害者にとって最大の勝負どころなのです。

 何が勝負所なのか?まずこれを理解する必要があります。一生懸命治したのに賠償金は少なくなる・・・それは正しいことですが、ちょっとかわいそうですよね。

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 両日ともに相談者が10名を割り、少し寂しい相談会でした。年間を通して5月は毎年少ない印象です。しかしお困りになっている被害者さんはそれぞれ必死に解決を模索しています。こちらも否応なしに気合が入ります。恒例の所感をいくつか。  

■ ポイントをずらした後遺障害診断書

 肩が痛み、拳上困難が長く続いた被害者さんです。対して医師はまず肩甲骨、上腕骨、鎖骨などをXP(レントゲン)で確認しました。異常がないので、「様子をみましょう」と言い、保存療法の継続です。つまり打撲・捻挫の類と考えました。その後、症状が長引くため、腱板損傷を疑い、MRIを撮ります。しかしそこでも原因が特定できません。そして受傷後6ヵ月が経ち、症状固定を迎えることになりました。  後遺障害診断書でも「肩部打撲」のままです。一貫して治療・リハビリを続けて、通院も相当な日数です。しかし残存した症状について、結果は「非該当」。打撲・捻挫の類では極めて少ない例外を除き、ほぼ後遺障害は認められないのです。

 この相談者さんは実は14級9号を取りそびれています。受傷機転から頚部捻挫があり、肩の異常は頚部神経症状が原因と疑われるものです。外傷性頚部症候群、もしくは頸椎捻挫により、ヘルニアや骨棘で圧迫されている神経根が病原となります。昔から「頚肩腕症」という診断名がありますが、これの多くは頚部神経の根症状タイプです。上腕神経につながっているC4/5、5/6あたりの神経根に圧迫があると、首から肩にかけて、痛みや拳上不能など神経症状が起こる症例です。  どうやら本件の医師もそのような認識を持っていたようなのです。

  もし医師が神経症状に注目し、症状の主訴を頸椎捻挫からくる頚肩腕症としていたら、「局部に神経症状を残すもの」として14級9号の認定が得られた可能性があります。本件は医師の捉え方、診断書の表記で運命が分かれたケースと思います。  

■ 嗅覚障害と味覚障害

 匂いがしない?頭部外傷により、嗅覚喪失を訴える被害者さんがいらっしゃいました。詳しく聞くと「味」もしないそうです。しかし診断書上は「嗅覚喪失」とだけ書かれています。

 嗅覚障害を訴える被害者さんの対応で注意があります。嗅覚障害が残るような脳損傷、もしくは嗅覚神経の遮断が起きた場合、味覚障害も伴うケースを多く経験しています。嗅覚、味覚、どちらかに異常があれば、必ずセットで検査をすべきと思っています。

 ここで説明を一つ加えますが、通常、嗅覚に異常があると「風味障害」とも言うべき症状がおきます。人間の味覚は舌の神経による反応のみならず、香からくる「風味」とでも言うべき感覚に味が左右されることもあります。例えばコーヒーの舌上で感じる感覚は「苦味」が中心です。しかし風味で「香ばしさ」を感じ、これがコーヒーの美味さにつながります。  したがって嗅覚が減退、喪失すると味覚も当然に一部減退します。だからと言って嗅覚障害患者のすべてに対し、味覚障害は嗅覚障害からくるものと特定するのは早計です。嗅覚神経と味覚神経は頭蓋低骨の隙間を隣り合って通っています。外傷により、どちらかに損傷があれば、もう一方もやられている・・・決して珍しくありません。また脳の前頭葉にびまん性損傷があり、嗅覚を感じる脳組織が壊れた被害者で、味覚も一緒にダメになったケースを2件経験しています。

 両方に対し、しかるべき検査を行い、嗅覚「脱出」12級、味覚「脱出」で12級、併合11級とせねばならないのです。

 

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 顔面骨折も少ないながら数例経験しています。顔面は複数の骨で形成されており、まずそれぞれの名称を確認します。 顔面骨折は複数の骨折が生じることが多く、状態を表現するために3分類します。

1、Le Fort(ルフォー)I型  鼻骨(びこつ)骨折、下顎骨(かがくこつ)骨折、頬骨(きょうこつ)骨折、眼窩底(がんかてい)骨折、上顎骨(じょうがくこつ)骨折。

2、Le Fort II型  鼻骨、上顎骨前頭突起、涙骨、篩骨、眼窩底、上顎骨頬骨縫合部、翼口蓋窩-翼状突起に達する骨折、上顎から眼窩にかけての骨折。

3、Le Fort Ⅲ型  鼻骨を横断し、眼窩後壁を経て下眼窩裂、頬骨の前頭突起を通り後方へ向かい、上顎骨と蝶形骨の間を通過する。顔面骨が頭蓋底と分離する。 続きを読む »

 遅れがちの日誌も追いついてきました。

 さて今年を振り返る時期です。今年もたくさんの交通事故相談会に参加しました。正確な集計データは年明けに発表しますが、ざっと数えただけでも30回、一回平均12人としてもおよそ360人の被害者さんとお会いしたわけです。

 ほとんどの被害者は何らかの解決策を講じて前へ進ませます。しかし、どうにもこうにもらちがあかない被害者さんもいます。それは謎の重症、因果関係のはっきりしない症状を訴える患者です。この方たちのほとんどが骨折や入院などの重症事案ではなく、むち打ちや打撲捻挫を契機として、受傷から日を追うごとに悪化し、ひどい症状に陥ります。当然、加害者側の保険会社は詐病(うその病気)、心因性(心の病気)として、冷たい対応に切り替わります。保険会社だけではなく、病院ももてあまし気味、さらに自らの職場や家族にとっても困った存在に陥ります。

 

そこで心因性?と疑われる、今年の被害者、難病・奇病 年間ベスト10

 

1 MTBI 脳の傷病名もなく、些細な衝撃で脳障害を訴える… 今年、堂々の1位を獲得! 不定愁訴を訴える患者はすべてMTBIと診断する医師の活躍のおかげか?この業界での勢いはAKB48並み。 2 脳脊髄液減少症 ムチ打ちで脳の髄液が漏れた! 続きを読む »

 今日は江ノ電に乗って某病院へ。

 目的は腰椎の骨折の病態を聞くために主治医に面談です。

 CR画像(レントゲンをコンピューターで画像処理したもの)を診ながら説明をいただきました。骨折の状態は圧迫骨折でした。

 腰椎の圧迫骨折は上下の衝撃により椎体がつぶれる骨折です。自賠責の評価では一定の変形が残存すれば11級7号の評価となります。後遺障害の立証と治療の両面から、以下いくつかの条件を吟味する必要があります。

1、受傷機転から推察できる骨折か?

2、陳旧性(古い骨折)で事故での骨折ではない?

3、高齢者の場合、骨粗しょう症の進行では?

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 脳に損傷を受けたり、頭蓋底骨折(脳の下とあごの骨の間にある薄い骨)があると、視覚、嗅覚、味覚、聴覚などに障害を起こすケースがあります。脳そのものの損傷の場合、それらの感覚を認識する「回路の故障」です。頭蓋底骨折の場合は、その周辺部において、脳から通じる神経が切れたり、損傷を受け、神経伝達が絶たれる事を原因とします。これは「ケーブルの断線」ですね。  いずれも眼科、耳鼻咽喉科にて受診し検査をします。回路の故障かケーブルの断線か、原因の特定は脳外科ですが、匂いがしない、味がわからないといった障害の有無、程度の検査はそれぞれの専門科になります。

味覚検査

1、電気味覚検査

 まず首にアース極線の首輪をはめます。続いて舌の前後左右の表面に電極を当て、微弱な電気を流します。ピリッときたら手持ちのボタンを押します。「ピーッ」と鳴ります。このように舌の神経が生きているか否かを判別します。  こっちまでピリッとしそうです。最初は恐る恐る検査していた患者も徐々に慣れてきます。所要15分程度でしょうか。

              

2、ろ紙ディスク法

 ピンセットの先の脱脂綿?に薬をつけ、順番に舌に当てていきます。そこで感じた味を申告します。これも舌の左右に分けて判定します。味を変えるたび、頻繁にうがいをします。

 甘味、塩味、酸味、苦味の4種の識別です。回答には無味も含まれます。素朴な疑問として四川料理の好きな私は「辛みはないのですか?」と検査中の看護師に質問しましたが、「辛みはないです」と冷たくあしらわれました。

 検査表はカラーで色を塗ったものや、下図のようなグラフを用います。

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 昨日は都内の某耳鼻科へ。脳の障害を原因する嗅覚、味覚の異常を訴える被害者さんをお連れしました。

 医師から検査の立会についてご許可を頂きました。私は出来るだけ検査に立会うようにしています。まさに被害者と一心同体で進める立証作業です。しかしそれだけではありません。実際に体験、見学すると障害への理解がぐっと深まります。書物だけの知識ではぼんやりしたイメージしか持てませんが、見たもの、体験したものは段違いです。

嗅覚

1、T&Tオルファクトメーター

 甘い匂い、焦げた匂い、腐敗臭 等々・・・5種類の匂いを試験管のような筒の先につけて、それを嗅いでもらい、濃淡0~5まで段階評価します。特に腐敗臭は同じ部屋にいても匂ってきます。この強烈な匂いが匂わないの?・・・嗅覚が完全脱出した被害者さんもいました。時間はおよそ20分程度です。           

2、アリナミンPテスト

 もう一つの嗅覚障害の有無や程度を調べる検査です。静脈性嗅覚検査と呼ばれています。ニンニク臭を感じるようになる注射液を静脈という血管に注射し、ニンニク臭を感じ始めてから消えるまでの時間を測定します。注射液が静脈から肺に流れ、それが呼気に排出され、後鼻孔から嗅裂に達し刺激臭になります。この注射開始から臭いの感覚が生じるまでの時間:潜伏時間、臭いの感覚が起きてから消えるまでの時間:持続時間としてその間隔を開始〇秒、消失〇秒として測定します。  アリナミン・プルスチルアミンとはニンニクとビタミンB1の化合によりできるもので、市販されているビタミン剤に含まれています。元気になる、元気が持続する薬です。検査した被害者さんは「甘い」匂いを感じたそうです。  他にアリナミンFテストがあります。これもアリナミン・フルスルチアミンというビタミンB1誘導体で多くのアリナミン剤の主成分です。  このフルスチルアミンを使った検査は自賠責、労災の審査では参考数値程度として重視されません。ではPテストとFテストで何が違うのか?薬品の成分も親戚のようなものです。検査方法も同じですし・・・今度医師に質問してみます。  

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 では、肝心の後遺障害等級は?

 咀嚼、言語の機能障害を準用します。

咀嚼・言語の機能障害

1 級 2 号

咀嚼および言語の機能を廃したもの、

咀嚼機能を廃したもの? 流動食以外は摂取出来ないもの、

3 級 2 号

咀嚼または言語の機能を廃したもの、

言語の機能を廃したもの?  4 種の語音の内、 3 種以上の発音不能のもの、

4 級 2 号

咀嚼および言語の機能に著しい障害を残すもの、

咀嚼機能に著しい障害を残すもの?  粥食又はこれに準ずる程度の飲食物以外は摂取できないもの、

6 級 2 号

咀嚼または言語の機能に著しい障害を残すもの、

言語の機能に著しい障害を残すもの?  4 種の語音の内、 2 種の発音不能のもの又は綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができないもの、

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食事場面を見ていても判断しにくい嚥下障害の検査法について

1、スクリーニング検査  口腔内を湿らせ、唾液を嚥下させ30秒間で可能な空嚥下の回数を評価する反復唾液嚥下テストを行い、30秒間で2回以下を異常とする。

2、ビデオ嚥下造影検査(VF)  バリウムなどの造影剤を含んだ模擬食品をX線透視下に嚥下させて透視像をビデオで録画し、 誤嚥があるかどうかのチェックと共に口腔・咽頭・食道の動きを観察する

3、単純X線撮影  造影剤を嚥下させる前後で、咽頭・喉頭部の単純X線撮影を行い比較して誤嚥の有無を判定する。

4、嚥下内視鏡検査(VE)  鼻咽腔内視鏡で咽喉頭粘膜の状態や声門閉鎖機能、分泌物の貯留・気道への流入の有無を確認し嚥下機能を評価する。

 この中で障害の立証上、最も有用なのは「 嚥下造影 ( VF ) 」です。

VF は、X 線透視下で造影剤を飲み込んでもらい、口・のどの動き、構造の異常、食べ物の動きを評価する方法です。 VF の目的・特徴は、診断的 VF と治療的 ...

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■ 嚥下障害とは?

聞き慣れない言葉ですが「えんげ障害」と呼びます。これは食べ物や飲み物を普通に呑み込めなくなる障害です。飲み込む力が弱まったり、食道と気管を分ける弁の働きが悪くなったりする・・・むせたり、咳がでる、固い物が食べられないなどの症状に悩まされます。原因は大きく分けて3つあり、それぞれ病名も多肢に渡ります。

 今週、嚥下障害の造影検査についてお聞きすべく専門医に面談します。したがって今日・明日の日誌は予習です。  

■嚥下障害の原因

1、 質的原因・・・食物の通路の構造に問題があり、通過を妨げている。

・舌炎,口内炎,歯槽膿漏

・扁桃炎,扁桃周囲膿瘍・咽頭炎,喉頭炎

・頭頸部腫瘍(口腔・舌癌,上顎癌,咽頭癌)

・食道炎,潰瘍

・食道の蛇行,変形,狭窄

・腫瘍

・食道裂孔ヘルニアなど

2、機能的原因・・・食物の通路の動きに問題があり、上手く送り込むことができない。

・脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷

・パーキンソン病,線条体黒質変性症,進行性核上性麻痺など

・脊髄小脳変性症

・筋萎縮性側索硬化症,進行性球脊髄性筋萎縮症

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 先日の弁護士研修会の最終日、「排尿障害の検査」について20分ほど講義をしました。そのレジュメから転載します。    排尿・排便障害は、腰椎圧迫骨折や仙骨骨折の場合に発症するケースが多く、脊髄の腰~お尻の部分=馬尾神経が病原となります。この神経に圧迫、損傷があると下肢のしびれ、歩行障害と並び排尿・排便に異常が起きます。稀に頚髄(首の辺りの脊髄)損傷でも発症します。このように腰椎捻挫、むち打ちを原因として排尿・排便障害に悩まされる被害者さんを多く経験しています。

 事故後に「おしっこが出辛くなった、回数が異常に増えた」被害者さんが行う検査とは・・まずは、膀胱内圧検査です。さらに、原因を追究すべく、より専門的な検査としてウロダイナミクス検査があります。しかし、ウロダイナミクス検査は、普通の泌尿器科では設備がありません。解読・診断できる専門医も限られます。何より、紹介状を書いてまで他院へなど、積極的に検査を行いません。「おしっこが出ないからここ(病院)にきたんでしょ?」=「今更、出ないことを検査してどうするの?」・・・このような受け取り方なので、検査は限定的な場合しか行いません。    しかし!    お医者さんは患者について「おしっこがでない」事を疑いませんが、保険会社、自賠責・調査事務所や裁判官は証拠を出さなければ信じてくれません。立証上、検査は必要なのです。     さらに!検査の必要性はそれだけではありません!!  昨年お会いした泌尿器科の専門医の考えは違っています。排尿障害といっても内圧の不調によるものか、括約筋の不全を原因とするのか原因は一つではなく、それに見合った治療が必要であると指導しています。

 例えば、カテーテル(導尿パイプ)を使用している閉尿(おしっこの出が悪い)の患者さんに対し、お腹を押して排尿を促すような指導が実際に行われています。この場合、閉尿の原因が括約筋不全であるなら逆効果で、さらに増悪する危険性があるそうです。数十年前の知識で治療をしている泌尿器科医も多く、間違った治療と相まって検査の重要性の認識が希薄なのです。

 現在、膀胱の内圧を計測するだけではなく、いくつかの検査を総合した「ウロダイナミクス検査」が最先端です。しかし町の泌尿器科の多くは設備がありません。大学病院クラスの検査先の確保が必要です。

 明日から「ウロダイナミクス検査」を解説します。研修では詳細まで踏み込む時間がなかったので、ここで責任回答させていただきます。

   ← 男性用導尿カテーテル    

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