交通事故外傷のおよそ80%が捻挫・脱臼、そして挫傷です。その中で後遺症が残るようなケガは10%にも満たない数です。後遺症自体がレア、珍しいケガなのです。そして、後遺障害と認定される傷害名も60%近くがおなじみの「むち打ち」となります。

 今回取り上げるシリーズは後遺障害の中でも3%以下のケガを特集してみましょう。
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14級9号:股関節脱臼(20代女性・埼玉県)

【事案】

自転車でT字路を右折のところ、右方からの自動車と衝突、転倒したもの。歩行不能で救急搬送され、診断は股関節脱臼。搬送先では手に負えず、転院先にて股関節を数人がかりで徒手整復した。

【問題点】

レントゲンでも股関節は問題なく整復されている。リハビリの経過もよく、歩行できるまで回復した。しかし、痛み、違和感はそう簡単に消失するものではない。

【立証ポイント】

依頼を受けて、まずCT検査を行った。すると股関節の関節内にほんのわずかながら骨片を発見した。その存在を放射線科医に読影頂いた鑑定書を添えて自賠責審査に提出した。器質的損傷が画像上確認できるのであれば12級がターゲットとなる。

しかし、結果は14級に留まる。「脱臼後の整復および骨癒合は良好であり・・」との判断。骨片には触れてもこない。それでも疼痛・回復の程度や依頼者の意向を踏まえて14級を容認した。

このように立証側と審査側は画像を巡ってギリギリの攻防をしているのです。今回は勝ちを譲りましょう。