現在、台風15号による千葉県の停電復旧について、見通しが外れっぱなしで批判を受けている東京電力さんですが、現場の方々は危険を顧みず、全力で復旧に取り組んでいることはニュースの通りと思います。一方、上役の方々は毎度、情報発信で不興を買っているようです。発表が下手というか、タイミング悪いと言うか・・。東北震災の原発事故の時もそうですが、加えて東電側弁護団の”東電に責任はないという”反論も、もう少し被災者に配慮できないものかと思いました。

 過去記事 ⇒ 加害者側の弁護士 前編

 さて、またしてもこの時期に? タイミングの悪い判決がでました。    <以下、9/19時事通信社さまより引用>    東京電力福島第1原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長勝俣恒久被告(79)と、いずれも元副社長の武黒一郎(73)、武藤栄(69)両被告の判決が19日、東京地裁であり、永渕健一裁判長は全員に無罪を言い渡した。

 検察官役の指定弁護士側は3人に禁錮5年を求刑していた。

 永渕裁判長は、最大の争点だった、2011年3月の東日本大震災での巨大津波を予見できたか否かについて、「予見可能性を認めることはできない」と判断した。

 東電は08年、政府機関の地震予測「長期評価」を基に、第1原発に襲来する恐れのある津波高を「最大15.7メートル」と算出したが、判決は長期評価についても「(事故前に)原発の安全を考える上で取り入れるべき知見とは言えなかった」と指摘し、「信頼性に合理的疑いがある」と述べた。

 判決などによると、東電の子会社は08年3月、長期評価に基づき、原発南側に敷地高(10メートル)を超える「最大15.7メートル」の津波が到達すると算出。結果は同年6月に原子力・立地本部副本部長だった武藤元副社長に報告され、翌月、再度報告を受けた武藤副社長が部下に「研究を実施しよう」と発言した。

 原子力・立地本部長だった武黒元副社長は同年8月上旬、武藤元副社長から報告を受け、勝俣元会長は09年2月の社内会議で、「14メートル級の津波が来るという人もいる」との幹部(故人)の発言を聞いた。

 指定弁護士側は「3人は敷地高を超える津波予測を聞いた時点で、自ら情報収集し、安全対策を進める義務が生じたのに、対策を何一つ取らなかった」と非難。弁護側は「長期評価は信用できず、予想津波高はあくまで試算。対策実施は決まっておらず、対策をしても事故は防げなかった」と訴えていた。  続きを読む »

民法の復習です

 最近のテレビでは、どの番組を観ても「吉本興業VS芸人」が取り上げられていますね。吉本興業所属の芸人さんの直営業から端を発したこの問題ですが、そもそも悪いのは罪を犯した方たちなのに、その方たちはなぜかフェードアウトしているという・・・世論というものは恐ろしいものですね。この話題で大きく取り上げられた「契約解除」等さまざまな法律用語ですが、雇用や契約に関しては「契約書」が必要かどうか、少し記載してみようと思います。

 まず、契約には大きく分けて「諾成契約」と「要物契約」があります。

 諾成契約とは、契約当事者間の合意のみで成立する契約のことをいいます。スーパーで買い物をする等、普段なにげなく行っていることが正に諾成契約です。「お客様、契約書にサインをお願いします。」なんてレジのお姉さんに言われてことないですよね!?

 しかし、高価なものを購入するときや長期的な契約をする場合には、「契約書」を作成することが一般的です。携帯電話の購入やマンションを借りるときには、何枚もの書面にサインしますよね。これも全て諾成契約です。

 一方、要物契約とは、契約当事者の合意と共に、契約の目的物を相手方に渡すことで成立する契約のことをいいます。例えがなかなか難しいのでここはカットします。

 さて、今回の吉本興業の問題ですが、契約書を交わしていないにもかかわらず、契約解除というのは不当ではないのか?答えは不当ではありません。上に記載したように当事者間の合意によって成立するので問題はありません。(芸人さんたちが合意しているかは分かりませんが…)しかし、ビジネスにおいて契約書を交わさないことはほとんどありませんね。契約書を作成する目的としては、「契約内容を互いに確認して間違いを防ぐため」、「言った言わないの紛争化を防ぐため」、「紛争化したときに証拠として残すため」などが挙げられます。

 書面に残るということは安心ではありますが、ご自身が不利になるようなことが記載されていることもあるかもしれません。契約の際には、十分に書面をよく読み、サインするのが望ましいですね。  

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 こんにちは、金澤です。

今日は最近何かと話題の日韓の対立~徴用工問題について、法律の勉強の一環として触れていきたいと思います。

   徴用工問題とはなにか?

 

まずここから整理しないと何が悪いのか等のお話にもなりませんよね。

 

 

徴用工問題とは・・・

 

①韓国が日本の植民地だった時代(正確には日本の一部だった時代)に、日本企業に強制徴用された韓国人がいました。

 

②昔から韓国は「日本企業の強制動員はおかしいだろ!」と主張し争っていた。

 

③だが1965年に日本と韓国は「日韓請求権協定」を結び、この問題を解決している。

 

④韓国の最高裁判所は今になり、日本企業に対し、元徴用工への賠償を命じた。

 

⑤日本は1965年にそれは解決しているでしょ。と主張

 

日本政府も『外交保護権は放棄したから、国家間の交渉で持ち出すことはできないが、個人の請求権は残っている』

と以前から一貫して言っている以上、韓国司法の主張である「個人間の請求権は残っているから」と言うのは、わかる。

 

→勝手に個人が企業に対して請求したら良いと思う部分もある。

 

日本は請求権はあると認めているが法的に救済されないという解釈なのだから、

払う払わないは企業次第なのに三権分立を狂わせる新日鉄へ「払わないように」との介入。

 

まあでも仕方のないことなのかもしれないとも思うが…

 

韓国の今までの盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権では

「慰安婦問題は日韓請求権協定の対象外だが、徴用工問題についてはそれにて解決」

としていた政治の空気の読み合いを何故、今になり覆してきたのだろうか?

 

「そもそも戦略戦争にて行われた植民地支配から武力による強制的な日韓併合が不当であり国際法違反」

と主張して今になり、日韓請求権協定を覆してくるのもおかしいような気もする。

 

なので政治的意見は全くなしにして。。

(素人が理解できる内容でも無い(笑))

 

もし仮に、国際協定が有効であった場合、国際協定をその国の司法が上回ることが出来るのか?

と言うことを考えていこうと思います。

 

例として日本が逆の立場で、有効である協定や条約に対し、日本国憲法がそれらを覆すことができるのか?

つまり国際協定や条約と憲法はどちらが勝つのか

 

実はこの論点自体が間違えているという意見や、

憲法が上と言う意見もあるし

条約が上と言う意見もあり、判断がつかない世界である。

 

憲法を見てみる。

第98条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。

→法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部とあり、条約などには触れていない。

98条2項 日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。

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私が解説しましょう    保険会社や弁護士は逸失利益を計算する際、ライプニッツ係数を適用します(他にも新ホフマン係数というものがありますが、主流はライプニッツ係数です)。その数値が来年から改定されることになりました。皆様も自動車保険(任意保険)に介入していれば、保険会社からそのお知らせの通知が届く頃と思います。   1、ライプニッツ係数とは

 交通事故で障害を負わなかったら得られたはずの利益(逸失利益)を請求・受領する場合、その利息分を控除するための計算で適用される数値です(中間利息控除)。

2、なぜ中間利息分を控除する必要があるのか。

 本来、その未来の利益=収入は毎年毎月ごとに収入があるはずです。それを示談時や判決時に喪失期間分まとめて全額を収入することになるため、まとめて先にもらう分について利息が発生することになります。

※ 民法上の考え方ではお金を持っていれば、その分利息が発生することになると考えます(他人に貸したり、投資したりして利益を得られるからです)。

 このことから、その期間分の利息を控除しないと、被害者はその間の利息分の利益を別途得ることになり、不公平となります。そこで、利息分を逸失利益から控除する必要があります。

3、なぜ改定するのか

 このように、ライプニッツ係数は利息分の控除を根底に置いていることから、法定利息を基準に作成されます。法定利息とは、交通事故などの賠償金を請求する際、事故日や症状固定日に払われるべき賠償金について、「解決(判決)時までの間、待たされた分、利息が発生する」として、賠償金に加算する考え方です、(示談や裁判上の和解では、特別な加算や調整金などの加算は検討されますが、直接には発生しないとされます。)

 この点、2020年に民法が改正され、法定利息はこれまで5%だったのが、3%となります。 

 0金利時代に5%とは、確かに「利息高すぎ!」との声が続いていました。

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こんにちは、金澤です。    今日はたわいもない話なのですが。

 先日いとこから電話があり、久しぶりに電話。なにかあったのか?と思い出てみると、

「アポスティーユ認証したくて行政書士に頼もうと思っているんだけど、いい所知ってる?」との事。。。

恥ずかしながら私はアポスティーユと言う言葉を初めて耳にしました。何それ?と聞いたところ、「そんなのも知らないの?」とコ馬鹿にされ電話を切られる始末。

その後調べてみると、海外の就職が決まった人が必要になる書類。日本の学歴や、犯罪歴等を発行してもらい、それをさらに外務省が、「間違いないですよ」とハンコをくれる、いわゆるお墨付きと言うやつです。

そこで、全国の行政書士、このような仕事もしているのか。と事務所を調べてみる。平均5万~10万円かかるのだ。

まあもちろん彼らもプロとして、任せたら100%の仕事をしてくれるであろう。心配な方は任せるのが一番だと思われますが、庶民の私にとっては高く感じ(従妹も同じなはず)。

15分くらい外務省ホームページで勉強するだけで、意外と簡単な事がわかり、窓口ならすぐ終わり、郵送でもできちゃう手続き。コ馬鹿にされてから約20分後には、アポスティーユのとり方を詳しく教える事ができるまでになり、何とか面目は保てたかな?と思い、じゃあ1万ね。と伝えると、後日1万BND(ベトナムドン)を渡すよと言われ、電話を切られました。  

50円か。

 

もらえるのを楽しみに今日も頑張ります。

   日本にはまだまだ知らない手続きが山ほどあり、色々な仕事もあるものだなーと思いました。  

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 私達の仕事を横文字でこう言っております。メディカルコーディネーター(以後、略してMC)、常態的に募集をかけていますが、一般的ではない職種ですので、認知度からその名目で募集をかけづらい一面があります。実際、応募は行政書士事務所ですので、行政書士から集中します。次いで、柔道整復師さんからも注目があるようです。採用率の悪さは相変わらずで、それら資格者あるいは受験生を年間数名面接するも、なかなかMCの適性が見出せません。

 行政書士と柔道整復師、いずれも国家資格です。医師と柔道整復師は医療従事者の括りで一緒ですが、医師資格と別格の存在です。また、柔道整復師と言われてもピンとこず、整骨院・接骨院の先生の方が一般的です。中には病院ともはっきり区別していない人もいるはずです。一方の行政書士は代書権をもつ代書屋さんですが、代理権を持つ弁護士とは、こちらもまったく隔絶した存在で、医師対柔道整復師に似たような対比に思えます。法律家とは呼べませんし、弁護士・司法書士とはっきり区別して説明できる人は少ないものです。

 行政書士会は自らを「町の法律家」と標榜していますが、法律関係の文章の作成には制限があり、代理権は官公庁に提出する書類の代理提出に絞られます。行政書士の私でさえ、その権能から法律家を名乗るに苦しい感じがします。大坂の弁護士会などは「行政書士ごときが法律家を名乗るな!」と激おこです。まぁ、資格の上下やヒエラルキーで比べるではなく、それぞれの資格に応じた部分の専門家として、役割分担すべきとひとまず結論します。

 今までも私達グループでは、被害者側の医療調査・自賠責保険手続きを行政書士だけではなく、柔道整復師も担ってきました。彼らは、曲がりなりにも医療従事者の端くれ、医学の基本知識は心得ており、なにより、実際に患者さんと接してきた経験は、MCの即戦力になりえます。その点、一から医療や保険を学ばなければならない行政書士はまったくに遠い存在で、不利だと言えます。

 それは、弁護士とて同じです。法律の専門家は賠償交渉が本分、医療調査においては、独自に勉強・経験を積まねば素人に変わりないものです。幸い、私のように保険会社・代理店出身は保険知識が土台、スタートラインが違うと自負できます。MCに必須の2大知識は「医療」と「保険」です。ですから、保険会社お抱えの医療調査員などはMCそのものです。ただし、彼らも今までの経験では・・どうもダメでした。彼らの非常に多い転職歴が影響するのでしょうか。

 保険調査員さんだけでなはく、今まで関わった柔道整復師さんもMCが続きません。両者とも知識・経験のアドバンテージがありながら不思議です。被害者側の医療調査の仕事はそれだけ難しく、医療知識だけでは務まらないのでしょうか。今のところ、MCに必要な「これだ!」と言う要素は、「被害者救済の志」しか浮かびません。確かに動機や人間性がより作用することは間違いないようです。果たして、MCの適性とは・・後進に指導することは、それを検証する作業なのかもしれません。

 今月より採用のMC候補は、久々に柔道整復師、しかも5年の事務経験を経ています。基礎知識でも、筋肉系の知識は私達を上回ります。交通事故外傷はどうしても骨に集中しますので、その点、知識の欠損を補う戦力になります。

 人を指導する事は、自らも学ぶ事です。共に成長し、MCの適性を考えていきたいと思います。  

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 近年、悪質・危険な運転者に対する罰則強化のために、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」(略称:自動車運転死傷処罰法)が、平成26年5月20日施行されました。従前の過失運転致死傷罪とは別物になったのです。

 交通事故で他人を傷つけたとしても、それは故意犯=「わざとではない」ので、殺人罪に比べてはるかに軽い罪に扱われてきました。確かに、飲酒運転や悪質な運転で被害にあった人にとって、「過失によるもの」など受け入れがたく、故意犯に近い厳罰を求める声が強かった背景があります。早速、内容を確認してみましょう。

 

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 年末です。飲みの席が多いこの季節、注意したいのは飲酒運転です。罰則強化の影響で違反者・摘発数は減少傾向です。それでも、今年は元アイドルグループの飲酒ひき逃げ事故など、飲酒運転をする人は一定数いるものです。

 近年の改正で処分・処罰の範囲が広がっています。まずは、飲酒運転者の基準について復習したいと思います。  

(1)飲酒ドライバー

   ちなみに、元M娘のYさんは、報道によると0.58mg/1ℓが検出されたそうです。つまり、上表0.15mgの4倍と言うわけです。体質の個人差や体調の影響があるにせよ、昨夜の酒が残っていた?などの言い訳はできない数値なのです。 続きを読む »

 若手に指導する立場となって数年・・事務所でも偉そうに訓戒をたれている毎日です。

 知識は文献をあさり、技術は経験で磨くものと思います。さらに、現場での応用力は、その人の持つセンスや人間性を加味した総合力の結集です。弊所の医療調査業務も、応用力が究極のスキルです。それは、まず原則を知ることから始まり、例外の経験を重ね、終には原則を打ち破る仕事を到達点と考えています。

 他事務所に目を向けると、以前から気になっていたことですが・・交通事故の経験浅い弁護士が、相場を大きく上回る慰謝料・逸失利益で賠償請求、結果として交渉が難航、解決まで大幅に時間を食っていることです。他事務所のことでもありますし、また、法律の専門家に対して苦言をできる立場ではないことは重々承知しています。しかし、明らかに知識の欠如に思えるケースが目につくのです。

 実例で説明します。交通事故・後遺障害の実に70%近くを占める、頚椎捻挫(腰椎捻挫含む)で相手の損保に逸失利益(将来の損害)を請求する場合、特殊な事情がない限り、通常、裁判上でも喪失期間は最長5年が相場です。当然、個々の症状に軽重はありますが、生涯その障害で苦しむ事は極めて稀で、神経症状は数ヶ月~数年で収まります。それを越えるものは、単なる頚椎捻挫を越えるもので、別の診断名で手術適用となります。単純なむち打ちであれば、相手損保も医学的なデータから、神経症状の残存をおよそ2年と主張してきます。対して、弁護士は交渉あるいは斡旋機関、裁判で5年の満額を目指して戦うことになります。ところが、赤い本の慰謝料満額である110万は良いとしても、なんと、むち打ちでほとんど生涯をふいにする=67歳までの逸失利益を請求する先生が今まで何人かおりました。

 おそらく、相手損保の担当者も苦笑していることでしょう。「ど素人先生」と内心小バカにしているかもしれません。世の中には相場というものがあります。確かに交渉ごとですから、最初は大きくふっかけるものでしょうが、度を越した山盛り請求は逆に、相手どころか斡旋機関や裁判官の心証を損なうリスクとなって跳ね返ってきます。これは業界における無知をさらす事になるのです。大体、捻挫の診断名で神経症状が一生続くなど・・医学・法律以前に、まず一般常識で考えればわかるでしょう?と言いたくなります。とりあえず単純に「最大限の請求を!」と、論拠乏しく計算したのかと思います。その点、事務所のボス・先輩弁護士が、あまりにも手放しで案件を任せていることは気になります。無法図な主張を放置ですから、しっかり監督・指導していないのでしょう。

 では、原理・原則に縛られ、判で押したように相場の範囲の主張に終始する姿はいかがでしょう?

 被害者の症状・事情を鑑み、個別具体的な賠償論を構築することこそ、法律家ではないかと思います。それらが成果となれば、判例ジャーナル等に掲載されますので、類似ケースを戦う者にとって大きな指標になります。もし、医学的常識を越えるようなひどい症状の被害者に対して、67歳まで神経症状が続く理由を立証し、賠償金を獲得すれば、それは画期的な仕事に生まれ変わります。それこそ、「常識を知って、常識を打ち破る」仕事かと思います。

 もちろん、法律家に限らず、あらゆる職業で応用力を発揮し、新しいアイデアを打ち立て、刮目すべき成果を残す者がおります。攻める姿勢は、原則を熟知したところからスタートします。原則を知らずに突っ走るなど蒙昧の徒に他なりません。まず、原則を知って、原則に拘泥することなく挑戦する姿勢はすべての仕事に通じると思います。    <最期に例題を> 

 ご存知、漫画・アニメのタッチから。17歳高校生で甲子園予選を前に、交通事故で亡くなった、主人公 上杉 達也の双子の弟 上杉 和也くん。彼の死亡による逸失利益を最大限に獲得する法理論構成をお願いしたいと思います。

 事故状況は、子供を守るためとはいえ、自分から急に道路に飛び出したので、相当に過失減額されるはず。判例タイムスによる基本は70:30です。当時は人身傷害保険がないので、自己の過失分補填は期待できません。過失減額の無い(相手車の)自賠責保険、当時は死亡で2000万円です。仮に70%減額されても、賠償額は2000万円をオーバーするはずです。したがって、(相手に任意保険の付保があるとして)裁判で最大限に賠償金総額を積み上げることを目標とします。そこで、逸失利益の最大化がポイントとなります。以下の点において、画期的な判例を期待したいのです。   続きを読む »

 交通事故で加害者・被害者の双方が、文章に署名・捺印して示談書を交わしたら、これは正式に解決を証明するものとなり、法的にも絶対的になります。

 後で、「やっぱり、こうだ」と蒸し返しても、原則、ダメです。したがって、示談書を交わす場合は慎重に行わなければなりません。しかし、原則には例外があるもので、場合によっては成立した示談を無効にできる場合があります。法的には、示談内容を誤解した=錯誤無効を立証しなければなりません。あるいは、公序良俗に反する契約(示談)であったと無効を立証することでしょうか。例えば、入院中の朦朧としている時(正常な判断ができない)に示談した。監禁でもされて脅かされて示談した。・・・これら、極端なシチュエーション下である必要があり、立証はそれなりにハードルが高いものです。法律に関する学術的な見解は専門家に任せるとして、過去の経験から参考例を紹介します。   ○ 免許取りたての女子学生がタクシー運転者と交わした示談書を撤回させた件

 これは、代理店時代のことです。お客様(女子大生)が信号のない交差点で自動車同士の出会頭衝突となりました。直後・その場で、相手(タクシー)運転手から、「私に全面的に事故の責任があります」と示談書に署名させられた件です。

 本事故は、相手タクシーに一時停止があり、「20:80」でタクシーの責任が大きいものです。それは当然にタクシー運転手も知っていると思います。それが、その会社の方針なのか運ちゃんの悪知恵なのか、示談書を車内に常備しており、免許取りたて+初めての事故で気が動転している19歳の女子学生に、まんまと「100%過失を認める」示談書を書かせたものです。

 後に、事故連絡を受けた当方の保険会社担当者が交渉に当たりましたが、相手タクシーは示談書を楯にとり「100:0」を譲りません。膠着状態を見かねて、代理店の私が動くことになりました。

 ご本人を連れてタクシー会社を訪問し、まず、「私はその時、気が動転して・・怖くなって・・署名したものです。示談は撤回します。」と、本人に宣言させました。相手の担当者はそれでも、「示談書は有効に成立したものだ。法的手続きをとる」との返答です。

 同席の私は、「学生・未成年で、免許証をとって3ヶ月の女の子でしょ? 対しておたくの運ちゃんは2種免許取得者でこの道10年のベテランですよね? 一方的に脅かすような口調もありましたよね? 一時停止側の過失が大きいことは当然に知っていますよね? 法的手続きは望むところです。 こちらとしは、本件の経緯、つまり、会社ぐるみでこのような不当な示談行為をしていることを国土交通省(タクシーの管轄省庁)に陳情します。 また、ご本人からの撤回の宣言と今のやり取りは録音していますので、弁護士より裁判所に提出し、本件示談が錯誤無効ないしは公序良俗に反するとして撤回を主張します。 省庁や裁判所がどう判断しますかね」と畳みかけました。

 翌日、タクシー会社から「保険会社同士の話し合いに委ねます」と回答、事実上、示談書は撤回されました。    本件の場合、このような示談ではさすがにばつが悪く、お役所の目もあり・・タクシー会社は渋々引っ込めました。しかし、これが成人だった場合は、民法の原則通り「お互いで合意したこと」として、撤回は難しかったかもしれません。 悪質なドライバーにとって、弱腰の相手はいい鴨となります。  

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 先週土曜日は、法律家の為の実務講座・第10回でした。毎年8月が恒例ですが、今年は6月、東京、大阪の2都市です。    今回のテーマは、高次脳機能障害、脊髄損傷、遷延性意識障害の3大重傷・後遺障害について、弁護士の目指すべき裁判解決です。それぞれ、象徴的な判例を紐解き、介護費用の獲得例をクライマックスとした好取組みを分析しました。本テーマはまさに弁護士マター、私の担当するところではなく、専ら一聴講生となりました。大変、勉強になったことは言うまでもありません。全国各地の弁護士先生からも、現在取り組み中の案件を交え、事例研究、情報交換の場になったようです。

 交通事故裁判は他の民事事件に同じくか、それ以上に和解による解決です。画期的な判例をだしている弁護士は、全国でほんの数人で、同じ先生が重ねて判例を獲得している傾向です。やはり、専門性の高い分野なのでしょう。とりわけ、被害者本人と家族、その人生がかかった重度後遺障害の場合、「弁護士なら誰でもOKではない」事実を表しています。

 一つ残ったことは、判例を獲得している弁護士先生を直接に講師としてお迎えできないか?です。これは来年度以降の宿題としたいと思います。だって、判例をとった先生に直接教えを乞いたいじゃないですか。 「被害者救済の芽を次世代に」・・・交通事故賠償を変えた、優績先生の英断を待ちたいと思います。  

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 前日の解説から、給与額・勤務日、その対比がはっきりしていれば、(b)方式=「休日を差し引いた勤務日数で月給を割って、日額を算定する」ことが正しい算定となります。それでは、アルバイト・パート・日雇い労働者の場合を続けます。

  (2)日雇い労働者やアルバイトについても、労働契約上、実際に労働した時間に応じた金額の給与が支給されることになっているはずですので、適切な証拠があれば、事故前に実際に労働した単位時間(実労働日1日)当たりの基礎収入を算定することが可能です。

 そして、労働契約上、各週・月のどの日に勤務するかが概ね決まっている者(アルバイトにはそのような者が相当数いると思われます。)については、事故に遭わなかった場合、どの日に労働していたかを認定することがきるため、(b)の計算方法で休業損害を算定することができます。このような場合に、被害者側が(b)の計算方法で算定した休業損害を請求しているにもかかわらず、(c)の計算方法を採用することは、休業損害を過少に認定することになるので、適切とはいえません。    他方、日雇労働者は、通常、短期の契約を予定していて、事故の発生の時点で、将来どの日に労働するかが決まってないことが多いと思われます。

 また、アルバイトにも、労働契約上、各週・月のどの日のどの時間に勤務するかが決まっていない者もいます。このような給与所得者についいては、事故に遭わなかった場合、どの日に労働をしていたかを認定することが困難であり、(b)の計算方法で休業損害を算定することはできません。

 しかし、通院などによって、事故に遭わなかった場合と比較して、その分の労働の機会を失い、現実の減収が生じたとみることができますので、休日を含んだ一定期間の給与の平均日額を基礎収入とし、これに通院日等を乗じる方法((c)の計算方法)で休業損害を算定することになると考えられます 。  

 アルバイトについては、時給が定められており、勤務日(シフト)もある程度固定していれば、以前から保険会社も(b)方式で算定してくれました。日雇いも同じく、計算が易しいものです。しかし、今回の解説を読むと、証拠が必要であると読み取れます。保険会社に(b)方式で請求をすれば、勤務予定表や過去の勤務表なども必要になるかもしれません。

 保険会社は常に”払い過ぎ”に臆病な生き物です。細かい立証を待たず、(c)方式での支払が無難なのでしょう。そもそも、休業損害の支払いは、被害者の差し迫った損害に対し、急いで対応するものです。したがって、案件の性質に合わせて柔軟に算定方式を使い分けることはもちろん、まずは(c)方式での支払いを受けて、最終的な賠償交渉で、立証書類を基に(b)方式に算定し直し、不足分の追加請求も有かと思います。

 総括しますと、判で押したように「事故前の3ヶ月を90日で割って、日額を算定する」方式は、もはや、スタンダードではない。ただし、「休日を差し引いた実勤務日数から、日額を算定する」方式は、それを裏付ける書類が必要であること。また、実勤務日数と対応する給与が明らかではない場合や、急場しのぎでは、「事故前の3ヶ月を90日で割って、日額を算定する」方式もあり得る、と言う所でしょうか。    

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 今年の『損害賠償算定基準2018・下巻』(いわゆる赤本)引用、 武富 一晃 裁判官 の解説を続けます。   (2)以下、どのような場合にどの計算方法を用いるべきか、給与所得者が継続して完全休業する場合と給与所得者が就労しながら一定の頻度で通院を行っている場合に分けて検討していきます。   給与所得者が継続して完全休業する場合

 休業損害は、事故による受傷を原因とする休業のために支給を受けられなかった減収分(差額)について認められるところ、労働契約上、勤務時間等が定まっていて、実際に労働した時間に応じた金額の給与が支給されている給与所得者については、休業損害を正確に算定するため、計算方法 ②で収入日額を算定し、これに実際の休業日数を乗じる方法((b)の計算方法)によるべきという考え方もあり得ます。

 しかし、完全休業の期間がある程度長期の場合には、(a)、(b)の計算方法のいずれを採用しても、結論に大きな差は出ません。また、休業損害は、事故後も事故前と同様に勤務を続けたという仮定的な状況において得られたはずの給与と現実に得た給与の差額を算定するものであること、給与は、基本給のほか、時間外・休日・深夜労働の割増賃金や歩合給を含む諸手当の金額、時間外労働や休日労働を含む実際の労働時間によって決まるものであって、同じ労働契約のもとでも、金額が期間ごとに変動することから、その性質上、厳密な意味で正確な休業損害を算定することはできません。

 したがって、ある程度長い期間継続して完全休業する場合には、(a)(b)の計算方法のいずれかを採用してもよいと考えられます。実務上、(a)の計算方法が採用されることが少なくないのは、このような事情によるものと思われます。 続きを読む »

 (今まで保険会社が判で押したように提示してきた)休業損害の計算方法について、以前から議論がありました。ついにと言うべきか、今年の『損害賠償算定基準2018・下巻』(いわゆる赤本)において、具体的な見解が示されました。今後の交通事故賠償のスタンダードになりうる算定基準と思います。連携弁護士K先生から、早速のご指摘がありましたので、同本より抜粋して勉強したいと思います。    まず、問題点を簡単に説明します。

○ 保険会社が用いる、休業損害の計算方法とは・・

 事故がおきた日の前の月、前々月、その前月、の3ヶ月間の給与を合算し、それを90日で割った金額を「休業日額」とします。これに、実際に事故で休んだ日を乗じます。

(例)会社員の山本さんは追突事故でむち打ちになり、大事をとって、翌日から会社を3日休みました。その後も、週2回の通院の日は会社を休みました。2ケ月後に完治して示談となりました。会社を休んだ日は合計で15日でした。  会社で書いてもらった休業損害証明書を保険会社に提出したところ、計算・提示してきた休業損害の計算式は以下の通りです。尚、山本さんの給与額ですが、ここしばらく毎月25万円でした。   25万円×3ヶ月=75万円 ÷ 90日 = 8333円(日額)× 15日(休んだ日)= 124995円     山本さんは、そんなものかなぁと印鑑を押しましたが。どうも釈然としません。なぜなら、日額の計算は、完全にお休みとなっている土日も含んでいます。本来、25万の月給は、土日を除いた週20日前後の業務に対しての賃金です。事故前の3ヶ月の出勤日は祭日もありますので、それをひくと(20日、22日、21日)でした。したがって、   25万円×3ヶ月=75万円 ÷ (20日+22日+21日=63日) =11904円(日額)× 15日(休んだ日)= 178560円     保険会社の計算に比べ、約5万円も高いのです。これが正当な計算ではないかと・・・    これら計算方法による金額の違いが、長らく議論となっていました。     ここで、最新の裁判官の解説を見てみましょう。

 

給与所得者の休業損害を算定する上での問題点

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 行政機関の定めるルールはいつもなんの前触れもなく変更されます。人知れず、こっそりとは公表していますが、私達のような業者がそれをキャッチするのは、大抵、相談者からの情報です。

 労災も行政機関です。「行政機関への審査請求」と言えば、行政不服審査法が根拠条文となりますが、これはズバリ行政書士試験の課目です。(これも古い情報ですが、行政書士でも特定行政書士には行政不服審査法に基づく不服申立等における代理権が付与されました。)

 本題に戻ります。労災の認定理由の開示と審査請求(労災請求の結果への異議申立て)について、説明した文章を引用しますと、

 これまでは、労災保険の認定等級に不満がなくても、認定通知後60日以内に審査請求を行うとしていました。 なぜなら、労災保険は、等級認定の詳細情報を開示することなく、等級の通知だけを行っているからです。 ところが、近年、労災保険は認定理由の開示に積極的になっています。 したがって、労働基準監督署に出向いて、認定理由の開示請求を行ってください。  もちろん、労働基準監督署で不十分な対応がなされたときは、60日以内に審査請求に踏み切ることになります。 <交通事故110番HPより>    この60日ルールが、最近、労災請求を経た相談者さまからの情報で、以下に改定されておりました。    決定理由の詳細についてお聞きになりたい点があれば、表記の労働基準監督署まで照会して下さい。

(1)表記の保険給付に関する決定(以下「本件処分」といいます。)に不服がある場合には、本件処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に表記の労働基準監督署を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」といいます。)に対して審査請求をすることができます。

(2)審査請求に対する審査官の決定に不服がある場合には、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に労働保険審査会(以下「審査会」といいます。)に対して再審査請求をすることができます。また、審査請求をした日からか3か月を経過しても決定がないときは、決定を経ないで審査会に対して再審査請求をすることができます。

(3)本件処分に対する取消訴訟は、当該処分についての審査請求に対する審査官の決定を経た後に、国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣になります。)、決定があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に提起することができます。ただし、決定があったことを知った日から1年を経過した場合は、提起することができません。

 また、審査会に対して再審査請求をした場合には、裁決を経る前又は裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に本件処分に関する取消訴訟を提起することができます。ただし、裁決があった日から1年を経過した場合は、提起することができません。

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前回の弁護士の選び方について、続けたいと思います。

前回の記事 弁護士の選び方①交通事故弁護士にも2種類あります。

交通事故に限ったことかどうかはわかりませんが、相談会でも既契約の弁護士事務所に不満を持つ相談者が頻繁に訪れます。

弁護士は法律を極めた専門職です。その知識と論理的思考・構成力には敬服しています。しかし、現場では法律の専門家と言えど、すべてがプロの仕事をしているわけでありません。例えば、実務のあらゆる局面に対して、学校で習った教科書の知識だけで対処できるでしょうか?これはどの職業でも同じですね。やはり、現場の実戦経験を積んだ者がその道のプロと呼べるのではないでしょうか。

つまり、すべての弁護士が「交通事故」の経験が豊富なのか?、が問題となるわけです。

法律職と言っても、実にたくさんの活躍場所があります。司法試験を受かった先生は裁判官や検事、弁護士に分かれます。さらに、弁護士は独立開業する先生、一般企業に勤務する先生もおり、後者は近年増加傾向です。そして、独立事務所で活躍している先生であっても、事件を担当せずに事務所の経営に専念している先生、給与制で多忙を極める勤務弁護士、または名札を置かせてもらっているだけの軒弁先生もおります。このように活躍の立場も様々です。

さらに、法律事件はたくさんのジャンルがあり、刑事事件と民事事件、民事も細かく分ければ、企業法務、過払い金返還、知的財産、相続、離婚・・と実に様々な分野があり、交通事故はその一つに過ぎません。当然ですが、すべてに精通したスーパー弁護士はいないと思います。

医師に例えれば、わかり易いと思います。内科、外科、脳神経外科、心臓外科、眼科や耳鼻科、歯科と人体各部、多くのジャンルに分かれています。総合病院の初診では、専門科の診断・治療へと患者を振り分けることが第一です。

対して弁護士は専門科にわかれているわけではないので、余程特殊な分野でなければ、すべて受任可能です。資格上、特に民事分野では代理人に事件ごとの制限がほとんどありません。もちろん、依頼を受けた先生はその分野の経験が希薄でも、自らの知見と才覚で仕事をしてくれるでしょう。しかし、これを医師に例えると、「歯医者が胃の手術をしている」ようなものなのです。少し極端な例えですが。

また、医師は自分の科ではない患者が来れば、別の科に紹介します。弁護士も不案内な依頼がくればそうしているはずです。しかし、私の経験では交通事故(など簡単と思うのか)はわりと引き受けてしまいます。それが重傷であればあるほど、報酬に結つくのか手放しません。当然、交通事故に特化して取り組んでいる先生でなければ、おかしな方向へ向かってしまい、結果も芳しくありません。本来、重傷度が高いほど、弁護士の力量に差がでます。最悪、技術・経験の乏しい先生に運命を任せた結果、依頼者の二次被害にまで及びます。

弁護士先生は万能の神ではりません。あらゆる職業に同じく、能力や経験に歴然とした差があるのです。相談の際、「その先生の専門は? 得意分野は? 受任経験は? 解決の方針は?」等、しっかり聞きとり、実力を見極める必要があると思います。結局、ご自身を守るのはご自身の選択なのです。

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つづきはこちらから

弁護士の選び方 ③ やはり、最後は人間性

 

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 最近は事務所内で月1~2回勉強会を実施しています。実践的な知識は即、業務の役に立ちますが、知識の根底となる理論を固めておくことも大事です。

 それでは、昨日の「自賠法と民法」のテーマから、よく質問されることについて、質疑応答形式で回答しましょう。 c_n_10

(質問)  交差点で出会い頭の衝突事故にあい、頚椎捻挫になり通院をしています。また、車の修理費も40万円ほどかかるそうです。相手保険会社の担当者は20:80と、私にも20%過失があると言っています。しかし、ケガの治療費は何故か全額払ってくれるそうです。

 どうして、相手の保険会社はケガの支払いは過失減額しないで払ってくれるのに、車の修理費は20%減額するのですか? 人身と物損で過失割合が違うなんて、納得できません(プンプン#)   (回答)  それは自賠責保険が優先的に適用されているからです。ケガの場合、任意保険会社は対人賠償保険で支払いを代行しますが、120万円までは自賠責保険から回収できます。但し、物損に関する支払いは対物賠償保険で支払います。物損には自賠責からの支払いはありません。

 自賠責は被害者の過失が7割以上もあるような事故でもなければ、過失減額なしに100%支払いを受けられます。だからこそ、自賠責の限度120万円までは、任意保険会社は過失減額なしに支払ってくれるのです。

 保険会社の対人賠償保険約款は民法を基にしつつ、自賠法を優先適用している側面があります。保険会社担当者は腹の傷まない自賠責の範囲で支払いを済ますこと、これを常に目標にしています。  20120120続きを読む »

 被害者さんからの相談で、「相手保険会社が弁護士を立てて、調停の提案がきました!」が少なからずあります。治療が長期にわたる方に多いようです。保険会社が治療費の打切りや示談解決へ進めるにあたり、業を煮やしている様子が伝わってきます。

 被害者側は調停云々の前に、まずやるべき事をしっかり抑える必要があります。後遺症が残った場合、等級認定を済ませているでしょうか?(認定を受けている場合)認定等級は正当でしょうか? 申請・認定なきまま、後遺症はないものとして調停で解決させられてしまいます。相手保険会社(弁護士)の狙いは早期解決です。後遺障害認定手続きなど待たず、さっさと進めてしまいます。

 調停の目的とは「相互の歩み寄り」による解決です。つまり、調停員が「(被害者と保険会社の主張する金額の)双方の間位で手を打たないか?」などと斡旋案をだしてくる”ぬるい場”です。しかも、どちらかがその斡旋案を蹴ったらおしまいです。調停の斡旋案に拘束力(斡旋案に従う、または尊重する)はないのです。   c_y_38 ← イラストのような・・  交通事故の場合、多くは保険会社vs被害者となりますが、この交渉の斡旋の場として「交通事故紛争処理センター」(以後、紛セン)があります。調停との一番の違いは拘束力です。「保険会社は斡旋案を尊重する」ことがうたわれています。絶対的な拘束ではないにしろ、保険会社が斡旋案を蹴って、上部審査の審査会や裁判にすることは稀です。断言します、紛センは調停に比べてはるかに被害者に有利です。

 逆に保険会社及び相手弁護士は調停が有利、だから調停解決を持ち出してくるのです。(もっとも紛センは保険会社側から申立てするものではありません。あくまで被害者側のための機関です。)    ここで被害者の採るべき行動を整理します。

1、調停など蹴る。

 双方が参加しなければそもそも調停となりません。ただ、無視・無断欠席は駄目ですよ。必ず、事前に不参加を表明して下さい。

2、後遺障害の認定は?

 後遺障害が賠償金の最大ウェートを占めます。まず、ここを固めなければいけません。秋葉の出番は正にここです。損害がすべて明らかになっていないのに交渉も何もありません。

3、紛センに申立て。併せて弁護士を立てる。

 調停を蹴ったからにはこちらも対案を用意すべきです。それは裁判か紛センです。もちろん、交渉の継続でもよいですが、ここまでもめたら交渉は現実的ではないでしょう。そして、できれば被害者側も代理人(弁護士)を立てて進めるほうが良いです。相手弁護士と交渉するのはそれなりにハードです。    この1~3をしっかり抑えることが基本行動です。交通事故の解決はクールに進めるものです。そして加害者側保険会社に主導権を握られっぱなしから脱却し、被害者側で後遺障害を立証する、代理人を立てる、紛争センターや裁判に持ち込む行動と気概が必要です。

   以下、調停について抑えておきましょう。     民事調停手続 (裁判所さまのHPより抜粋)

1.概要

調停は,裁判のように勝ち負けを決めるのではなく,話合いによりお互いが合意することで紛争の解決を図る手続です。調停手続では,一般市民から選ばれた調停委員が,裁判官とともに,紛争の解決に当たっています。

2.民事調停の特徴

•手続が簡単  申立てをするのに特別の法律知識は必要ありません。申立用紙と,その記入方法を説明したものが簡易裁判所の窓口に備え付けてありますので,それを利用して申立てをすることができます。終了までの手続も簡易なので,自分1人ですることができます。

•円満な解決ができる 続きを読む »

 今月、行政書士の交通事故業務について、その線引きを示す一つの判断が届きました。

 大阪高裁平成26年6月12日判決(判例時報2252号の61頁)

 この裁判は行政書士が依頼者に対して報酬を請求したところ、「その業務が弁護士法72条に違反するから無効」と依頼者が支払いを拒否、対して行政書士が報酬の請求訴訟を起こしたものです。結果は、行政書士の訴えが退けられたのですが、その過程で業務内容の適否にいくつかの判断がされました。

 有償で賠償交渉に関わる事が弁護士法72条違反であることは明白として、この高裁判決では興味深い論点が示されました。行政書士の交通事故業務でグレーゾーンであった業務が弁護士法72条に違反するか否かについて・・・   ① 「自賠責保険の請求業務」は(本件一連の契約内容・業務は全体として非弁行為だから、自賠責部分のみ適法を認めず)法律事務とされた   ② 交通事故に関する事務は「将来、紛争が予想されれば法律事務となる」   ③ 報酬設定で経済的利益の○%は72条違反の根拠    まず、周囲の弁護士によると、やや驚きだったのは「自賠責保険の請求までは行政書士も可能」と解釈していたところ、①で否定された点です。今までも、この違法・適法の線引きについて弁護士間でも意見が分かれていました。

 しかし、本件の場合は前提があります・・・本件行政書士は賠償請求行為まで包括的に契約していいました。1審で非弁行為を断じられた後、控訴審になって「少なくとも自賠責保険の業務までは適法と認められるべき、だからそこまでの報酬は認めて」との、未練がましい主張を追加して臨んだのです。高裁判事は「契約全体として、法律事務との線引きができようもないのでダメ!」と断じたに過ぎません。    その後、サイトで拝見したいくつかの弁護士はこの判例を受けて、この行政書士による自賠責保険の請求で作成した「有利な等級を得るために必要な事実や法的判断を含む意見が記載されている文章」は、「一般の法律事件に関して法律事務を取り扱う過程で作成されたもの」だから、

 ”行政書士の行う自賠責保険業務は非弁行為となった”、と断定しています。    やや論理の飛躍に思えます。これは、”この行政書士の「契約内容・業務全般が非弁行為と認定済」との前提があってこその見解ではないでしょうか。    限定的に解釈すれば、「自賠責保険業務自体、あるいは自賠責保険業務のすべてにおいて、その違法性について直接的な判断まではしていない」、と秋葉は読み取ります。    本判例は、読み手の立場(職域確保の弁護士か、自賠責業務に進出した行政書士か)によって解釈が分かれるようです。しかしながら、HPを見回すと、前者:弁護士の意見はいくつも目にしますが、肝心の行政書士は私くらいしか見当たりません。自らの業務の根幹に関わる重大事ながら、行政書士側はぐうの音も出ないのでしょうか・・・実に寂しい限りです。    今後、自賠責保険の請求業務が真っ向から争われる裁判が起これば、違う判決も出る可能性がありますので、予断を許さないと思います。自賠責業務に関する事務の線引きについて議論は続きそうですが、少なくとも自賠責保険の被害者請求(の代理請求≒代理行為)を行っている行政書士は、この判例から非弁行為(の疑い)を指摘される宿命を負ったと思います。    ②について、交通事故はほとんどのケースで紛争が予想されます。紛争が予想される事務をすべて72条違反とすれば線の引きようのない解釈となります。例えば離婚業務で有責配偶者の証拠(ラブホテルの前で写真を撮る等)を収集、レポートを作成した探偵業務は紛争が予想される法律事務に当たってしまい、探偵さんは非弁者となってしまいます。これも絶対的な解釈までは及ばず、調査業務か法律事務か、個別に判断が求められると思います。    ③は、「報酬自由の原則<72条違反を構成する根拠?」とかなり乱暴な解釈と思います。これはこの行政書士のあやしい?業務内容から、その違法性の根拠を示す報酬計算とされました。やはり個別判断に留まるように思います。    訴えを起こしたのは、書面による賠償交渉を業務としたバリバリの赤本書士です。

(赤(青)本書士とは・・・賠償交渉を被害者の裏に回って書面作成によりフォロー、「賠償交渉はしていません、書面作成しただけですよ」と、”とんち”で72条違反を回避したつもりの行政書士)

 この赤本書士に対して一罰百戒、その主張すべてにNOが突きつけられました。最初から堂々と賠償交渉と代理行為を契約し、業務遂行していたのですから、結局、何を言っても説得力がなかったのでしょう。本裁判は依頼者と報酬額を巡るトラブルが発端です。少なくとも依頼者の納得が得られない業務と報酬内容なのでしょう。関西の行政書士・弁護士から聞くと、この先生は平素から疑義・問題のある業務と報酬請求をしており、懲戒の申立ても受けているようです。行政書士の性質によっては、つまり、72条に遵法、真面目な先生であったら・・もっと慎重な議論が展開されたと思います。

 これが一民事事件に対する個別判断であるとしても、判例が一つの規範であることは変わりません。業界全体はもちろん、交通事故に係る行政書士は厳粛に受け止めるべきでしょう。今後、弁護士・行政書士の両会が業際問題について申し合わせを行い、グレーゾーンの線引きが進むことを望みます。

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