最近のご質問と回答を紹介します。(個人情報保護の観点から脚色しています)
 

Q(下肢を骨折した被害者さま)

 
 既に症状固定して、膝関節の機能障害で後遺障害12級7号が認められています。その後の定期診察で、主治医から「現状の膝は本来の関節の機能(関節包や軟骨)が大きく失われており、何年か先には関節の隙間も狭くなり、強い痛みが襲ってくる可能性がある」、と言われました。その場合、人工関節にしなければならないそうです。

 示談後に後遺症が重くなった場合は、追加の後遺障害認定や賠償金請求等ができるものなのでしょうか?

A(回答)

 
 段階的に解説します。
 
1、症状固定の意味

 まず原則ですが、悪化も軽減も将来のことはわからないので、それを何年も、極端に言えば死ぬまで待つのは現実的ではありませんから、症状固定日の時点で後遺障害の程度を判断することになります。
 
2、症状固定後であっても等級変更はできるのか?

 症状固定後においても、事故受傷と因果関係が密接で、医学的にも当然の結果あれば、例えば膝の機能障害が12級であって、数年後、人工関節にしなければならなくなった場合、再申請で上位等級である10級10号を取り直すことは可能です。

 示談後であっても、除斥期間20年内であれば、3年の時効すら適用されないことが多いようです。念のため、相手が「因果関係がない」と否定してくる場合に備えて、「将来、人工関節置換術の可能性がある」旨、診断書に記載しておくことが望まれます。それ以上に、相手に追加的に賠償金を支払わせる為には、自賠責での再申請の結果が最も説得力があります。

(実例)

12級7号⇒10級11号:脛骨近位端骨折 人工関節 異議申立(40代男性・静岡県

 
 3、下肢の障害で既に10級の認定を得ている場合

 数年後、膝を人工関節にした場合でも、既に機能障害で10級を得ていれば、同じ等級ですから再申請しても意味がありません。

 では、再申請の結果、人工関節+1/2制限で8級の可能性を検討します。人工関節にしたにも関わらず、1/2制限・・・これは手術の失敗を意味します。むしろ、手術しない方がよかったかもしれません。8級6号は悲惨な結果と言えます。

 更に最悪のケースを考えます。予後の感染症がひどく、患部に壊死を起こし、膝下の切断となった場合は5級5号です。これが、膝上の切断であれば、4級5号となります。実際にはかなりレアケースですが、理論上、因果関係が認められれば再認定されます。
 
4、損害賠償について

 法的側面から補足しますと、仮に今後、新たな症状が出て、後遺障害等級が変更になれば、その時点で示談が成立しておりましても、当事者の合理的意思解釈としては、あくまでも、既存の後遺障害等級における示談ですので、それに拘束されることなく、新たな後遺障害等級に基づく損害賠償請求は可能です。