少し間が空いてしまいました。このシリーズは一回一回とてもエネルギーを使います。できれば主要損保会社10年間の約款をすべて確認したいのですが、それをやったら半年かかってしまいます。とりあえず損Jを中心に、東海他数社を確認しながら進めています。不正確な記述あれば、後戻りしてちょこちょこ修正していこうと思います。

 さて、昨日まで主要な問題点を明らかにしました。現在、連携している弁護士の先生方がこの状況でどう対処しているかを紹介します。題して「訴訟基準をゲットするための3策」。  

1、人傷先行

 「差額説」判決の根拠となった、代位(求償)の規定、「被保険者または保険金請求権者の権利を害さない範囲内で」を生かし、先に人身傷害にせっせと請求します。とくに高額となる後遺障害の慰謝料と逸失利益を事故相手(賠償社)に請求する前に、人身傷害から確保します。まずは人傷基準とはいえ、自身の過失関係なしで100%を得ることができます。自身の過失が大きければ大きいほど威力を発揮します。

 そして、次に相手側に賠償請求します。それが裁判となれば当然、交渉や斡旋機関で解決しようとも賠償金を得て、その内から先に人身傷害特約で得た分を返します。その際、「契約者の権利を害さない範囲で」返せばいいので、以下のように訴訟基準の損害全額1000万円を確保し、それを超える300万円を人傷社に返せば済むことになります。

保険会社 加護 続きを読む »

 またしても人身傷害・約款の壁で、矢口さんは全額の補償が得られません。    損保ジャパンでは既に平成21年から、第8条『保険金の計算(3もしくは後段)』でこの規定(以下6条(3))を盛り込んでいました。損保ジャパンは人傷先行後の求償について、裁判となった場合限定で「訴訟基準」で払う事を早くから規定していたようです。  そして、26年7月改定ではこの規定を第8条『保険金の計算』から第6条『損害額の決定(3)』に移転させました。この条項移転によってより積極的に、賠償先行+訴外解決の場合は「人傷基準差額説」と規定したことになります。  また、この条項移転を好意的にとらえれば、「賠償先行でも裁判で決定した総額なら、差額は訴訟基準で払います」となります。

 こうして「人傷基準差額説」vs「訴訟基準差額説」の回答、つまり、人傷先行か賠償先行かで支払い保険金に差がでる問題について、「それは請求の前後ではなく、あくまで裁判するか否か次第」としました。ようやく保険会社からの(少なくとも損保ジャパンからの)見解・解決が提示されたと言えます。    このシリーズ、約款の不備を指摘したかったのですが、逆に保険会社の(約款の)周到さに感心させられました。まるで保険会社の掌にあった孫悟空の気分です。   

第6条 支払い保険金の決定(3)

 わかり易いように略=( )を加えています  (総損害額は当社の基準で計算しますが)それにかかわらず、賠償義務者があり、かつ、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって、判決または裁判上の和解において、(当社の)規定により決定される損害額を超える損害額が認められた場合に限り、賠償義務者が負担すべき法律上の損害賠償責任の額を決定するにあたって認められた損害額をこの特約における損害額とみなします。  ただし、その基準が社会通念上妥当であると認められる場合に限ります。  

 これは「TUG損保と後藤弁護士間で裁判になった場合に限って、その総損害額を認めます。」と解します。つまり逆を言えば、総損害額の決定は裁判での和解・判決を除き、人傷社(加護火災)の算定基準で計算することになります。本件はTUG損保と後藤弁護士の交渉による総損害額なので、加護火災はあくまで自社基準でしか払えないと言うのです。しかし、この交渉でまとまった金額は「赤い本」基準で計算された裁判基準の額です。「たら、れば」ですが、裁判をやればほぼ同じ賠償額が予想されます。そもそも「訴訟基準差額説」の「訴訟基準」とは形式(実際に裁判をやった結果)なのか、実質(赤い本等で計算された額)なのか議論があるところですが、少なくとも約款では「形式である」ときっぱり明言しています。  

 ・・保険会社がいくら約款を明確化しても、やはり納得がいきません。後藤弁護士は交渉ながら裁判基準を勝ち取った素晴らしい成果をあげたにもかかわらず、裁判で決まった額ではないが故に、人身傷害の全額補償が受けられない。こんな理不尽が交通事故賠償の現場では多発しているのです。私はこれが人身傷害における最多発の矛盾問題、人傷基準ハザードと思っています。    zonbi-jinshou続きを読む »

 人身傷害特約は「安心の実額補償」「夢の全額補償」との宣伝で輸入された保険自由化の目玉商品です。

 「実額補償」とは、契約時に決められた死亡で1000万円、入院1日10000円、の定額ではなく、実際の治療費や休業補償、逸失利益や慰謝料の相当額が計算されて払われることです。「全額補償」とは自分に過失があって、相手から全額の補償が受けられなくても、差し引かれた過失分を人身傷害が払ってくれることです。そりゃ、代理店時代に初めてこの保険の説明を聞いた時は「いい保険が出たものだなぁ~」と感じ入っていました。

 しかし、「実額」とは言ってもあくまで保険会社の基準で計算されること、そしてそれは裁判などで用いられる基準に比べて著しく低いことが、後に様々な問題・矛盾をもたらしました。その結果、宣伝とは異なり「全額」の補償が受けられないことが起きるのです。

 いよいよシリーズも最終局面に突入です。矢口さん&後藤弁護士と加護火災、最後のバトルです。(何度も言いますが、登場する個人・組織名は架空です)  

人身傷害特約は自分の過失分も出る保険なのに何故?

     矢口さんは自動車で走行中、交差点で出合頭の衝突事故でケガをしました。腕を骨折し、半年後、後遺障害12級の認定を受けました。そして弁護士の後藤先生に交渉を依頼しました。20140507benngosi続きを読む »

 裁判官は「人身傷害は傷害保険」、こう定義してしまったね・・。そんな簡単な結論ではないからこのシリーズが10回を超えているのですが・・。

 また、裁判官は「平成10年以降、保険の自由化により各社約款が多様化しているのだから、算定基準もいろいろ・・裁判基準に拘束される筋のものではない」と言うけれど、それはまったくの建前論です。現在、どの会社も十把一絡げに同じだった対人賠償基準の旧約款を人身傷害の算定基準に流用しています。各社、その支払い金額の計算に大差はありません。大差があるのは、いわゆる「赤い本」などの裁判基準と比べてなのです。問題の本質は(各社、大差ない)保険会社基準と(絶大な差がある)裁判基準のダブルスタンダードです。そして、人身傷害は支払い金額を「契約前に保険金を約束した傷害保険」なのか、それとも「損害の実額を支払う、つぐないの保険」なのか? これが人身傷害誕生以来負ってきた、宿命的テーマのはずです。何か履き違えている印象が拭えません。

c_y_98   判旨の通り、確かに保険会社は約款に書かれていることを守ればよいでしょう。まったくの正論です。しかし、裁判官は正論ながら現実とかけ離れた解釈を示しています。  まず、被害者(ここでは保険契約者)が※賠償先行か人傷先行かの損得を簡単に判断できるわけないですよね。

※人傷先行=先に人身傷害保険を受取り、次に裁判で賠償金を請求  賠償先行=先に裁判で賠償金を取り、次に自身の過失分を人身傷害保険に請求

 裁判官の言う「選択の自由」は大抵、保険会社有利に運ばれるのが現実です。金融庁の監督下だからと言って、馬鹿正直に損保が「人傷先行が得です」と契約者にアドバイスなどしません。逆に表立って契約者が不利になるような発言・誘導もしません。では、人傷先行か賠償先行か、選択の場面となったら人傷社の担当者はどうするでしょうか?まず、静観を決め込みます。なぜなら過失割合が契約者20:相手80のような事故であれば、通常、相手の保険会社が一括対応(治療費や休業損害の支払い)をしています。そして治療終了後、何の疑いもなくそのまま賠償交渉に進むのが普通だからです。  保険会社は裁判官が期待するような、優しくお人好しの組織ではないのです。営利を求める一民間企業が数百万円~数千万円の支払いが増える方法を親切に教えてくれるわけないでしょ?そんな担当者は人事異動で地方の子会社に飛ばされます。それが民間企業の限界、保険会社を責めることはできません。・・判旨は無垢で純真な理想郷を前提としたものです。

 さらに、「人傷先行が大多数じゃね?」の判旨。自身の過失が50%を超えるような事故なら、相手保険会社は賠償の対応をしてくれないことが多いので、その場合は人身傷害を先に請求することになるでしょう。しかし本件のように自身の過失が5~30%程度でも、先に人身傷害を請求するのが大多数か?・・そんなわけないでしょう。裁判官は「発売以来 普及が進んだこと、求償の裁判がやたら多いこと」から単なる推測で「みんな先に人身傷害に請求している」と思ったようです。しかし、事実はこのシリーズを読めば解る通り、求償に関する裁判は人身傷害の約款に問題があるからで、決して人身傷害への先行請求が大多数となったわけではないです。

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 平成24年6月7日高裁で「人傷基準差額説」判決が出ました。先に賠償金をもらって、差し引かれた自分の過失分を後で自身契約の人身傷害特約に請求した場合、その計算は「訴訟基準」の総額か、「人傷基準」の総額かの判断が下されました。

 わかり易くするために、例によって矢口さんと加護火災に登場してもらいましょう。  

「人傷基準差額説」だと以下の通り、全額はもらえません

  両会社 ⇒賠償過失 人傷差額説続きを読む »

 自動車保険料率の自由化以降は、各社の約款に違いがあって当然です。しかし、この人身傷害の支払い基準の差について、保険契約の際に契約者が理解・選択することはほぼ不可能と思います。パンフレットからは到底読み取れない補償の差があることは、やはり消費者保護の観点から望ましいことではありません。

 「差額説」vs「絶対説」の裁判が続く中、平成23年6月、北海道の消費者団体がこの問題について、「訴訟基準差額説」or「人傷基準差額説」のどちらで支払うのか損保各社に質問状を送りました。回答は以下の通りです(簡略化しました)。「絶対説」が退けられることは、各社、覚悟していたと思いますが、「訴訟基準」か「人傷基準」かは不明確で、これを約款に反映させる過渡期にこの質問・回答を行いました。人身傷害約款の不整備、もしくは改定中の損保に対し、会社の見解・方針を聞き出す画期的な活動だったと思います。

※特定非営利活動法人  消費者支援ネット北海道様から、引用・掲載のご許可を頂きました。  

 

会社名

賠償義務者への 訴訟が先行した場合

人身傷害保険の 支払が先行した場合

改訂時期

回答

回答

あいニッセ同和

H22.10.1

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 またしても学説の対立です。人身傷害を先に請求し、後に賠償金を受け取る場合の求償のルールについては「差額説」で決着しました。しかし、先に賠償金を取得した後から人身傷害を請求した場合、以下、どちらの基準かによって損得が生じてしまうのです。    自社基準の損害総額から矢口さんの過失分(人身傷害保険金)の算定をすることを「人傷基準差額説」と呼びます。相手との裁判で決まった賠償金総額を認め、その額から矢口さんの過失分(人身傷害保険金)を算定するのが「訴訟基準差額説」です。  

訴訟基準差額説

 両会社続きを読む »

 たくさんのアクセスありがとうございます。連休中も頑張って良かった。もっとも熱心にこのシリーズをフォローしているのは同業者さんか弁護士さんと思いますが・・。

 では、「差額説」に決着しても、なお残る問題について進めましょう。おなじみの実例を使います。(登場人物、組織名はもちろん架空です)  

人身傷害特約は自分の過失分も出る保険なのに何故?

   矢口さんは自動車で走行中、交差点で出合頭の衝突事故でケガをしました。腕を骨折し、半年後、後遺障害12級の認定を受けました。そして弁護士の後藤先生に交渉を依頼しました。20140507benngosi続きを読む »

【事案】

自動車運転中、信号無視の居眠り運転の対向車に出会い頭衝突をされた。

【問題点】

以前、すでに頸椎で14級9号の認定を受けていた。

治療先の選定で苦慮されておられた。

【立証のポイント】

まず、以前の事故の認定時の資料をとりつけ、分析。どのような症状で等級が認定されたのかを精査する。

その結果、以前の事故では「頸部痛」で認定がなされていたことをつきとめる。

そのため、今回は実際にある症状のうち、「神経症状(痺れ)」の症状で等級認定の可能性を探る方針を固める。MRI撮影とその分析、また主治医との面談で症状の推移について、認識を共有させておいた。

申請の結果、14級9号が認定される。痺れの症状に対しての等級であるので、頸椎捻挫ではあるが今回も自賠責から無事に入金された。

(平成26年10月)

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 続けて人身傷害補償条項も整備しました。支払いルールは以前と同じですが、求償のルールが加わりました。あまりにも難解で、弁護士先生ですら「なんのこっちゃ理解できない」と言っています。今日も飛ばしてOkです。  

第8条 支払保険金の計算

  (1) 第6条の規定(当社が別紙に定める算定基準)により決定される損害額+その他費用が支払い限度です。(かなり略しました) (2) 次の①から⑥までのいずれかに該当するもの(以下この(3)において、「回収金等」といいます。)がある場合において、回収金等の合計額が保険金請求権者の自己負担額(注2)を超過するときは、当会社は(1)に定める保険金の額からその超過額を差し引いて保険金を支払います。

 なお、賠償義務者があり、かつ、判決または裁判上の和解において、賠償義務者が負担すべき損害賠償額が算定基準と異なる基準により算出された場合であって、その基準が社会通念上妥当であると認められるときは、自己負担額(注2)の算定にあたっては、その基準により算出された額を損害額とします。

 ただし、訴訟費用、弁護士報酬、その他権利の保全または行使に必要な手続きをするために要した費用および遅延損害金は損害額に含みません。

(注2)自己負担額  損害額および前条の費用のうち実際に発生した額の合計額から(1)に定める保険金の額を差し引いた額をいいます。

 以下①~⑥は簡略に言い直します。

① 自賠責保険からの回収金 ② 加害者側に保険会社があり、その対人賠償保険金 ③ ...

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 「絶対説」vs「差額説」の争いの間、約款の改正が進みました。この「差額説」について、約款の条文から整理しておきましょう。

 昨日の説明で理解した方は今日の内容は飛ばして結構です。専門家を名乗る以上、一応、約款を分析したに過ぎません。説明する側として判例や約款を専門用語で解説することは簡単です。昨日のように誰もが理解できるように簡単に説明する方がはるかに難しいのです。

 それでは、損保ジャパンを例にします。  

「差額説」の根拠となった求償ルール

 

第23条 代位

1) 被保険者または保険金請求権者が他人に損害賠償の請求をすることができる場合には、当会社は、その損害に対して支払った保険金の額の限度内で、かつ、被保険者または保険金請求権者の権利を害さない範囲内で、被保険者または保険金請求権者がその者に対して有する権利を取得します。  

  「被保険者の権利を害さない範囲内で」とは、矢口さんが損害の全額を確保できるよう、加護火災が既に支払った保険金返還の限度を明示しています。東海も当時の約款、一般条項 第6節4 条「代位」に同じく規定していました。各社、求償に関して類似の一般条項があり、これが「差額説」が勝った根拠になったのです。

 元々、この求償ルールは自動車保険の車両保険なども含めた、全般に適用する一般条項「代位」に規定していました。人身傷害の求償ルールとして、さらに約款改定を進めました。  

「差額説」に適応させるべく、より整備された求償ルール

 

第28条 代位

(1)損害が生じたことにより被保険者または保険金請求権者が被保険者債権(注)を取得した場合において、当会社がその損害に対して保険金を支払ったときは、その被保険者債権(注)は当社に移転します。ただし、移転するのはのは次の①または②のいずれかの額を限度とします。

①  当会社が損害の額の全額を保険金として支払った場合

 被保険者等債権(注)の全額

②  ①以外の場

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 さて、「自身の過失分まで全額補償されるのが人身傷害特約ではないか!」と訴えた矢口さん、加護火災と法廷で争いました。前日に続き「差額説」を説明しましょう。(前日の「絶対説」と連続で読まないとわからないですよ)  

保険会社 加護 「約款に書いてある通り、人身傷害特約の保険金は相手から受け取る賠償金を差し引くものですから、先に支払った保険金は全額返してもらいます!」

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 いよいよ、人身傷害特約をめぐる争いの世界に突入です。覚悟してついて来て下さい。

   交通事故でけがをした場合、事故相手(相手保険会社)だけではなく、自身も人身傷害特約に加入していれば、双方に請求することが可能です。  まず、被害者が先に自らが加入している保険会社(以後、人傷社とします)に人身傷害特約を請求・取得し、その後に裁判等で賠償金を取った場合を想定して下さい。その賠償金は加害者が任意保険に入っていればその保険会社(以後、賠償社とします)が支払うことになります。この場合、先に人身傷害を支払った人傷社がその賠償金からすでに払った人身傷害保険金をどれだけ求償できるのか?を争った裁判です。

 人傷社は「既に支払った全額を返して!」と「絶対説」を主張し、被害者は「過失関係なく全額補償するのが人身傷害特約でしょ?」と主張しました。そして、裁判の結果、「被害者の賠償金全額を超えない範囲で求償しなさい」と、人傷社の全額求償を否定しました。これが「差額説」です。

 これから続けます人身傷害約款の問題点に触れる前に、この「絶対説」「差額説」の理解は避けて通れません。難しい話なので裁判の判旨を読んでも弁護士しか理解できないでしょう。今日・明日は人身傷害の「絶対説」vs「差額説」を世界一易しく解説します。これは昨年の「弁護士研修」の講義の内容からです。  

「絶対説」では全額補償とならない?

   矢口さんは自動車で走行中、交差点で出合頭の衝突事故でケガをしました。腕を骨折し、半年後、後遺障害12級の認定を受けました。過失割合については相手と事故状況が食い違い、争っています。治療費は相手のTUG損保(賠償社)から支払われていましたが、後遺障害の話となると険悪となってしまい、話し合いが進みません。20140507 そこで矢口さんが加入している加護火災(人傷社)の人身傷害特約から、先に保険金500万円を受け取りました。

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 支払い基準は約款の『第〇条 損害額の決定』の条項を確認します。ここに払うべき保険金の計算根拠を示してあります。具体的な計算式は別条項の『支払保険金の計算』と『別紙 算定表』『別表』に書かれています。この計算式で計算される金額は、概ね対人賠償の保険会社基準と同程度の金額になります。この算定金額が裁判基準に比べ、あまりにも低いのが問題なのです。何故、低くなってしまうのか? 理由を以下、計算方式から説明します。  

1、治療費や医療関係の実費は実際にかかった費用となります。

2、同じく休業損害も実費です。サラリーマンであれば源泉徴収票の数字をそのまま採用します。しかし、自営業の方の算定では実収入の認定額が問題となります。また、双方、休業の対象日の決定も約款上、保険会社が決めることになります。

3、慰謝料は任意保険基準でぴったり金額が決まっています。

4、逸失利益、介護料については計算式が示してあるものの、根拠となる年収額や労働能力喪失率と喪失年数は保険会社が決めます。ここで保険会社の担当者の判断や会社の運用基準が関与します。結果として、保険会社の都合でいかようにでも計算できることになります。  

 つまり、保険会社の基準が裁判等で決まった数字と比べて著しく低くなる理由は、上記2~4の計算上、保険会社が根拠となる数字を決めるからです。それが被害者の被害の実態に即していないことが多く、特に慰謝料は金額が約款に明記されており、見ての通り一律に低いのです。  

books5 例として、後遺障害慰謝料:14級は・・・

 赤い本(≒裁判基準の相場)⇒ 110万円 に対し、

 人身傷害特約 ⇒ 50万円 (損J)  損Jに限らず、各社、ほぼ半額以下です。 続きを読む »

 さて、人身傷害特約の約款改定も触れないわけにはいきません。東京海上の発売から16年、もはや個人契約自動車保険には80%以上付帯されています。発売当初、「夢の実額補償」「過失があっても全額補償」と謳われた保険でした。

   特約について詳しくは ⇒ 人身傷害特約のおさらい

   しかし、実額補償と言っても日本では保険会社の計算する賠償金と裁判の相場ではものすごい開きがあったので、様々な矛盾、問題が噴出しました。

 その一つは、  

「人身傷害はあらかじめ保険会社が支払い基準を定めた傷害保険である」  sanmaつまり保険定食?

 これに対して、「人身傷害特約に裁判基準の賠償金を請求できないか?」

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 それでは、無保険車傷害特約の支払い基準が、人身傷害特約のように「保険会社の基準が絶対!」とせず、裁判の判決・和解の額を認める余地があるのか、つまり元に戻ったのかを確認しましょう。(わかり易くするため、加筆、修正、省略を加えています)  

無保険車傷害特約

第8条(損害額の決定)

(1)損害額は、被保険者が第2章(保険金を支払う場合)(1)のいずれかに該当した場合の、次の区分(①~③)ごとの、それぞれ普通保険約款別表3に定める損害額算定基準に従い算出した金額と自賠責保険等によって支払われる金額(注1)のいずれか高い金額の合計額とします。

① 傷害

・・治療が必要と認められる状態であること。

② 後遺障害

・・後遺障害が生じたこと。ただし、同一事故により被保険者が死亡した場合を除きます。

③ 死亡

・・死亡したこと。

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c_y_164  多くの方は「無保険車傷害特約の約款が独立した?、だから何?」と思うでしょう。しかし、相談会にやってくる被害者さんで、「相手が任意保険に加入していないので困った・・」は決して少なくない相談なのです。これは私たちのような被害者救済を生業とするものとって座視できない問題なのです。  

<無保険車傷害特約をおさらい> 

 保険に入っていない、保険が足りない、支払い能力のない加害者やひき逃げ等で相手が不明の場合、自ら加入の保険が代わりに支払います。契約自動車に乗っているとき、歩行中や自転車、他の車(任意保険に入っていない)に搭乗中でも適用されます。  契約本人はもちろん同居の親族全員が対象となります。契約自動車に搭乗中の事故であれば他人もOKです。  死亡、後遺障害の場合に限定されます。実額を補償をしますが、限度額は会社によって最高2億円、もしくは無制限です。  

c_y_1続きを読む »

 損保ジャパン自動車保険、平成26年7月改訂で「無保険車傷害特約」が人身傷害特約の約款から離脱しました。

 長らく対人賠償特約に含まれていた(つまり自動担保)「無保険車傷害特約」が、対人賠償の約款から切り離され、人身傷害特約に吸収されたのは2年前のことでした。しかし以前の記事で指摘したように、損保側も自ら矛盾と混乱を理解したのでしょうか・・やはり支払い基準を無理やり人身傷害特約に合わせようと、同じ約款に組み込んだのは失敗だったと思います。

 結局、同特約は対人賠償の約款に戻らず、独立した条項になりました。迷走していた「無保険車傷害特約」はついに独立を果たしたのです。   yjimageU3E33L9F  こんな感慨にふけっている行政書士は日本に私だけかもしれません。興味ある方は「そして無保険車傷害特約は吸収された」を読んで下さい(長いシリーズですよ)

 まずは証券からそれぞれクリックしてご確認を、  

2年前の人身傷害特約への吸収

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 首都圏相談会を前身とした東京相談会、場所や顔ぶれを変えながら進化しています。会場も参加弁護士の事務所移転に伴い、来月から丸の内に移動です。皇居の目の前、だらしない格好で歩いていたら無礼打ちされそうです。なんといってもここは徳川家の地、江戸城の中です。

 交通至便ですので、都内はもちろん関東各県からも参加申し込みをお待ちしています。明日の有楽町会場は最後となります。

弁護士・行政書士・交通事故110番 丸の内合同交通事故無料相談会のお知らせ

日時

11/15、12/20 土曜日 午前10:00~午後17:00まで

会場

新国際ビル6階 会議室 〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-4-1

アクセス

地下鉄 有楽町駅D1出口から2分 地下鉄 日比谷駅B4出口から4分 JR有楽町国際フォーラム口から4分

 

2014101811320000続きを読む »

2014101017220001

 実績ページは大変好評をいただいております。それは依頼者さんが依頼前に自身と同じケガを探して熟読いただいていることから実感しています。

 被害者さんに限らず調べごとをする場合、今やホームページからの情報が第一であることは異論ないと思います。10年前は交通事故外傷、後遺障害に関するホームページは「交通事故110番」を筆頭に数件でした。しかし今やどこを検索しても後遺障害の専門家だらけ、弁護士、行政書士、整骨院まで・・400を超えています。もはや交通事故分野は一市場と化しています。そのような中、今更、医学書を写したコンテンツを載せて専門家ぶっても被害者の心には届かないと思っています。学術的な知識・理論ではなく、いかに立証に成功したのか?、実例から示していきたいと考えました。具体的なノウハウはもちろん、現場の熱気・息遣いを感じる実績ページの充実と継続を目指したのはそのような理由からです。

 もちろん、宣伝効果を第一に期待したものですが、依頼がなくとも多くの被害者さんの参考になっていることは喜ばしいことです。また、多くの弁護士・行政書士さん等、同業者さんにも影響を与えていることも光栄に受け取っています。交通事故で有名な弁護士事務所・行政書士事務所の本棚に拙書が並び、「ホームページを観ているよ」と言われることが多くなりました。

 継続は力なり。実績の積み重ねこそが交通事故業務の力量を示すバロメーターと思っています。  

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