16条請求とは、自賠法16条の定めによった保険請求の方法のことで、一般には「被害者請求」と呼ばれています。交通事故で後遺障害が残るようなケガの場合、被害者にとって検討すべき手続きと思います。この場合の「被害者請求」を正確に言いますと、受傷から症状固定まで、相手保険会社に治療費の病院への直接支払いをお願いして、後遺障害の申請から被害者請求に切り替える手法を指します。一般的には、被害者が弁護士へ委任することは少なく、解決まですべて相手保険会社に任せることが大多数ですから、「事前認定」が多くを占めています。
20年前に比べると、交通事故に力を入れている弁護士なら、普通に「被害者請求」を選択するようになってきました。一方、受任しながら「事前認定」に任せている弁護士も少なからず存在しています。そこで、かつての記事を加筆修正して再UPしたいと思います。 これまで、何度も双方のメリット・デメリットを語ってきました。 👉 事前認定vs被害者請求 最終決着します! この記事を読んでいただければ、双方のメリット、デメリットがご理解いただけると思います。被害者の立場とすれば、できれば16条請求が望ましいはずです。そこで被害者請求を選びますが、楽なケースとやたら面倒なケースに分かれます。 治療費などを加害者側保険会社が「自由診療で一括払い」(病院に直接、自由診療の治療費で払ってくれる)してくれれば、その損保会社の担当者は自賠責に求償する必要から診断書・診療報酬明細書を病院から取得、所持しています。被害者は、それら申請に必要な診断書類および事故証明書のコピーをもらうことによって、ほぼ書類は揃います。画像の貸出しは微妙で、拒否されることが多いようです。 一方、健保、労災が絡む件、一括払いを拒否された件は絶望的に面倒な手続きを強いられます。その労苦とは・・・ 1、健保、労災で治療費を確保した場合、あらためて病院に通院期間の自賠責用診断書・診療報酬明細書をお願いしなければなりません。
診療報酬明細書については、病院はすでに健保・労災に発行しており、二重発行はできないと拒むケースが多くなります。診療報酬明細書とは病院にとって治療費の請求書なので、すでに健保・労災に提出して費用が精算されていれば、再び発行はできない・・・これは筋が通っています。経験上、それでも、文章代さえ払えば発行してくれる病院もあります。また、診断書を有償で請求する際、「診療報酬明細書のコピーを付けて下さい」とお願いしたところ、OKの病院もありました。
この書類の流れや請求パターンを熟知している法律家は少なく、病院の医事課の事務員や健保・労災の担当者ですら、自分の所管する事務以外は把握していません。損保の人身担当者が一番詳しいと思います。 2、診療報酬明細書が入手できねば、健保・労災に診療報酬明細書の開示請求を行う必要が生じます。開示請求には開示申請、開示決定、謄写請求など、数段階の手続きが必要です。印紙代は300円~ですが、手間と何より時間がかかります。
そもそも、病院による診療報酬明細書は月毎に翌月発行ですから、治療終了の1カ月後まで待ってから開示請求することになります。さらに開示請求後、労基は開示の許可を病院ごとに求めます。開示決定までに、さらに1~2カ月月待たされることが普通です。病院の回答が遅ければ、その分延びます。 👉 社会保険の開示請求について 👉 行政文章の開示請求 ~ 労災の診療報酬明細書の場合 Ⅰ 病院によっては、健保・労災で治療した患者に対して、1の自賠責用の診断書の記載すら拒みます。その場合、病院の事務方、医師へ説得が必要です。そして、記載が異常に遅い医師も存在します。常時、診断書を2カ月位ため込んでいたり、記載まで半年待たされることもあります。 3、画像の収集。病院によっては極度に画像の貸し出しを嫌います。また、ディスクなら500円~2000円で済みますが、なかにはXPフィルム(レントゲン)のコピーを1枚1000円で売る病院も存在します。最近も骨折が多かった被害者さんは220枚も買わされるはめになり、22万円+消費税を支払いました。CDに焼ける設備がありながら、院内のルールだそうです。こうなると病院の悪意を感じます(この院は数年前、ようやくディスク化OKとなりました)。 👉 画像代の価格を医師会が決めてくれないものか・・ 続きを読む »