【事案】

自転車走行中、前方より自動車の衝突を受け、転倒。直後、救急搬送され、前頭部脳挫傷、外傷性硬膜下血腫、くも膜下血腫の診断となった。病院では、脳外傷後のせん妄の影響で、医師や周囲に対して暴言や問題行動が続き、追い出されるように3日で退院させられた。その後、転院先でも易怒性や病識欠如から、十分な検査はもちろん、高次脳機能障害の診断を得ないまま、保険会社に促されるまま症状固定を迎えてしまった。認定等級は神経症状12級13号、嗅覚障害12級相当。結果、併合等級11級の評価となった。

【問題点】

自賠責調査事務所は高次脳機能障害について医療照会を行ったが、主治医は「すべての項目で異常なし」と回答してしまった。また、家族へも「日常生活状況報告書」を送ったが、これも本人の病識欠如により未回答。なんとか嗅覚障害のみ追加検査したに過ぎなかった。結局、審査期間は1年を要したが高次脳機能障害は見逃された。

このまま、この事故は終わるかに見えた。しかし、嗅覚に並んで味覚喪失を自覚していたご本人から電話で「味覚がない」旨の相談を受けた。ある種の予感を感じ、相談会にお呼びした。観察したところ、やはり高次脳機能障害を予断、さらに奥様をお呼びして記銘力の低下と性格変化を確信した。相手保険会社との折衝、11級の後遺障害保険金の先行請求を連携弁護士に任せて生活の維持を図り、長く険しい立証作業へ突入した。

【立証ポイント】

主治医と面談、事情を説明して再評価への理解を得た。まずは相談・受任のきっかけである味覚検査を実施。結果は訴え通りの完全脱失(全喪失)。

高次脳機能障害は7級4号を改めて立証、味覚障害12級相当を新たに認定させて併合6級となった。当然の結果であるが、当然とならないことが多発するのが交通事故・後遺障害の世界。間違った等級の変更に時間で2年余り、検査通院およそ15回。その内、私との病院同行は8回にも及んだのです。

※ 併合のため分離しています

(平成27年3月)