大谷選手、50-50達成祈願!

 連日、日本人MLB選手(特に大谷翔平選手の活躍はすさまじい)が大活躍していますね。その中で、ダルビッシュ有選手や前田健太選手、大谷翔平選手など数々の名投手が受けたとされるトミージョン手術について記載してみたいと思います。おそらく交通事故でこの術式を受ける方はいらっしゃらないと思いますが(笑)

 トミージョン手術とは、損傷した腱や靭帯を一旦切除し、健側や患側の長掌筋腱や膝蓋腱、下腿・臀部から正常な腱の一部を採取し、移植することで新たに靭帯を作るというものです。移植という言葉が合っているのかは分かりませんが、上腕骨と尺骨に穴をあけ、その穴に介して両端に圧をかけた状態で固定することによって、損傷した靭帯等の代わりになるようします。しかし、定着するまで、ある程度の時間がかかることから、長期的なリハビリをしなければなりません。

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 橈骨・尺骨 骨幹部骨折 (とうこつ・しゃくこつ こつかんぶこっせつ)

(1)病態

 上腕骨は、1本の長管骨ですが、前腕骨は橈骨と尺骨の2本で構成されています。親指側にある骨を橈骨、小指側にある骨を尺骨と記憶しておくと便利です。交通事故では、直接、前腕を強打したり、飛ばされたりして手を地面についた際、前腕に捻れの力が加わり、橈骨および尺骨が骨折します。

 捻れにより橈・尺骨が骨折を起こしたときは、骨折部位は異なりますが、外力により両骨が骨折を起こしたときは、両骨の骨折部位は同一部位となる傾向があります。下の写真は、橈・尺骨の両方が骨折しています。激痛と腫脹があり、前腕の中央部は大きく変形し、ブラブラになってしまっている状態です。

 単純XP撮影で容易に診断が可能で、両骨の骨折では、かなり強い衝撃が外力として強制されており、大きな転位が認められるものがほとんどです。   (2)治療

 昭和の時代、骨折の70~75%は徒手整復+ギプス固定による治療でした。尺骨や橈骨の骨幹部は、両端に比較すると最近では、AOプレートとスクリューによる固定が常識とされており、偽関節化が少なくなっています。AOプレートとスクリューによる固定が常識とされており、その進歩と執刀医の技術の向上から、偽関節化が少なくなっています。   (3)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 橈骨頭・頚部骨折 (とうこっとう・けいぶこっせつ)   (1)病態

 肘関節周囲骨折では最も多い骨折であり、交通事故では、腕を真っ直ぐに伸ばしてバイクを運転中の事故受傷で発生しています。

 この部位だけの骨折は稀で、多くで上腕骨内上顆骨折、尺骨近位端骨折、尺側側副靭帯損傷を合併します。 成人では骨頭骨折となり、小児では頚部骨折となることを特徴としています。

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 肘内側側副靱帯損傷 (ひじないそくそくふくじんたいそんしょう)   (1)病態

 肘関節は、上腕と前腕を連結しており、上腕骨、橈骨、尺骨の3本の骨で構成されています。前腕部の内側、小指側に尺骨、外側、親指側に位置するのが橈骨です。肘関節の両側には、肘関節が横方向に曲がらないように制御している側副靭帯があります。内側側副靱帯は、上腕骨と前腕の内側にある尺骨を、外側側副靱帯は、上腕骨と前腕の外側にある橈骨をそれぞれ連結しています。

 交通事故では、自転車、バイクからの転落で手をついたときの衝撃が肘に作用して、内側側副靱帯を損傷しており、肘関節脱臼に伴うものと単独損傷の2種類があります。内側側副靭帯損傷の症状は、受傷直後から肘の激痛と腫れが出現し、激痛のため、肘関節を動かすことができなくなります。

 上腕骨内側上顆の下端に圧痛が認められ、外反位で疼痛が増強し、不安定性が認められます。XPでは判別が難しく、MRI、エコー検査で確定診断がなされています。   (2)治療

 治療は、2、3週間ギプス固定が行われ、その後は、ギプスをカットし、リハビリ運動が始まります。外側側副靭帯損傷は、肘関節の脱臼に伴うものがほとんどですが、受傷後、時間が経過してから、肘の引っかかり感、外れそうになる感じ等が問題となります。

 後外側回旋不安定テストを行い、肘が外れそうな感じ、クリック音を調べます。小児の上腕骨外側上顆剥離骨折を伴う外側側副靭帯損傷では、骨片の整復固定術が必要です。

 陳旧性の外側側副靭帯損傷に対しては、靭帯再建術が実施されています。内側側副靭帯損傷は、野球の投球動作の反復によっても生じます。ボールを投げるとき、特に加速をつけるときは、肘の内側を伸ばす不自然な動作を行います。それに伴って、内側々副靱帯は引き伸ばされることになります。投球動作の反復により、内側々副靱帯は引き伸ばされ続け、肘に対する負担が大きくなり、側副靱帯が部分断裂するのです。ピッチャーにとっての職業病と言えます。   ◆ トミー・ジョン手術とは?

 大谷選手やダルビッシュ選手が実施したことで、日本でも有名な術式になっています。1974年、フランク・ジョーブ博士が、ドジャースのピッチャー、トミー・ジョン選手の内側側副靱帯の断裂に対して行った術式が、名前の由来です。この手術後、トミー・ジョン選手は、170勝し、年間20勝以上を2回、果たしました。現在、TJ術は、アメリカスポーツ医学研究所のジェームズ・アンドリュース医師が第一人者です。TJ術とは、部分断裂した内側側副靱帯を摘出し、長掌筋腱を移植する術式です。

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 変形性肘関節症 (へんけいせいちゅうかんせつしょう)   (1)病態

 上肢には、肩関節、肘関節、手関節の3大関節があり、どの関節でも、交通事故による脱臼や骨折を原因として、二次性の変形性関節症が予想されます。

 肘関節は、上腕骨、橈骨、尺骨の3つの骨で構成されているのですが、見た目の印象では、上腕骨と尺骨で肘関節が形成されています。医学的には、上腕骨遠位と橈骨頭との腕橈関節、上腕骨遠位と尺骨との腕尺関節、橈骨と尺骨の近位橈尺関節で3つの関節を形成していると説明されていますが、橈骨頭は寄り添っているだけです。

 肘関節の外傷では、肘関節脱臼、上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆骨折、橈骨頚部骨折、肘頭骨折などを原因として、変形性肘関節症に発展することがあります。肘関節の変形が進行するにしたがって、肘部に痛みを発症し、また関節の動きが制限され、肘の曲げ伸ばしが困難となり、食事、洗顔、洗髪、衣服を着る、お尻を拭くなど、日常生活で大きな支障が発生します。変形に伴って、肘の内側部で尺骨神経が圧迫され、手の力が入りにくくなったり、小指と薬指にしびれなどが生じたりする尺骨神経麻痺も十分に予想されます。

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 尺骨鉤状突起骨折(しゃくこつこうじょうとっきこっせつ)

(1)病態

 上腕骨遠位端部を尺骨が受け入れる形状で、肘関節は構成されています。交通事故では、転倒した時に手をついて、尺骨の鉤状突起骨折を発症することが多いのです。尺骨鉤状突起骨折は、主として肘の脱臼に合併、若しくは肘関節を脱臼するほどの外力を受けた際に上腕骨の関節面=上腕骨滑車と尺骨の鉤状突起が衝突して骨折したものです。   Grade Ⅰ  鉤状突起先端部の剥離骨折   Grade Ⅱ 25%以上50%以下、骨片に関節包と上腕筋の一部が剥がれたもの   続きを読む »

 肘頭骨折(ちゅうとうこっせつ)   (1)病態

 転倒の際、肘を路面に強打した時に頻発します。痛みや腫れが生じ、肘の可動域制限と異常可動がみられ、単純XP撮影で骨折が認められます。

   肘への衝撃により骨折が生じますが、肘頭骨折とは、橈骨ではなく、尺骨の近位端部の骨折です。また、肘頭は、上腕三頭筋により上方へ引っ張られているので、骨折により転位が生じます。

   (2)治療    骨折した肘頭の骨の欠片が多数のときは、AOプレートを用いて固定されています。転位の少ないものは肘関節を90°曲げた状態で4週間程度のギプス固定が行われ、転位の大きなもの、粉砕骨折では、手術が適用になります。

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 肘関節脱臼 (ちゅうかんせつだっきゅう)

  (1)病態

 外傷性の脱臼では肩関節に次いで発症します。交通事故では、自転車やバイクを運転中、手をつくように転倒した際に発症しています。

 大部分は肘の後ろに抜ける後方脱臼です。後方脱臼では尺骨が上腕骨の後方に脱臼し、強い痛み、肘の曲げ伸ばしができなくなります。XPでチェックできるのですが、外見からでも尺骨が後方に飛び出していることが確認できます。

 前方脱臼は肘を曲げた状態で肘をぶつけたときなどに発症することが多く、上腕骨の先端が飛び出し、肘頭の骨折を合併することがほとんどです。脱臼に骨折を合併するときは、動揺関節や可動域制限などの後遺障害を残します。

  (2)治療

 治療は、全身麻酔下に徒手整復、肘関節を90°に曲げた状態で3週間程度のギプス固定がなされ、このレベルでは、後遺障害を残すことなく改善が得られます。

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 テニス肘とは通称で、正確な診断名は、上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)か、上腕骨内側上顆炎 (じょうわんこつないそくじょうかえん)のどちらかか、両方です。

  (1)病態

 本来のテニス肘には、バックハンドストロークで肘の外側を傷める外側上顆炎と、フォアハンドストロークで肘の内側を傷める内側上顆炎の2種類があります。いずれも、ボールがラケットに当たる衝撃が、手首を動かす筋肉の肘付着部に繰り返し加わることによって、微小断裂や損傷をきたし、炎症を発生するものです。

 前者では手首を背屈する筋肉がついている上腕骨外側上顆、肘の外側のでっぱりに、後者では手首を掌屈する筋肉の付着部、上腕骨内側上顆に発生するため、それぞれ上腕骨外側上顆炎、上腕骨内側上顆炎ともいわれます。

    テニス以外でも、包丁を握る調理師や手首を酷使する仕事で発症します。長時間のPC操作の繰り返しによっても、テニス肘は発症します。手首と肘の力を繰り返し酷使することで、筋や腱の変性や骨膜の炎症が引き起こされるのです。当然ながら、変性は、加齢によっても起こります。

 症状は、手首を曲げる、回内・外の動作で、肘に痛みが走ります。そして、雑巾を絞る、ドアノブを回す、ペットボトルのキャップを回すなどが、痛みでできなくなります。抵抗を加えた状態で手首を背屈させるトムセンテスト、肘と手指を伸ばし、中指を押さえる中指伸展テスト、肘を伸ばし、椅子を持ち上げるチェアーテストといった検査で、上腕骨外側・内側上顆部に痛みが誘発されます。炎症所見は、MRI、エコー検査で確認することができます。

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肘から腕、肘関節と手関節、橈骨と尺骨の仕組みを理解しましょう。

(1)肘関節・手関節の仕組み    肘部では、上腕骨の遠位端部が尺骨に受け止められるように肘関節を形成しており、橈骨は、イメージとして尺骨に寄り添っているだけです。ところが、手部となると、橈骨の遠位端部が、舟状骨、月状骨、三角骨と手関節を形成しており、尺骨は、それに寄り添っているだけなのです。

 肘関節では橈骨が、手関節では尺骨が、かなり不安定な構造となっています。肘は、肩関節で方向づけられた手が、人体周辺のあらゆる空間で機能できるような働き、つまり、肘関節は、上肢の長さを調節することで、手を最適に配置する役割を果たしているのです。前腕部には、橈骨と尺骨という長管骨が2本あり、手のひらを上に向けた状態では、前腕の親指側(外側)に橈骨、小指側(内側)に尺骨が位置しています。

 手のひらの回内・回外運動は、肘関節特有のものです。肘を曲げ、手のひらを上に向けた状態から下に向ける動作を回内、反対の動作を回外といいます。回内では、橈骨と尺骨が交差して×印を形成します。逆に回外で、手のひらを上に向けると橈骨と尺骨は平行に並びます。

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(1)病態

 小児の上腕骨顆上骨折で、重大かつ深刻な合併症として発生しています。骨折に伴う腫脹により、動脈の血流障害を生じ、前腕屈筋や正中神経・尺骨神経麻痺などをきたす病態で、見逃すと、筋肉の変性や神経麻痺が残り、大きな後遺障害を残します。初期症状として有名な5つのPを注意深く観察しなければなりません。   ① Pain(疼痛)

② Pallor(蒼白)

③ Paresthesia(知覚障害)

④ Paralysis(運動麻痺)

⑤ Pulselessness(脈拍消失)    小児に多く発症します。上腕骨顆上骨折の手術後、お子さんが骨折部のひどい痛みを訴え、手指が蒼白で、手首で脈がとれないときは、自宅に戻っていても、治療先に急がなければなりません。元の治療先が頼りなければ、近隣の医大系の総合病院に駆け込むのです。動脈閉鎖後、6~8時間でフォルクマン拘縮が生じるので、この時間内に対処しないと、取り返しのつかないことになります。    (2)治療

 治療先は、骨折の整復やギプスで圧迫などの阻血の要因を除去します。これでも、改善が得られないときは、緊急的に筋膜切開を行い、内圧を減少させます。

 積極的な治療は早いに越したことはありません。「様子を見ましょう」と手をこまねいていると、拘縮は治らなくなります。町の整形外科では、この症例に対処できません。一早く専門医を受診しなければなりません。

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 上腕骨遠位端骨折 (じょうわんこつえんいたんこっせつ)    上腕骨の遠位端部は、前腕の尺骨と橈骨とで肘関節を形成しています。    より細かく診断名をつけると、上腕骨顆上骨折、上腕骨外顆骨折と呼ばれることもあります。     (1)病態と治療    遠位端骨折は、骨折部位によって診断名がより細かく付けられます。主要2つを説明します。   続きを読む »

 上腕骨骨幹部骨折 (じょうわんこつこつかんぶこっせつ)    上腕部、長管骨の中央部付近の骨折を骨幹部骨折といいます。簡単に言いますと、二の腕の骨折です。  

(1)病態

 交通事故では、バイクの転倒で手や肘をついたとき、転落などで直接に上腕の中央部に外力が加わって発生しています。このような直達外力で骨折したときは、横骨折が多く、外力が大きいと粉砕骨折になります。手をついて倒れたときは、螺旋骨折や斜骨折となります。肩や肘関節に遠く、一般的に関節の機能障害を伴わないことが大半ですが、上腕骨骨幹部骨折では、橈骨神経麻痺を合併することが高頻度であり、見落とされやすい障害と言えます。

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 上腕骨近位端骨折 (じょうわんこつきんいたんこっせつ)

(1)病態

 上腕とは、肩関節からぶら下がる二の腕のことで、上腕骨近位端とは、肩関節近くの部位です。上腕骨近位端骨折は、骨折の部位と骨片の数で、重傷度や予後、治療法が決まります。下記イラストは、骨折の部位と骨片の数による分類を示しています。臨床上、この骨折は、骨頭、大結節、小結節、骨幹部の4つに区分されています。   続きを読む »

 むち打ち、14級9号「局部に神経症状を残すもの」の認定が毎度のことですが、これは、広く人体のすべての部位にも当てはまります。自賠責保険は”症状の一貫性”などから、障害を認めることがあります。ただし、今回の相手は自賠責ではなく、個人賠償責任保険です。自賠責同様の検討を促すことになります。

 作業は、検査を重ね、しっかり医証を集め、後遺障害診断書の記載には医師面談を行い、弁護士に託して交渉・・毎度のルーチンワークをするだけです。問題は兵庫県伊丹市ということだけ。新幹線代は弁護士費用特約から捻出して頂きました。

 全くもって、事故の解決には保険会社の存在が欠かせません。今回も相手と自身加入、双方の保険会社に助けられたと思います。   伊丹まで出張となりました

個人賠償 14級9号:第3指関節打撲(10代男性・兵庫県)

【事案】

自転車で走行中、対抗自転車とすれ違いに接触、転倒したもの。以来、左中指の痛みと上肢のしびれが続いた。

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 スキー・スノーボードなどスポーツ中の事故の受任も多いものです。本件は毎度のTFCC損傷の立証がミッションです。交通事故と違い、相手に自賠責保険がなくとも、何等かの保険があれば、回収の目途が立ちます。

 最大の障壁は、主治医が骨折の整復までが仕事と、TFCC損傷は自分の守備範囲外の立場からMRI検査を拒否・・勝手に診断名を訴える患者にヘソを曲げたのか、患者との関係も上手くいかなかったことです(これは、よくあることです)。それでも、弊所は普段から医師の無理解には慣れています。平素から、やっかいな交通事故で鍛えられていますので。

どんな事故でも秋葉に相談を!  

個人賠償 12級6号:TFCC損傷(50代女性・埼玉県)

【事案】

スノーボード中、後方より衝突を受けて転倒、手首を骨折。診断名は左橈骨遠位端骨折、処置はプレート固定術とした。

加害者は外国人であったが、スキー・スノーボード保険(個人賠償責任保険が付保)の加入あり、保険会社への請求の目途が立った。

その後、骨癒合は進み、可動域制限などの障害を残さず治癒と思われたが、手首の小指側にグラグラ感が残った。

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 次に、指を曲げることができなくなった、または伸びたまま硬直した状態、伸展拘縮も検討します。曲がらなくなった理由は一つではありませんが、屈筋腱損傷を前提に考えます。これも基本知識から。

 

(2)屈筋腱損傷の基礎解説 手の掌側にある屈筋腱が断裂すると、筋が収縮しても、その力が骨に伝達されないので、手指を曲げることができなくなります。切創や挫創による開放性損傷、創のない閉鎖性損傷、皮下断裂がありますが、圧倒的に前者です。屈筋腱の損傷では、同時に神経の断裂を伴うことが高頻度で、そんなときは、屈筋腱と神経の修復を同時に行うことになり、専門医が登場する領域です。

手指の屈筋腱は、親指は1つですが、親指以外では、深指屈筋腱と浅指屈筋腱の2つです。親指以外で、両方が断裂すると、手指が伸びた状態となり、まったく曲げることができなくなります。

深指屈筋腱のみが断裂したときは、DIP関節だけが伸びた状態となり、曲げることができません。しかし、PIP関節は、曲げることができるのです。

屈筋腱損傷の治療は、手の外傷の治療のなかで最も難しいものの1つで、腱縫合術が必要です。年齢、受傷様式、受傷から手術までの期間、オペの技術、オペ後の後療法、リハビリなどにより治療成績が左右されます。治療が難しい理由には、再断裂と癒着の2つの問題があります。オペでは、正確かつ丁寧な技術が求められ、オペ後の後療法も非常に重要となります。

(3)DIP関節の伸展拘縮と屈曲拘縮、どちらかで14級7号は認められるのか?

 労災の認定基準では、以下の通りです。

 14級7号:1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの

 MCP(指の根元)やPIP(第2関節)は1/2までしか曲がらなくなった場合で用廃と、労災・自賠責共に基準とされています。

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 多くの指の認定例を誇る秋葉事務所でも、まだ未経験の部位・症状があります。今後、それらの受任と実績を待つとして、自賠責・労災の認定基準を明確に把握しきれないケースについて、最新の認例実績をもとに解明していきたいと思います。

 指のケガを検索、秋葉事務所に引っかかった方は、どしどしご相談下さい。初の相談例であっても、指にまつわる経験則は抜きんでていると思いますので。     【1】 DIP関節における機能障害の等級認定は?

 DIP関節は指の一番先の関節です。根本の関節(MP)、中間の第二関節(PIP)、親指の場合は(IP)・・これらの機能障害、欠損の認定基準は上の一覧表を見れば、容易に判断できます。しかし、細かい症状で悩むことがあります。最初に取り上げるのは、第1関節(DIP)の障害です。機能障害としての認定基準、例えば可動域制限などは明記なく、14級7号が唯一明記されています。   「14級7号:1手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの」    このような障害の代表は、いわゆる「突き指」で第一関節が曲がったまま固まった状態でしょうか。多くは、伸筋腱か屈筋腱の損傷を原因に、そのまま長期間装具固定した、あるいは放置した結果、関節が拘縮してしまった状態です。こうなると、手術での改善も時すでに遅しに感じます。

 この後遺障害で秋葉が感じる謎は、「屈伸できなない=硬直」は当然として、では、「伸ばすことはできるが曲げることはできない(伸びたまま)=伸展拘縮」、逆に「曲げることはできるが、伸ばすことはできない(曲がったまま)=屈曲拘縮」、これらも14級7号に該当するのか?です。 まずは、基礎解説から(交通事故110番より)。   (1)伸筋腱損傷の基礎解説   指を上から見たときの解剖図

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 秋葉事務所がもし「他事務所との違いは何ですか?」と聞かれたら、こう答えるでしょう。  

 「画像を観てから提出しています」

   後遺障害の仕事は、単に診断書などの書類を集めるだけではありません。等級認定を決めるのは画像です。審査側の自賠責調査事務所は、とりわけ受傷時と症状固定時の骨や靭帯の状態に注視しています。私共、申請側もそれに倣っています。まさに、本件は癒合状態が等級認定の決め手となりました。

 秋葉事務所では、これまで医師が見落とした画像所見を指摘、診断書に追記頂くことが何度もありました。これは、決して医師に勝るなどと自慢しているわけではありません。医師は限られた時間で患者に接し、治療上に影響のない骨片程度の確認の為に、画像を隅から隅まで観る時間などありません。何より、自賠責や労災の認定基準など守備範囲の外、あくまで治療に尽くすのが医師の役割だからです。その点、医師任せでは等級を取りこぼす危険性が潜んでいると言えます。

 また、画像を観ない、理屈ばかりで後遺障害等級の経験少ない事務所に任せてしまうと・・本件のようなケガでは、その障害は無かったことにされるかもしれません。   お手柄の金澤 「レントゲン再検査して良かった!」  

14級6号:第5指PIP関節脱臼骨折(30代女性・静岡県) 

【事案】

交差点にて横断道路を歩行中、前方不注意の右折車に衝突を受ける。転倒した際、小指を脱臼し負傷。事故から6ヵ月目、相手保険から打切り打診があった段階での相談となった。

【問題点】

受傷した小指は、可動域制限あるも、13級6号「1手のこ指の用を廃したもの」に届かない数値だった。残るは靭帯損傷か神経症状の残存か・・選択は厳しくなった。

【立証ポイント】

左小指の軟部組織状態を精査する為、急遽主治医にMRIの紹介状を貰うよう手配。MRI撮影後、本人から画像のコピーを速達で送って頂き確認。軟部組織に異常が無いと判断し、症状固定の日取りを調整した。

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 かなりレアな傷病名ながら、なぜか交通事故業界で有名なTFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷、毎年1~2件は受任しています。    最近の解説 👉 交通事故でTFCC損傷をした場合の後遺症・等級の獲得まで    損傷の状態・程度は様々ですが、手術適用は慎重な判断となります。とくに不全断裂や部分剥離の状態は、専門医は手術を見送る判断をします。逆に不慣れなドクターの執刀ですと、術後ほとんど改善しなかった・・これは珍しいことではありません。

 まして、現在のコロナ禍の中、手術やリハビリ通院の危険が加算します。そのような葛藤・迷いの中、手術を先送りした場合、どのようなデメリットが生じるのか? これが本件の病院同行の目的でした。

 本例は手関節の尺骨からTFCCがほぼ完全に剥離し、尺骨遠位が前後にグラグラ動いてしまう状態です。当然に手関節の安定性は低下、手首に力が入らず、時折痛みやしびれを伴います。今後の為に、剥離部分を縫合する手術が望まれます。専門医によると、このままでは尺骨と橈骨の離開が進むか、双方が手関節の可動時に回転してぶつかり、変形をきたす可能性があるそうです。やはり、本例は手術適用のケースだと思います。

 しかし、コロナ下、ご家族に基礎疾患者がおり、手術と予後の長期通院は反対なのです。そこで、先に述べた悪化を防ぐ上で、専用サポーターの登場です。  

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