20150108kai(脊髄損傷のMRI画像における高輝度所見)

脊椎に軸圧、屈曲、回旋、伸展、剪断、伸延などの強力な外力が加わり、脊髄の神経伝導路が遮断され、運動麻痺、知覚麻痺、自律神経障害、排尿排便機能障害を起こします。一口に脊髄損傷と言っても、タイプや症状の軽重は様々です。

まず、完全損傷と不完全損傷に分かれ、不完全損傷は4つの典型に分かれます。等級は表の通り1級~9級ですが、脊髄損傷の有無は不明瞭ながら、軽度の麻痺の場合は12級評価もあります。   完全損傷

脊髄が完全に脊椎や椎間板によって遮断されたり、脊髄そのものが引きちぎれるので、非可逆性で回復はしません。ほぼ、全身麻痺で寝たきり状態は必至です。環椎・軸椎部分の場合、呼吸困難で多くは死亡となります。

不完全損傷

① 前部脊髄損傷・・・運動麻痺はあるが、触覚、位置覚、振動覚は保ちます。 ② 中心性脊髄損傷・・・下肢より上肢の運動障害が強く、温覚と痛覚が麻痺、触覚は保ちます。 ③ 後部脊髄損傷・・・少数例。触覚、位置覚、振動覚は麻痺しますが、運動障害はありません。 ④ ブラウン・セカール型損傷・・・脊髄の片側損傷で、損傷側の運動麻痺と反対側の温覚・痛覚が麻痺。  

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 脊髄損傷は重傷です。相談数自体は少ないものですが、年に数件の受任があります。ここ半年の認定、3件を紹介します。それぞれ、テクニカルな作業、悪戦苦闘の記録をご覧下さい。

 重傷案件は当然ですが、おざなりな作業ですと大変な損失となります。それは金銭の損失であり、被害者の残りの人生がかかったものです。

20140626

別表Ⅰ 1級1号・加重障害:脊髄損傷(40代男性・埼玉県)

【事案】

後縦靱帯骨化症で頚椎を手術(椎弓形成術)後、リハビリを継続していた被害者が、車イスで道路を横断中、駐車場からバックしてきた自動車の衝突を受けて受傷した。回復期にあった上肢・下肢の機能障害が悪化し、起立・歩行は不能となり、日常生活の介助状態はより深刻となった。

【問題点】

既往症で既に車イス状態であり、上肢・下肢共に相当なしびれや機能障害があった為、本件事故での障害とは捉えられず、どの事務所でも断られていた。先に相談した仲間の行政書士もお手上げで、諦めて連携弁護士に投げつけた。もちろん、訴訟上でも困難であるが、あらゆる可能性を模索すべく、まず医療調査を開始した。

【立証ポイント】

新たな障害はあるのか・・・肩腱板損傷の可能性は?直腸・膀胱に障害が起きたか?視聴覚に問題はないか?、病院同行を重ね、医師を交え、検討を進めた。そして、ある光明を見出した。それは、後縦靱帯骨化症を手術した医師と本件事故の医師の診断・観察では、前後の症状が微妙に異なっていること。そこで、事故前後の医師、それぞれに後遺障害診断書、脊髄損傷に関する意見書等を記載頂いた。また、カルテを開示し、症状の変化を丹念に抜粋、症状の差を明らかにした。

結果、加重障害の判断を引き出す。現存障害(1級)4000万円-既往障害(2級)3000万円=1000万円として等級認定、保険金を受領した。その後の賠償交渉でも既往症との差額が1000万円を超えないと判断して、弁護士の交渉は終了、自賠責保険の加重ルールがすべてを解決した。 ...

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win  交通事故で腰椎や胸椎を圧迫骨折したという相談を過去に何度か受けたことがあります。交通事故による骨折の場合、MRI画像(特に受傷直後に撮影されたもの)で水分反応がでます。水分反応が強いという事は、その骨折は新鮮骨折といえます。 20110805MRI STIR確認 web続きを読む »

 今日は千葉県房総半島です。日差しは相変わらず真夏のそれ。しかし日陰の風は程よくさらっとしています。

2014090208370000内房の駅の多くは高架で線路をまたぎます 

 さて、本件ですが腰椎圧迫骨折の確認です。診断書に「圧迫骨折」と書かれていても、それが事故によるものではないことがあります。高齢者の場合、転んだだけで、もしくは自然に腰椎が圧潰していることがあります。事故による新鮮骨折か否か・・これはレントゲンよりMRIが頼りになります。ざっくり言って、T2強調で水分反応が強く出れば新鮮骨折ですが、弱ければ陳旧性(≒古傷)となります。 続きを読む »

 ある医師に対して質問・・    「医大ではドイツ語を勉強するのですか?」 → 「いや、とっくの昔から英語一辺倒。ただしカルテやクランケなどドイツ語は用語として残っている・・・」    医療用語は確かにドイツ語が多いのですが、インフォームド・コンセント(十分に納得して同意)など、英語が幅を利かせています。先日の研修から脊椎の読み方を復習しておきたいと思います。      体幹骨は椎骨の連結したもので脊椎 【Vertebra】 ”ヴァーテブラ” と呼ばれます。その脊椎も部位によって頚椎、胸椎、腰椎と分かれます。お尻に及ぶ仙椎は体幹骨から外れ、骨盤骨の一部を形成します。その呼び方、書き方も多くの医師は省略して英語の1文字(胸椎は2文字が多い)で表します。     頚椎 【Cervical】 C1~C7 

 ”サーヴィカル” Cに上から順番に数字がつき、7つまでありましす。C1は環椎、C2は軸椎と別称があります。   胸椎 【Thoracic】 Th1~Th12

 ”ソラシック” Th1は第一胸椎と呼び12個まであります。   腰椎 【Lumber】 L1~L5

 ”ランバー” L1からL5まで5つの椎骨。     ※ 仙骨は【Sacrum】”サクラム”で、骨盤、5つの骨の結合体ですが、腰椎からの連続で体幹骨扱いをする場合、S1、S2の二つを指すことが多くなります。   

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 脊髄シリーズ、今日で終了です。神経の後遺障害はとても深い領域です。私のわずかな経験では語り尽くすことはできません。より経験を積んで学習を深めていきたいと思います。    最後に画像以外での判定、診断について昨日の見学から報告です。この患者さんの症状は脊髄損傷を示していますが、画像所見では判然としません。既に受診した2~3名の医師も「う~ん・・・」状態でした。このような不確定な状態で漫然と治療を続けていても不安です。ついにその分野の第一人者たる専門医の診断を仰ぎました。   <検査と診断>    頚部神経症状か脊髄損傷か・・・上肢、下肢のしびれ、めまい、ふらつき、不眠等、神経症状の原因をまず判定しなければ治療方針も定まりません。    この専門医師はしばらく患者の話を黙って聞いています。そしていくつか質問を行い、以下の検査、数項目をはじめました。    1、首の左右の神経根圧迫の様子をみる

 まずは、ジャクソンテスト、スパーリングテストと呼ばれる検査です。医師が頭を上から垂直に押すジャクソン、首を左右に傾けて押すスパーリング、その結果で左右の神経根圧迫のサイン(指先にビリビリと痺れが走る)を観察します。昨日の医師の場合、「首を左に傾けて下さい」、「次は右」、「指先まで痺れがきますか?」。それだけです。患者にまったく触れません。                 

                     2、腱反射

 ゴムハンマーで膝などをコンッと叩く奴です。 上腕二頭筋と腕橈骨筋を叩きました。 神経根圧迫の場合、反射は「低下」、「消失」といった、無反応にちかい反応を示します。脊髄損傷の場合は「亢進」です。亢進とは異常反応のことで、ピクッと筋肉が緊張します。                   3、病的反射  (トレムナー、 ホフマン、ワテンベルク )   ・ホフマン ・・・ 手の平を上に向け、中指を曲げて手のひら側にピンッと弾きます。   ・トレムナー ・・・ 今度は伸ばした中指の腹を指で数回弾きます。   ・ワテンベルク・・・ ...

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<後遺障害>

寝たきりとなり介護の必要なものから、上肢・下肢にしびれが残存するもの、痛みや可動域制限の残るもの等、症状・軽重の幅が広くなります。系統的には神経系統の障害に属します。

等級 内容 喪失率 自賠金額 1級1号 (別表Ⅰ) 神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの 100% 4000万円 2級1号 (別表Ⅰ) 神経系統の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの 100% 3000万円 3級3号 神経系統の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの 100% 2219万円 5級2号 神経系統の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 79% 1574万円 7級4号 神経系統の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの 56% 1051万円 9級10号 神経系統の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの 35% 616万円

   ムチ打ちで診断書に「脊髄不全損傷」と書かれても、画像所見が乏しいと12級13号、14級9号で判断されます。両上肢や下肢にしびれが残存する、排尿排便障害が残る、これらは脊髄損傷の症状ですが、「局部に神経症状を残すもの」で括られます。後にも先にも画像所見が決め手です。

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<損傷部位の分類 >

1、上位脊髄損傷

 首は7つの骨が積み重なっています。上からC1~C7です。このC1(環椎)~C2(軸椎)に並走する脊髄に損傷が起こると、その支配する肋間筋と横隔膜の運動不能となります。これは呼吸するための機能が失われることを意味します。多くは死亡となる深刻な部位です。  助かったとしても自然呼吸ができないため気管切開し、人工呼吸器を通すことによって生命維持をはかります。

2、下位脊髄損傷

 首の部分では頚髄損傷、胸の部分では胸髄損傷、腰の部分では普通に脊髄損傷と呼びます。  多くは両上肢、両下肢、排尿排便障害の症状となります。寝たきりで随時介護が必要ななものから、一定の仕事の影響を及ぼす程度のものまで軽重の幅があります。

3、中心性脊髄損傷

 器質的損傷を伴わず、脊髄の損傷自体も発見づらいが上肢にのみ症状がおこる場合があります。首や胸や腰といった脊髄の位置をさすのではなく、円柱型の脊髄を輪切りにしてその中心部と外側(辺縁部)をわけて損傷部位をみます。神経線維は中心よりに上肢、外側よりに下肢とつながっています。したがって病変部を探し当てる?MRI撮影が必要となります。

                      脊髄に少し脊椎やヘルニアが圧迫しているだけで脊髄損傷と診断する医師がいると聞きました。見ての通り脊髄の損傷は生命や四肢運動に関わる重篤な障害です。患者の自覚症状をしっかり観察し、画像の精査と描写の工夫が大事であると実感している次第です。

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   医師は脊髄損傷における合併症とその予防に注意を払っています。代表的な4つは・・   1、褥瘡(じょくそう)・・・寝たきりの高齢者に要注意の床ずれです。

 動作不能の患者は寝たきりの状態になります。頻繁な体位変換、専用予防マットの使用、皮膚清拭が必要です。   2、尿路感染症

 排尿障害は閉尿(尿の出が悪くなる)や頻尿(回数が増える)に2分します。それぞれ症状に応じて、間欠導尿、排尿訓練、自己導尿訓練が必要です。カテーテルを用いるケースもあります。   3、呼吸器感染症

 痰の吸引、タッピング(背中を叩いて痰を切る)、肺理学療法を行います。   4、関節拘縮

 関節可動域訓練、安静時の良肢位保持。 脊柱の可動域が2分の1となれば8球2号の障害が認定されますが、これは関節拘縮を直接の傷病名とするものではなく脊椎・脊髄の器質的損傷を条件としています。    <検査>   1、MRI

 とにかく画像所見ありきです。医師も脊髄損傷を確認しないことには治療方法を選択できません。T1、T2でそれぞれ病変部を明らかにします。共に3.0テスラのような高精度が望まれます。また技師が脊髄損傷の撮影に慣れていることもポイントです。   2、ミエログラフィー

 脊髄(もしくは馬尾神経)の圧迫病変を探します。腰椎もしくは頸椎から造影剤を脊髄腔内に注入し、X線でその拡散の様子を透視・撮影します。造影剤が途中で完全ブロックする部分、つまり中枢側の病変位置を知りたい時に用います。近年MRIの高精度化で役割は薄れました。しかし、MRIではリアルタイムに前後・左右に屈曲・伸展させた時の髄腔の変化を撮影することができないため、MRIで画像所見が得られない場合、未だ有用とされています。   3、SSEP (体幹部の神経伝達速度検査)

 手や足の感覚神経に電気的な刺激を与えることによって、誘発される反応を記録するもので、手や足から脊髄、脳幹、大脳皮質に至る感覚神経の機能を見ます。頭、首、腰、などに電極を数個つけて、手や足の末梢神経を軽く電気刺激します。低周波マッサージ器の様なピリッピリッとした刺激痛があります。   4、針筋電図検査

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 まず、↑の画像から。左がMRI・T2画像、右が同じくT1画像です。C6/7(赤い矢印)の部分がそれぞれ病変部で、T2では白く(高信号)、T1では黒く(低信号)描写されています。これはバイクの自損事故で外傷性脊髄損傷を負った18才患者です。

 バイクで転倒した際、頚部を路面に打ち付け、そのまま救急車で搬送、入院となりました。首はまったく動かせず、両腕が無感覚で手指のしびれがひどく、足もだるくなり長時間の歩行は困難です。その後リハビリを続け、下半身の回復は進みましたが、両上肢の麻痺は残存し、トイレが異常に近くなる症状が残存しました。  

1、脊髄損傷    脊椎に軸圧、屈曲、回旋、伸展、剪断、伸延などの協力な外力が加わり、脊髄の神経伝導路が遮断され、運動麻痺、知覚麻痺、自律神経障害、排尿排便機能障害を起こします。原因としては交通事故が多く、次いで高所からの転落、転倒、スポーツ外傷です。実際に先月、3階のベランダから落下し、障害を負った方の相談がありました。

 

<受傷タイプ> ① 伸展損傷・・・最も多発するタイプ。X線所見では軽微でも、麻痺は重篤なケースもあります。   ② 屈曲損傷・・・椎体圧迫骨折や亜脱臼、完全脱臼となります。   ③ 伸展回旋損傷・・・外力が加わた方向と反対側の椎間関節に脱臼や骨折が生じる。   ④ 屈曲回旋損傷・・・外力が加わった方向と同側の椎間関節に脱臼や骨折が生じる。   ⑤ 側屈損傷・・・少数例。小さい子に稀にある。

  <状態の分類>   ■ 完全損傷

 脊髄が完全に脊椎や椎間板によって遮断されたり、脊髄そのものが引きちぎれるので、非可逆性で回復はしません。とくに、環椎・軸椎部分の場合、呼吸困難で多くは死亡となります。奇跡的に生存したとしても、全身麻痺で寝たきり状態です。

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