保険代理店時代、顧客さまで公共工事を受け持つ建設会社から、曳家(家をそのまま別地に移動せる工事)の保険契約の依頼が入りました。工事の依頼主はその家主ではなく、○県です。つまり、行政が代わりに行うので代執行になります。その工事を請け負った会社が、諸々の保険を手配したいとのことです。請負賠償責任保険・施設賠償責任保険・生産物賠償責任保険などに加入済ですが、万全を期すため、その家屋自体に保険をかけました。なんでも訳ありで、道路新設工事で立ち退きとなった家がどかないので、移動させるとのことです。○県からも慎重な対応が求められているようです。

 昨日の記事でも触れましたが、単にどかないだけの家屋を強制執行で移動させるなど、憲法・基本的人権が許しません。道路工事程度で”公共の福祉に反する”から強制執行・・などできないはずです。でも、この件には理由がありました。家主は立ち退き交渉に応じて、一旦補償金を受け取っていました。ところが、すぐさま引き出しておいて、信じられないことに「そんなお金は入っていない」としらを切り、居直ったそうです(子供かっ?)。これには○県も激怒、強制執行に踏み切ったそうです。その日、建設会社の担当者と一緒に私も立ち合いました。仕事<興味ですね。
 
 朝から物々しい雰囲気です。○県の担当者と弁護士、警察も立ち合っています。そして、例の家主夫婦も自らの家が隣の空き地に引きずられていく間、行政の横暴を訴え続けています。定番の「聞いてないよー!」「訴えてやるー!」との叫びもありました。事情を知っている関係者は、一様にしらーっとした態度で無視しています。珍妙な場面です。ある意味、ダチョウ倶楽部のコントを見るようで、おかしくさえ思えてきました。

 一日中眺めている時間もないので、数時間で立ち去りました。後日、近くを通りましたが、その家は解体されていていました。近所でもすっかり有名となった、居直り夫婦は引っ越したそうです。中途半端な土地に家を移動されたことはもちろん、こんな騒ぎを起こして住み続けるメンタルはなかったと思います。

 行政と対立するにも、法的根拠は元より、正義が無ければ圧倒的な力に屈することになります。4630万円誤送金男も、刑罰が付かなかったとしても同じような運命になると思います。