3つめの横文字傷病名の実績はスミス、コーレス、ローランドなどを考えましたが、アルファベットの短縮呼称でおなじみの最新実績を選びました。

 TFCC損傷は見落とされやすい症例です。完全に断裂して手術が必要な場合は医師も見落とすことはありませんが、骨折がない場合は捻挫とし、骨折があっても骨の癒合が完了すれば関心が薄れます。しかし、私たちは手根骨の骨折、橈骨・尺骨の遠位端骨折の被害者さんに対し、常に(TFCC損傷の)疑いを持った目で接しています。

 

12級6号 :TFCC損傷 異議申立

【事案】

 バイクで直進中、左路外から飛び出してきた自動車と衝突。その際、右膝を自動車とバイクに挟まれ膝蓋骨、脛骨を骨折、さらに転倒の際に左手をつき手根骨(大菱形骨・小菱形骨)と橈骨茎状突起(剥離骨折)を骨折。 
 

【問題点】

 事前認定での結果は膝の疼痛で14級9号。この結果をもって相談会に参加された。
 後遺障害診断書上、手首に関する記述は診断名のみでまったくのスルー。もちろん計測は未実施、MRI上も異常なし。医師は膝の後遺症だけを捉えているよう。
 相談会で即座に手関節の可動域を計測したところ、手首の屈曲・伸展には明確な制限を残していた。そして、MRI画像を観て「これはTFCC損傷の高信号では?」と読み取った。

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(画像は参考用の別画像)

TFCC(詳しくはクリック)= 三角線維軟骨複合体損傷(さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)
 

【立証ポイント】

 受任後、再度MRI検査を行い、画像鑑定を行った。案の定、手根骨骨折を起因としたTFCC損傷が明らかとなった。橈骨茎状突起部の剥離骨折からも尺骨茎状突起の突き上げを促し、TFCCの損傷に繋がったとも説明可能である。続いて主治医に診断名の追加と手関節の計測を促し、新たに診断書を完成させた。
 再申請の結果、12級6号が新たに認定、膝も等級を12級13号に引き上げて併合11級とした。(膝の等級変更はまた別の機会に解説したい。)

 いかに事故相談での画像読影(能力)が重要か痛感した次第。医師も日々の治療に忙しかったり、専門外であったり、手術や治療の必要が無くなった以降は・・・じっくり画像を観ていないことがあります。MRIから判断すべきTFCC損傷は医師から見落とされやすい症例の一つです。本件は典型的な例と言えます。