昨日は六本木相談会で、10名の相談者を担当させていただきました。弁護士、メディカルコーディネーター、行政書士、保険調査員、各分野のプロフェッショナルが総力をあげて対応しました。

 今回珍しい事例がありました。それは舟状骨骨折とTFCC損傷が右手首に同時に受傷、そして左手首にTFCC。手首の受傷では小指側を痛めるTFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷:さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)、親指側を痛める舟状骨骨折のどちらかのケースになりますが、両方が併発しているケースは初めてです。また舟状骨は破裂骨折をしており、2か所の亀裂を確認しています。この場合、癒合状態が後遺障害の程度の大きなポイントになります。

      

 特に手首の可動域が2分の1になるような、ひどい可動域制限が残存した場合、舟状骨の癒合状態が不完全、もしくは変形をきたしていないと2分の1制限は信用されません。TFCC損傷も単にMRIで「高輝度信号を認める」程度の不全損傷や部分損傷では12級に、「TFCC損傷の疑い」程度では14級にそれぞれ落とされます。可動域制限の数値などもはや蚊帳の外です。10級レベルは手術するか否かの深刻な状態なのです。

 詳しくは「可動域制限の真髄」 → 後遺障害認定結果の文例 7

 しかしこの相談者さんは現実に2分の1制限をきたしており、その立証ためには、そこまで動かなくなった原因を探る作業が必要です。私はもう一度舟状骨の癒合状態を検査するべきと思いました。特に平面、2次元でしか見れないXP(レントゲン)画像ではなく、3次元で立体的に描出するヘリカルCT、そして骨の内部の骨癒合の状態をMRIで観察します。かつて足首・距骨の骨が再生しない、骨壊死の状態になった例を経験しています。「関節内の骨はくっつきづらい」ことが念頭にあります。骨の癒合が不完全な状態はMRIで描出させます。このような交通外傷の数々の経験は他部位への応用が利きます。

 交通事故賠償に限らず、賠償請求は証拠を突きつけなければ勝てません。挙証責任は原告(被害者)にありです。

 専門家を名乗る以上、これらの追求に躊躇はありません。最後まで徹底的にお付き合いします。しかし原因を突き止め、その証拠をもってしても、自賠責調査事務所が「自賠責の基準外」として認めてくれないこともあります。この場合は訴訟にて決着をつけます。そして病原の画像、検査数値などの証拠がでてこなければ諦めることも必要です。

 「追求」と「断念」・・・日々これの繰り返しです。

 
 六本木チームの皆さん、お疲れ様でした。