1回目の事故で治療中に、重ねて事故に遭うことがあります。そのケガが、同一の部位で同じようなケガが重なった場合、1回目事故と2回目事故の保険会社は、治療費支払いを引き継ぐことになります。これは、保険業界のルールに思います。
 
 ただし、部位が違うのであれば、それぞれのケガについて、二つの保険会社に(別々に)対応頂きたいと思います。当然、後の慰謝料もそれぞれ別個にもらいます。一緒にされたら、慰謝料が一本化されて損します。
 
 自賠責保険の後遺障害審査ですと、同じ部位であれば「異時共同不法行為」として、二つの事故のダメージが重なった障害として評価することがあります。この場合、後遺障害の限度額が2つ分の自賠責保険金になりますので、自身の過失から大きく減額される場合や、相手に任意保険が無い場合、大変助かります。この場合は、二つの事故を混ぜた方が、被害者にとってメリットになります。
 
 さて、本件は、「1つの事故として賠償金支払いを済ませたい」1回目事故担当の損保の思惑から、担当者が無理やり1つの事故として、2回目の会社に治療費支払いをリレーしようと画策しました。結果は、私達が付いていますから、以下の通り、切り分けて解決へ進めています。
 
 切り分けた方が得のケース、混ぜた方が助かるケース・・・正しい知識と誘導が必要です。
 
混ぜるな危険
 

14級9号:腰部背部打撲(70代女性・静岡県)

【事案】

自転車を押して歩いていたところ、左折してきた自動車に巻き込まれ転倒した。直後から腰背部痛等、強烈な神経症状に悩まされる。
 
【問題点】

この事故から1ヶ月も経たないうちに、今度は歩行中に自転車にひかれてしまい負傷した。1回目の保険会社としては、連続事故として2回目事故の保険会社に引継対応してもらいたいようであった。2回目事故の担当者も危うく応じそうであった。

また、高齢なため、MRIなどの検査を受けることが困難であった。
 
【立証ポイント】

まずは1回目と2回目での負傷部位をそれぞれ確認。「頭部打撲傷」という、一部の診断名が重なっているとはいえ、それぞれの負傷した主要の部位が異なり、救急搬送先や治療・リハビリ先も異なるため、連続事故とはせず、それぞれ治療を継続していく方針とした。治療部位・内容については、各病院に事情を説明し、切り分けて頂いた。

受傷機転と症状の一貫性、通院実績を根拠に打撲傷で後遺障害申請を実施したが、MRI検査未実施でも14級9号が認定された。MRI検査の重要度は年々下がっているように感じてはいたが、検査を受けることができるのであれば、それに越したことはない。誤解なきよう追申します。