「おしっこがでないからここ(病院)にきたんでしょ?」

 ・・・(今更、でないことを検査してどうするの?)
 
 毎度おなじみ、医師の対応です。交通事故受傷で排尿障害となった場合、例えば、おしっこが出なくなった証拠を突きつけなければ、障害等級の認定はありません。医師は患者の「おしっこがでない」ことに疑いを持たず、治療にあたります。しかし、自賠責保険・調査事務所は「客観的な検査結果」がなければ信じません、つまり障害の判定ができないのです。ここに、臨床判断と賠償請求の壁が存在するのです。

 もっとも、検査の設備があり、30年前の知識のままのおじいちゃん医師でなければ、速やかに排尿検査を実施します。大学病院の泌尿器科となれば、尿流量検査はじめ、一連の設備があります。ただし、ウロダイナミクスを完備している病院は極めて少なく、検査誘致はメディカルコーディネーターの活躍場の一つとなります。
 
 排尿障害の検証、2段階目は各種検査を紹介します。検査にて障害の実態を明らかにする事は治療の第一歩であり、障害審査、しいては賠償請求の証拠として必要なのです。
 
【1】尿の成分検査

 尿中の蛋白、血液、糖などの有無とその量を調べます。通常は中間尿(はじめの尿を取らずに、途中からコップに取り、途中までの尿を入れる)を採取します。結果は30分後に成分表が作成されます。
 内蔵機能の病的疾患の検査ですので、交通事故外傷とは離れますが、腎損傷などの場合はその初期検査には有用と思います。腎臓機能の障害はさらに、GFR検査(※)に移ります。

※ GFR =糸球体濾過値(しきゅうたいろかち)
 腎臓の能力、どれだけの老廃物をこしとって尿へ排泄することができるのか? つまり、腎臓の能力は、GFR値で判断されています。 この値が低いほど、腎臓の働きが悪いということになります。腎機能の障害については、また別の機会に解説します。

 
【2】尿流量検査(ウロフロメトリー)

 専用トイレで排尿し、検査機器が自動的に尿流のカーブを描く検査です。10分程度できますので、閉尿・頻尿・尿失禁、どの場面でもまず実施すべき検査です。この検査で、尿の勢い・排尿量・排尿時間などが明らかになります。このデータから、排尿障害の種別・状態が客観的に把握できますので、排尿検査の出発点となります。
 検査前には十分に水分を取って、検査までトイレは我慢となります。
  ← 測定用の専用便座

 
【3】残尿測定

 通常は上記のウロフロメトリーと一緒に実施します。排尿後、超音波検査で膀胱の画像をみて計算します。
 泌尿器科の医師は、尿流量と残尿測定から、蓄尿機能の低下、排尿括約筋の異常など、排尿機能の異常を把握します。

 
【4】排尿日誌 (検査ではありませんが、重要です)

 自宅で24時間にわたり排尿した時間、1回ごとの尿量、尿もれの有無、摂取した水分量を記録します。閉尿・頻尿・尿失禁の主観的なデータとなります。これも、障害の実態を主張する際、客観的なデータと併せて提出します。かつて、尿路・膀胱損傷による排尿障害の立証にも用いました。
 
【5】膀胱内圧測定(ビデオウロダイナミクス)検査

 膀胱内に造影剤を注入し、膀胱の形態をみながら膀胱の機能を検査します。通常は尿道、肛門から細いカテーテル(管)を入れ、肛門周囲に筋電図のパッチ(シール状)を貼りつけて検査をします。30分以上かかります。実施した被害者さんに聞くと、羞恥もあり?、かなりの負担のようです。
 
 排尿に関する総合検査です。器質的損傷のない、例えば、頚椎・腰椎の捻挫から神経因性の排尿障害を発症した場合、その障害を立証するためには必須の検査といえます。なぜなら、脊髄損傷や尿路・膀胱の損傷など、排尿障害を強く推認させるケガと違い、因果関係を解明しなければならないからです。この検査と検査データから原因を指摘する専門医がいなければ、排尿障害はケガのせいではなく、内在的な病気にされてしまいます。

 かつて、このウロダイナと専門医のコンビで、何度も窮地を救われました。

 

 ウロダイナミクス検査の解説(過去記事) ⇒ 排尿障害の検査