それでは人身傷害と無保険車傷害の競合問題について、3メガ損保の現約款を確認してみましょう。

 いずれも「27年10月改定」版からです。(最近は毎年のように約款改定が続き、追いかけるのが大変です!)
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(1)損保ジャパン日本興亜

4-5 無保険車傷害特約  第10条 支払い保険金の計算

⑦ 普通保険約款人身傷害条項第8条(支払い保険金の決定)の保険金が支払われる場合は、その保険金額 ・・を無保険車傷害の保険金から差し引きますよ。
 
 つまり、無保険の自動車にケガをさせられた場合、多くは人身傷害で治療費や休業損害を賄っているはずです。続いて後遺障害が生じた場合も「まず人身傷害で支払い、足りなければ無保険車傷害から払います」、との意味になります。これは実務的な流れを裏付けるものです。

 損保ジャパンは日本興亜との合併前、一時期、人身傷害の約款に無保険車傷害を組み込みましたが、すぐに無保険車傷害を独立した約款に戻しました。結局、両者の約款を併存させたまま、被り問題をこの約款条文で調整しました。

 最初からこうすればよかったのにね。

★ 限度額は人身傷害付き契約(THEクルマの保険)、人身傷害がない契約(SGP)共に、限度額の記載がありません。2年前の改定から「2億円」⇒「無制限」に統一したようです。保険証券には「無制限」ときっぱり記載されています。

 
(2)三井住友

人身傷害条項  第9条  無保険自動車事故に関する特則

(1)当社は次に定める条項すべてを満たす場合には、第4条(支払保険金)(1)ただし書および(3)ただし書の規定にかかわらず、2億円を限度として同条(1)および(3)の規定を適用します。

① 人身傷害保険金額が無制限以外であること
② 無保険自動車の運行に起因する事故により被保険者が傷害を被り、その直接の結果として被保険者が死亡すること、またはその直接の結果とし別表1の1または別表1の2に掲げる後遺障害が生じること。
③ 賠償義務者があること。

 
 この特則は人身傷害の約款です。つまり、無保険車傷害は人身傷害に吸収されました。その調整として、「人身傷害の保険金額が無制限なら、人身傷害で支払います。しかし、人身傷害の保険金額が無制限でなければ、加害者が無保険車である場合、①から③の条件を満たせば、人身傷害保険金の限度額を自動的に2億円に引き上げましょう」、という特別ルールとなっています。

 この整理の仕方も「なるほど」と思います。ちなみに人身傷害の付いていない契約の場合はどうなるのか? 以下の通りです。
 

無保険車傷害特約  第1条 (この特約の付帯条件) 

 この特約は、この保険契約に普通保険約款人身傷害条項の適用がない場合で、保険証券にこの特約が記載されているときに付帯ます。
 
 人身傷害の9条の特則で無保険車傷害を人身傷害に吸収・消滅させたため、人身傷害のない契約には、従来どおり、「安心して下さい、無保険車傷害特約入ってますよ。」としました。  

 とにかく明るい三井住友です。 
ansin 明日は問題の東海日動です。