高次脳機能障害の原因となる、脳外傷の急性期によく行われる手術について解説します。最近担当した被害者さんもこれを行いました。   <硬膜下血腫>

 脳の表面と頭蓋骨の間には硬膜と呼ばれる硬い膜があります。硬膜と脳表の隙間は硬膜下腔と呼ばれています。硬膜下血腫はここに出血が起きることです。交通事故などの外傷で出血する場合、「急性硬膜下血腫」の診断名がつきます。また、頭の打撲後およそ1~2カ月経過して、この硬膜下腔に血液が徐々に貯留するケースは、慢性硬膜下血腫です。 貯留した血液(血腫)量が少なく、脳に対する圧迫が軽度であれば深刻な症状とはなりませんが、血腫が増えて脳実質を強く圧迫するようになると、半身麻痺や言語障害などの神経症状を呈し、高次脳機能障害の原因となります。受傷初期では意識障害を来たし、圧迫が増大し続ければ命を落とします。  続きを読む »

対物賠償責任保険でお支払いの対象となるのは、法律上の賠償責任額(自動車の時価額)までです。しかし、実際にかかる修理費が、時価額を超えてしまうケースが考えられます。その差額分を補償するのが「対物全損時修理差額費用特約」です。

以上が損保ジャパンのパンフレットからの説明です。もう少し丁寧に説明しましょう。

 まず民法上の損害賠償について理解する必要があります。常識として「人の所有物を壊したら弁償する」・・・当然ながらこれが前提です。弁償の方法は、修理費を払う、新品に買い替える、代わりの物を提供する等があげられます。法律上、これらの算定金額はその物の価値までを限度に考えます。自動車だって使えば中古品となり、新車から価値がどんどん落ちていきます。民法ではあくまでその価値まで弁償すれば足りると考えます。中古品を弁償するのに新品価格で払えば、弁償される側は得をすることになってしまうからです。ここで問題となるのは、修理費がその中古価値を上回ってしまうことです。

 例えば120万円で購入したミライースも5年間乗れば価値はおよそ20万円(時価額)と査定されます。しかし事故での修理費が60万円かかるとします。被害を受けた側はしばらく買い替えの予定もないし、気に入った車だったのでなんとか修理して乗りたいのです。対して加害者側の保険会社は「価値が20万なので20万円までしか払いません。修理費の差額40万円はご自身でご負担下さい」となります。この法律を盾に取った理不尽なやり取りで、長らくこのような物損事故はもめてきたのです。

                     そこで約款上、法律を根拠としない費用保険というカテゴリーで支払える特約を作りました。これが対物全損時修理差額費用保険です。呼び名は各社多少の違いがあります。(対物超過特約など)  上記の場合、修理して乗るのなら差額の40万はこの特約で支払います。限度額は各社ほぼ50万円までとなっています。

 この特約のおかげで、古い車の修理額でもめることが激減しました。自身が加害者となったときには相手に優しい補償となります。しかし悔しいのは自身が被害に遭った時、例えば追突されてこの特約を付けていない加害者側保険会社から「時価額までしか払えません」と対応されることでしょうか。

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 来月、東京と大阪で「第3回 法律家のための交通事故実務講座」が開催されます。主に弁護士を対象とした研修ですが、回を重ねるごとに内容もグレードアップ、最新事例も盛り込み、最新・最強の研修会と思います。

 さて、最近の交通事故業界の動向は・・・弁護士、行政書士他のホームページを色々と検索してみました。相変わらず専門家の大洪水、どこも集客に血眼と言ったところでしょうか。全体の傾向として「何でも屋事務所」<「交通事故専門事務所」とすべく、従来のHPとは別に交通事故専門ページを作っている事務所が多いようです。そして同じHP製作会社を使っているのでしょうか、フレームどころか記載内容まで一緒のところも多いようです。これでは専門家が泣きますが、その中でより注目したのは、弁護士と行政書士を比較した表です。よくできていますので多くの事務所がまったく同じものを掲載しています。  

  弁護士 行政書士

書類作成

△(保険会社に対する請求書を作成。なお裁判所に提出する書類の作成は不可)

示談交渉

×

調停

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 最近有用な記事出しができず、反省しきりです。しかし依頼者の皆さんから「毎日チェックしてますよ」「日誌、毎日読んでます!」と少なからず反響をいただいております。何のとりえもない私ですがHP開設以来2年半、日祝日・連休を除く営業日は毎日更新を励行しています。習い事も、ダイエットも、一日一善も、毎日続けることが困難であり、もっとも大事な事だと思います。では今日の出来事を。

 本日の夕暮れから電話をまとめてかけておりましたところ、太鼓の音が響きだし「大東京音頭♪」、「炭坑節」、「きよしのズンドコ節」まで、盆踊りのキラーチューンがメドレーで!!

 今日は「盆踊り」です。会場は高層ビルに囲まれ、首都高速に架かる橋の上の公園です。銀座オフィスのすぐ眼下に盆踊りの櫓が見えます。あちゃー、窓を閉めてもこの大音量!、こりゃ電話の向こうに聞こえるな・・・ま、夏の風物詩なのでよいか。

           

 都心の盆踊り・・・ミスマッチのようでなかなかビル街に溶け込んでいます。

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 先週からの疲労が蓄積しています。上手に休息を取ることも仕事のうちですが、さすがに夏場は堪えます。

 今朝は水風呂にドボン!滝での水行のように真水のシャワーを浴びて気合を入れました。しかし早くも午後に力尽きて休息を取りました。体調を壊さないように乗り切りたいと思います。

 さて、いよいよ夏の弁護士研修会が近づきました。

      

○第3回 法律家のための交通事故実務講座 東京会場 続きを読む »

 毎回相談会で多くの被害者・相談者さんと面談しています。多くの方は礼儀正しく、謙虚な姿勢でご参加されます。対応する当方、私だけではなく弁護士も真摯に対応策を提示します。そしてそれぞれ方向性を見出してお帰りになります。しかしどうもよろしくない態度の相談者も一定数存在します。

 例えば、質問に対しこちらが答えていることをメモしない被害者です。たいていこのタイプは回答を理解していません。もちろん回答に納得がいかなければ再度質問するかご自身で調べることになりますが、メモを取ってないので、おそらくそのまま忘れてしまうでしょう。私たちは経験・知識から良い対策を提案するのみで、解決するのはあくまで被害者自身です。仮に代理人の弁護士を雇っても、解決策をご自身でもしっかり把握するべきです。熱心にメモを取っている方は紛れもなく良い解決へ向けて真剣ですので、当方ともよいパートナーシップが築かれるのです。

 最近、かなり困った人がいました。一通り質問・回答を終え、最後に、「後でこれらの議事録を書面で下さい」と言いました。

 無料相談会で何たる大上段!と思いましたが、それ以前に、「ご自身でメモを取れば済むでしょう!」と半ばキレ気味で返答しました。このような態度では誰も助けてあげようとは思いません。被害者だから・・といった甘えがあっては相手保険会社だけではなく、味方となるべき人にも相手にされなくなります。

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 甲府に泊まるのは毎回駅前の東横インでは味気ない。幸い車で10分で湯村温泉がある。今回の山梨遠征はここに。

 旅館 明治は明治元年開業の歴史ある宿、太宰 治が逗留したことでも有名です。執筆した小説は「正義と微笑」、「右大臣実朝」の2編だそうです。

 泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉(低張性弱アルカリ性高温泉)、PH値8.24 。柔らかな浴感、ぬめりが心地よい。外傷では抜釘後の傷を治すのに適当と思います。

 平日なので宿に宿泊客は見当たらず、温泉を独り占め。夕食ではワインを空けて、事務もそこそこにそのまま朝まで爆睡。ウグイスの鳴き声で起床。キツイ日程の中、ささやかな安らぎを得ました。

 本日の病院は4件、無事に目的を果たしました。帰りに桃をお土産に頂きました。Oさんありがとうございました。

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 本日、午前中は埼玉県の病院同行、その足で甲府へ向かいます。久々に自動車使用です。

 甲府と言えば先週、気温39度を記録し、日本一の酷暑地となりました。相当の覚悟をもって現地入りしましたが、今週から気温が下がり、まぁ普通の暑さです。山梨県内で今日明日と合計6件の病院同行です。様々な病院、医師を経験しました。

 毎度のことですが、後遺障害診断書の記載について、医師の考え方もかなり隔たりがあるようで、記載するか否かの判断も医師固有の権限に基づきます。医師法第19条と2を見てみましょう。

 

第19条 診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。

    2  診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。

 

 19条では、正当な理由がなく治療を拒んではいけないこと、同2では診断書も同じように正当な理由なく記載を拒んではいけないことが明記されています。診断書を書く書かないの判断はこの医師法19条の2で医師にあると解されますが、よく読んでみると医師の「権利」というより「義務」に近いニュアンスです。しかし「書くか書かないかは私が決める」と断言する医師は多いものです。すると問題は「正当な理由」の解釈となります。医師の判断に基づいて書かない・・・これでは正当な理由の説明にはならず、拒むだけの理由がなければなりません。

 このように法解釈を弄しても、実際の現場では医師の人間性や医師と患者の信頼関係が左右します。診察でお忙しい中、時間を割いて診断書を書いていただくこと・・・有難いことに変わりはありません。

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 本日の病院同行は以前、別の依頼者(膝の骨折)のリハビリでお世話になった整形外科です。

 丁寧に治療やリハビリを行ってくれただけではなく、後遺障害診断書にもしっかりと心配りしていただいた医師です。このような院長先生のいるクリニックは大抵混んでいます。評判が評判を呼ぶのでしょう。また特徴が共通しています。

1、受付の事務の方が笑顔、丁寧な対応。

2、看護師も笑顔できびきびと動き回っている

3、理学療法士の先生も明るく親切

4、そして医師は患者の声に真摯に耳を傾ける

 このような共通点があるようです。逆に昔ながらの威張った先生、つっけんどんな受付、冷たい看護師・・・これらは押しなべて後遺障害診断書もいい加減、書きたがらない、待たせるなどの特徴が一致します。

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日本心身医学会で津田教授(川崎医科大学)によって報告されたレポートによると・・・

 「初診患者2000人の内742人(約36%)が心身医学患者で、病気の中で最も多い風邪の2倍である。病状の内訳でみると、肉体的には全く異常がないのに、腹痛や頭痛や手足の痛みや視力の低下を訴えた人が547人 残る195人は、下痢や吐き気がする過敏性腸症候群など、心の状態(病気ではなく、健康度が低下した状態)が強く影響する身体の病気(心身症)だった。」

 このように程度の差はありますが心を病んでいる人は多く、3人に1人という臨床上の統計データが存在します。実数のカウントが非常に難しい疾病ですが、通院や薬を服用するほどでもない、鬱やノイローゼの人は確かに多いようです。  心身症、これも交通事故外傷と無関係ではありません。例えば自分に何も落ち度がないのにある日、交通事故でケガを負って日常生活に多大な損害を受けます。痛みなどの苦しみに加えて、加害者、病院、保険会社、職場、あらゆる第三者が関係してくることになります。まさにストレスの洪水が押し寄せるのです。先の統計数値では3人に1人が心身症患者です。事故で心の病が発症、もしくは増悪することは想像に難くありません。

 「この患者(被害者)の症状が長引くのは心の病のせいでは?」対応する医師や保険会社担当者が被害者に対してこのような偏見をもっても無理はありません。誰も自分の苦しみを分かってくれない・・・確かに辛いと思います。しかしこのような状態で相談会にやってきても私たちのできることは限られています。私たちの仕事は交通事故外傷の適正な評価をさせ、後に弁護士によりしかるべき賠償金を確保する。つまり「お金をたくさん取ることです」。身も蓋もない物言いですが、実利ある解決のお手伝いに尽きます。したがって心身症の対応、治療は心療内科の先生の仕事であって、私達には解決できない相談なのです。

先日のむち打ち被害者と会話

Aさん:「事故のせいで寝れなくなったので心療内科で睡眠薬を処方してもらいました。これから心療内科にも通います!」

秋葉:「辛いのはわかりますが、後遺障害は諦めますか?」

Aさん:「どうしてですか、事故で精神的におかしくなってしまったのですよ!」

秋葉:「しかし半年後、『むち打ちで痛みが残った』と症状を訴えても、Aさんはこれから心身症患者になりますので、症状も心因性、つまり心の病気のせいとされますよ。だって心を病んでいる人の訴える『痛い』など信用されると思いますか?」

Aさん:「そんな・・・」

秋葉:「Aさん、そんな弱々しい精神では交通事故賠償で勝てませんよ」

 このように叱咤激励することもあります。それでも自ら心身症患者を名乗るのなら私の仕事はここでおしまい。後は心療内科の先生にお任せすることになります。

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 今朝は茅ヶ崎、昼に銀座に戻り、午後は千葉。海が見れるのはいいけど、帰りの千葉モノレールでバテバテ・・・。先月の病院同行は月間27件でレッドゾーンです。猛暑でこのペースは無理!夏場はペースを25%落とさないともちません。 明日は長野で涼しそうですが、来週は熊谷、甲府と日本二大酷暑地の病院が控えています。ひぃ~!

 昼食は茅ヶ崎名物、しらす丼をご馳走になりました。Tさまありがとうございました。

 果たして夏休みは訪れるのか?

 

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 後遺障害の審査は厳しく、調査事務所は請求者を常に疑ってかかっている意地悪な機関と思っている被害者、法律関係者も多いと思います。しかし私の印象はそのようなステレオタイプではありません。私は自賠責保険の被害者請求を保険会社時代から何年もやってきています。たまに「なんじゃこりゃ?」ってな判定を見ることがありますが、あくまで少数例。「よく見てくれているなぁ」と感心することの方が多いのです。さらに先日の出来事から・・・

 本件の被害者さんは腰椎捻挫で症状の改善が進まず、整形外科から整骨院に転院し、さらに鍼灸院に通って治療を継続しました。当然、相手の任意保険会社は腰痛と事故の因果関係に疑いを持ち、途中で治療費を打ち切りました。仕方なく健保で治療費を払っていましたが、このままでは事故は解決しません。この時点で私が介入し、症状固定を勧めました。しかし後遺障害診断書は鍼灸院や整骨院では書けません。書いていただくために整形外科に戻り、医師に事情を説明し、なんとか診断書を書いていただきました。  しかし、治療経過を見ると、途中から最後の後遺障害診断まで、”病院への”通院は3か月ぽっかり間が空いてしまっています。「神経症状を残すもの=14級9号」は他覚的所見が乏しくとも、症状の一貫性で認めてくれる余地があります。後遺障害の審査上、整骨院や鍼灸院の治療実績は軽視されますので、この3ヵ月の治療間隔は致命傷なのです。

 仕方ないので自賠責調査事務所の担当者と電話で直談判です。事情を説明したところ、本件の調査事務所の担当者はいきさつをご理解下さり、鍼灸院の領収書にて治療の継続性を認めてくれるようで、早速提出の運びとなりました。「非該当」を避けるべく、まるで等級が認められるようにこの担当者は柔軟な判断をしてくれているのです。つまり杓子定規な審査をするのではなく、被害者の事情に耳を傾け、症状の残存を信用してくれたのです。こうなると申請側の私と立場は違えど、同じ被害者救済の仕事をする同志です。

 やはり審査をするのは「人間」。担当者がすべての被害者を疑ってかかるのか、偏見なく被害者を見抜くのか・・・。やはり14級9号の真髄は「信用してもらうこと」に尽きると同時に、担当者の裁量次第、さらに言わば公平なジャッジは担当者の人間性で左右される時があるのです。

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 相談会にやってくる被害者さん、症状ではやはりむち打ちが最大勢力です。全体の60%はむち打ち被害と言っていいでしょう。  しかし一口にむち打ちと言っても、「首を動かすと痛い」程度から「常時手指にしびれがある方」、「バレリュー症候群」を併発している方まで、症状に個人差があります。そしてたまに見かけるのが首にカラーをはめている人です。

カラーの種類は2種に大別されます。左が硬性、右が軟性カラーです。

    この2種を覚えれば十分です。 フィラデルフィアカラー    ソフトカラー

  

 カラーを装着して会場にやってくる被害者さん、一見ひどい症状のようですが、実際はよくしゃべるし、固定している割には左右、上下によく首が動いています。そして常時付けているわけではないようでカラー自体もそれほど汚れていない。押しなべてカラーをしている人は症状が軽いように思います。そして現在多くの整形外科医がカラー固定を避けています。急性期(1~2週間)の激痛、頚椎の棘突起の骨折などを除き、いつまでも付けることは多くの医師が否定しています。  

★ 大分中村病院HPによると・・・『頚椎カラーと安静の必要性についてですが、むち打ち損傷の中で極めて限られた症状、つまり頚部の明らかな腫脹を伴った動きの制限(首が腫れて、前後左右にほとんど動かない)のみに頚椎カラーが適応され、座ったり、立ったりすることがままならないほどのめまいや吐き気を訴える患者さんに安静が必要となります。ではこのような患者さま以外は頚椎カラーや安静は必要ないのでしょうか?最新の治療での答えは「必要なし!」です。例えば、頚椎の手術後2~3日でベッド上で起き上がったり歩行を開始し、頚椎カラーもほとんどしない方が、従来の2~3週間のベッド上安静と約3ヶ月間の頚椎カラー装着より頚部の疼痛や不定愁訴が少なく結果が良いと最近の成績で示されています。私の経験をまとめた結果でも疼痛のみのむち打ち損傷で長期安静を行った患者さまの予後結果(受傷後半年もしくは1年後の結果)は概して不良でありました。』  

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 前回に続きます。まず下線部を解説します。

 保険会社にも6000万円の賠償を、とあります。これは被害者側に人身傷害特約(おそらくご家族加入の自動車保険)が加入されており、そこから6000万円の支払いを受けていたことを示します。保険会社もこの既払いにつき、加害者に求償を行うべく、この裁判に訴訟参加したものと思います。

 そして注目すべき論点が2つあります。

① 保険会社の人身傷害が9500万円の判決額全額を支払わない点です。

 人身傷害は保険会社の約款で「当社の基準で計算した額を払う」とありますので、普通は対人賠償とほぼ同額の基準で計算されます。つまり裁判の判決額はそれよりもはるかに高額な基準で計算されます。その差は2~3倍に及びます。この人身傷害が限度額(6000万円)いっぱいであれば問題はないですが、1億や無制限だったら・・・。

 私は判決額が決定したら、この判決額9500万円全額を保険会社に請求すべきと思います。 もちろん、保険会社は「当社の基準で支払うと決まっているので・・」と反論しますが、今まで同様のケースで判決額を全額請求した結果、なぜか保険会社は自社基準額を押し通さず、判決額を渋々支払います。人身傷害の支払基準は司法を介すると玉虫色となるのです。

 これは2年前、人身傷害の求償額をめぐった裁判で、「被害者救済上、約款基準より判決額を重視した」判決がでています。以降、保険会社は建前(約款)上は自社基準、司法が絡めば裁判基準とし、人身傷害の支払い基準は混とんとしたままなのです。

 この問題は「そして無保険車傷害は(人身傷害特約に)吸収された」のシリーズの続編として後日書きたいと思います。

★ しかし本件の場合、既払額6000万円はきりが良すぎる数字です。保険会社は既に契約限度額まで支払ったのかもしれません。ただし契約限度額=6000万円は半端な数字です。人身傷害特約は最低3000万円から無制限まで限度額を決めて契約しますが、もっとも多いのが5000万円、次に3000万円です。1億や無制限はかなり少ないはずです。したがって6000万円ちょうど、もしくはそれ以上の契約額もちょっと考えずらい。

 もしかしたら家族の車2台の人身傷害特約がそれぞれ限度額3000万円で、両方の限度額の合計6000万円を支払ったのかもしれません。であるならば既に支払った保険金で限度額いっぱいとなり、判決額全額を請求する議論とはなりません。  

② 現在の人身傷害特約では「自転車対歩行者」事故に関して、多くの保険会社は無責です。

 本件事故は今から5年前です。当時は自転車搭乗中のケガ、自転車による被害事故も対象となっていましたが、現在多くの損保会社はこれを補償から除外しました(三井住友、あいおいニッセイ同和、AIG、日新、全労災は補償範囲を堅持)。歩行中、自転車搭乗中のケガでは相手が自動車でなければ補償の対象外なのです。もしこの事故が現在に起きれば、被害者女性に支払われる賠償金に対応する保険は無く、加害者親子に丸々9500万円賠償金の支払いが請求されることになります。

 近年自転車の加害事故も重大化、賠償金も高額化しています。道路交通法上、自転車は軽車両となっております。自転車もある意味、自動車扱いなのです。再び人身傷害特約でこの部分も補償してもらえないものか・・・本件のような被害者はもちろん、加害者にとっても悲惨な事故から切に望まれます。

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親に9500万円賠償命令 少年が自転車で人はねた事故

 自転車で女性(67)をはねて寝たきり状態にさせたとされる少年(15)=当時小学5年=の親の賠償責任が問われた訴訟の判決が4日、神戸地裁であった。田中智子裁判官は「事故を起こさないよう子どもに十分な指導をしていなかった」と判断。少年の母親(40)に対し、原告の女性側と傷害保険金を女性に支払った損保会社に計9500万円を賠償するよう命じた。  判決によると、少年は2008年9月22日夜、神戸市北区にある坂をマウンテンバイクで時速20~30キロのスピードで下っていた際、知人の散歩に付き添い中の女性に衝突した。女性は頭の骨が折れ、現在も意識が戻っていない。  判決は「少年の前方不注意が事故の原因」と認定。少年側は「危険な走行はしておらず、日頃から指導もしていた」として過失責任を否定したが、判決は母親が唯一の親権者としての監督義務を十分に果たしていなかったと判断した。そのうえで、女性が事故に遭ったために得ることができなくなった逸失利益や介護費などを考慮し、母親には女性側へ3500万円、損保会社へ6千万円の賠償責任があるとした。 (25.7.5 朝日新聞より)

   本件は少年(15歳)の親御さんに「親権者責任」をずしりと科した点がポイントです。裁判では”親権者としての監督義務がちゃんと行われていたか否か”が争われました。でもどう考えても少年の事故における過失と、親の日ごろの指導は直接結びつかないように思います。つまり直接、事故に関与したわけではないが、少年に事故の責任がある以上、民事上の損害賠償責任を取るのは少年に代わって親、ということが本音でしょうか。確かに被害者側にとっては、「少年に支払い能力がないからチャラ」といわけにはいかないでしょう。

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行政書士法1条

第一条の二  行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。 2 行政書士は、前項の書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

 

 この下線部によって、行政書士に役所への申請書類の代書、代理提出以外にも、一般的な法律書類も含んだ代書権がありとされています。ここで注意が必要なのはすべての法律書類ではありません。「権利義務、事実証明」に限定されています。これが弁護士と行政書士の仕事の境界線となります。  これは「事件性の必要説、不必要説」と呼ばれる学説の対立に及ぶ話なので、本一冊では済まなくなりますのでスルーします。大まかな対立は、過去の判例で、「法律書類は弁護士のみ:A説」と判決されたこと、「もめごとに発展するまでは他士業でもOK:B説」とされたこと、この2つの説の対立につきます。現状は決着がついたとは言い難いようです。 実例で話を進めましょう。   

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 私は一応、行政書士資格にて仕事をしていますが、交通事故業務でこの資格を根拠をして行う事務は非常に限定されています。やはり交通事故業務は弁護士の代理権のもとに行うことが適法ですし、また全面的な被害者救済を果たすにもっとも合理的と思います。  そうは言っても交通事故取り巻く環境は有象無象、様々な業界の人が介入し、かなり曖昧であるのが実状です。そして毎年のように非弁行為で捕まる示談屋さんはもちろん、行政書士や各士業者が後を絶ちません。

 研修では「できること、やってはいけないこと」を説明することから始まります。退屈ですが法律解釈の時間もとります。いくつか触れてみましょう。

弁護士法72条

第七十二条  弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。  簡単に言うと「お金をもらって、人様に代わり、もめごとの解決をできるのは弁護士だけ」ということです。これはもめごとに介入してお金を取る示談屋さんを違法とし排除する根拠法となります。もちろん無償で相談に乗ることは問題ないのですが、それで代金を取ってはこの72条違反を構成します。日常、人のあるところもめごとは存在しますが、もめごと=紛争性の高い事件の仲裁はお金になるもので、大昔から仲裁屋、示談屋が存在するのです。 

 しかしすべての代理権がこの法律によって弁護士のみとされていては、回らなくなるのが世の常です。他士業もその業務の専権内である程度の権利を確保しています。それを許すのが下線部の例外条項です。例えば簡易裁判所にて訴額140万までの事件は司法書士にも代理権が認められています。同様に労災申請の代理は社労士に、税金の代理申告は税理士に。もちろん行政書士にも一定の法律文章について代書権が明文化されています。

 明日に続く

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 本日からMC(メディカルコーディネーター)の研修も並行して行います。

 研修と言っても座学での講義はわずかです。現場へどんどん行きます。実際に病院同行をすることによって自ら問題点、疑問点を浮き彫りにします。それから「調べる」→「質問する」→「解決する」→「経験則とする」。この過程をOJTにより繰り返します。このように経験を通して脳を鍛えなければ何も得ることはできません。経験の伴わない知識など役に立たないからです。

 昨年、大型法人弁護士事務所にて補助者にMC研修を行いましたが、まさにこの手法、病院同行に随伴してもらい現場で教えていきました。依頼者=被害者を初期から担当することは、交渉力にすぐれた弁護士とは別に、きめ細やかな感性をもった人材が被害者に寄り添いフォローしていくことが理想です。この事務所でも優秀なMCが育っています。

 この経験を生かし、人材をどんどん養成していきたいと思います。そしてかねてよりの目標でもありました、研修プログラム、初期対応マニュアルの作成を同時進行で進めていく予定です。

 交通事故被害者の過酷な環境を改善する者は、一に保険会社、二にMC、三に弁護士  ・・・このような図式の確立が夢なのです。

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 私は学校を卒業後、直ちに損保業界に入り、その後、一貫して交通事故分野一筋でやってきました。最近、依頼者さんから質問を受けました。    「秋葉さんはなぜこの仕事を選んだのですか?」    この質問には即座に答えることができます。この機会に少し語りましょう。    損保会社勤務の時、担当する顧客さまの御嬢さんが自転車でおばあちゃんにぶつかり、骨盤骨折をさせる交通事故がありました。この顧客さまの契約に個人賠償責任保険が付帯されており、この保険を使っておばあちゃんへの賠償を行うことになりました。このおばあちゃんは御年80歳、このケガから排尿障害や歩行不能となり、ほぼ寝たきりの状態になってしまいました。ご家族は会社員のご長男のみ。対して担当する顧客様(加害者側)に個人賠償責任保険の加入があり、最高3000万円まで支払えます。

 その後、10か月を超える治療を行いましたが、回復の兆しはありません。ついに、治療の長期化を懸念する保険会社の指示のもと、治療費打切り=示談の運びとなりました。事故後、数度にわたり顧客様(加害者)と謝罪に訪れ、それなりに馴染んでいる私が示談交渉に同席しました。

 最近の個人賠償責任保険はある程度、保険会社の示談代行が可能となりましが、この時代は示談代行ができず、顧客様が示談交渉を行います。しかし、示談金がいくらになろうとも支払額は保険会社の認定額までです。つまり、保険会社の認定額以上の示談金は顧客負担となってしまいます。したがって、心配なので営業担当ながら私も同席し、示談交渉を手伝います。これは実質、担当者である私が示談代行(代理交渉だと違法です。保険会社の人間はあくまで「代行」なので違法ではないと解釈されています)をすることになります。

 そこで被害者親子に保険会社の提示額320万円の説明を行い、「申し訳ありません。これ以上支払いはできません」とひたすら土下座です。

 対して、心優しい親子は、    「秋葉さんがそう言うのなら仕方ないです。それで示談でいいです」と・・・。    会社に戻り、支払担当者から「秋葉くん、よくまとめてくれた!さすがだね!」と賛辞の嵐、支払部門は大喜びです。このように保険会社時代、営業担当でありながら、いくつもの交通事故を解決させました。

 この被害者さんは、骨盤骨折癒合不良による股関節の可動域制限、排尿障害で併合9級(自賠責基準で616万)となるような障害です。介護料なども勘案すれば少なくとも2000万程度の損害賠償が見込まれます。しかし、後遺障害のことなどまったく触れずに示談成立です。

 当時は現在のように後遺障害、賠償の知識がありませんでしたが、320万はあり得ない、その倍額位にはなるのでは?と思っていました。これからおばあちゃんはどのくらい苦しむのだろう・・・息子さんは介護のために仕事を犠牲にするのだろうか・・・それとも自費で介護を行うのか・・・320万では焼け石に水です。    もうね、嫌になったのですよ、保険会社側の仕事が。    このようなケースは決して珍しくありません。交通事故の実際とは、そして保険会社とは・・・時に被害者にとって大変厳しいものなのです。もちろん、保険会社の存在が、広く被害者を助けている現実は承知しています。それでも、重傷者の多くは十分な損害の立証を経ないまま、余りにも低い賠償金で解決されています。被害者が損害の立証方法や賠償額の相場を「知らない」が故、320万円で許すと言えば確かに民事上の契約成立=示談です。なんら違法ではありませんし、安い支払いに抑えることが営利企業である保険会社の望ましい立場です。それはわかっています。そこで割り切れるか否か、先のような経験が少なければ損保業界に残っていたでしょう。残念ながらそのような経験の数は多く、私は割り切れませんでした。しばらく腐って仕事はそこそこに、ロックバンドに加入、ライブ活動中心に生きていました。  

 それからなんだかんだで10数年、腐ったままにはあまりにも長い年月を経て思い立ちました。保険会社は確かに被害者を助けていますが、それはあくまで加害者側の責任を全うすることであり、契約者である加害者を助ける仕事です。結果として、反射的に”広く浅く”被害者を助けているに過ぎません。    そこからこぼれた被害者を担う、”狭く深く”助ける人も絶対に必要です。どうせ仕事をするのなら、そこで仕事をしよう!・・・そして現在に至るのです。    今なら、先の親子のために後遺障害9級の認定を行ない、弁護士と共に1000万を超える額を得るために戦うでしょう。    これが私の原点です。保険会社の社員・関係者は国内に10万人、少しくらい被害者の味方になっても良いと思います。

 すべての仕事に共通しますが、「志」のない仕事は単なる金儲けです。この精神を来月から研修を受け持つ後進に伝えていきたいと思います。  

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