c_y_164  多くの方は「無保険車傷害特約の約款が独立した?、だから何?」と思うでしょう。しかし、相談会にやってくる被害者さんで、「相手が任意保険に加入していないので困った・・」は決して少なくない相談なのです。これは私たちのような被害者救済を生業とするものとって座視できない問題なのです。  

<無保険車傷害特約をおさらい> 

 保険に入っていない、保険が足りない、支払い能力のない加害者やひき逃げ等で相手が不明の場合、自ら加入の保険が代わりに支払います。契約自動車に乗っているとき、歩行中や自転車、他の車(任意保険に入っていない)に搭乗中でも適用されます。  契約本人はもちろん同居の親族全員が対象となります。契約自動車に搭乗中の事故であれば他人もOKです。  死亡、後遺障害の場合に限定されます。実額を補償をしますが、限度額は会社によって最高2億円、もしくは無制限です。  

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 損保ジャパン自動車保険、平成26年7月改訂で「無保険車傷害特約」が人身傷害特約の約款から離脱しました。

 長らく対人賠償特約に含まれていた(つまり自動担保)「無保険車傷害特約」が、対人賠償の約款から切り離され、人身傷害特約に吸収されたのは2年前のことでした。しかし以前の記事で指摘したように、損保側も自ら矛盾と混乱を理解したのでしょうか・・やはり支払い基準を無理やり人身傷害特約に合わせようと、同じ約款に組み込んだのは失敗だったと思います。

 結局、同特約は対人賠償の約款に戻らず、独立した条項になりました。迷走していた「無保険車傷害特約」はついに独立を果たしたのです。   yjimageU3E33L9F  こんな感慨にふけっている行政書士は日本に私だけかもしれません。興味ある方は「そして無保険車傷害特約は吸収された」を読んで下さい(長いシリーズですよ)

 まずは証券からそれぞれクリックしてご確認を、  

2年前の人身傷害特約への吸収

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 今年の秋、10月から各損保会社は自動車保険の約款改定を行います。昨年のノンフリート等級改定に比べれば細かな改定ですが、以前から要望が高かった弁護士費用特約もその対象です。以下、東京海上日動さんの内容を抜粋します。支払い内容についてより具体的な条項が加わった印象です。  

弁護士費用等補償特約(日常生活)の改定

   弁護士費用を算定する場合において、一般的にはその費用算定の対象に含まれない以下a.b.の額に対する費用は、弁護士費用等補償特約(日常生活)の補償の対象外とします。  

a.保険金の受取人が損害賠償請求を行った額のうち、補償を受けられる方の過失により減額された額  

b.損害賠償の額のうち、既に保険金の受取人が受領済みの額  

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<解説>

 a.の内容は「依頼者側の過失割合により減額された賠償金分は報酬計算の対象金額ではないですよ」とのことです。報酬とは相手から勝ち取った金額からのボーナスですから、常識的にa.の通りですよね。  また、仮に自身が契約している人身傷害特約に「過失減額された分を請求・補てんしたとしても、この補てん額は弁護士の交渉で獲得した金額ではない」と念を押されそうです。

 b.の内容は、「依頼者側がすでに相手の保険会社から受け取ったお金や、自身が加入している人身傷害特約から受け取った保険金は報酬計算の対象から引いて下さい」との意味です。これらは弁護士の介入に関わらず支払いが受けられたお金なので、弁護士の仕事の成果ではなく当然に差し引くことになります。

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 先月の代理店内研修から、質問と回答を取り上げたいと思います。  私自身、長く損保業界におりまして代理店経営を通してそれなりに経験を積んできました。しかし交通事故外傷に深く関わる現在の仕事になって初めて知ったことがたくさんあります。損害保険のプロである代理店さんと言えど知らないことが実に多いのです。特に後遺障害の知識については、意図的と思えるほど保険会社は隠匿して代理店や社員に教えていないと感じています。  そのような中、研修会では活発な質疑応答が展開します。おなじみのQ&A方式でいくつか紹介します。

  (質問)  相手が任意保険に入っていません。しかし被害者請求しなくても契約者さんに人身傷害特約が付いています。人身傷害の対応で問題ないでしょうか?

(回答)  確かに治療費の確保が出来て一安心です。しかし慰謝料はあくまで任意保険会社基準です。特に後遺障害が残るような重傷では、最終的に弁護士の請求する金額の半分以下(注)で解決となり、大変残念です。その場合はまず治療費・休業損害は人身傷害で確保します。そして後遺障害についてはあくまで相手を訴え、判決をとってから、判決額を自身の保険会社の人身傷害特約と無保険車傷害特約に請求します。人傷社はその判決額をそれなりに尊重します。これでもらえる金額が14級でも100万以上差がつきます。

 人身傷害特約ですべて解決では大損します。

c_y_164 謝るよりちゃんと補償せい!

(注)高齢者や被害者に過失割合が大きい場合はその限りではありません。  

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 弁護士費用特約は交通事故で代理人を雇う場合、被害者にとって重宝する特約です。しかし普及率は上昇するも使用率は低く、まだ一般的な印象は受けません。しかも保険会社の支払い基準は不明瞭で、各社、各担当者、案件ごとにまったく統一的な運用が成されていません。また、依頼を受けた弁護士・行政書士が費用を依頼者からではなく、直接、保険会社に請求することから、保険会社ともめることが多いようです。

 さて、最近の払い渋り、いえ、支払額提示で面白い対応をした保険会社をある弁護士先生から聞きました。今回はそれを紹介します。(仮名とします)  

弁護士に支払う報酬は人身傷害特約の支払い基準を超えた額から計算します

 AKB法律事務所の前田先生は被害者の後遺障害の申請を代理し、被害者請求にて等級獲得後、賠償交渉を経て解決させました。最終的な賠償獲得額は1500万円です。ここから着手金と成功報酬を合わせて252万円(旧日弁連基準報酬)を保険会社に報酬を請求したところ、請求額全額に応じられないとの返答です。その保険会社の計算とは・・・  

担当者:「本件の場合、弊社の契約に付帯していただいている人身傷害特約に先に請求して下されば700万円を支払うことができました。したがって弊社の特約を使わずに相手から獲得した賠償額は実質800万円と考えます。よって800万円に対する報酬を旧日弁連基準で計算します・・・

 800万円×(5%+10%)+9万円+18万円= 147万円 をお支払いします。  

前田弁護士:「えーっ! 頑張って後遺障害認定業務も行ったのですよ!」  

担当者:「いえ、頑張ってもらわなくても弊社の人身傷害特約を使っていただければ、700万まではお支払できたのです。それを敢えて被害者請求を行ったので、弊社としては700万円を超えた額である800万円を対象として計算します。」

  前田弁護士:「そりゃないよ~」

               c_y_193

 この担当者の払い渋り、いえ、報酬計算には思わず「座布団一枚!」、一休さんのとんちを見るようです。このような鮮やかな(へ)理屈を持ち出す保険会社、さすがとしか言いようがありません。

 しかし本例の場合、契約者(代理人 弁護士)の意向は、あえて人身傷害特約を請求せずに相手に賠償請求をすることです。契約者の代理人が行った一連の作業とその成果を尊重しない保険会社の姿勢はやはり問題があると言えます。これを弁護士費用特約のスタンダードな報酬計算とすれば、金融庁だけではなく契約者からも非難は避けられないと思います。   

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 昨日の山梨病院訪問は3件でしたので、石和温泉駅からレンタカーを使用しました。特急列車で現地入りして、レンタカーでまわる。新しい攻撃パターンです。  手続きの際、窓口で丁寧に保険を説明してくれました。それを踏まえ、レンタカーならではの内容を少し解説します。   ■ 保険補償額 1、対人補償 1名につき無制限(自賠責保険の補償額含む) 2、対物補償 1事故につき無制限(自己負担額5万円) 3、車両補償 1事故につき車両時価額まで(自己負担額5万円) 4、人身傷害補償 1名につき3,000万円まで 5、自己負担額について 続きを読む »

 先日、仲間のMC山崎先生から情報をいただきました。それはある保険会社の担当者さんが弁護士費用特約の支払いに対し、厳しい目を向けざるを得ない、不届きな法律家さん、事務所を名指しで挙げたことです。以前にも記事に取り上げましたが、「保険会社の特約があるのだから・・・」と無茶な請求、アンフェアな請求をする弁護士、行政書士が少なからずいるのです。 困ったものです。

 

弁護士費用特約が出なければ、後は保険会社に文句言ってね

 これはある行政書士事務所の対応ですが、被害者に弁護士費用特約が使えます(使える可能性があります)と言っておきながら、費用が出なくても責任は取らない、やり方です。

① 契約の際は「弁護士費用特約で私どもの報酬はまかなえますので」と言います。被害者は迷わず「お金がかからないなら!」と即断、契約します。

② 仕事の完了後、相手が保険会社なのだから・・と普通より高額の請求をします。

③ 保険会社が支払いを渋ると、

④ すでに委任請求(被害者に代わって請求しますので、自賠責保険金を事務所口座に振り込ませています)で保険金を握っていますので、そこから報酬を抜き取った差額を被害者に支払います。その際、「保険会社が払わないのが悪い、うちには責任ありません」の姿勢。

⑤ すると弁護士費用特約から費用が出ると思っていた被害者は怒り心頭、保険会社に文句を言います。

⑥ ...

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 最近、弁護士費用特約についての質問が重なりました。どのような場面で使える保険か?少し約款に踏み込んでみましょう。

 まず、弁護士費用特約を簡単に説明します。

 交通事故で被害者となり、事故相手との交渉や賠償金請求行為をするために代理人を使ったり、公的機関を利用した費用について、自分がかけている自動車任意保険のこの特約からその費用が支払われるものです。  各社多少違いがありますが、限度額は以下の通りです。

弁護士費用

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 A君は早速、会社の事務に「自損事故保険が出るそうなので、手続きお願いします」と願い出ました。しかし事務の担当者も、「それ何ですか?良くわからないので・・・」困ったようです。そこで上司に同じようにお願いしても、「上に言っておくよ」と言いましたがそれっきり。会社はなんだかよくわからない保険だし、労災でA君を補償したのだし、障害で会社を辞めるようだし、・・・親身になってくれないのです。

 仕方ないので私が会社の担当者に説明を申し出ました。まずは会社の事務、続いてその上司に説明、すると会社の弁護士がでてきて、「労災で十分でしょ」と頓珍漢な対応、まったく自動車保険を知らないようです。まるでA君が会社相手に訴訟を起こそうとしているとでも思っているのか、変に力が入っています。

 弁護士を相手にしていてもダメなので、会社の保険を担当している代理店さんに話を通しました。自損事故保険については、さすがに代理店、多少(多少では困りますが・・)知っています。「早速保険会社に聞いてみます」と返答、そしてN保険会社も「出る可能性があります」との返答になりました。

 しかしさらに障壁、会社の部長が「会社に許可もなく勝手に保険を使っては困る!」そして「掛け金が上がるのでは?」と横槍です。会社には再三請求のお願いをしています。そしてすでに対人・対物賠償の適用・支払となっており、追加請求が出ても来年の等級ダウン、掛け金UPは決まっています。

 この部長にしっかり説明し、「会社には一切迷惑がかかりません」と約束し、理解を得ました。これでようやく保険の請求手続きです。 保険金請求書と後遺障害診断書を提出しました。

 障害の内容から後遺障害保険金10級280万円、入院1か月で18万円、通院40日で16万円、合計314万円となるはずです。しかしここに至ってもすんなり支払ってくれません。

N保険会社 担当者:「自損事故保険は相手の自賠責保険からの支払のない場合に支払われます。したがって相手にも過失の可能性があるので、ごにょごにょ・・・」

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 ハンドルを誤って崖から転落、電信柱に衝突などの自爆事故や、止まっている前車に追突してケガ=100:0(100%自分責任)事故などでは当然ですが相手からなんの補償もされません。そうなると自分の加入している保険からのでるものを探します。この場合、自動車任意保険からは自損事故保険(特約)が適用されます。しかしかなりの受傷者が保険をもらいそびれているのではないかと危惧しています。

 では実際にあった自損事故保険(特約)が適用されたエピソードで解説します。

 

 A君は運送会社の新米ドライバーで入社半年目、ようやく2tトラックの運転も慣れてきました。しかしあるときハンドル操作を誤ってセンターラインをオーバーし、対向車に衝突、右足首を骨折してしまいました。幸い対向車も大型トラックで、相手ドライバーも軽傷でした。  てこの2tトラックには会社で加入している任意保険があったので、ここから相手のケガに対人賠償を、相手の車の修理費に対物賠償をそれぞれ適用し、無事に解決できました。ただし、運送会社ではたくさんの車両に任意保険をかけているので、自動車保険を最低限に切り詰めています。相手への補償は対人:無制限、対物:1000万まで掛けていますが、運転者に対する補償である、人身続きを読む »

 償いの為の賠償保険(対人賠償保険・無保険車傷害特約)

・・・裁判となったら判決された賠償額を払います。 teresa  契約する際、定額補償を約束した傷害保険(人身傷害特約)

・・・契約時に定められた金額、基準にて支払います。 続きを読む »

 再開します。

 傷害保険として自社基準で支払いたい「人身傷害保険」。各社約款の修正、その前に運用基準の明示に入りだしました。  

A、後遺障害を伴わないケガについてはこちらを優先適用します。  人身傷害の支払基準は約款にほぼ明示されています。各社対人賠償の基準に準じていますが、その対人賠償と同じく、後遺障害を負った被害者に対する逸失利益の計算などは約款上、「被害者の障害の部位・程度、年齢、職業、現実収入等を勘案して決定します」としています。したがって担当者がそれらを考慮して決定するのです。この決定に関わる細かなルールを運用基準(影の支払基準)としています。私も会社のサービスセンター(保険金支払い係)研修の際、この「運用基準を見せて」とお願いしましたが、「これは社員でも担当以外は見せられない」と拒否されました。これは保険の自由化後の現在でもマル秘ファイルであることは変わりません。  対人賠償や人身傷害の積算(損害額の計算)の際、この運用基準は用いられます。逸失利益だけではなく、慰謝料や休業損害、その他多肢にわたるはずです。支払保険金の削減が至上命題である担当者にとって、この運用基準の中で保険会社有利に計算することで支払額の抑制が容易に可能となります。

 さらに無保険車による受傷で自分の任意保険に請求する際、「後遺障害を伴わないケガについては人身傷害保険で」とのルールが運用基準に存在し、それを証券、パンフレット上にも明示したと推察できます。無保険車傷害特約を請求する際、各社口をそろえて「人身傷害保険で支払います」と回答し、「人身傷害が優先です!」との社内ルール(運用基準か?)を押し出してくることからそう思うのです。一方、契約者が請求したい特約を自ら選べないのはおかしな印象を受けます。 

 もっとも後遺障害を伴わないケガの場合、3000万円を超えるような損害はほとんどありえません。実際の運用上、的を得たルールです。しかし、無保険車の相手に対し、後遺障害が残らないケガでも裁判をする場合もありえます。判決された賠償額について、相手の支払い能力がないため、自分の任意保険会社に請求するとします、その場合「後遺障害がないのでAのルールを適用します。したがって任意保険会社の基準で支払います」となり、裁判の判決額は払えない事になります。

             

 これでは困ります。やはり両保険が併存して契約されている限り、永遠にこの問題が付きまといます。          

 そして、先進的に約款改定を行う東京海上、損保ジャパンは、思い切った修正をしたのです。

                                          つづく

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 昨日は日米・交通事故賠償の土壌の違いを挿入しました。アメリカでは保険会社の独自基準より、代理人弁護士による裁判基準が幅を利かせているのです。州によっても差がありますが、被害者が直接、保険会社と示談し、保険会社の基準額で解決することは一般的ではないのです。対して日本は某損保会社の数字を見ると84%が保険会社対被害者、もしくは保険会社対保険会社の示談で解決しています。

 84%・・・つまりこの国の交通事故賠償はほとんどが保険会社主導なのです。裁判や弁護士の交渉なんて、めったなことでは起きない少数例と言えます。かと言って、アメリカの「訴訟社会」を礼賛しているわけではありません。なんでもかんでも紛争を拡大し、賠償金を吊り上げ、自らの収入UPを考えている弁護士が多いアメリカはぞっとします。しかし日本の極端な「保険会社主導社会」が健全なのでしょうか。

 「保険会社主導社会」、これをどう判断するか?  

保険会社=「紛争の拡大・高騰化を防ぎ、社会秩序の安定に寄与している」   

被害者=「保険会社の囲い込みに蹂躙されている」   

 この立場を違えた評価はどちらが真実なのか、それとも陰陽、2重の側面なのか・・・

 保険会社にとって自社基準で支払う事が当たり前であると同時に、裁判規準などとんでもない話なのです。弁護士を介さず、自社の対人賠償の担当者で示談をしたい、無保険車障害特約は使わずに人身傷害保険で支払いたい、このように自社基準での「囲い込み」が至上命題となります。  

 無保険車傷害特約シリーズ、ついに核心に近づいてきました。

 つまり無保険車傷害特約と人身傷害保険はその出自(誕生の経緯)と併存(途中から人身傷害保険が輸入され、1つの保険に2つとも含まれた)から、日本の賠償基準がダブルスタンダード(裁判基準と保険会社基準)で、その両者の乖離が極端(支払い保険金が何倍も違ってしまう)であることを大々的に示してしまったのです。そして何より、どちらに請求するかによって支払い基準の差でたいへんな損得が生じてしまう!

 これに気づいた保険会社は約款の修正に入りだしました。

 いよいよ自動車保険最大のタブー、多くの論点に紆余曲折しつつも収束に向かいだします。  つづく  

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 続きます。

 先週「(無保険車傷害特約の)裁判基準」か「(人身傷害保険の)保険会社基準」と書きましたが、これは正確ではありません。約款上、無保険車傷害特約も人身傷害保険もそれぞれに保険会社の支払い基準が記載されています。

 しかし、過去私が携わった、もしくは承知している無保険車傷害特約の請求は3件ですが、すべて保険会社は裁判で決まった賠償額を(渋々)支払いました。対して人身傷害特約の請求では「約款に書かれた基準で!」とかなり強硬です。この二つの保険の支払対応にはかなり温度差があります。

 なぜでしょう? これは自動車任意保険の誕生の秘密にさかのぼります。やや私の推論も含みますがお聞きください。

 加害者の賠償責任の肩代わりにより、交通事故被害者の救済を果たし、社会の安定を目指す。・・・このような社会的ニーズから自動車任意保険の販売は認可されました。社会的責任の強い商品であるからこそ、発売当時は「全社同じ内容、同じ掛け金、同じ支払基準」で販売されました(これは平成10年の自由化で撤廃されました)。その政府の認可に至る過程で、以下のような理屈が浮上しました。

 「対人賠償の掛け金を払って被害者の救済に備える契約者が、もし逆に保険を掛けていない(支払い能力もない)相手の自動車事故で被害にあったら?」

 

⇒「自分は相手に対して補償を備えているのに、無保険車に被害を受けて補償が得られない。これは不公平ではないか!」  

⇒「では対人賠償をかけている人にも救済が図れるよう、自動的に無保険車傷害特約を適用しましょう。」

 

 これは保険に「公平の原則」という崇高な理念が織り込まれているからです。

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(Q2) Aさんに昨日の「パターン1」での解決を説明しましたが納得できないようです。 「自分が悪くないのに、自分の保険を使って解決することは理不尽だ!何より無保険の上、まったく責任を感じていないBさんを許せない!」 

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 人身傷害保険について基本的な内容、特徴を抑えましょう。この保険を理解しないと明日以降わからなくなってしまいますよ。  

補償内容

 人身傷害補償保険では、けがによる治療費の実費や、働けない間の収入、精神的損害を幅広く補償します。また、会社によっては自動車による事故だけでなく、犯罪被害事故の補償もカバーします。

 

1、契約している自動車に乗っている時に事故に遭い、ケガをした。特約によってこの1の補償のみに限定することができます。

 

2、他の自動車に乗っている時に事故に遭い、ケガをした。(ただしその車についている人身傷害保険が優先的に適用されます)

 

3、歩行中、自転車搭乗中に自動車との接触事故に遭い、ケガをした。

 

4、バスや電車、船、飛行機等の交通乗用具に搭乗中、ケガをした。なぜかエレベーター搭乗中も含みます。

 

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 これから自動車保険の深部に踏み込みますが、まず自動車保険の基本的な理解が必要と思います。今更ながらですが、少しお付き合い下さい。

 自動車保険は<賠償保険>と<補償保険>そして<特約>の3つから構成されています。

<賠償保険>

■ 対人賠償責任保険  

 自動車を運転していて誰かをケガさせた。その金銭的償いと代理交渉をします。

■ 対物賠償責任保険

 自動車を運転していて誰かの物(自動車をぶつけて)壊した。その金銭的償いと代理交渉 をします。 <補償保険>

■ 人身傷害保険

① 運転者、同乗者が契約している自動車に乗っているときにケガをした場合、実際にかかった金銭の補償をします。

② 契約者とその同居の親族が歩行中や自転車走行中に他の自動車と事故になったとき、他の自動車に乗っているときにケガをした場合、実際にかかった金銭の補償をします。

③ 契約者とその同居の親族が自転車や他の乗り物(電車、バス、飛行機等、主に公共交通機関)に乗っているときにケガをした場合、実際にかかった金銭の補償をします。

★ ①②③すべて含むのが原則ですが、①のみ選択した契約も可能です。また③は各社廃止の傾向です。

■ 搭乗者傷害保険

A: 運転者、同乗者が契約している自動車に乗っているときにケガをした場合、死亡の場合、死亡金額、後遺障害の場合その等級による金額、入通院の場合、部位や重さにしたがって定額でお金がおります。

B:運転者、同乗者が自動車に乗っているときにケガをした場合、死亡の場合、死亡金額、後遺障害の場合、その等級による金額、入院や通院の場合、その日数×保険日額で計算してお金がおります。

★ 契約の際、AかBの選択となります。またAのみ販売の会社が多くなっています。またAの死亡・後遺障害を含めない契約も増えています。               続きを読む »

 「自動車保険の更新、ちょっと待って! もっと安くなるかもしれませんよ!」

 通販型自動車保険の宣伝、その決め文句ですが、毎年自動車保険の更新について細かく検討している人は少ないと思います。何と言っても分かり辛い。字が小さい。どこも同じでしょ・・・そんな印象からじっくり証券やパンフレットを見ることは少ないと思います。そして「昨年と同じでいいです」と更新します。しかし私たちのように交通事故、自動車保険に深く関わる仕事をしていますと、保険内容の細部にまで注目しています。

 昨年の更新で保険証券に若干の変化がありました。以下保険証券から抜粋した『人身傷害特約』の欄をご覧下さい。

(クリックするとはっきり見ることができます)

『無保険車傷害』⇒ 注:『人身傷害で補償されます』

   …ん、これはどういうことでしょうか?

 さりげなく書かれていますが、これは被害者にとって隠れた大問題です。  

 まずは『無保険車傷害特約』からおさらいしましょう。これは保険に入っていない、支払い能力のない加害者にケガをさせられた時、もしくはひき逃げ被害などで相手から補償が受けられない分を自分の自動車保険で補償してくれる有難い特約です。あまり馴染みのない保険ですね。もう少し説明を加えましょう。

 ある時、自動車事故に遭って大ケガをしました。死亡事故はもちろん、後遺障害を負うようなケガとなると賠償金は大金になります。また車の修理費を相手はちゃんと補償してくれるでしょうか?「相手の保険から払ってもらうので大丈夫では」・・このように考える方も多いと思います。しかし、相手が任意保険に加入していなかった場合、相手はすんなり自身のお財布からお金を払ってくれるでしょうか?任意保険に入らない精神の持ち主ですよ。もしくは掛け金が払えない経済状態?・・このような人からお金を取ることは絶望的です。

 それでは、任意保険に加入せずに走っている自動車はどのくらいあるのでしょうか?

 任意保険の加入車は各社の統計で容易に割り出せます。そして全登録車を分母にすれば、大まかな加入率が割り出せます。最新の統計を見てみましょう。

 全保有台数78660773台の内、対人・対物賠償の加入率の全国平均は73.4%です。(平成23年3月末 損害保険算出機構データ)

 使用していない自動車を差し引く必要がありますが、約80%が保険加入車と想像できます。そうなると任意保険に加入しないで走っている自動車は2割ほどということになります…。5台に1台、けっこう多いと思いませんか。

 「自賠責保険(強制保険)があるから大丈夫」、このような反論もあるかと思います。多くの方が誤解していますが、強制保険は補償が非常に限定されたものです。死亡の場合3000万円、後遺障害の場合4000万円、加えてケガの補償は120万までです。大ケガの場合、当然足りなくなります。そして対人賠償限定なので、車の修理費など物の損害はでません。  このような場合、ケガをしたご自身が自動車任意保険に加入していれば、『人身傷害特約』もしくは『無保険車傷害特約』で補てんすることが可能です。ちなみに車の損害の場合は『車両保険』です。自分が悪くない事故の時に自分の保険を使うのは理不尽ですが、これにより一定の救済が図れますので、「入っていてよかった~」ことになります。

    ちなみにゴールデンウィークに『無保険車傷害特約』を取り上げましたところ大変な反響を頂きました。 ...

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 おはようございます。毎度のことですが、交通事故相談で「相談者自身の保険契約を精査すること」、これを忘れないようにしています。  

<実例>

 自転車で走行中、交差点で自動車と出合い頭で衝突し、足を骨折しました。そして自分にも事故の責任を指摘され、相手との過失割合が10:90となりました。結果として最終的に賠償額から10%削減されて支払われることになりました。 

 「悔しいです・・なんとか0:100にできませんか」  

★ ポイント1

 しかし、必死になって過失割合の交渉をしなくても、ご自身が契約の自動車保険の人身傷害特約でその削減分を請求し補填することが可能です。これは自動車との事故であれば、契約自動車に乗っていない場合、歩行中や自転車搭乗中でもOKなのです。

 ※ ただし「搭乗中のみ担保特約」となっていれば、契約自動車搭乗中に限定されます。   通販型の保険はこれが多いので注意です。  

★ ポイント2

 この自身契約の自動車保険ですが、自分が契約していなくても、「同居の親族」の誰かが契約していれば、保険が適用されます。

★ ポイント3

 さらに、被保険者(保険が受けられる人)の欄に「同居の親族」だけではなく「別居の未婚の子」が記載されていませんか?この別居の未婚の子とは、通学のために別居に下宿している子などが代表例です。しかし、学生に限らず、独身の40歳OL一人暮らしも範囲に入ります。このOLさんが東京で交通事故でケガをして、なんと!九州の実家の親の自動車保険が使えるケースが有り得るのです。

※ 「別居の未婚の子」に年齢制限はありません。婚姻歴無のみが条件です。  一度結婚し、離婚して独身になってもダメです。ですので18歳で結婚し、19歳で離婚バツ1となった人は、未成年であっても「別居の未婚の子」から外れます。なんか腑に落ちませんが、保険約款が民法の「成年擬制」の条項に準じているためと思われます。

<民法第753条>

未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。

民法上、未成年でも婚姻すれば成年と同じように行為能力者とみなします。男子の場合18歳、女子の場合16歳になると婚姻をする事ができますが、婚姻によっても成年に達したものとみなされます。これによって親権者の同意を得ずに単独で法律行為が可能になります。この効果は離婚しても消滅しません。つまり、法律上20歳で大人ですが、未成年でも1度結婚したら大人と扱う、ということです。

  ★ ポイント4

 この「別居の未婚の子」の解釈は他の特約や保険でも共通です。

・ 弁護士費用特約   ・ 無保険車傷害特約 ・ 個人賠償責任保険 ・ 家族傷害保険(共済)      <まとめ>   保険適用に気付かずに請求漏れが多いと推測します。請求しなければ保険会社は払ってくれませんので。また、弁護士や行政書士に相談しても、その先生方が保険に精通していなければ見落とします。

事故相談で必ずすること・・・「自身の保険契約を洗い直す!」です。

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