耳介血腫(じかいけっしゅ)

     (1)病態

 耳介は、軟骨の上に、軟骨膜と皮膚を貼り付けたような形であり、耳介が強く擦られると、皮膚と軟骨の間が剥がれて隙間ができ、そこに血液が溜まって、紫色に腫れ上がります。溜まった血液=血腫が、軟骨への血液供給を遮り、軟骨は壊死して耳が変形するもので、傷病名は、耳介血腫といいます。

 この変形は、力士耳、カリフラワー耳と呼ばれ、相撲、柔道、レスリング、ボクシング、ラグビーの選手によく見られます。確かに学生時代、柔道部の仲間にみられました。彼らは変形した耳を「餃子耳」と呼んでいました。

 交通事故の場合、歩行者、自転車やバイクの運転者が転倒した際、路面に耳を挫創するケースが想定されます。   (2)治療

 穿刺、吸引で血液を除去し、穿刺針を2週間ほど留置する方法や耳介の後面を切開、軟骨を除去することで、前面の血腫を除く形成術が実施されています。

 隙間に溜まった血液は、注射針で吸い取っても、直ぐに、血液が溜まってくるのです。完璧に治癒させるには、隙間をなくす形成術を受けなければなりません。耳介血腫を繰り返すと、その隙間を埋めるように、軟骨が盛り上がり、耳介が変形します。耳介の変形では、形成術で、新しくできた軟骨を切除する治療となります。

 放置すると、元に戻ることはありません。耳介は硬くなり、付け根が切れやすくなります。   ※ 耳介  耳介は、軟骨の折れ曲がるヒダにより、集音と音の方向性の確認に有効な役割を果たしています。耳たぶは、ヒダの凸凹で音の違いを拾い、共鳴させることにより、音を外耳道に送り込んでいます。耳介の後に手をかざすと、音が大きく聞こえるのですが、耳介は、集音作用の働きをしています。    「 私の耳は貝のから、海の響きをなつかしむ 」    フランスの詩人、ジャン・コクトーの詩を、堀口大学さんが訳したもので、心に響く2行の詩です。耳介は、貝殻に似ています。   (3)後遺障害のポイント

 耳介裂創のところで、まとめて解説しています。     次回 ⇒ ② 耳介裂創  

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