耳介裂創(じかいれっそう) 耳垂裂(じすいれつ)
 

 
(1)病態

○ 耳介裂創

 耳介が強く擦られると、耳介血腫を引き起こすことは、前回で解説しています。前回は、耳介の強い擦過傷による耳介血腫でしたが、今回は、耳たぶが切れたもの、引き千切られたものを耳介裂創と呼びます。
   
 近年、男性のピアスも珍しくなくなりました。そんな流行もあって、交通事故、歩行者、自転車、バイクの運転者では、ピアスごと、耳を引き千切られるお気の毒な例が激増しています。
 
○ 耳垂裂

 交通事故により、ピアスなどで耳を引き千切られたものは耳介裂創と診断されますが、それよりも小規模で引き裂けたものは、耳垂裂と診断されています。耳垂裂では、組織が残っていることがほとんどで、修復、形成は容易で、後遺症を残しません。
 
(2)治療

 耳介裂創、耳垂裂共に、事故後早期に適切な処置や形成術がなされれば、ほとんどで、後遺障害を残すことなく治癒しています。

 耳介が引き千切れたときも、事故直後に対応され、その部分が小さければ、そのまま縫合できます。また、大きくても顕微鏡下の手術で血管を縫合できれば、再接着します。他にも、いくつかの形成手術の方法があり、形成外科の専門医を受診しなければなりません。 
  
(3)耳介血腫、耳介裂創における後遺障害のポイント

Ⅰ. 後遺障害を残すのは、以下のパターンです。

 頭部外傷、意識喪失、瞳孔散大では、ICUで、頭部外傷の治療が優先され、耳介血腫や耳介裂創、耳垂裂は、止血処置のみで放置されています。

 自賠法では、耳介軟骨部の2分の1以上を欠損したものは、耳殻の大部分の欠損に該当し、12級4号が認定されています。これは、1耳を想定していますから、両耳では、併合で11級が認定されます。


 
Ⅱ. 耳殻の大部分の欠損を醜状痕として捉える

 醜状障害で捉えると、9級16号も検討すべきと考えます。醜状痕の場合、いずれか上位の選択となるので両耳であっても併合はありません。

 耳殻の2分の1に達しない欠損でも、外貌の醜状に該当すれば、12級13号の対象となるはずです。醜状障害として請求することも覚えておいて下さい。
 
 これは、実務上、未経験ですので、機会があったら自賠責保険・調査事務所に諮問してみたいと思います。
  
 次回 ⇒ ③ 耳鳴り  耳の後遺障害、最大勢力はこれです