■ 病態説明

 二の腕の骨折です。骨幹部は骨顆部(骨の両端、関節部分)に比べ癒着後も偽関節(くっつかない)や変形を残しづらいと言えます。しかし骨折の種類によって油断ならない特有の後遺障害を残すこともあります。

骨折の形態を復習しながら続けます。

■ 治療

 わずかな亀裂なら保存療法で済みますが、左図のような骨折となると観血的手術でプレート固定となります。  また、開放骨折(折れた骨が上皮を突き破って露出)の場合も当然に手術療法となります。  保存療法では吊り下げギプス固定(ハンギングキャスト)や肩や肘の動きの邪魔にならない機能的装具が用いられます。  

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 骨、筋肉、靭帯、神経と解剖が続きました。いよいよ症状別各論に入ります。やはり図・写真の多用は避けられません。長い文章より如実に語ることができます。

■ 病態説明

 顆部骨折(長管骨の両端、関節部分)の骨折すべてに言えますが、骨粗鬆症に関連した中高年に多く、転倒の際、肩からはもちろん、手をついて転倒した際にも受傷がみられます。 <上腕骨近位端の部位名称>

① 上腕骨頭  ② 小結節

③ 大結節   ④ 骨幹部

a: 解剖頚  b:外科頚 

 

 

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 ムチ打ち、外傷性頚部症候群の症状の多くに単に首の痛みだけではなく、上肢~手指にかけての放散痛(電気が走るようなしびれを伴った痛み)がみられます。何故でしょうか?それは首の神経が鎖骨の裏を通り、腕から手指にかけてつながっているからです。

 また上肢の拳上が不能となるようなケースもあります。これは首の左右の神経根の圧迫、神経孔の狭窄(きょうさく)、つまり首の頚椎と頚椎の間を通る神経がヘルニアや変形した骨の圧迫を受けたり、神経を通る隙間自体が狭くなるために起こります。稀に脊髄自体に頚椎やヘルニアの圧迫がある正中型神経圧迫でも発症するケースがあります。ひどい例ですと肩が上がらなくなった被害者(脊髄前角障害)も経験しています。

 腕の拳上不能の原因は、肩腱板か? 上腕筋の損傷か? 頚部神経症状か?…医師の診断力が試されるところです。   

5、腕の支配神経

腕神経群

 前述のとおり、頚部の神経節を発し、鎖骨の裏側を通り抜け腕に達します。ちなみに胸郭出口症候群ではこの鎖骨裏の神経群が圧迫を受けて症状を発します。

  A.腋窩神経(えきかしんけい) 続きを読む »

4、肘の靭帯    二つの靭帯によって関節の安定が保たれています。    橈骨側(親指側)に外側側副靭帯  尺骨側(小指側)に内側側副靭帯    輪状靭帯とは橈骨頭を取り巻いている橈尺関節の一部で、前腕の回内と回外を可能にします。

やはり平面図ではわかりづらいです。 肘関節模型で再度見てみましょう。

橈骨側                尺骨側 続きを読む »

3、前腕筋群 ・・・肘から手首にかけての筋肉    まず、大きく2つの筋肉の束に分かれます。それぞれ手指の靭帯につながっていますので、基本的な解釈として、「手首をそらす(背屈)、指を伸ばす、広げる」には前腕伸筋群が作用、「手首を曲げる(掌屈)、指を曲げる、握る」には前腕屈筋群が作用します。これだけを頭に入れておけば足りるように思います。

前腕伸筋群             前腕屈筋群  続きを読む »

 昨日は骨を確認しました。今日は筋肉の名前を覚えましょうか。CG画像を使って見ていきましょう。    2、上腕筋群・・・上腕(二の腕)の筋肉   表側(胸腹側から見る) 裏側(背中から見る)  筋肉が束になっていますので、さらに細かく解剖します ↓     ① 上腕二頭筋  続きを読む »

 まずは解剖学的なアプローチ、各部位の名称を確認しましょう。    ご相談者から単に「腕を骨折しました」と言われても、後遺障害の具体的な回答はできません。また毎度のことですが骨折→癒合を果たしても靭帯損傷、神経麻痺などが見逃されるケースもあります。   1、骨と関節の名称

 左の図の名称を覚えない事には医師や患者さんと話が通じません。また診断書には別称で書かれていることもあり、それも頭に入れます。

 長管骨は読んで字のごとく長い骨です。人体を構成する主要な長い骨との解釈で足ります。上肢で言いますと上腕骨、橈骨、尺骨を指します。この長管骨は下肢同様、心臓に近い末端を近位端、遠い末端を遠位端と呼びます。

 手の骨、特に関節部の手根骨、指の骨は覚えるのが大変です。これは別シリーズにて取り上げたいと思います。

 今日はイントロ、ここまでとします。

 次回 ⇒ 上腕の筋肉  

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 毎月のように高次脳機能障害の被害者が相談にやってきます。まず最初にご家族から相談がもちかけられる事が普通ですが、本人が単独で相談に見えることがあります。  はたしてこの方は高次脳機能障害なのか?ご自身で電車を乗り継いでやってくるわけですからそれほど重篤と思えません。お話しを伺ってもよくわかりません。同居のご家族の観察や意見をきかないと判断できないのです。

 何故か? 以下解説します。

 経験上、「私は高次脳機能障害です」と自覚している方は稀です。ほとんどが、「何かおかしい」、「家族からおかしいと言われた」位の認識です。高次脳機能障害の障害者の最大の特徴は「病識の欠如」です。「病識」とは自分が脳のケガで、認知や記憶の障害を負っていると自覚していることです。  はっきり自覚・自己診断している人は ×障害者 → ○心身症 と思えてなりません。

 話を戻します。このように稀に単独で訪ねてくる相談者には「よくわかりません、家族と一緒にまた来て下さい」と家族の同伴の上、再来を求めます。そして後日家族からの聴取によって記憶障害や性格変化のエピソードが語られ、やっと障害ありとの認識に至ります。  そして今後の立証作業にご家族の検査同伴はもちろん、日常生活報告書作成、その他最大限の協力が必要となります。障害者本人だけでは立証作業は絶対にできません。  軽度の記憶障害は度忘れ、言語障害も多少言葉がでないだけ、性格変化は多感な時期だから? 被害者の異変はどんどん回復するはずであるとご家族は期待しがちです。脳外傷による障害は一般的に不可逆的(回復不可能)なものです。ご家族も冷静な判断、対応が必要です。  

ある相談者(被害者の奥さん)とのエピソード。

私   「日常生活であれっ?と思ったことを教えて下さい。」   奥さん「はい。主人に食事をだしたら、『いつもありがとう』と言いました。」

私 「それがどうしてですか?」

奥さん「結婚以来、初めて言われましたよ!これで主人はおかしくなったと確信しました。」 続きを読む »

 高次脳機能障害の研修会での質問から~「神経心理学検査の成績には年齢差、個人差があると思いますが、良い悪いはどうのように判断されるのでしょうか?」。  

 なるほど・・・神経心理学検査の多くは年齢別平均点数、もしくはカットオフ値が設定されています。年齢ごとに平均値がありますので年齢による数値修正は可能です。カットオフ値は「この点数以下は障害あり」となる目安です。そしてこの点数自体は障害の絶対的な判断基準とはなりません。これら数値を分析し、診断につなげるのは脳神経内科医、脳神経外科医の仕事です。加えて検査をしたST(言語聴覚士)のレポートも重要な分析となります。    しかし個人差まではいかがでしょう?これは難しい問題です。実例から説明しますと・・・

 Aさんは現場の肉体労働です。子供の頃から体育が得意で勉強は苦手でした。そして17歳で就職、現場でバリバリ活躍しています。  Bさんは小学校から常に学年トップの成績、そしてパソコンが大得意です。大学を卒業し大手企業に就職、プログラマーとして活躍しています。

 さて、この同世代(年齢差は3歳)の両者が高次脳機能障害となってしまいました。知能検査であるWais(IQ)の成績をみてみましょう。

 Aさん IQ70 平均以下です。 Bさん IQ100平均値です。 Aさんの方が重い障害かな・・・しかし!

 Aさんは元々のIQ90位?(やや平均以下)、BさんはIQ140(入社試験でやったそう) 

 だとしたらどちらが重い障害でしょうか?

 それ以外の検査もAさんの方が数値が低いのですが、元々の能力を考えるとBさんの方が能力の落ち込みが大きいと思えてなりません。

つまりIQ100=平均値だから日常生活に困らない、平均的な能力を保っている、と判断されては困るのです。事実Bさんはシステムのプログラムを制作する仕事へ復帰すべく努力を重ねています。しかし短期記憶障害、ワーキングメモリー(日常や仕事上のごく短期間の暗記)障害でそのような高度な仕事はまったく無理です。メール、ワープロ程度しかコンピューターが扱えません。一方Aさんはコンピューターなどからっきしダメです。それは事故前も後もかわりません。

 日常生活を基準に考えればAさんの方が重い障害、しかし元々の能力を基準とすればBさんの方が重い障害に?。しかし事故前の知能検査の数値が残っていた!なんてことは一度もありません。

 う~ん、悩んでしまうところです。

       研修の質問によって浮上した課題がいくつかあります。それらを立証マニュアルに加筆掲載していきます。締切は明日!徹夜必至です。

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 前日の基本となる3つの測定に加え、症状によってさらに特殊な4つの測定を行うことがあります。

 実施する測定項目は専門医の診断により選定します。「専門医+ウロダイナミクス検査の設備」のコンビを備えた病院の確保がなにより重要です。  

膀胱内圧・直腸内圧・尿流同時測定

・膀胱内圧測定に圧を測定するトランスジューサー(電位計測装置)の数を増やすことで、より統合的な尿流動態検査が可能となります。

・排尿筋圧=膀胱内圧-腹圧(直腸内圧)、排尿筋圧を算出することで、(腹圧の影響を除いた)膀胱壁による圧力のみが明らかになります。これにより、咳、体動、いきみ、手洗いなどで誘発される膀胱の不随意収縮を正確に認識し、排尿筋過活動を同定することが可能です。  また、排尿困難があり、いきんで排尿している場合には、排尿時の膀胱内圧の上昇が腹圧による見かけ上のものか、あるいは排尿筋自体が収縮しているのかを鑑別できます。

・外尿道括約筋筋電図を同時に行えば、排尿筋・括約筋協調不全(DSD)の診断ができます。

・ビデオ・尿流動態検査:尿流動態の検査とともに、膀胱尿道造影のX線透視画像を同一画面上に表示・記録する。排尿筋・括約筋協調不全(DSD)の診断ができます。

  ⑤ 漏出時圧(leak point pressure)測定

・膀胱内圧・直腸内圧・尿流同時測定時に排尿筋収縮または腹圧上昇のいずれもない状態で尿失禁が起こった時の圧。腹圧や咳を負荷して施行することもあります(腹圧下漏出時圧)。

・排尿路の閉鎖機能の評価に有効となります。

  ⑥ 尿道内圧(urethral pressure)測定

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 ウロダイナミクス検査とは、排尿時の膀胱(膀胱内圧・排尿筋圧測定)と尿道(尿道括約筋筋電図)の働きを同時に記録することにより、排尿障害のタイプ(病型)を診断する検査です。従来の膀胱内圧検査を含み、様々な病態を計測することが可能です。

 蓄尿から排尿終了までの間の膀胱内圧、腹圧(直腸内圧で測定)、排尿筋圧、外尿道括約筋活動、尿流などを測定し、排尿障害の部位や程度を総合的に診断します。その7つの測定項目を順番に解説します。

  ① 尿流測定(uroflowmetry;UFM)

・排出障害の有無と1回排出量、最大尿流率がわかる。最大尿流率が15mL/秒以下で排尿困難とされます。

・尿流率は年齢、性、排尿量の因子に左右されることを念頭に置きます。男女とも、排尿障害の有無に関わりなく、高齢になるに従って尿流率は低下し、また、一般に女性のほうが男性より尿流率がやや高くなります。

膀胱内圧測定(cystometrography;CMG)

・経尿道的にダブルルーメンカテーテルを挿入し、一定の速度で膀胱内へ注水し、蓄尿時排尿終了までの膀胱内圧を測定します。

・尿意の程度、最大膀胱容量、排尿筋過活動(不随意収縮)の有無や程度を観察します。

・患者が最大尿意を訴えても膀胱内圧が低く保たれていれば、膀胱内へ注水を続けて排尿筋過活動が起こるか確認します。

外尿道括約筋筋電図(electromyography;EMG)

・針電極を尿道括約筋に直接刺入、もしくは表面電極を肛門括約筋あるいは会陰に設置し、付近の筋肉の蓄尿時および排尿時の電位を測定します。

(引用文献) 「下部尿路機能ポケットマニュアル」 信州大学医学部泌尿器科助教授 井川 靖彦 先生 石塚 修 先生 著

明日に続きます。

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 先日の弁護士研修会の最終日、「排尿障害の検査」について20分ほど講義をしました。そのレジュメから転載します。    排尿・排便障害は、腰椎圧迫骨折や仙骨骨折の場合に発症するケースが多く、脊髄の腰~お尻の部分=馬尾神経が病原となります。この神経に圧迫、損傷があると下肢のしびれ、歩行障害と並び排尿・排便に異常が起きます。稀に頚髄(首の辺りの脊髄)損傷でも発症します。このように腰椎捻挫、むち打ちを原因として排尿・排便障害に悩まされる被害者さんを多く経験しています。

 事故後に「おしっこが出辛くなった、回数が異常に増えた」被害者さんが行う検査とは・・まずは、膀胱内圧検査です。さらに、原因を追究すべく、より専門的な検査としてウロダイナミクス検査があります。しかし、ウロダイナミクス検査は、普通の泌尿器科では設備がありません。解読・診断できる専門医も限られます。何より、紹介状を書いてまで他院へなど、積極的に検査を行いません。「おしっこが出ないからここ(病院)にきたんでしょ?」=「今更、出ないことを検査してどうするの?」・・・このような受け取り方なので、検査は限定的な場合しか行いません。    しかし!    お医者さんは患者について「おしっこがでない」事を疑いませんが、保険会社、自賠責・調査事務所や裁判官は証拠を出さなければ信じてくれません。立証上、検査は必要なのです。     さらに!検査の必要性はそれだけではありません!!  昨年お会いした泌尿器科の専門医の考えは違っています。排尿障害といっても内圧の不調によるものか、括約筋の不全を原因とするのか原因は一つではなく、それに見合った治療が必要であると指導しています。

 例えば、カテーテル(導尿パイプ)を使用している閉尿(おしっこの出が悪い)の患者さんに対し、お腹を押して排尿を促すような指導が実際に行われています。この場合、閉尿の原因が括約筋不全であるなら逆効果で、さらに増悪する危険性があるそうです。数十年前の知識で治療をしている泌尿器科医も多く、間違った治療と相まって検査の重要性の認識が希薄なのです。

 現在、膀胱の内圧を計測するだけではなく、いくつかの検査を総合した「ウロダイナミクス検査」が最先端です。しかし町の泌尿器科の多くは設備がありません。大学病院クラスの検査先の確保が必要です。

 明日から「ウロダイナミクス検査」を解説します。研修では詳細まで踏み込む時間がなかったので、ここで責任回答させていただきます。

   ← 男性用導尿カテーテル    

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 前回のベントン視覚記銘検査につづき、もう一つ解説します。  

レイ複雑図形再生課題 (ROCFT)

  レイ複雑図形検査 Rey-Osterrieth Complex Figure Test (ROCFT) と呼ばれる視覚性記憶検査です。 図形を見ながら描く模写、その直後に図形を見ないで思い出して書く直後再生、30分後に再び図形を見ないで記憶を頼りに再生する遅延再生の3つの検査を行います。記載の有無や歪み、適切な配置ができたかどうか18項目に分けて0.5点~2.0点まで5段階で採点します。 視覚性記憶のみではなく、視覚性認知、視空間構成、遂行能力なども評価できます。 

   いよいよ今週末、都内で研修会です。来月の2日を加え、4日間の集中研修です。私は今月の2日目、「高次脳機能障害の集中講座」を担当します。現在6件の被害者をフォローしていますので、その最新情報を織り交ぜ、実践的な内容にしたいと思います。今週は資料、レジュメに忙殺されています。

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言語に関する障害は平成23年4月の新基準において言及され、「意思疎通能力」の低下として重要視されています。 前回の「言語機能に関する障害」ではSLTAを取り上げました。もう一つ解説します。  

② WAB失語症検査 

 言語機能の総合的な検査(8項目、全38検査)を行います。自発語、復唱、読み、書字について0~10(自発語のみ20)点の得点を計ります。失語症の分類・軽重を明らかにします。  

1、全失語(重度の失語)   2、ブローカ失語(運動性失語、流暢性の喪失)   3、ウェルニッケ失語(感覚性失語、内容の乏しい発言)   4、健忘性失語(言葉のど忘れがひどい)             以上4つの分類、評価をします。

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言語に関する障害は平成23年4月の新基準において言及され、「意思疎通能力」の低下として重要視されています。 前回の「言語機能に関する障害」ではSLTAを取り上げました。もう一つ解説します。  

② WAB失語症検査 

 言語機能の総合的な検査(8項目、全38検査)を行います。自発語、復唱、読み、書字について0~10(自発語のみ20)点の得点を計ります。失語症の分類・軽重を明らかにします。  

1、全失語(重度の失語)   2、ブローカ失語(運動性失語、流暢性の喪失)   3、ウェルニッケ失語(感覚性失語、内容の乏しい発言)   4、健忘性失語(言葉のど忘れがひどい)            以上4つの分類、評価をします。  

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 世界の左半分がない世界?

今朝、神戸の佐井先生から高次脳機能障害の案件について相談がありました。気になる症状に「左目が見えない」がありました。どうやら脳の障害によるもののようです。今回は半空間無視について。    左目が見えない?というより左目に映る映像を認識できない状態です。脳の障害で、頭頂葉や右側頭葉に硬膜下血腫等による圧迫、ダメージを受けた方に多くみられる症状です。もちろん反対に逆の右側が認識できないケースもあります。これは視神経障害による失明とは違います。通常人は眼に映った情報を脳で解析しています。しかし脳の解析システムが故障することよって、映るものが認識できない状況に陥るのです。したがって当人は見えてないことすら自覚しません。

日常の例では、

・ 食卓に並んだいくつかのおかずの皿から右半分しか箸をつけない ・ 廊下を歩く時、片側に寄ってしまい、肩を壁にすりながら歩いてしまう  ・ 家の絵を描かせると片側半分だけしか描かない ・ 片側から話しかけられても反応しない ・ 片側に人が立っていても存在に気づかない

① 行動性無視検査(BIT)

Bitは従来の視空間認知検査法であった「線分抹消課題」や「線分2等分課題」など机上の視覚認知評価6種類からなる「通常検査」と日常生活場面を想定した「行動検査」の2つを行います。  絵や文字の消込や線引きなどいかにも検査的な通常検査に加え、「行動検査」を加えることにより、より詳細に症状を訴えることが可能です。例えば文章の読み書き、時計の認識、物品・硬貨の認識などより生活の困窮点を明らかにできます。

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 平成23年4月の新基準でも触れられていましたテーマです。脳の障害でうまくしゃべれなくなった状態を解説します。 ■ 言語機能に関する検査 

事故以来言葉をスムーズに発っせなくなった、極端にゆっくり話すようになった、こちらの言うことに対する理解が遅く会話が滞りがちになった…これらは一般に失語症となりますが、高次脳機能障害の場合、以下の2種が代表的です。

1、運動性失語  左前頭のブローカ領域の損傷。話し言葉の流暢性が失われます。どもりやすい、言いたい事が思うようにでてこないなど、家族は事故後の変化がはっきりわかるはずです。

2、感覚性失語  左側頭に位置するウェルニッケ領域の損傷。流暢性は保つものの言い間違いが多く、発言量の割に内容も乏しくなります。意味不明な言葉、とんちんかんな事ばかり言っている状態もあてはまります。  くも膜下出血で倒れた人が左脳の出血と損傷によって、言葉に障害が残ってしまったケースと似ています。しかし高次脳機能障害は程度の軽重に差があるため、軽い失語症は事故のショックのせい?と周囲も安易にみてしまいます。もっとも右側頭葉のみにダメージを受けた患者さんは、「会話・発言・読み書き」に関して以前と変わらないことも多いようです。

 失語症に絞った専門的な検査がありますので挙げます。 ① 標準失語症検査 (SLTA)

 失語症の有無、重症度、タイプの鑑別を行います。短文やまんがなど26項目についてそれぞれ読ませ、後に説明させます。正答から誤答まで6段階で採点します。リハビリ計画の策定の為に行われることが多く、リハビリ施設では失語症の定番検査です。 続きを読む »

さすがにWaisⅢ(知能検査)、Wms(記憶検査)は掲載できません。表題にあるように検査用紙1枚でできる検査を紹介していきます。詳細を解説するより、検査項目を見た方が理解が早いと思うからです。

立証側の私が主張したいのは

× 「闇雲にマニュアルに沿って検査を実施」

〇 「患者の症状を観察し、必要な検査を想定、症状と検査結果を結び付ける」

これを提唱したいからです。

 2年前、高次脳機能障害の立証を手掛ける、ある弁護士と行政書士に教えを乞いたのですが、両者とも機械的に「検査はこれとこれをやる、以上。」でした。その検査の狙いや内容を質問をしたのですが、交通事故110番のマニュアルに記載されている検査表のコピーを見せてくれただけで、どうもよくわかっていないようです。これでは検査する医師、言語聴覚士と検査目的について共通認識が図れず、運任せ、他力本願の立証作業になってしまいます。  障害に苦しむ被害者本人とご家族のために、血の通ったお手伝いをしたいものです。  

三宅式記銘検査

 ある単語と単語のペアを聞かせ、それを覚えているかをみます。聴覚に特化した記憶検査です。ワーキングメモリー(一時的に言葉や番号を暗記する脳の働き)の状態が明らかになります。  その単語のペアは関連する組みあわせ(有関連追語)とまったく無関連な組み合わせ(無関連対語)、それぞれ10組行います。

<有関連対語> ・・つまり連想ゲームです

 まず「煙草」→「マッチ」といったの関係するペアの単語を聞かせます。その後「煙草」と言ったら「マッチ」と答えられるか3回テストします。他に「家」→「庭」、「汽車」→「電車」 など10組で10点満点です。  障害のない人は3回目まででほぼ正答となります。平均値は 1回目8.5点 – 2回目9.8点 – 3回目10点

<無関連対語> ・・暗記力が問われます

 「入浴」→「財産」、「水泳」→「銀行」、「ガラス」→「神社」・・・関係のない言葉の組み合わせに健常者でも苦戦しそうです。  平均値は 1回目4.5点 - 2回目7.6点 - 3回目8.5点

 障害者は無関連追語で特に点数が悪くなります。1回目から3回目まで点数が上がらない、つまり短期記憶(ワーキングメモリー含む)、学習能力の低下を表します。   

<有関係対語試験>

1回目

2回目

3回目

時間

答え

時間

答え

時間

答え

煙草 – マッチ

空 – ...

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 高次脳機能障害のチェックとしてお馴染み、ミニメンタルステーツ(MMSE)を取り上げます。

 長谷川式と同じく受傷初期に行う、見当識、記銘の簡易検査の位置づけです。これも健常者であれば30点満点となります。脳外科医や言語聴覚士から「長谷川式よりMMSEの方が使いやすい」と聞きます。  

<被害者の家族からよく聞く質問>

.長谷川式もMMSEも30点満点なのですが、提出すべきでしょうか?

A.9級の認定者でも共に満点のケ-スがあります。認知障害、記憶障害が軽度の場合、満点かそれに近い点数になります。それでも等級が認められたのはその他の障害、失語、遂行能力、社会適合性での障害が顕著だったからです。 ちなみに5級より重い被害者は30点満点とはならないはずです。  

.これから検査をします。WAISⅢ(知能検査)、WMS(記憶検査)が予定されていますが、長谷川式やMMSEが予定に入っていません。「その2つの検査は必ずやって下さい」と相談した行政書士から聞きました。必要でしょうか?

A.WAISやWMSの検査をするのであれば、今更、長谷川式やMMSEを行う必要はありません。同様の検査項目があり、総合検査であるWAIS、WMSを実施すれば十分な検査結果が得られるからです。   長谷川式、MMSEは受傷初期において実施済みのケースをよく見ます。しかしあくまで診断上必要な検査に留まりますので、認知、記銘、記憶の評価データとしては不十分です。障害等級の審査にはWAIS、WMS他の検査が必要となります。  「交通事故後遺障害獲得マニュアル」(交通事故110番)を棒読みしている法律関係者に質問のような誤解が見受けられるようです。  

            ミニメンタルステーツテスト(MMSE)

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