弁特エトセトラはかなり長い期間シリーズにしています。

 前回の巻 ⇒ 弁護士費用特約にまつわるエトセトラ ⑮ 労災免責について、研修会に追補します。
 
 さて、今回取り上げるテーマは、民事の紛争で付き物である回収の問題です。民事事件のなかでも、不法行為に対する賠償金請求を行うケースで常に問題になるのが、「相手から実際に賠償金を取れるのか?」です。賠償金請求に応じない加害者に対し、弁護士に報酬を払って依頼したとして、仮に裁判に勝っても「相手が払わない」、あるいは「相手にお金がない」、「相手に強制執行(財産の差押え)をかけようにも対象となる財産もない」、ついに「相手が行方をくらました」・・・つまり、交渉がまとまろうが、裁判に勝とうが、賠償金が回収できるとは限らない現実があります。私達は加害者について、”お金を持っていない奴が最強”と思っています。

 無い袖は、

 したがって、相談を受けた弁護士は「争えば勝てますが、回収できないかもしれない」と、受任に慎重になるのが普通です。弁護士に道徳心あれば、依頼者の無駄な報酬支出を考え、回収困難な事件は引き受けないものです。しかし、ここでも弁護士費用特約を応用した儲けを画策する弁護士がおりました。実例から説明します。
 
1、多村さん(仮名)はバイク走行中、外国人(自称空手家Iさん)が運転する無保険車の衝突被害に遭って受傷、腕を骨折して12級6号の後遺障害となった。
 
2、相手から何ら補償得られず、自身加入の吉本海上保険㈱の人身傷害保険で治療費等を確保した。
 
3、最終的な慰謝料、逸失利益を相手に請求したく、弁護士費用特約を使って弁護士・宮佐古先生(仮名)を雇った。
 
4、宮佐古先生は早速相手に訴訟提起するも、相手Iさんは法定に来ず(国外逃亡=帰国?)欠席裁判となり、盛り盛りの請求金額であったがあっけなく勝訴。
 
5、多村さん、その判決額を回収すべく、自身加入の人身傷害に請求したいが・・宮佐古弁護士は「当方への依頼はここまです。後は自分で保険会社に請求して下さい」と。そして、弁護士費用特約からごっそり報酬(約170万円)を取られました。
 
6、それで、吉本海上保険に人身傷害保険を請求も、「弊社の人身傷害特基準での計算は○○円です」と、判決額の半分ほどしか払ってくれません。保険会社の説明では、「約款通り裁判額なら尊重しますが、弊社としては社会通念上これくらいが妥当と考えており、そもそも人身傷害の支払額の上限は”人身傷害基準の満額”までと制限されておりますので・・」とのことです。
 
 何か言い逃れのように聞こえますが、確かに約款に書かれています。詳しくは↓
 人身傷害の約款改悪シリーズ 人身傷害保険の支払限度は結局、人傷基準 ①
 
 せっかく宮佐古弁護士に頼んで裁判基準での解決を望んだ多村さん、「これでは裁判に勝っても意味ないじゃないか」とがっかりです。裁判などせず、最初から人身傷害保険に請求していても、ほとんど同額の回収金額だったからです。
 

 結局、多村さんは無駄な手間と時間を、吉本海上保険も弁護士費用特約の支払分(約170万円)を損しただけ。この件で儲かったのは、”超簡単な裁判”で勝った宮佐古弁護士だけだったのです。
 
 つづく
 

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