(4)後遺障害のポイント

 交通事故外傷では、癒合で完治と断定することはできません。成長の著しい幼児~10代は、爆発的に骨組織が伸長するので、容易に癒合します。しかし、その後、骨折しなかった方の足と比べ、転位や骨成長の左右差、軟骨の不具合による関節裂隙の左右差などが残存することがあります。これが、骨短縮、可動域制限、疼痛などにつながれば後遺障害の対象となります。
 
 解説 👉 骨端線損傷と成長線骨折
 
Ⅰ. 成長痛と言って、成長期に骨が劇的に伸びることから、骨端線に激痛が生じることがあります。これが、事故外傷による骨端線損傷と被ることがあります。神経症状の14級9号を想定しても、子供さんの場合は成長痛が原因と判断されますから、(いずれ治るものと)認定は厳しく、立証上、悩ましい問題です。
  
 参考 👉 成長痛について
 
Ⅱ. 骨端線損傷で重要なことは、骨端線の閉鎖と、変形治癒の可能性の診断です。骨端線の閉鎖では、脛骨や腓骨のどちらか一方、もしくは両方の成長がストップすることで、例えば、脛骨の骨端線だけが閉鎖し、腓骨の骨端線が成長を続けると、成長に伴って足関節が内反変形を起こすことになります。また、脛骨と腓骨の両方の骨端線が閉鎖したときは、足関節の変形は防げても、下腿の成長が止まるため、左右の脚長差、短縮障害を残します。また、骨片の転位や骨折線が関節軟骨におよぶと変形治癒を残します。


 
 交通事故110番の経験則では、骨端線が刺激を受け過成長した結果、健側に比して2cmも伸びた例があります。3年間、経過観察を行い、症状固定として、健側の短縮で、被害者請求を行いました。結果が出るまでに6カ月を要しましたが、13級8号が認定されました。

 外傷性内反足を解説した被害者、10歳の女子の場合ですが、右腓骨遠位端部の開放性骨折と右腓骨遠位端線損傷が診断されており、外傷性内反足の立証も行いますが、右腓骨遠位端線損傷に伴う短縮障害も併せて立証しました。
 
 秋葉事務所での短縮障害、認定例 👉 13級8号:脛骨遠位端解放骨折・短縮障害(10代男性・埼玉県)
  
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