(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 変形性足関節症は、変形に伴う痛みと、足関節の可動域制限が後遺障害の対象となります。

① レベルⅠは、常識的には、痛みで14級9号となります。
 
② レベルⅡ、Ⅲでは、多くが、足関節の可動域制限で12級7号となっています。

 ただし、下位脛骨骨切り術が成功したときは、14級9号に下がることがあります。
 
③ レベルⅣで足関節固定術がなされたときは、足関節の用廃で8級7号となります。

 人工足関節置換術では、10級11号が認定されますが、人工足関節置換術は、少数例です。
 
Ⅱ. 立証は、XPと3DCT撮影で行い、軟骨損傷が大きいときは、MRIも有効です。
 
① レベルⅠⅡでは、健側、患側の足関節XP正面像を提出、左右の比較で変形を立証しています。
 
② レベルⅢ、下位脛骨々切り術が実施されても、イラストにあるような完璧な修復は期待できません。修復が不十分で、変形を残しているときは、それを見逃してはなりません。XP、CTで立証して、12級7号を狙うのですが、症状固定時期の選択も間違ってはなりません。
 
③ レベルⅣでは、大多数に足関節固定術が選択されています。

 XPで固定術が実施されたことを立証すれば、8級7号が認定されます。
 
Ⅲ. 重要なポイントですが、症状固定後、数年を経過して、変形性足関節症が進行し、結果として、足関節固定術に至ることが、かなりの確率で予想されるのです。

 その可能性が予想されるときは、

 ① 後遺障害診断書の、障害内容の増悪・緩解の見通し欄に、「将来、変形性足関節症が進行する可能性が予見される。」と、医師の記載を受けておかなければなりません。
 
 ② 示談書には、「本件事故に起因する足関節変形症を発症したる際は、甲乙間で別途協議する。」この文言を追加記載しておく必要があります。
 
Ⅳ. 交通事故110番の経験則

 かつて無料相談会に参加された被害者、49歳男性です。右足関節捻挫で6カ月間の通院、軽度な足関節の変形で、すでに14級9号が認定、弁護士により解決もなされていました。

 しかし、示談から5年6カ月を経過して変形性足関節症が進行し、足関節固定術の施行となったのです。通常は、術後に、再び、症状固定として、自賠責保険に対して後遺障害の被害者請求を行います。足関節の固定術ですから、足関節の用廃で8級7号が認定されます。

 今回の損害賠償は、(8級7号)-(14級9号)で請求することになります。5年6カ月前の示談書と後遺障害診断書のコピーを提示すれば、因果関係で揉めることもありません。しかし、足関節固定術で入院2カ月、その後のリハビリで3カ月会社を休んでいますが、休業損害の支払はなく、それどころか、治療費、入院雑費、通院交通費も自己負担となります。

 通勤途上や業務中の交通事故であれば、労災保険にも請求することができます。足関節固定術の実施が決定したところで、労働基準監督署に対して再発申請を提出します。これで、治療費と休業損害の80%が労災保険から支払われるのです。術後に後遺障害を申請すれば、8級が認定され、障害補償一時金と特別一時金が、自賠責保険との支給調整がなされますが、支払われます。
 
 しかし、この被害者には、労災保険の適用ができなかったのです。
 
 どうして? 6年前の交通事故について、労災保険に申請をしていなかったからです。症状固定日の翌日から5年を経過すると、労災(障害給付)に対する請求権が時効消滅するのです。理由ですが、頼んだ弁護士は「0:100事故ですから、保険会社からすべて獲得できますから、労災申請する必要はありません」との説明でした。その弁護士によって、損害賠償は訴訟基準で獲得できましたが、悔いの残る結果となりました。

 変形性股関節症、変形性膝関節症、変形性足関節症では、示談から数年の経過で再発し、オペが必要になることがあります。通勤・業務災害であれば、事故受傷の時点から将来を見据え、シッカリと申請しておかなければなりません。労災は制度として、(傷病名・症状にもよりますが)アフターケア、再発給付など、メリットばかりなのです。ところが、交通事故専門を名乗る弁護士とて、労災を守備範囲外と考え、相手保険会社への賠償請求一辺倒になりがちなのです。秋葉事務所では、ご依頼者のメリットや将来のリスクから、労災請求を最初の一手とすることが少なくありません。
 
 次回 ⇒ 足根骨 外傷性内反足