毎度! 人身傷害ウオッチャーの秋葉です。

 コロナですっかり研修会が無くなり、今年の自動車保険の約款チェックをサボっておりましたところ、重大な改定がありました。もっとも、大騒ぎしているのは秋葉一人で、業界ではいつもの約款改定の一つに過ぎないかもしれません。それでも一度やめた補償を復活させる・・これは保険商品として珍しい例と思います。

 来年、令和4年の約款が出揃いましたので、今日から3回に分けて解説します。
 

損保ジャパン、交通乗用具・復活の日

 およそ個人契約の自動車保険の95%に付帯されている人身傷害保険、これは交通事故におけるご自身のケガを補償するものです。「搭乗中のみ担保」特約を付けなければ、歩行中や自転車搭乗中に自動車事故に遭った場合でも保障されます。それは契約者だけでなく、同居の親族まで補償範囲に入ります。支払い保険金は死亡で○円、後遺障害は等級に応じて○円、入院・通院で1日いくらの決まった補償ではなく、実際の治療費や休業損害はじめ実費の損害に加え、保険会社の決めた基準になりますが慰謝料や逸失利益まで、それら実額での支払いを売りとした保険です。東京海上日動が国内で初めて発売して以来23年、すっかり定着した感があります。
 

 
 各社、補償の範囲はほとんど一緒ながら、一つだけ絶大な差がありました。それが、交通乗用具への補償です。交通乗用具とは、自動車や二輪車以外の乗用具の総称で、その代表は自転車でしょうか。自転車以外の乗り物は、約款で細かく指定されています。
 
人身傷害保険と交通乗用具の復習はこちらを 👉 詐欺シリーズ ~ 人身傷害保険・交通乗用具のゆくえ ①
 
 この交通乗用具への補償ですが、平成23年に東京海上日動が真っ先に廃止しました。翌24年にかけて、損保ジャパン他各社も廃止としました。金融の自由化まで、各社同一商品・同一掛金とした「護送船団」方式が長く続いた保険業界です。横並び意識の強い業界ですが、何故か三井住友、あいおいなど数社は残していました。
 
交通乗用具の補償の有無はこちらを 👉 詐欺シリーズ ~ 人身傷害保険・交通乗用具のゆくえ ②
 
 すると、自転車をよく乗るご家庭では、交通乗用具付きの保険会社がベターです。実際、自転車事故のリスクを重視する場合、お勧めの自動車保険としていました。

 では、東京海上日動、損保ジャパンは何故、廃止にしたのでしょうか? 当然ですが、保険金の支払いがかさんだからに他なりません。また、不正が疑われる請求が目立ったことも要因です。業界の用語では前者を「リザルト悪化」、後者を「モラルリスク」と言います。確かに自動車が絡まない事故では、不正請求が簡単にできると思います。自動車が絡めば、お巡りさん呼んで現場検証、後に事故証明書の発行に繋がります。しかし、自転車同士や自転車対歩行者、その他の乗り物の事故で警察を呼ぶのか、何より自転車はじめその他の乗り物に搭乗中、「一人で転んだ」自損事故では警察など呼ばないでしょう。したがって、第3者の証明なしに保険請求することになります。
 
交通乗用具がざる保険となった理由 👉 詐欺シリーズ ~ 人身傷害保険・交通乗用具のゆくえ ③
 
 このような背景から、交通乗用具を残している三井住友、あいおい、AIG、日新、全労済を褒めるべきかもしれません。
 
 ようやく本題ですが、 損保ジャパンは来年1月1日の約款改定から、何故か交通乗用具を復活させます。私の実家の自動車保険も、来年の更新には交通乗用具付きにしたいと思います。日常、自転車を乗る私にとって、交通乗用具特約は最適です。なにせ、自転車単独でコケてケガをしても実額で補償されるのです。


 
 「裁判・調停での和解・判決であれば、人身傷害の保険金を裁判基準で支払う」損保ジャパンは、約款上でも東海日動や三井住友に優位と言うか、フェアな約款でした。補償範囲までもカバーされて、”無双”となったのでしょうか。
 
損保ジャパン as ナンバーワン ?
 
 明日は、他社の同行もチェックしてみましょう。 👉 人身傷害・今年の約款改定 ② ~ 三井住友、交通乗用具やめるってよ