障害給付・・後遺症が残った場合ですから、基本的な申請書類とは呼べないかもしれません。しかし、交通事故を扱う私達にとってはお馴染みの書式になります。
 

労災では「障害(補償)給付」、自賠責では「後遺障害」と名称を区別しています。

 
(1)給付内容  障害等級は重い準から、下表の通り1~14級まで区分されています。
 
 14級から8級までは一時金支給、7級以上は年金となります。
 

 
(2)3種の給付金とその計算
 
① 障害給付金一時金・障害給付年金

 上の表から、 

 給付基礎日額 ○ 円 × ○ 日分(等級によって、313~56日)
 
② 障害特別支給金(7級以上の年金の被災者でも一時金で支給します) 労災制度の恩恵!

 これも表の金額通り、定額の支給です。抜粋すると以下の表。特別年金と特別一時金はボーナス分の補償で、特別支給金とは別物です。労災初心者にとって紛らわしい名称です。以下③で説明します。



  
③ 障害特別一時金・障害特別年金

 ボーナス(≒特別給与)の分を補償してもらいます。計算式は給付基礎日額ではなく、算定基礎日額から割り出します。

○ 算定基礎年額・・・発病・負傷前の1年間に支給されたボーナス総額
 
 ただし、給付基礎年額(給付基礎日額 × 365)の20%限度、さらに150万円が上限
 
○ 算定基礎日額・・・上記で算出した算定基礎年額 ÷ 365
 
 「算定基礎日額」とは、業務災害・通勤災害の発生した日、または医師の診断によって疾病が確定した日以前の1年間に支給された特別給与(ボーナスが代表例)を365で割った額です。
 
<計算式> 給付基礎日額が計算できれば難しくありません

・労災事故前年の上期のボーナス(30万円) + 同じく下期のボーナス(30万円) = 60万円 ・・・これが算定基礎年額です。

・算定基礎年額の上限を確認します・・60万円 < 給付基礎年額(1万円 × 365日=365万 × 20% = 73万円限度 / 150万円上限
 
 特別給与の給付日額は・・60万円 ÷ 365 = 1643.8(1円未満は切り上げ)= 1644円
 
 特別支給金は、1644円 ×  ○日(等級に応じた日数)で計算されます。
 
※ 特別給与とは、3か月を超える期間ごとの支給を指しますので、臨時的に支払われる賃金は含みません。
 
  
(3)申請書  障害給付の申請書自体は、今までの書類の応用で、むしろ簡単です。別紙も、今まで何度も書いてきた通勤・退勤の時間や経路を書く面倒だけです。
 
① 障害給付支給請求書  通勤の場合(16-7) 業務災害の場合(10号)

 

② 通勤災害に関する事項(16-7 別紙)

③ 診断書 (通勤災害・業務災害 共用)

 問題はこの診断書です。これは当然に医師に記載頂きます。見ての通り、自賠責保険のA3サイズと比べると、A4の簡素な診断書です。骨折箇所が多いと、関節可動域の記載欄は3関節しかありません。肩と肘と手首なら間に合いますが、これに膝関節のケガが加わると足りません。その場合は、自賠責の後遺障害診断書や付随する書類のコピーを添付しています。そのような準備をして提出すると、労働局の職員は「助かります~」と、ウケは良かったと思います。

 労災の診断書が簡素な理由ですが、労災の障害認定には、必ず顧問医の診断(面接)があります。障害の実態を顧問医が診察の上、判断しますので、(原則的に)文章審査のみの自賠責より堅実なのかもしれません。ただし、経験上、この顧問医先生も色々でした。例えば、高次脳機能障害など、特殊な傷病名の申請者に対して、診断をする顧問医が必ずしも専門科の先生とは限りません。専門医しか分からない症状もあるはずです。高度な判断が必要な傷病名ですと心配です。

 また、医師が診断権を持つゆえか「現時点で症状固定しない」など、独自の判断をする医師もおりました。もちろん、すでに主治医が症状固定の判断をしていますから、今更治療継続など、労基の職員も大慌て、大困りです。これらはレアケースですが、顧問医診断もわずかの危うさを感じるところです。

 労災の障害給付と自賠責の後遺障害は似て非なるものです。元々、自賠責・後遺障害は労災の制度に準じて作られたので、大枠は同じ認定基準ながら、いくつか違いがあります。私どものように、両者に造詣が深いものがそれぞれに対策・計画し、診断書のみならず、検査結果・意見書を万全に揃えれば鬼に金棒です。大事なことは、労災も自賠責も書類をしっかり完備して審査に臨むことです。この基本は変わりません。

 交通事故で労災と自賠責の両方に申請する被害者さんは、業者に依頼をする場合、両者に対応できる事務所を選ぶべきです。「労災は労基に聞いて進めて下さい」と、賠償だけしかやらない事務所に任せたばかりに、お金を取りそびれたり、手続きに四苦八苦した被害者さんをたくさん見てきました。自賠責・任意保険、健康保険、介護保険、障害年金、障害者手帳、そして労災・・これらの横断的知識こそ、取りこぼしのない被害の回復、完全解決を果たすものです。手前味噌になりますが、弊所と連携弁護士は隙なく対応させて頂いております。