8年前から三井住友さんの弁護士費用特約(以後、略して弁特)について、ウォッチしてきました。このシリーズ、”弁護士費用特約にまつわるエトセトラ”は、以下に説明する三井住友さんの約款の不合理を指摘することからスタートしたと言えます。まったく重箱の隅をつつく様な細かい話ではあります。しかし、決して安くない掛金を負担している契約者さんにとって、交通事故で助けてほしい時に当然でると思っていた保険が、「約款上、免責です」とは・・・がっかりを通り越して、保険会社への不信感を一気に高めることになります。次の更新では「通販型もいいわね」となるのは必定です。

 三井住友さんは、10年も前、業界に先がけて交通事故に限らない「日常型」の弁特を発売しました。交通事故に限らず、日常の被害事故を補償範囲に含むグレードアップした「弁護士費用特約」に改造したのはよいとして、従来の交通事故に限定した弁特を「自動車事故弁護士費用特約」として新設しました。名前の通り補償は交通事故に限定するものですが、保険の対象となる自動車の範囲に差をつけるためか、対象は契約車両のみで、家族所有の車両を適用外=免責にしました。以後、代理店でさえ、事故が起きてからではないと免責と気付かない問題が頻発したと想像します。

 前編では、当時の自動車事故弁護士費用特約で、どのようなケースが免責となったのかを説明します。まず前提として、従来の自動車保険の被保険者の範囲は、契約者(お父さんとして)と配偶者、同居の親族、別居の未婚の子と、生計を同じくする家族全員が対象となるものが多く、当然、弁護士費用特約もお父さんの一台につけていれば、家族全員対象となるものです。これはどこの保険会社でも共通のルールで、三井住友さんの日常事故を加えた「弁護士費用特約」でも、そのルールは変わりません。

 しかし、補償を限定した「自動車事故弁護費用特約」は、契約車両の絡む事故だけにしか補償が及びません。家族が所有している自動車・バイクは免責となりますから、それぞれの車両に特約を付保しなければならないのです。(例外的に契約者あるいは記銘被保険者であるお父さんだけは、家族所有以外の他の自動車搭乗中の被害事故であれば弁特の対象となります)。最悪のケースは以下の過去記事をご覧下さい。
 
最悪例 ⇒ 弁護士費用特約にまつわるエトセトラ ①
 
 これは、息子さんが原付バイクを買い足したので、お父さんの自動車保険にファミリーバイク特約を追加したのはいいが、弁特の補償が及ばないことに事故が起きてから気付いたケースです。この場合、既に付保していた自動車事故弁護士費用特約を、普通の(一般型である)弁護士費用特約に、同時に変更すべきだったのです。代理店さんの手続きミスに恨みが残ります。今年からの約款改定は、この指摘が三井住友さんの耳に届いた影響とは思いませんが、やはり、数年に渡り各地でトラブルが起きたと思います。

 では、補償が制限された当時の「自動車事故・弁護士費用特約」、核心となる約款の第4条(保険金を支払わない場合)の⑥を抜粋します。この一節が今年の改正・改名された「弁護士費用特約(自動車型)」から抹消されました。そもそも被保険者の範囲を生計を同じくする家族としながら、この条文で被保険車両を限定しているものですから非常に難解です。解釈の問題すら生じさせる約款と言えます。

 今更、改定前の約款を検証してもせん無き事ですが、これも一度、悪約款と非難した者の務め、該当条項の前段・後段をそれぞれ赤字で翻訳・解説しましょう。
 
第4条(保険金を払わない場合)

⑥ 被保険者が親族等所有自動車に搭乗している場合に生じた自動車被害事故による損害。

 わかり易い例として、契約者であるお父さんが、自分の自動車を車検にだして無い時、奥さん所有の別自動車や、息子さん所有のバイクを借りて、走行中に事故にあった場合、その自動車・バイクに弁特がついていればそれを使えますが、お父さんの車両に付いている弁特は使えません。

 さらに、奥さんが自分の自動車を運転中にぶつけられても、息子さんが自分のバイクで事故に遭っても、お父さんの自動車の弁特は使えません。

 つまり、自動車事故弁護士費用特約の場合、家族それぞれの車両に特約を付保する必要があります。

 ただし、第3条(1)④の被保険者の親族等所有自動車については、その自動車を所有または常時使用する被保険者が自ら運転している場合に生じた自動車被害事故による損害 による損害に限ります。

 わかり易い例として、大学に進学して実家を離れてアパート住まいの息子さんが、通学の為に原付バイクを買って乗っています。この場合、お父さんがアパートを訪れて、「ちょっとコンビニまでバイク貸して」と、借りて走行中の事故は例外的にOKのようです。別居の未婚の子の自動車・バイクは、親族等所有自動車に含めないと解釈できます。

 しかし、息子さん自身が運転の場合、前段の通り、そのバイクに特約がついていなかったらアウトとなります。お父さんの自動車保険についている弁特は使えません。

 後段はまったく回りくどい言い回しになっています。ちなみに、第3条(1)④の被保険者については以下の通り、被保険者の範囲を示すお馴染みの文章です。
 
第3条(補償の対象となる方被保険者)

⑴ この特約における被保険者は、次のいずれかに該当するものとします。ただし、極めて異常かつ危険な方法で自動車又は交通乗用具に搭乗中の者および業務として自動車を受託している自動車取扱業者は含みません。

① 記名被保険者

② 記名被保険者の配偶者

③ 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族

④ 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子

⑤ 本条(1)①から④まで以外の者で、ご契約のお車の正規の乗用装置またはその装置のある室内に搭乗中の者

⑥ 本条(1)①から⑤まで以外の者で、本条(1)①から④までに規定する者が自ら運転者として運転中のご契約のお車以外の自動車の正規の乗用装置またはその装置のある室内に搭乗中の者。

⑦ 本条(1)①から⑥まで以外の者で、ご契約の車の所有者。ただし、ご契約のお車の所有、私用または管理に起因する自動車事故の場合に限ります
 
 明日は、今年から特約名を改名、補償範囲を3区分、それに伴い約款改定した三井住友さんの「弁護士費用特約」を整理します。