上顎骨々折(じょうがくこつこっせつ)

(1)病態

 上顎骨は頬骨、鼻骨、口蓋骨と結合し、中顔面を構成しているのですが、上顎骨は、薄くて脆いもので、交通事故では、バイク、自転車で走行中、自動車と出合い頭衝突などで転倒した際の外力で、上顎の骨折は発生しています。

 上顎骨のほぼ下半分が骨折したものをルフォーI型骨折、上顎骨が鼻骨複合体を含めて骨折したものをルフォーII型骨折といいます。さらに、頬骨をも含め顔面中央部が全体として頭蓋骨と離断される骨折をルフォーIII型骨折といいます。また、上顎骨が正中部で離断されたものは矢状骨折といいます。

 上顎骨上方は解剖学的に頭蓋底となるため、ルフォーⅡ、Ⅲ型骨折では状態も重症であり、頭蓋底骨折による髄液漏をきたすこともあります。
 
(2)症状

① 咬合不全、咬み合わせのずれ、

② 顔面の変形、平坦化、
 
 これらが主たる症状ですが、骨折が頬骨に達すると、
 
③ 開口障害、口が開けにくい、

④ 複視、モノが重複して見える、

⑤ 眼球の陥没、

⑥ 頬・上唇・歯茎のしびれ、などの症状が追加的に出現します。
 
(3)治療

 顔面のXP、CT、3DCTにより確定診断がなされます。治療の目標は歯の咬み合わせを正常にすることで、手術による骨折の整復と固定が基本となります。術後は、上顎と下顎をゴムやワイヤーで固定する顎間固定が行われます。

 骨折による転位が少ないときには、顎間固定のみで治療されることもあります。形成術だけで、咬み合わせが戻らないときは、歯科矯正で補正します。
   
 後遺障害のポイントは、下顎骨骨折と一緒に解説しています。
 
 次回 ⇒ 上・下顎骨々折による後遺障害のポイント