Ⅲ. 開口障害


開口は、正常であれば、男性で55mm、女性で45mmが日本人の平均値です。

 これが2分の1以下に制限されると、開口障害により咀嚼に相当の時間を要することになり、12級相当が認定されます。男女とも、指2本を口に挿入できなくなったときは、後遺障害の対象となります。
 
 参考までに、そしゃく筋について、追加的な説明をしておきます。下顎骨の運動は、咀嚼筋と呼ばれる筋肉が主に働きます。この筋肉は、随意に動かすことができ、下顎を上顎に対して上下する、水平に移動することで、歯が食物を噛み切ったり、すりつぶしたりすることができるのです。

 
 咬筋は、硬い食物を噛み砕くときに働き、こめかみには、閉口や顎を後方に引くときに働く扇形の側頭筋があります。


 顎を前に突き出すのは咀嚼筋の中で最も小さい外側翼突筋と呼ばれる筋で、開口や下顎の緊張に働く筋です。顎を開けるとき、咀嚼筋の力を抜くと下顎の重さにより開口します。

 大きく口を開いて食物を口に入れるときには、舌骨上筋が主に働き、このときに外側翼突筋は顎を開けやすいように前方移動します。また、食物を口に入れ、咀嚼時に食塊を口の奥のほうに押し込むのには、表情筋が働きます。
 
Ⅳ. 痛み、しびれ、その他不具合

 毎度のことですが、痛みやしびれなど不具合が残った場合、神経症状で評価される場合があります。変形や転位(ズレてくっついた)が画像で明らかに確認できれば12級13号、癒合が正常でも症状の一貫性、信憑性があれば14級9号の望みがあります。
 
 上顎骨と下顎骨の骨折から、そしゃく障害と神経症状を認めさせた例 👉 個人賠償 併合11級:上下顎骨骨折・歯牙欠損(40代男性・神奈川県)
 
◆ 顔面神経麻痺? 唇や下顎のしびれ、開口障害、流涎=よだれ、言葉の不明瞭化などでは、メチコバールやビタミンB12など、神経再生薬の投与が行われています。4週間で64%の改善が報告されており、顔面神経麻痺の診断まで及ばないことが普通です。現在まで、そのような重篤な例は経験していません。
  
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