昨日の記事から専門用語を解説します。それと専門医から最新の治療情報を。

  ※1 デブリ洗浄=デブリードマン、デブリードメント、略してデブリと呼ばれます。感染、壊死組織は 正常な肉芽組織の成長の妨げとなるため、は創傷外科治癒において最初の処置です。  開放骨折の場合、傷口を洗うような生ぬるいものではありません。骨折面のゴミや骨片を洗浄・除去するにとどまらず、骨と骨髄をゴリゴリ削り取ります。感染症のリスクを低くするため、なるべく多めに組織を除去する必要があるのです。したがって骨の癒合・再生は遅くなります。  

※2 イリザロフ法=1951年、ロシアの医師ガブリル・イリザロフが初めて実施しました。人工的に骨を切り、創外固定器(通称、イリザロフ)をつけます。 そして、外から1日1mmぐらいのペースで骨の隙間を広げていきます。その間、骨の自然治癒力により隙間が修復され伸びていくわけです。最近ではケガ(下肢の短縮障害)だけではなく身長を伸ばす手術としても知られています。原始的な方法ですが脚を伸ばすには最も効果があります。 c_g_l_26

★ 最新知識

 本日、専門医の面談にて、感染症の監視のためのPET検査があり、これが有用であることを聞きました。開放骨折では感染症を防ぐことが基本中の基本です。PET検査は一般にガン検査に用いられますが、この専用PET検査はまだ一般的には流布していないようです。

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 現在、下肢の重症案件を数件お預かりしています。下肢の骨折の中でもやっかいなのは開放骨折です。これは骨折部が皮膚を突き破り、外に出てしまった骨折を指します。人体の内部での骨折と違い、骨の内部にゴミやばい菌が入ってしまうからです。 kaihou 過去記事 ⇒ 開放骨折のガステロ分類  治療は骨の整復の前に、骨の開放部のごみや骨片を綺麗にする必要があります。洗浄と言うより、骨や骨髄までゴリゴリ削り取る作業です。ばい菌を残さないために組織ごと、多めに削り取らなければなりません。したがって骨の癒合が大幅に遅れてしまうのです。これを「デブリ洗浄」(※1)と言います。  そして、ばい菌が暴れださない様、血液、骨髄の監視が続きます。昨年、ようやく解決した被害者さんは受傷から1年後になって感染症となり、せっかく骨も傷口も塞がってきたのに、再度切開し、感染部をデブリ洗浄しました。また整復のやり直しです。おかげで症状固定まで3年を要しました。

 現在も感染症の危険を抱えた、開放骨折の依頼者さんを3人お預かりしています。治療費を支払う保険会社との折衝、長期的に診てくれる病院・医師の確保で奔走することになります。場当たり的で何もできない病院には早く見切りをつける必要があります。また、相手保険会社からしっかり治療費を確保しなければなりません。保険会社としては長期かつ手術が数度伴うので健保の使用を強く要請してきます。しかし、病院側は健保使用により、イリザロフ法(※2)など特殊治療、入院期間の縛りなどの治療内容の制限がなにかと妨げになるので困ります。自由診療による治療費の利益(=健保の2倍以上)だけの問題ではないのです。  このような周囲の思惑が絡み、うかうかしていられないのです。色々な調整、交渉が必要となりますので、ここはメディカルコーディネーターの真骨頂です。

 交通事故の解決では、この前半戦が重要となることがしばしばあります。重度の骨折の被害者さんは早期に専門家を確保して下さい。賠償問題は後回し、まずは自らの足で再び歩くことが目標です。

※1~2は明日解説します。  つづく 

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 昨年は下肢の重症例も多かった。現在もシングル等級必至の下肢案件を4件お預かりしています。いずれの賠償金も高額であり、弁護士の賠償交渉を睨んだ立証作業となります。 c_h_17-2

7級相当:腓骨神経麻痺・コンパートメント症候群(30代男性・北海道)

【事案】

駐車場内で着替え中、自車と駐車しようと後進してきた自動車に脚を挟まれ受傷。脛骨近位端不全(≒挫滅)骨折となる。足関節、足指の自動運動がほぼ不能となる。

【問題点】

ポキンと折れた骨折より深刻な障害を残すケースである。筋電図、神経伝達速度検査の数値は一定の麻痺を計測、しかし下腿の広範囲に筋組織の挫滅、瘢痕化もある。腓骨神経麻痺とコンパートメント症候群双方の障害と認識して立証作業に入る。7級ともなれば、曖昧な医証など提出できない。東京-札幌の飛行機往復が続く。

【立証ポイント】

リハビリ先のPTさんがマメで下腿周径の定期計測を記録していた。それならばと、足関節はもちろん、手間のかかる足指すべての計測を共同作業で行う。さらに、実施・提出する検査結果を主治医と綿密に打合せした。とくに診断名の特定、絞込みには医師と一緒に悩んだ。

万全に医証を揃えて提出した結果、7級を抑え込む。また、下肢の装具をオーダーメイドで制作し、費用明細と写真を添えて弁護士に引き継いだ。このように準備万全であれば賠償交渉も好調に進む。

「全国対応」とうたいながら文章のやり取りで済ます専門家が多い中、被害者の一生がかかっている大事な局面に飛行機代など気にしていられない。地の果てまでも病院同行! 看板に偽りなしの対応をさせて頂いた。

 

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     膝の靭帯、ACL(前十字靭帯)とMCL(内側側副靭帯)はペアで痛めやすい部位です。サッカー選手のケガでも1、2を争う好発部位です。交通事故でプラトー(高原)骨折や半月板損傷した場合も、併発の予断を持たねばなりません。しかし軽微な損傷であれば、医師は特別な検査をせずに保存療法とします。したがって、手術をするような高度な損傷、多くは膝が崩れる動揺性が生じますが、それが顕著でなければ痛みや不具合が残ってもそのまま、つまり後遺障害が見逃されます。 hiza6 今日は膝の靭帯の障害について、診断から立証までを3つの段階に整理します。膝の主要4つの靭帯すべてに応用できますが、最近受任が多いMCL損傷を例にとりましょう。     

    ステップ1:MRI

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 血腫の残存は外見上の障害として醜条痕のカテゴリーに入ります。下肢部には大きさによって14級、12級の選択となります。本件のように血腫が消失し、瘢痕も薄れれば、醜状痕の対象にはなりません。しかし、1年以上経っても訴える痛み等から「神経症状の残存」にあてはめて頂いた。このように診断名からややズレた認定もあるのが14級9号の妙味。  もちろん後遺障害審査は画像、検査数値など証拠が重要です。それでもまず”自覚症状ありき”なのです。  

14級9号:太ももの血腫

【事案】

原付バイクで走行中、交差点で左方よりの自動車と出合頭衝突したもの。その際、左太ももを強打した。初期診断名は左膝大腿四頭筋不全断裂。

【問題点】

事故当初から血腫の瘢痕があり、痛み、感覚低下が1年経っても残存した。治療も終了し、完治をみずにそのまま放置状態となり、相談会に参加された。瘢痕もほとんど目立たなくなっていた。

【立証ポイント】

とにかく症状固定し、後遺障害の審査に進めねばならない。治療終了から10か月後となるが病院に同行し、MRIの再検査を行った。結果、「血腫の消失」が診断された。側副靭帯損傷を観察するマクマーレーテストも陰性。諦めムードでの申請だったが、”推測サンキュー14級”が認定された。受傷時の筋断裂と血腫が評価されたことに加え、血腫は消えてしまったが、自覚症状を神経症状として評価、つまり、痛み、感覚低下の残存を信じて頂いたよう。

本件は弊事務所ルーキーの山本が初めて単独担当した案件。決して諦めず、心を込めた立証作業から誠心が調査事務所に伝わったのだと思う。後遺障害の立証作業にビギナーズラックはない。訴えに真実があるのみ。

   今後も14級9号の味な認定例を取り上げていきたいと思います。  

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 整形外科医は痛みを訴える部位に対し、必ずXP(レントゲン)を撮ります。骨折を見逃すことは、二次的に重大な病変を引き起こし、医療過誤の問題に発展する可能性があるからです。しかし、残念ながら医師でも見落とすことがあります。私は医師の見逃した骨折を発見したことが過去4回ほどあります。これは私の読影力を自慢しているのではありません。多忙な医師は軽傷(と見える)患者のXPを長々と診ている時間がありませんが、逆に私は「骨折はないかね~後遺障害はないかね~」と常に血眼になって画像とにらめっこだからです。

 本例は医師が「踵骨骨折」と診断し、それに私も調査事務所も振り回された案件です。その顛末を。

 

14級9号:骨折はあったのか?

【事案】

T字路で自動車停車中、右方より自動車が左折してきたため正面衝突した。その際、ペダルに掛けていた右足を骨折した。

【問題点】

骨折の診断だが、私から見ても骨折部が見当たらない。骨挫傷レベルも皆無。自覚症状も踵に体重をかけると痛む程度。

【立証ポイント】

CT検査も検討したが、骨折がないという「逆証明」をしてしまうようで怖い。また、MRIを撮れば内部に骨傷を発見できるかもしれない。でも、それならただ事じゃない痛みとなるはず。もやもやっとしたまま主治医の診断名と、残存する症状を丁寧に説明した診断書で申請をかけた。案の定、調査事務所の方から「骨折はどこ?」の問い合わせがきた。そこで、主治医に再度、レントゲンに骨折箇所をペンで記載(〇印)頂き、追加提出する。そして調査事務所の方と電話で、「まぁ、よくわからないけど14級をお願いできないかな?」と談判し、「しょうがないですね・・」と認定。 残存する症状にウソがなければ、推測で認めてくれるのが14級9号。でも、むち打ちではこのような談判は通用しませんよ。

   私は骨折があったとは思っていません。それでも医師が診断し、本人がそれなりに痛みを抱えているのですから・・  

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 14級9号は頚椎捻挫、腰痛捻挫が多くを占めています。しかし、むち打ちに限らず他の部位でも多くの認定実績をもっています。中途半端な損傷?、癒合状態が良い骨折後の不具合?、痛みがずっと続いている?・・このような医学的に証明されたとまでは言えない症状でも、訴えにウソがなければ調査事務所は認定してくれます。画像所見や検査数値が微妙でも、丁寧な申請で訴えの信ぴょう性を向上させることが私達の仕事です。逆に言えば調査事務所は本当に良く見てくれています。感謝すること度々です。

 では、そのような”推定サンキュー14級”を列挙してみましょう。おなじみ「実績一覧」へも同時にUPします。  

14級9号:かかとの裂傷

【事案】

バイクで直進中、交差点で対抗右折自動車と衝突、転倒したもの。その際、右足中指の末節骨の開放骨折と踵(かかと)にざっくりと裂傷を負う。

【問題点】

末節骨の癒合経過は良かったが、踵の裂傷は抜糸まで時間がかかった。そもそも末節骨骨折も裂傷も後遺障害等級の対象から遠い。しかし、踵については痛み、しびれ、無感覚などの自覚症状が受傷6か月経っても治らなかった。

【立証ポイント】

幸い早くから受任していたので、適時、写真を残し、残存する症状を丁寧に説明した別紙を添えて申請することができた。医師にも無駄とわかっていながら診断書に線条痕の計測、神経症状(チネルサイン:陽性)の記載を促した。 結果、痛み、しびれ等の窮状を汲んでいただき14級9号の認定となった。

 中指の末節骨に骨折があったものの、普通、切り傷は治るもので後遺障害とはなりません。しかし、例外的にひどい裂傷は対象にしてくれるのです。器質的損傷がない、もしくは明らかではないけど14級・・を数例続けます。   

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 可動域制限の正確な計測は当たり前のことではありません。私の経験では医師の計測でも2件に1件は間違っています。それが等級認定上、大きな影響がなければ良いのですが、洒落にならない誤計測もしょっちゅうあるのです。相談会に参加されたことにより、運命が変わった被害者さんの例をご覧下さい。

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【事案】

自動車で直進中、T字路で左方からの自動車の衝突を受け、路外に逸脱、建物に衝突・停止した。その際、右足距骨、尾てい骨、胸骨を骨折した。

【問題点】

受傷10か月後に症状固定し、後遺障害診断書の記載は完了していた。提出の直前に相談会のチラシを見て、「無料だから、念のため相談しよう」と甲府相談会の会場にいらした。 事故状況、症状から足関節の可動域制限を予想したが、肝心の後遺障害診断書は固く封をされていた。これは「開けて見せて頂けますか」と思い切って提案すべき。相談者さんは迷っていたが、了解を得て確認したところ、やはり誤計測だった。ケガをした方の足関節はわずか5°の制限差しかない。このままでは良くて12級13号、最悪14級9号となってしまう。

【立証ポイント】

受任後、早速、主治医に面談した。再計測を促し、特に健側(ケガしていない方)の数値を大幅に修正頂いた。明らかな誤計測を指摘しては主治医のプライドを傷つける。上手くとりなすことがメディカルコーディネーターの腕の見せ所である。 また事故車両の写真を添付し、日常の困窮点を文章にまとめた。10級ともなれば丁寧に状況・症状を説明しておきたいところ。

結果として10級11号が認定された。引き継いだ弁護士は1500万円ほどを獲得。あの日あの時、封を開けなかったら、150万円の解決もあり得た。このように交通事故賠償の肝は後遺障害等級であり、骨折の場合は可動域制限の正確な計測が最大の勝負どころなのです。  

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 もう少し、下肢の実績を続けましょう。今度は重症例です。    実は重傷なほど後遺障害の立証は易しくなります。それは手術を通じて、一通りの画像検査が実施されているからです。  一方、手術にはリスクがつきもので、患者はそのリスクと効果を比較検討することになります。この部分でメディカルコーディネーターも一緒に考えます。結果として完全治癒すれば問題ありません。しかし、治療手段は必ずしも一つではなく、万全ではありません。何を犠牲にしてどこを治すか?、このような決断が必要な時があります。  

【事案】

バイクで直進中、T字路で対向自動車が急に右折、衝突したもの。初期診断名は左足関節脱臼骨折、左脛骨天蓋骨折、右橈骨遠位端骨折、モンテジア骨折、外傷性肝損傷、腹腔内出血、びまん性脳損傷(脳の障害はなし)・・以上、左脚と右腕に障害必至の重傷である。

【問題点】

足関節の治療が最も困難を極めた。足関節内顆と外顆にインプラントを埋め込み、スクリュー固定する。その後、可動域確保のために関節鏡下手術で滑膜切除を行う。しかし整復後も足関節の激痛収まらず、体重を支えられない。主治医は最後の手段として、腓骨から骨採取し、足関節の固定術を施行。この固定術によって足関節の可動域は永遠に失わることになった。被害者は可動域を犠牲にする選択をしたのである。

【立証ポイント】

手術を数度、伴ったおかげでCR、CT、MRIすべて画像検査が揃っていた。足関節は完全固定の為、5°の可動が限界で用廃決定。残るは腓骨の採取(変形)で12級、開放創と手術痕による醜状痕を写真撮影して14級を計算、以上を漏らさず後遺障害診断書に記載いただいた。8級に併合を加えて7級とするためである。

本件は病院同行を通して、局面に応じて被害者にとって最適な選択となるように相談を重ね、見守り続ける作業となった。  

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 続いて、可動域制限の理由を追求・立証した好取組を。

 本例で言えることは、障害を診断する医師の視点と障害を審査・認定する審査側の視点は一致していないということです。医師は直接、患者を診ていますので、「曲がらなくなった」ことを実際に触診して確認しています。もしそれが演技ならば見抜きます。しかし審査側は書面審査が原則です。「曲がらなくなった」ことが頷けるような受傷時の骨折形態と、症状固定時期の癒合状態を画像で確認します。癒合不良、変形、転位、関節面の不正等から可動域制限の有無を判断しているのです。したがって、医師にとってわかりきっていることであっても、審査側に「曲がらなくなった」理由・原因を画像検査とその診断内容にて丁寧に示さねばならないのです。  

【事案】

自動車で信号待ち停車中、後続車に追突された。強い衝撃で前車に玉突き衝突、前後の自動車に挟まれた状態で救護された。ダッシュボード下に伸ばした下肢に縦方向に衝撃を受け、右の脛の真ん中部分(脛骨骨幹部)を骨折した。

【問題点】

本件で被害者が訴える症状はすねの骨折によって足首の曲がりが悪くなってしまったことである。医師は受傷機転、骨折状態から足関節への影響を認めている。しかし本事故で足関節部に直接の損傷はなく、診断名もない。足関節の可動域制限の理由が見出せないのである。自賠責に可動域制限を否定される危惧を抱いた。

【立証ポイント】

脛骨の骨折により足関節の関節裂隙に狭小化があるのでは?この仮説のもと、左右下肢を揃えてXP撮影をすることを主治医に進言した。しかし主治医は「ケガをしていない脚も撮るの?」と拒否の姿勢だった。そこで「左右の関節裂隙の比較が足関節可動域制限立証の勝負どころである」と熱心に説明し、検査の意味・必要性について理解を得る事ができた。

そのXP画像は・・・脛骨の癒合は良好であるが、左右を比べるとケガをした方の足関節にわずかな狭小化が確認できた。

結果として12級7号を確保、足関節の可動域制限は立証された。このように医師の理解・協力を引き出せば間違い(の認定結果)は起きない。メディカルコーディネーターの面目躍如といったところ。

 

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 最近の実績投稿ではすっかり下肢がおろそかになっていました。今日から数日、下肢の好取組例をUPします。

 まず今日は基本に忠実な立証作業を行ったプラトー骨折です。プラトー骨折(高原骨折)は下肢の骨折の好発部位で、前十字・後十字・内外側副の靭帯損傷、半月版損傷も併発しやすく、診断漏れがないか注意が必要です。なぜなら可動域に制限があっても、骨融合の状態が良好ならば「曲がらなくなったこと」を疑われてしまいます。この場合、骨折だけではなく、周辺靭帯や半月板の損傷を加えた複合損傷として可動域制限の理由を補強する必要があります。

 漫然と骨折の診断名が書かれた診断書を提出・・これでは危ないのです。

 

【事案】

二輪車で走行中、交差点で対抗右折車と衝突。脛骨近位端骨折(プラトー骨折)となる。   【問題点】

kansetu_21リハビリの成果で膝関節・屈曲は100°まで回復。患側(けがをした膝)=100°と健側(けがをしていない方の膝)=130°の比較では12級7号ギリギリの数値である。丁寧にROM計測する必要がある。 さらに脛骨の癒合状態は良好である。関節面の不正も見当たらない。この状態での可動域制限にはやや不安が残る。  

【立証ポイント】

膝の靭帯と半月板の精査すべく、MRI検査を追加した。読影の結果、前十字靭帯の損傷が判明、診断名に加わった。半月板は無事だった。

症状固定日には膝関節の計測に立会。うつ伏せでの計測を依頼し、100°の数値を確認した。

本件はプラトー骨折対応の基本と言うべき作業である。

 

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 事前認定を是とする弁護士から、被害者請求を原則とする秋葉にチェンジし、救われた被害者の例を披露します。

 タイトルを正確に言えば、「何の検討・戦略もなく、障害の立証に関心なく、漫然と事前認定を勧める弁護士には注意」でしょうか。  

【事案】

 バイク2人乗りで左車線を直進中、右隣車線の自動車が急に車線変更、割り込んで来たため、自動車と衝突、転倒したもの。その際、二人とも右下肢がバイクの下敷きとなった。運転の主人は膝関節を捻挫、後部搭乗の奥さんは腓骨を骨折した。  

【問題点】

 共に膝の痛みひどく、膝の靭帯、半月板損傷が疑われた。すでに弁護士に依頼していたが、その弁護士は症状固定するまで動かず、また事前認定(相手保険会社に後遺障害審査を任す)で十分との判断のまま、「等級が出るまで待っています」との対応。症状固定日が近づく中、不安になり当方へ相談に訪れる。

 やはりというか、膝の診断名について、主人「捻挫」、奥さん「腓骨骨折」のままで、必要な検査等、精査されていない状態。  

【立証ポイント】

 すでに委任している弁護士には退場いただき、被害者請求に切り替える。まずはリハビリ先の整形外科に同行、膝の専門医への紹介状を記載いただく。そして専門医にMRI検査をしていただき、膝の損傷について改めて診断を乞う。 mri 案の定、夫婦共々、内側半月板損傷が判明した。それぞれ損傷程度に差があり、夫は14級9号、奥さんは12級13号を予断する。そして専門医の診断結果とMRI画像を主治医に戻して、後遺障害診断書を完成させた。

 結果は狙い通り、夫婦で14級と12級。その後、連携弁護士に引き継ぎ、過失割合は0、赤本基準満額の賠償金を交渉だけで勝ち取る。夫婦で約1600万円。元の弁護士であれば捻挫のまま、夫は非該当、奥さんは腓骨の癒合良好で14級が関の山、併せて500万程度しか取れなかったでしょう。

 賠償交渉の前に必要な検査・診断を仰ぎ、診断名を確定させること、そして確実に等級を抑え込むことが重要なのです。誰に解決を委ねるかで1000万円も差が出ることがあるのです。

   確かに被害者請求は手間がかかります。提出書類が同一ならどちらでも結果が変わりません。しかし、提出方法はともかく、頼りにしている弁護士が障害の立証作業を放棄してしまったらどうなるでしょうか?

 相手の保険会社が審査の前に「MRI検査をしなければだめですよ」、「半月板損傷が疑われますから専門医を受診して下さい」など弁護士に代わって親切にアドバイスしてくれると思いますか?

 保険会社担当者の使命はできるだけ早く、できれば少ない金額で事件処理をすることです。時間をかけて、被害者に保険金をたくさん払えるようにしてくれる、そんなおめでたい損保担当者がいるはずがないと思いませんか? 

 

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 先日のプラトー骨折で膝関節の可動域制限が用廃レベル(8級=15°までしか曲がらない、もしくは健側(ケガをしていない方)に比べて10分の一以下しか曲がらない)の被害者さんを対応しました。骨折部は手術でプレート固定とし、リハビリを続けていました。幸い癒合状態も良く、9か月後に抜釘(金属を抜く)をし、症状固定を迎えました。しかし関節の可動域はある時期から回復せず、関節硬縮を起しています。 

部位

主要運動

膝関節

屈曲

伸展

合計

正常値

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 全国の仲間から実績投稿があがってきています。交通事故外傷で最大勢力であるむち打ち・頚椎捻挫・腰椎捻挫での14級9号認定は数が多すぎて投稿を控えざるをえません。それでもレアな障害、先鋭的な取り組みなど、弁護士他士業の皆様からも好評をいただいおります。また、最近の行政書士HPを見ると似たような実績ページが増えたようで、もし影響を与えたとしたら光栄なことです。なにより被害者の皆様にご自身の解決に向けて役に立つ情報となり、ダイナミックな現場の空気を感じて頂けれたら幸いです。

 では本日の投稿を!

 

自動車保険に精通し、保険会社・代理店・契約者の機微を理解した者に成しうる解決事例。

 

【事案】

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 最近の投稿は上肢が続いたので下肢を投稿しました。下肢の切断を防ぎ、なんとか癒合・整復をした案件です。当然ながら複数の障害を残してしまいました。それでもここまでよく治ったと言えます。

 

併合8級:脛骨開放粉砕骨折(30代男性・東京都)

  【事案】

 バイクで直進中、左路外から飛び出した自動車と衝突、転倒、傷病名の通り左のすねはズタズタに。膝部の近位端から骨幹部まで脛骨の骨折が及び、腓骨も骨幹部で折れていた。受傷直後は最悪、切断の選択もあった。他に左腕(尺骨)骨幹部も骨折。  脚は腰の骨(腸骨)から骨採取し、プレートも複数個所固定する大手術となった。ケガの重篤度から障害認定までの手続きを弁護士から託された。

【問題点】

 癒合は非常に難航し、1年後に恐れていた感染症を発症、再び足を切開し洗浄・消毒する手術となった。立証以前になんといっても回復が優先。感染症の再発ないことを祈る日々が続く。症状固定までの治療・リハビリ期間を通じて丁寧にフォローしていく必要があった。

【立証ポイント】

 明らかな障害は立証も易しいと言える。しかし「余すところなく」立証するためには綿密な立証プランを描くことが重要。緻密に細部まで障害を拾い上げて診断書を完成させる必要がある。もちろん具体的に障害を説明するべく、別紙の申述書は欠かせない。外貌写真の提出も必須である。  認定内容は以下の通り。    まず左足関節の可動域は1/2制限で10級11号、左膝関節は同じく3/4制限で12級7号、ここで同一系列の併合として9級相当を確保。    さらに左下肢の短縮障害も2cmの短縮を計測、13級8号を加算、下肢の開放創&手術痕で醜条痕14級5号、腕は特に障害残らず。    以上、併合結果から併合8級とする。ほぼ計算通りの認定となった。ちなみに骨採取した骨盤の変形は外見上目立たないため取りこぼした。最近の腸骨変形の12級認定は厳しい傾向と言える。

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↑ ちょうどこんな状態が2年も続きました

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 今朝は好天の中島公園を見下ろすホテルからスタート! 今回の病院同行の目的は正確なROM測定(関節可動域の測定)です。

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 前回の同行で、主治医のみならずPT(理学療法士)の先生とも打合せ、必要な計測項目について計測表をお渡ししました。単に言葉で伝えるより、必要な計測項目が整理された計測表が重きをなします。必要な計測項目が漏れてしまうと、調査事務所から追加計測の医療照会が入ってしまい、病院やドクターにご迷惑がかかるからです。最悪、評価もれで等級が付かないことがあります。

 かつて腓骨神経麻痺で足関節のみ計測され、足指の計測がなかったため、足指の用廃12級が併合されなかった被害者を2例経験しています。これでは数百万円のもらいそびれです。その2件は膨大な時間をかけて異議申立や裁判をすることになりました。

 本件も膝の靭帯損傷、足関節と足指の神経麻痺が重なった複合損傷です。医師と綿密に打ち合わせし、等級の取りそびれがないよう、丁寧な立証作業が必要です。  

<母趾の関節>

部位

MP 関節主要運動

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 ドラマはあまり見ません。まして一年も続く大河ドラマなど・・。しかし先日NHK大河ドラマ「軍師 官兵衛」を観ました。行政書士仲間は戦国好きが多く、皆しっかり大河ドラマを観ています。忘年会でも官兵衛が話題に上がりました。

kan さて黒田官兵衛については詳しい方も多いと思いますので人物説明は割愛します。一言で言いますと戦国時代、信長、秀吉、家康の3天下人に仕えた軍師です。様々な逸話が残っていますが私にとって注目すべきことが一つあります。それは後遺障害の観点から「関節硬縮」です。    まず背景から・・・

 官兵衛が主君 織田信長に謀反を起こした荒木村重のもとへ、「謀反を思いとどまるよう」説得のために単身、有岡城へ出向きます。しかし村重は説得に応じず、官兵衛を牢に幽閉してしまいます。この牢は天井低く、官兵衛は座ったままの状態を強いられ、1年間も閉じ込められました。その後、村重の謀反は失敗し、官兵衛は救出されます。しかし下肢、とくに左脚が不自由になり、しばらく自力で歩くことができなくなりました。戦国時代にどのようなリハビリをしたのか、また装具はどうしたのか記録にありませんが、有馬温泉で療養したとの記録があり、杖を使って歩けるまでに回復はしたようです。ドラマの冒頭、小田原城への使者のシーンで足を引きずってましたね。

 ここで官兵衛の病態を分析します。考えられるのは2つ・・

1、くる病  おそらく陽も当たらず不衛生な環境から、ビタミンD不足を原因とする「くる病」が考えられます。大腿骨、脛骨や半月板が石灰化を起こし、ひどいと骨の変形となります。当然脚が曲がったままで伸びず、歩行不能が考えられます。しかし栄養状態の回復と運動療法から回復する病気でもあります。

2、廃用性症候群

 人間の関節は一か月も動かさなければ誰でも固まって曲がらなくなります。これを廃用性関節硬縮と呼びます。狭い牢で一年も歩かず座ったままであれば関節は固まってしまい、元通り100%動くまでの回復は困難となります。

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 自賠責の後遺障害認定は交通事故被害者が加害側の自賠責保険に請求する際、自賠法によって定められたルールで認定されます。今回取り上げる身体障害者手帳とその等級は行政が障害者に対する福祉を目的として定めた制度です。したがって自賠責の等級とは意味合いも違い、認定される等級も関係ありません。

 税金や医療費、交通機関の割引等のメリットがあります。内容は自治体ごとに異なります。

 身体障害者手帳は、視覚、聴覚、平衡機能、音声・言語・そしゃく機能、肢体不自由、心臓・じん臓・呼吸器・ぼうこう又は直腸・小腸・肝臓・免疫機能に障害のある方に交付されます。 手帳の等級は、障害の程度により1級から6級までの区分があります。(7級は2つの障害が併合される場合に影響します=緑色太字)

 障害のカテゴリーごとに随時見ていきたいと思います。今回は「下肢」を取り上げます。

等級

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 脚の骨折、腕の骨折、骨折の形態も、横骨折、斜骨折、粉砕骨折、剥離骨折、亀裂骨折、挫滅骨折、いろいろ経験してきましたが、四肢すべて骨折は初めてです。右上肢は上腕骨幹部骨折、左上肢は橈骨遠位端、右下肢は大腿骨骨幹部、左下肢は近位端、そして年齢は80代。これではもう歩けません。痛みはもちろん日常生活の不自由は深刻です。年齢から回復は望むべくもなく、このまま衰弱していく・・・そのような危惧を家族も医師も抱いていたはずです。

 受傷から一年が過ぎ、症状固定を迎えました。歩行不能ですが車イスでなんとか自力移動できます。そして両腕は事故前の筋力が戻りました。年齢からすると驚異的な回復です。関節可動域制限も残りましたが、12級レベルまで戻っています。事故に遭うまで農家の畑仕事は現役でした。平素維持した体力はもちろん、若いころから我慢強く、80超えてもなお精神力を保っています。

 感嘆すべきおばあちゃんです。対してむち打ちで1年もだらだら通院し、仕事に復帰しない若者もいます。被害者の務めはなにより回復努力と日常生活への復帰です。治療をする医師や補償問題に取り組む私達はそのお手伝いをしているに過ぎません。被害者には事故に負けずに頑張って欲しいのです。

                      

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 清々しい天気でした。山梨遠征はいつも好天に恵まれています。

 さて本日の内容は、中学生の骨端線損傷の異議申立についてです。既に事前認定で「非該当」なっております。自賠責保険の回答は「骨折等、器質的損傷がない・・」ことを理由に、疼痛と可動域制限を否定しています。しかし事故後1年以上も症状が収まりません。おそらく自賠は「成長痛」によるものと判断しているようです。  では成長痛を少し調べてみましょう。

成長痛 

 12歳未満の小児に多く、4人に一人の頻度で起きると言われています。特に原因なく夜間、両下肢に痛みが生じ、翌日になると痛みが軽快して障害などは全くなく普通に歩けるようになります。。痛みの出現は両側で、大腿、膝、下腿など下肢に多く出現します。時に前腕、頭部などの痛みを伴ないますが、下肢の痛みと同時に出現します。  成長痛の特徴として、筋肉、関節、骨などには異常を一切認めません。仮に異常があれば別の疾患となりますので、鑑別疾患を疑う必要があります。仮に異常があれば捻挫、打撲、骨折など別の疾患を考える必要があります。  治療は保存療法です。傷病ではないのでそのままにするしかありません。疼痛の緩和のために投薬やマッサージも有効ですが、中学校を卒業するまでにほとんどが消失します。

 このように成長期の子供さんにとっては「既往症」なのでしょう。しかし本件の場合は受傷した右脛骨・腓骨の遠位端、つまり右足首のみに疼痛が出現しています。両足ではないのです。単なる成長痛で諦めるわけにはいきません。なんらかの器質的損傷があったのかもしれません。これについて骨端線の観察、関節裂隙の左右比較を主治医に主張し、原因究明のため両足のXP 、ヘリカルCT検査を快諾して頂けました。これから専門医の読影を乞い、画像の解明作業です。

 

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