漢字ですと書き方が難しく、言葉にするとカミカミな膝の靭帯の呼び方。医師はカルテ上、英語で略して記載することが多いようです。今日は少し手抜きですが英語表記を復習しましょう。

前十字靭帯 =ACL: Anterior Cruciate Ligament

後十字靭帯 =PCL: Posterior Cruciate Ligament   内側側副靭帯=MCL: Medial Collateral ...

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 骨端線(こったんせん)損傷について、特に足関節(脛骨と腓骨)の成長線骨折を例にとって解説します。(XP画像は秋元接骨院さまHPより転用)

 成長期ではどんどん骨組織が発達します。脚では脛骨と腓骨がぐんぐん伸びていきます。その時期に足の捻挫などにより骨端線(成長軟骨部分)を損傷することがあります。足関節を構成する脛骨及び腓骨の遠位端には成長軟骨層があり、骨端核を中心に成長と共に成人の骨へと変化していくのですが、骨端部分が成人に近い状態にまで完成されても、脛骨と腓骨の成長が終了するまでは、骨幹と骨端の間に骨端線が残ります。  骨端線部分は完成された骨よりも強度が弱く、外力による影響を受けやすい部分のため、強い外力の働いた捻挫や衝撃で骨端線損傷を起こしやすいといえます。 損傷の程度が軽いものでは、レントゲン検査でも分かりにくく、捻挫と診断されるようなものから、骨端線からきれいに骨折している重傷なものまで、いくつかの種類に分かれます。

 XP画像はタイプⅠです。悩ましいのは骨端線骨折は、癒合を果たしたとしてもくっきり線が残ること、痛めやすく、骨折しやすくなることです。さらに交通事故外傷の場合、「癒合で完治」とは断定できません。前述の通り成長著しい幼児~10代は爆発的に骨組織が伸長しますので骨組織は容易に癒合します。しかしその後骨折しなかった方の足と比べ、転位や骨成長の左右差、軟骨の不具合による関節裂隙の左右差などが残存することがあります。これが可動域制限や、疼痛などにつながれば後遺障害の対象となるはずです。

 最近、小学生時の事故で成長線骨折となった未成年の被害者を2例担当しています。いずれも数年を経て癒合するものの成長による変化を伴った状態です。慎重な立証作業となります。

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 土曜日は都内、台風近づく日曜は埼玉で2日連続相談会。合計16人で少なめでしたが、新MC候補さん2名を伴い、充実した内容でした。地方開催も新鮮ですがホームもいいものです。恒例の所感を。

画像勝負です!

 MRIで精査した結果、リスフラン関節(足首~足の甲)の靭帯損傷が判明しました。しかし自賠責の回答は「画像上、判然としない・・・」が「治療経過から推定が及ぶものとして・・・」14級9号とされました。器質的損傷が明らかであれば12級13号の可能性もあります。これはズバリ画像勝負です。虎の子の放射線科医に鑑定をお願いしますが、ここで一つ私たちのネットワークの優位を誇らせて下さい。  それは画像鑑定費用です。単純読影で21000円、もし有用な所見が得られ、鑑定書に仕上げればさらに21000円という2段階シムテムです。これなら最悪、画像勝負を諦めるにしても出費は21000円で済みます。このような被害者に優しいシステムは他では聞きません。(エヘン)

脊椎圧迫骨折の判定

 脊椎の圧迫骨折は縦の衝撃で椎体がつぶれる骨折です。例えば車にはねられ尻もちをついた、車の運転中、出合がしら衝突で車が横転~1回転し、頭を天井に打ち付けた、このようなケースでの受傷を多く経験しています。単純な追突事故では受傷の説明として、どうのように縦の衝撃が加わったのかよくわかりません。受傷機転を明らかにすること、これがまずスタートです。  さらに陳旧性(古傷)か否かも丁寧にチェックします。高齢者には自然に圧迫骨折している方も少なからず存在します。MRIで陳旧性か新鮮骨折を観察しますが、まず受傷直後のXPを見てみないと判定できません。受傷直後から陳旧性っぽければ事故での受傷を否定されます。

以上2点、相手保険会社の反論がきてからあたふた説明しているようではダメなのです。

関節可動域、5°の勝負

 真面目にリハビリを行い、機能回復することは被害者の務めと思います。後遺障害はそれでもなおかつ治らなかったものです。真面目な被害者は本当に必死にリハビリを行います。この日の被害者もひどい骨折ながらよくぞここまで直したと、根性を讃えるべき方です。しかし・・・足関節の可動域制限を測定したところ、わずか5°で10級を逃し12級に・・・。この角度5°で最終的な賠償金は500万円位減ると予想します。関節可動域の5°は長さにしてわずか5mmです。医師の測り方で1cm程度の誤差、言い換えれば計測値の違いがあっても不自然ではありません。この被害者さんの場合、骨折の様態、癒合具合から私は10級11号と思います。つまり計測の瞬間がこの被害者にとって最大の勝負どころなのです。

 何が勝負所なのか?まずこれを理解する必要があります。一生懸命治したのに賠償金は少なくなる・・・それは正しいことですが、ちょっとかわいそうですよね。

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 懐かしい骨折名です。大学の剣道部で同期の部員が2度経験しています。激しい稽古で消耗すると、自然に足の甲の小指側の骨が折れてしまいます。多くは時間をたてば自然に癒合しますが、怖いのは無感覚の偽関節、または骨折癖、つまり簡単に何度も折れてしまうことです。

 交通事故外傷では一度経験していますが、やはり癒合状態もよく、特に痛みも残らないので後遺障害の対象とはなりませんでした。もし偽関節(くっつかなかった)となっても普通に歩けるようです。しかし症状固定時に偽関節化していれば、当然、後遺障害として申請すべきです。

 今日はいつも骨モデルを購入しているトワテックさんからのメール(メディカルリポート)から抜粋しました。ちなみにスミスやジョーンズなど名前のついた骨折名があります。多くは学会で症例と治療法を発表した医師の名前がついているようです。

               

 Jones骨折とはJonesが自らの経験を基に最初に報告した骨折で、第5中足骨の骨幹近位部に繰り返し加わる外力により生じる疲労骨折の1つです。同じ部位に繰り返し弱い力が加わることによって起こる疲労骨折は、運動しているときに痛み、安静にしている時には痛みは治まります。骨折線の特徴として横走するものが多く見られます。 また再発を繰り返し治療に難渋する事が多く遷延治癒や偽関節になりやすいためスポーツ選手(特にサッカー選手)の場合は、選手生命を左右することが多い疾患と言われています。解剖学的に第5中足骨の基部は短腓骨筋腱・第4中足骨と連結している底側中足間靭帯・立方骨と連結している底側足根靭帯がついており強く固定されています。それにより基部は固定され基部中枢から末梢1.5cmの弱い部分に力が繰り返し集中し発生、骨折線も横走するものが多いのです。  症状として初めのうちは違和感程度で、これといって症状はありません。徐々に時間とともに負荷が加わり、疲労骨折の症状として運動しているときは痛み、安静にしているときは治ったりと増悪や緩解を繰り返します。完全骨折になると激痛で歩行困難となります。鑑別診断として、短腓骨筋の急激な収縮により起こる下駄骨折や残存性骨軟骨障害などが挙げられます。

 治療としては、不全骨折の場合は保存療法を選択します。繰り返し同部位に力が加わるため足圧分散の足挿板を使用したり、足底筋や腓骨筋など筋力バランスの強化。または姿勢反射調整などがあげられます。観血的療法に踏み込む場合は、完全骨折の場合など症状に応じて判断していきます。どちらにしても疲労骨折の1つであるJones骨折の治療の目的として、骨の癒合だけにとらわれず、持続的に同部位への繰り返しによる応力の集中を防ぎ、再発に努めることも大切です。

整形外科医 北村 大也 ...

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 自賠責保険は自動車保険を語る上でバイブルのような存在です。自賠責保険を使いこなすこと、自賠法を熟知することが非常に重要であると思います。先日の研修から抜粋します。

(自動車損害賠償責任) 第3条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によつて他人の生命又は身体を害したときは、これによつて生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己(1)及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと、(2)被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があつたこと並びに(3)自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは、この限りでない。

★ 運行とは?  「運行」とは、自賠法第2条2項で「人又は物を運送するとしないとにかかわらず、自動車を当該装置の用い方に従い用いることをいう」と定められています。そして「運行」の意義は専ら「当該装置」をどういうように解釈するかという形で議論されてきました。当初は「当該装置」とは原動機(エンジン)であるとの裁判例(原動機説)もありましたが、被害者保護の要請から次第にその適用範囲を広げ、ハンドル、ブレーキなどエンジン以外の走行装置も含む(走行装置説)との最高裁の判例も出、さらにその後、走行装置だけではなくて、ドア、荷台の他、ダンプカーのダンプ、フォークリフトのフォーク、コンクリートミキサー車のミキサー、クレーン車のクレーンなど特殊車の固有の装置までも含む(固有装置説)との最高裁の判例が出て、現在は「固有装置説」で処理されています。

<具体例>  Aさんは清掃作業員です。作業中、清掃車(パッカー車)から降りようとしたとき、先に降りた作業員がドアを閉めてしまい足を挟まれて足首の靭帯を痛めました。私はこの事故を受任し、パッカー車に付いていた自賠責保険に対し被害者請求を行い、有責(保険金の支払いを受けた)にしました。   → 非該当足関節挫傷(30代男性・神奈川県)

 このように「運行」は幅広い解釈が成立します。本件は法律条文・約款を読み解く力が実務に直結した好取組例です。

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 本日は足首(距骨)の骨折で足関節が良く曲がらなくなった被害者さんの病院同行です。

 相談会に見えられたときにはすでに後遺障害診断書は完成しており、他動値は以下の通り・・・ 健側:左             患側:右  (けがをしていない方)    (けがをした方) 背屈 10°  底屈 35°    背屈 10°  底屈 30°                 さて以下の表と比べてみましょう。 

部位

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本日は異議申立ての案件で静岡の病院へ同行。半日かけて医師に張り付きました。

 本件被害者は膝のあたりの脛骨骨折、いわゆる高原骨折、プラトー骨折と呼ぶ骨折です。この骨折は過去数度経験していますが、全件、後遺障害が認められています。典型例を列挙しますと・・・

 

1、骨折の癒合後の疼痛の残存

 → 14級9号 ・・・これは良く治った例です。  

2、癒合後のわずかな変形、靭帯損傷を併発

 → 12級13号 ・・・痛み、違和感が激しい例です。  

3、癒合後のわずかな変形、転位で可動域制限

 → 12級7号 ・・・痛み、関節硬縮で曲がりが悪くなった。  

4、癒合後の変形、転位がひどく、可動域制限が大きい

 →10級11号 ・・・素人目にもひどい状態  

5、膝関節の硬縮で足が短くなった

 →13級8号 ・・・ケガをした方が1cm短縮している。  

6、前十字靭帯の断裂があり、膝に固定具を装着

 →12級7号 ・・・いわゆる動揺関節  

7、変形癒合、転位がひどい、または半月板、靭帯損傷が劣悪

 →10級11号 ・・・素人目にもひどい状態   

 このように人体の関節、とりわけ膝は完璧に治ることは少ないように感じます。

 昨日の被害者さんも骨折後の転位がひどく、前方への動揺性1cm、関節硬縮による下肢長の短縮、そして装具装着状況の記載が必要です。事故後4年を経た現在、もはや人工関節置換術しか完治の道が残っていないほどひどい状態なのです。

 しかし、最初の診断書では可動域制限と変形、そして手術後の醜条痕が記載された状態です。これでは正確な等級審査ができません。事実、2の例、12級13号の認定止まりです。本件は装具の使用状況から上記7の10級11号の動揺性を検討すべき障害なのです。さらには5の短縮も記録すべきです。完全に的外れな立証がなされています。これでは診断書の作り直しです。この診断書を作成した医師を責めるより、アドバイスをした弁護士は罪な仕事をしたと思います。

 昨日の医師は大勢の患者さんの治療をこなし、最後に必要な検査と診断書再作成に協力して下さいました。3時間以上待つことになりましたが、これで患者は救われました。医師の真摯な仕事に感謝!感謝!です。

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 サイエンス記事からコピペ、手抜き記事ですが、まずはご一読を。  

 再生医療というのは、病気や怪我などで傷ついたり機能を失ったりした体の細胞・組織・器官(臓器・筋肉・骨など)の再生や機能回復を目的とする医療技術の総称である。生きた組織や器官を移植する皮膚移植・骨髄移植・臓器移植だけでなく、人工材料で作られる義手・義足・関節、そして身体機能回復訓練のリハビリテーションなども広い意味での再生医療とされている。

 ただし、こうした方法では難病の根本治療には至らず、臓器移植にはドナー(臓器提供者)の不足、臓器移植後の免疫拒絶反応リスク、他人の臓器を移植することに対する倫理上の問題なども指摘されている。

 このため再生医療で注目されているのが、患者自身や他人から採取した幹細胞を移植して組織や器官を再生する技術だ。幹細胞というのは組織や器官に成長(=分化)する細胞のことで、分化能力を保ったまま自己増殖する能力を持っている。体の組織や器官が傷ついた場合に、残存する細胞の中で幹細胞が増殖し、傷ついた部分を修復して元の状態へ回復する現象を再生と言う。骨髄造血幹細胞、神経幹細胞、筋肉幹細胞などが知られているが、これらの幹細胞は分化できる範囲が限定される。そして、近年特に注目されているのが皮膚細胞などから作製するiPS細胞(人工多能性幹細胞)がある。

 iPS細胞は受精卵のように体を構成するすべての細胞に分化できる能力を持っている。そして患者の皮膚細胞から作製したiPS細胞を、治療に使う神経や筋肉などの細胞に分化させ、患者に移植することで病気や怪我で失われた機能を回復させることが可能になる。皮膚という完全に分化した状態の細胞に4つの遺伝子を組み込むことによって受精卵のような状態に戻し、受精卵と同様の万能性を作りだしたことが画期的とされ、生物学の常識を覆したと言われている。

 ES細胞の場合は患者と別人の細胞のため免疫拒絶反応リスクが大きくなるのに対して、iPS細胞の場合は緊急時などを除いて患者本人の細胞のため免疫拒絶反応リスクが小さく、倫理面の課題も少ないと考えられている。iPS細胞の基本特許は2009年に日本で成立し、2011年7月に欧州、そして8月には米国で製法に関する特許が成立している。

 iPS細胞による再生医療実用化に向けた課題としては、発がんリスクを低下させる技術、緊急時など他人のiPS細胞を利用する場合に備えたiPSバンクの整備、安全性や品質に関する基準・規制の策定などがあるが、動物が本来持っている自己再生能力を最大限に活用するため、iPS細胞が未来の再生医療の本命という見方が有力である。

     昨年、日本のiPSの最前線、京大の先生から半月板の手術についてご講義を頂きました。その先生は関節の専門医で、半月板の修復・再生手術について日本でトップクラスの技術、実績をお持ちです。研修後の会食でも、術式の説明が続きました。

 交通事故で膝の半月板など軟骨の損傷を負った場合、血の通っている骨と違い、血の通っていない軟骨部分は、自己修復ができないのです。つまり、骨折はくっつくが、軟骨がつぶれたら再生不可能が基本です。そこで損傷した半月板の修復は外科手術が必要となります。手術方法はいろいろありますが、影響のないところの半月板を円形にくり抜いて、損傷個所に埋め合わせる移植術があるそうです。この移植術も半月板組織をiPS細胞の培養で作ることが可能となるはずです。    交通事故外傷で重度の骨折の手術の場合でも、腸骨や腓骨など比較的人体に影響のない骨を採取し、損傷個所に使う手術が多くあります。これもiPS細胞ですべて解決できる未来が目前のようです。    

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 膝や肘など関節部分を骨折すると、高い確率で後遺障害が残ります。ざっくりと後遺障害の指針を示します。   1、骨折の癒合後の骨変形や転位(ズレてくっつく)、関節面の不整による可動域制限   2、骨折が完全に癒合しなかった場合、偽関節による動揺関節   3、骨折と併発した靭帯損傷、軟骨損傷による痛みから、関節が曲がりづらい   4、骨折と併発した、もしくは単独の靭帯断裂、靭帯損傷(靭帯が伸びてしまった)による動揺関節   5、骨折と併発した軟骨損傷による、関節の隙間の狭小化による可動域制限   6、骨折が正常に癒合したが、関節硬縮や疼痛による可動域制限(ただし、14級9号止まり)   7、靭帯や半月板が損傷し、疼痛による可動域制限(14級~12級)      さて、もうお解りと思いますが、関節の機能障害は大きく分けてこの2種です。赤は関節の動きが悪くなったもの(可動域制限)、青は関節がぐらぐらになったもの(動揺性)です。両者は同じ骨折を契機とした障害であっても、障害の種類が違うのです。    可動域制限は、ケガをした腕(膝)と、ケガをしてしない方を比べて、4分の3位までしか曲がらない(12級)、半分しか曲がらない(10級)、硬直、ほぼ曲がらない(8級)と基準が分かれます。

 (ただし、自賠責保険は、この計測だけをもって判断しません。画像上、損傷と一致していないと疑われます。)    動揺関節は、労災の基準では、硬性補装具の使用状態から12級(たまに装着)、10級(重労働時には装着する)、8級(お風呂以外は常時装着)とします。膝の靭帯が損傷、多くは不全断裂によって、緩んでしまったので、装具をつけないと膝がぐにゃっと崩れます。とくに、階段を降りる時は恐怖だそうです。

 (ただし、自賠責保険は、装具の装着だけをもって判断しません。画像上、損傷と一致していないと疑われます。)    通常、「可動域制限と動揺関節は並立しない!」これが原則です。この2つの機能障害の次いで、茶色の神経症状の残存(痛みやしびれの継続)が検討されます。この審査の視点に乗って進めないと、後遺障害の立証が迷走します。    例えば、骨折後、靭帯の複合損傷で動揺性が残ってしまった障害であるのに、靭帯損傷や補償具の使用頻度に触れず、関節可動域の数値が記入されている後遺障害診断書を見たことがあります。つまり青の種類の損害なのに、赤を主張している診断書です。これはズバリ的外れ。当然ながら可動域は、ほぼ正常なので、骨の変形や転位がなければ、茶色の12級13号もしくは最悪14級9号の判断が返ってきます。    お医者さんも、その辺をよくご理解していない状態で診断書を書いてしまうことがあります。だからこそ、障害の予断が大事なのです。「このケガであれば、このような障害が残りやすい」と予想し、「可動域制限なのか動揺性なのか」を明確に区分しておくのです。これこそ、秋葉の仕事です。医師の「治療」と障害の「立証」を結びつけることなのです。

 

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 本日サッカーワールドカップアジア最終予選、日本vsオーストラリア戦です。引き分け以上で予選突破です。今夜決めたいですね。

 さて半月板損傷の長友選手が復帰しそうです。かつて本田選手も経験した半月板損傷、これはサッカー選手の職業病、かなり多いケガです。交通事故外傷でもおなじみで、大腿骨や脛骨の顆部骨折で一緒に痛める症例を何度も経験しています。その際、外傷による完全な断裂であれば、文句なく後遺障害の対象となります。しかし微細な損傷では陳旧性(古傷)の疑いとなります。これを読影するには専門医の力を借りねばなりません。最近、専門医の診断に立ち合い、初歩的な指導を受けてまいりました。

 まず復習→ 半月板損傷・・・専門医の診断から

 それではお待たせしました。「わさわさ」した画像を見てみましょう。

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 本日は膝関節専門医の初診に被害者と同行しました。

 傷病名は腓骨近位端骨折とそれに伴う内側半月板損傷、外側側副靭帯の損傷です。

  

 まず受傷時のMRIの読影です。骨折の形態、半月板や靭帯の損傷具合についてものすごいスピードで解明し、説明を頂きました。腓骨は顆上部の横骨折、脛骨に骨挫傷があること、外側側副靭帯の損傷は炎症、浮腫の残存・・・メモを取る私も目が爛々と輝いていたと思います。

 続いて自覚症状を聞き取り、ROM(関節の可動域)の確認、内半・外反テストを行い動揺のレベルを測ります。専門医のすべてに共通していること、それはとにかく早い!よどみなく流れるように診断が続きます。「う~ん」と腕組みして考え込む医師とは隔絶した能力を見せます。    続きを読む »

 本日の病院同行は脛骨骨幹部骨折の被害者。骨の癒合は順調ですが、足首の背屈(上に反らす)ができません。脛骨(すねの骨)の中間あたりが折れたのに、なぜ足首が曲がらなくなるのか?

 そこでの医師との会話・・・

秋葉:「先生、脛骨骨幹部が折れた場合、足関節に影響を及ぼすことは考えられますか?」

主治医:「骨折の影響で周辺の軟部組織も損傷を受けているケースもあります。神経麻痺や関節の硬縮、関節の隙間の狭小化も考えられます」

秋葉:「患者さんは足を反らすと関節がぶつかって曲がらないと言っています。先生のおっしゃるとおり、これは関節の隙間の狭小化、関節裂隙(かんせつれつげき)に問題があるのではないでしょうか?」

主治医: 「ではXPで確認してみましょう・・・・・やはり狭くなっている可能性はありますね。」

秋葉: 「先生、脛骨の下方転位、足関節の軟骨損傷どちらでしょうか?」

主治医: 「両方考えられますね。でもそこまで突き詰めないと保険はおりないの?脛骨骨幹部骨折でも十分説明はつくし、そのように診断書に書いてあげるよ。」

秋葉: 「先生、保険会社は『脛の骨が折れて、癒合も良好なのに、足首の可動域制限が起きるはずがない』と考えます。証拠として画像や検査結果を示す必要があるのです!」

主治医: 「XP(「レントゲン)の画像だけではだめなの?」

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本日の病院同行は、足関節の骨折です。

 初回の相談時に「どこが折れたの?」と質問しても、「足首の骨折です」と返答され、本人も具体的にどこが折れたのかわからないようです。この部位の後遺障害を予断する場合、まず3つを検証します。

1、可動域制限 2、変形 3、神経麻痺

 関節部の骨折はやっかいで上記3つのうちどれか、もしくは3つ全部、障害が残り易いと言えます。そこでさらに踏み込むためには具体的に6つ聞き込みます。

1、脛骨、腓骨、距骨、踵骨のどれが折れたのか?

2、折れた部分は骨幹部、遠位端? 遠位端であれば外顆部、内顆部、それとも前後?

3、骨折の状態は亀裂?開放?粉砕?剥離?、そして固定方法は?現在の癒合状態は?続きを読む »

 被害者さんはもちろん、医療調査、病院同行を業としている方に知ってもらいたい事を。

 骨折等、交通事故外傷で後遺障害が残った場合、その部位が関節であれば、その関節の可動域に制限が起きることがあります。その制限の程度はどのくらいか?これを「関節の用廃、関節の著しい障害、関節の障害」と3段階に重篤度を判定します。これは医師、もしくは理学療法士(PT)、作業療法士(OT)がゴニオメーターと呼ばれる分度器で計測します。この計測で保険金が決まります。この角度によって数百万円もの差が生じることがあります。したがって間違えて計測されるわけにはいかないのです。

 ← ゴニオメーター 

 しかし経験上、半分くらいが不正確な計測方法、いい加減な目見当で計測されていると思います。まさか医師や専門家が間違えるはずが・・と皆思います。しかし断言します。日本整形外科学会の基準通りに正確に計測されることは少ないのです。

 これは整形外科の医師から聞いた話ですが・・・「医大時代、さらっと見ただけでよく勉強していない。試験にも出てこない。これを専門的に勉強するのはPT、OTで医師は専門ではない」と。医師は教科書にでている計測方法を見たことがある程度で、実習をしているのはPT、OTのみです。私も仲間と練習したり、何人もの障害者を計測した「実習」の結果マスターしたのです。したがって実習経験もない医師は自己流の計測になりがちです。実際、計測方法は一つではなく、2~3種存在します。  勉強熱心な医師は、臨床の場で専門書を見ながら正確に計測する実践を積んでいます。しかしこのような医師は少数と覚悟しなければなりません。

 では専門家であるはずのPTやOTの先生なら安心でしょうか?もちろん正確な計測方法を熟知しています。資格取得の試験にもでてくる内容ですし、なにより実習を積んでるからです。しかし油断はできません。

 普段、PT、OTの先生はリハビリで患者の機能回復訓練を行っております。リハビリ室で「はい、今日は少し頑張って曲げてみましょう」と言いながら、患者の膝をぎゅーっと曲げています。これは訓練なので、患者は痛くても頑張らなければなりません。訓練、リハビリであれば当然の場面ですが、困ったことに後遺障害の計測の時においてもぎゅーっと曲げる先生がいるのです。

 後遺障害診断における計測値はエンドフィール(関節終端感覚)と呼び、痛くて「もう曲がりません!」と感じるところを限界としています。ですので機能回復訓練のように頑張って痛みに耐え、限界を超えて曲げたところではないのです。なぜなら日常生活で痛みをこらえて限界まで曲げることなど通常生じないからです。このエンドフィールが障害の生じる角度なのです。これを勘違いしている医師やPT、OTの先生も多いのです。

 計測では2つの値を測ります。

① 自動値・・・患者が自分の意志で曲げる限界点

② 他動値・・・補助者が手を添えて曲げる限界点

関節可動域制限では、機能障害は②の他動値で判定します。神経麻痺の場合、例外的に自動値で判定します。続きを読む »

 今日の病院同行から・・・

 今回の被害者さんは大腿骨顆上骨折です。血栓症を合併したこと、高齢であることを理由に抜釘しないで症状固定します。

 循環器科のドクター、整形外科のドクターをはしご、各々綿密に打ち合わせ、後遺障害診断書の形が見えてきました。

 まず基本として骨の癒合具合(きれいにくっついたか)、膝関節可動域、をしっかり診ていただきます。そして忘れてならないのは下肢左右の長さの計測。下図のように1cmの差でも13級となり、同系列でも併合し等級が1つ上がる可能性があります。これはけっこう見落とされているのではないかと思います。

 足の骨折で膝の部分、太ももでいうと「大腿骨 遠位端」、すねだと「脛骨 近位端」、この部分の骨折があると、下肢の短縮障害が起きるケースがあります。骨が癒着後、短くなるケースは相当ひどい骨折ですが、この場合は膝関節が詰まってしまう?ような状態でしょうか。もっとも長管骨は骨折後、変形なく癒着を果たしても、微妙に長さが変わるそうです。これは腕の橈骨や尺骨の骨折→癒合後の「突き上げ症候群」という後遺障害で学習しました。

 かつて異議申立て案件で、「脛骨骨折後の膝関節拘縮を理由とした短縮障害」が認めれたことを経験しています。(これはかなりイレギュラーな判断でもありますが・・・関節硬縮は後遺障害とは認めない考えが基本)

 隠れたチェックポイントではないかと思います。 

下肢の短縮障害による後遺障害等級

8 級 5 号

1 下肢を 5 ㎝以上短縮したもの、

10 級 8 号

1 下肢を ...

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 昨日の開放骨折に関連しますが、脛(すね)にそんなひどい骨折があれば、周辺の神経が損傷され、腓骨神経麻痺が強く疑われます。

(骨折シリーズはちょっと中断、今後散発的に取り上げていこうと思います。)

 今日の医師面談の目的はまさにこれ。数年前の事故ですが、すでに腓骨神経麻痺の後遺障害を取得している被害者さんの再検査の依頼です。

 腓骨神経麻痺で足首の可動に制限が残ってしまった方ですが、同時に足指にも制限が残っています。同じ神経で結ばれていますので足首、足指ともに障害を残すケースが多いのです。前回の検査では足首の可動域のみ計測されていましたが、足指は計測されていません。実際に症状を訊ねると案の定、動きが悪いのです。

 上図のように2本の腓骨神経、浅腓骨神経(腓骨の外側)と深腓骨神経(腓骨の内側)は足指までつながっています。

 上図のように2本の腓骨神経はそれぞれ内側足底神経、外側足底神経につながっています。

・内側足底神経は短母指屈筋、母指外転筋、短指屈筋を支配 ⇒ つまり親指の動きに影響

・外側足底神経は小指対立筋、短小指屈筋、小指外転筋を支配 ⇒ 小指の動きに影響

・中央の虫様筋、背側骨間筋は人差指、中指、薬指の動きに影響します

 したがって足首が動かなくなるような麻痺では、足指への影響が濃厚です。

  <親指> MP関節(指の根本)とIP関節(第2関節)を計測します。

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 骨折と一口に言っても、その折れ方にいくつかの分類があります。

 最近の例ですが・・・圧迫骨折なのか骨挫傷なのか? 

           骨幹部骨折なのか骨顆部骨折なのか?

           複雑骨折なのか粉砕骨折なのか?   

 このよう臨床での判断を迷っているケースを見ます。

 もちろんこれらは診断した医師が判断します。しかしどっちつかずの微妙な画像所見の場合、医師の主観で左右される結果となります。その骨折具合の判定も後遺障害の認定に少なからず関わってきます。

 したがって臨床においての骨折状態を正しい後遺障害診断に結び付けるため、骨折について正確な知識が必要です。

 例えば圧迫骨折における圧壊率は等級認定上の条件に重きをなします。また関節可動域制限も骨顆部(関節の部分)の骨折では説明がつきますが、骨幹部(骨の両端を除いた幹の部分)の骨折では可動域制限の根拠になりづらいのです。

 下肢の骨、大腿骨(太もも)と脛骨(すね)で見てみましょう

骨幹部 

骨顆部 骨の末端の一方ですが心臓から遠い方は 遠位端です 骨顆部 続きを読む »

今度はスネの膝関節部です。スネには脛骨と腓骨、二つの長管骨があります。この骨の上部の関節ジョイント部は、顆部、近位端とも呼ばれます。診断書ではプラトー骨折、高原骨折とも書かれます。 膝の強打やタイヤで轢かれる、バイクの転倒で膝が下敷きになった等で受傷します。また周辺靭帯、半月板の損傷や膝蓋骨・大腿骨の骨折を伴うこともあります。さらに合併症は関節拘縮とならんで腓骨神経麻痺があげられます。そのような深刻な後遺障害を残さぬよう、医師の正確な診断と整復が望まれます。

診断もまず折れ方の分類から・・・

陥没型 分離・陥没型 分離型

 CTで陥没箇所が描出!

ついでに腓骨についても・・・

■ 腓骨顆上骨折

腓骨近位端骨折、もしくは腓骨頭骨折とも目にします。文字通り腓骨が脛骨とジョイントする部分です。脛骨と一緒に折れるケースが多く、深刻な可動域制限は少ないですが、腓骨神経麻痺の残存に注意が必要です。

★腓骨神経麻痺

脛骨、腓骨の骨折を原因として付近を通る神経にダメージを受け、足首や足指が自力で曲がらなくなる症状です。詳しくは実際のエピソードを参照して下さい。 → 続きを読む »

太ももの大腿骨の膝関節に接する部分です。呼び方も「大腿骨遠位端骨折」、「大腿骨顆部骨折」といくつかあります。膝から路面に転倒したり、自動車運転中の場合、衝突でダッシュボードに膝を強打したときに受傷します。 多くは膝周辺の靭帯や半月板、脛骨にも損傷が及び、膝窩動脈損傷を伴う深刻なケースもあります。後遺障害としては変形癒合、人工関節、短縮障害、可動域制限で等級が認められます。

<治療>

基本通り、元通りに整復するにはプレート固定術がとられます。骨幹部(骨の両端を除いた幹の部分)の骨折と違い、ボルトの数や手間、つまり医師の技術が必要です。ひどい整復がなされると、当然、後遺障害も重くなります。 定期的にXPで癒合具合を確認してくださる医師はいい先生です。癒合の監視と運動療法が大事で、とくにCPM※を用いて膝部の屈伸運動訓練を行います。 この術後の処置が良好に進まないと、関節拘縮を起こします。これは文字通り関節が固まった状態で、可動域制限はもちろん、ひどいと足の長さが変わってしまいます。

    XP (レントゲン)    固定方法も折れ方でいろいろ・・

※ CPM・・・関節可動域改善の回復訓練を促進する機械で、手術後に固まってしまった関節を改善します。「膝関節屈伸運動装置」、「連続関節可動運動機」と訳されます。(写真があるとよかったのですが・・捜索中)

 

<後遺障害>

以下の項目ですが、同部位の場合、一番重い等級が認定されます。痛み、しびれ等の自覚症状も含みます。

〇 変形癒合    12級8号 まずXPで視認、その他数値的な判定は以下の通りです

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膝シリーズ再開です。  今日から膝周辺骨折に及びます。

膝を構成する骨ですが・・・まず膝蓋骨、膝のお皿です。続いて太ももの大腿骨、この膝関節部分を大腿骨遠位端と呼びます。脛骨については逆に近位端となります。またジョイント部を外顆・内顆とさらに細かく分類します。

■ 膝蓋骨(しつがいこつ)骨折

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