よくある質問です。厚労省のHPからの引用で恐縮ですが、非常にわかり易いのでほとんどコピペに近い状態でまとめました。   Q.後遺障害となって障害年金を受け取る場合や、死亡で遺族年金などを受け取る場合、労災の年金と(厚生・国民)年金、両方を受け取ることはできるのでしょうか?     A.年金は全額受け取れますが、労災年金は調整されるため全額を受け取ることはできません。    例えば、障害厚生年金と労災の障害補償年金の両方を請求・受取る場合、労災年金の額は減額され支給されることになっています。しかし、障害厚生年金はそのまま全額支給されることになります。ただし、この減額に当たっては、調整された労災年金の額と厚生年金の額の合計が、調整前の労災年金の額より低くならないように考慮されています。   (調整の考え方)  これは、両制度からの年金が未調整のまま支給されますと、受け取る年金額の合計が、被災前に支給されていた賃金よりも高額になってしまうからです。また、保険料負担について、厚生年金保険は被保険者と事業主とが折半で、労災保険は事業主が全額負担していることから、事業主の二重負担の問題が生じてしまうためです。

 この表から分かるように、障害厚生年金を受け取っている人が労災の障害補償年金を受け取る場合、障害厚生年金を全額受け取ることができますが、労災年金は0.83の調整率がかけられ全額を受け取ることはできません。しかし、障害厚生年金を受け取っている人が労災の(死亡で遺族が受取る)遺族補償年金を受け取る場合、調整は行われません。従って、厚生年金・労災年金ともに全額受け取れます。

 

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 通勤災害のレアケースについて、実例から検証します。  

(Q)電車内で喫煙している高校生に注意し、暴行を受けた場合は通勤災害はおりる?     (A)正義感からの行動ですが、残念ながら通勤災害の認定は困難となります。    労災保険法7条では、

 通勤災害とは・・・「労働者の通勤による負傷、障害または死亡を言い、」

 通勤によるとは・・・「通勤と相当因果関係があること、つまり通勤に通常伴う危険が具体化したこと、」

 このように難解な定義をクリアしなければなりません。

 本件の場合、被災者の故意によって生じた災害、通勤の途中で怨恨をもって喧嘩を仕掛け、負傷した場合は、通勤していることが原因となって災害が発生したものではないので、通勤災害とは認められないとしています。通勤中ではありますが、通勤とは関係ない揉め事によるケガになるのです。

 ところが、車で出勤途中の労働者が、犬を轢きそうになって犬の飼主に暴行された事例は、通勤災害が認められています。

 「自動車で通勤する労働者が、通勤の途中で犬を轢きそうになることは、通常発生し得るできごとであり、また、この様なできごとに遭遇した場合において、当該犬の飼主が反射的に暴行におよぶこともあり得ることであるから・・・通勤と暴行に相当因果関係が認められる。そして本件では飼主との間に私的な怨恨関係が認められず、被災者に加害者の暴行を誘発するような言動が一切行われていない。」

 認めるにしても、認めないにしても、まったくの解釈論に聞こえます。このような、理屈如何によって適否が決まってしまうのです。 したがって、先の喫煙の件を通勤災害とするには、被災者の通勤経路上の被災場所で、これまで頻繁に、犯罪が発生していたかどうか、加害者と被災者の間に私的な怨恨関係がなかったかどうか、被災者に災害を誘発する言動があったか、なかったのか、これらが問題となるのです。

 すると、よくある例ですが、満員電車で肩がぶつかり、口論の末、暴行を受けてケガをした場合はどうでしょう? 通勤経路上はOK、頻繁に肩がぶつかる場所ですからこれもOK、私的な怨恨関係は微妙ですが、行き当たりの人同士ですから大丈夫とします。しかし、口論の末ですから、暴行を誘発する言動は成立し、「社会通念上、通勤に通常伴う行為」から外れてNG=適用できなくなります。

 では、口論せずにいきなり殴られれば、これは、反射的な暴力ですからOKとなるはずです。

 審査は厚生労働省のお役人様ですから、車内喫煙を注意することが、社会通念上、通勤に通常伴う行為であると認識させない 限り、通勤災害は適用されないことになります。レアケースは常に弾かれ易く、また、通勤災害の適用がケースbyケースと説明される所以と思います。  

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(Q)共稼ぎの妻を会社に送り、迂回して出勤の途上、交通事故受傷しました。通勤災害と認めらるか?    弊社の従業員の田中さんは夫婦共稼ぎをしています。 昨日、田中さんは妻を会社に送り届けた後の通勤途上で交通事故受傷しました。 田中さんの自宅を起点にすると、彼の妻の勤務先は弊社を通り過ぎて約1km先となります。 つまり、寄り道=回り道をして交通事故受傷しているのですが、この場合、通勤災害の適用は可能でしょうか?   (A)労災は、「合理的な経路なのか、」を検討します。本件の場合、迂回の距離が問題になるようです。    3つの例から検討します。   ① 自宅から同一方向で妻の勤務先が約450m離れているとき、 マイカー通勤の共稼ぎ夫婦で、妻の勤務先が同一方向にあって、しかも夫の通勤経路からさほど離れていない場合は、 2人の通勤をマイカーの相乗りで行い、妻の勤務先を経由することは通常行われることであり、合理的な経路として取り扱うのが妥当であると判断しています。

② 自宅から同一方向で妻の勤務先が3km離れているときは、 妻の勤務先が同一方向にはあるが、迂回距離が3kmと離れており、著しい遠回りと認められるところから、 これを合理的な経路として取り扱うのは困難と判断しています。

③ 別のケースで、自宅から同一方向で妻の勤務先が4km離れているときは、 これは②の事例に従って却下されたのですが、被災労働者は労働保険審査会に対し、「当時、妻は妊娠8ヵ月の身重であり、満員のバスに乗れる状況になかった。」として異議を申し立てました。

 結果、妻は妊娠8ヵ月の身重の状態であり、バスに乗るにも十分に注意しなければならなかった時期であったことを勘案すれば、被災当日、最短の通勤経路から多少離れて妻を勤務先まで送ったことは、やむを得ない必要な行為であったとして、 通勤災害を認定したのです。

 このように、迂回の距離がかなりあったとしても、迂回の理由によって認められるケースもあります。    本件の場合、同一方向かつ、距離が1km以内ですから、認定されると考えます。   ※ 注意が必要なことは、迂回距離の1Km、3Kmは、労災が絶対的な基準として公表しているものではありません。「寄り道は○km以内」と明確な基準を設定しているものではなく、③のように迂回の理由を含め、通勤路の距離や通勤手段などから総合的に検討、個別判断していると思います。   

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 通勤災害の「寄り道」についてケーススタディを続けましょう。   (Q)帰宅途中、美容院に寄った後の交通事故受傷は通勤災害となるでしょうか?

 当社に勤務するOLの堀越さんは、今月末で退職します。その2日前に社内で送別会をやってくれました。軽く飲食があり、流れ解散で午後5時頃に会社を出ました。そして、堀越さんは途中の乗換駅近くの美容院に立ち寄り、美容院を出て帰宅の途中に交通事故で受傷しました。

 美容院は大変込み合っており、2時間も待たされたとのことですが、本件は通勤災害となるでしょうか?   (A)S58-8-2基発第420号で「出退勤の途中、理・美容のため理髪店もしくは美容院に立ち寄る行為は、特段の事情が認められる場合を除き、労災保険法第7条3項但書に規定する、日用品の購入その他これに準ずる日常生活上、 必要な行為に該当するものとする。」との行政解釈が示されました。

 信じられないことに、少し前までは、男子の理髪店での散髪は「日常生活上、必要な行為」として認められていながら、女子の美容院は認められていなかったのです。労働局のお役人は、そのことを、「美容院は女子が美しくなるところ?」と理解していたようです。エステ、ネイルであればそうなりますが・・。

 (ちなみに、飲食も社内、かつ、短時間であり、送別会自体は会社の行事、つまり”業務”に入りますので、退社後の「通勤中の事故」であることに問題はありません。)    問題は「特段の事情」になるか?です。

 理髪店や美容院で1~2時間の待ち時間は日常茶飯事ですから、これは問題になりません。

 論点は美容院に行く目的と頻度となります。基本的に、お役人は、床屋さんは月に1回程度行く日常の身だしなみと考えているようなのです。頻度は髪型などから個人差がありますが、ここでも生真面目に検証されます。   ・お見合いの前日に特別な髪型にしてもらい、ついでに美顔術まで受けた?

・お正月を前に日本髪を結いに行った?

・・・これらは、非日常・イベント的な行為ですので、通勤災害から外れます。

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 これは、出社時間が問題とるケースです。   (Q)2時間早い出勤でも通勤災害となるでしょうか? 

 当社のOLの大原さんが、通勤途上の交差点を横断中に交通事故受傷しました。大原さんは会社の始業時刻の1時間30分から2時間も前に出社しています。 始業までの時間、資格試験の勉強をしており、仕事をしている訳ではありません。会社の担当者は「何故、そんなに早く出勤しているのか」と、しつこく聞いてきます。このような事情でも、通勤災害の適用ができるでしょうか?

  (A)本件は通勤災害としての認定がされるでしょう。

 小姑の嫁いびりのような質問です。 会社の総務、庶務、労務課にはこの手の担当者が多いので、いつも閉口しています。 通勤とは、「労働者が就業に関し、自宅と就業の場所との間を合理的な経路・通勤方法により往復することを説明する。」と説明されています。 本件では小姑じみた担当者が、”就業に関し”を問題としているのです。

 通勤では、往復行為が業務と密接な関連をもって行われるとの要件を満たさなければなりません。 しかし、業務に直接関連のない目的の早出や、逆に時間後も会社に残っていることは、よく見られるケースです。ここで、”就業に関し”があてはまるか、「社会通念上、就業との関連性を失わせると認められるほどの長時間かどうか」を検討します。

 S51-9-1基収第793号では、私用と考えられる組合の用務のために通常の出勤時間よりも1時間30分早く家を出た労働者が、途中被災したケースについて、「被災労働者が、労働組合の集会に参加する目的で、通常の出勤時刻より約1時間30分早く住居を出た行為は、社会通念上、就業との関連性を失わせると認められるほど所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に行われたものとは言えないので、当該行為は通勤と認められる。」との判断を示しています。

 また、S49-11-15基収第1881号では終業後、2時間5分の組合用務で会社に残り、その後の通勤経路で被災したケースが通勤災害と認定されています。今度は退社時間について、 ”終業に関し”を検討しますが、出勤も退勤も同じ条件とされています。 ...

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 通勤経路の逸脱? これも定番の相談です。寄り道の内容から検討されます。    実際、私の損保時代、お客様が加害者で、仕事帰りの会社員に大変なケガ(高次脳機能障害)を負わせてしまった交通事故がありました。その被害者さんにも大きな過失(70%)がありました。この場合、加害者から全額の賠償金が得られませんので、労災請求は必須です。しかし、「帰宅の寄り道の性質から認めてくれなかった」そうです。きっと、何か基準にひかっかったのでしょう。それも大した理由ではないと思います。些細なことで運命を分ける、”労災不適用・被害者”としか言いようがありません。     (Q)下車駅を乗り越し、徒歩で帰宅中の交通事故受傷は通勤災害となるでしょうか?

 先日、会社の営業部の山本さんが4時間の残業の後、帰宅途上に会社近くでラーメンを食べ、電車に乗って帰宅しました。 細かいことですが、会社では夜食としてカツ丼を提供していました。 車内で寝過ごして、下車駅を1つ乗り越してしまいました。 下車駅に戻る電車待ちが30分以上であったところから、徒歩で帰宅中、交通事故受傷したのです。 山本さんの通勤災害の適用は可能でしょうか?

(A)通勤経路の逸脱について、合理的な理由が成立すれば、通勤災害は適用されます。    本件も労災の杓子定規な体質に付き合って、2つのポイントから検証しましょう。   ① まず、下車駅を乗り越し、徒歩で自宅に向かったことが、合理的な経路、方法であったのか?   ② また、カツ丼を食べているのに、ラーメンを食べたことが、日常生活上必要な行為であったのか?    >① 本件の場合、下車駅を乗り越したのは、単に居眠りをしていたのが原因ですから、通勤行為は継続しています。 「次の電車を30分も待つ位なら、徒歩で帰宅する。」は、理由が合理的なので逸脱にはならないでしょう。

 その他「最近メタボが気になって、健康の為に一駅前で降りて歩いて帰る」・・・日常的にそうしていれば、OKとなります。「駅前に駐輪していた自転車が盗まれて、仕方なく歩いて帰った」 ・・・これも、”やむを得ない事由”から問題がなく、合理的な説明になります。

 合理的な説明さえ通れば、通勤災害は適用される可能性があります。何か、請求者の説得力にかかっているように思えてきます。   >② 残業が深夜に及び、仮に会社で夜食をとったとしても、それなりの時間が経っています。これも程度問題からOKと思います。

 私がもし役所で労災を担当していたら、「ラーメンとカツ丼を同時に食べる人だって結構いるじゃないの、 残業で腹が減ったから食った、ただそれだけのことで、どこにそんな深刻な問題があるのよ?」と議論を終えます。そんなに暇ではありません。

 確かに労災の不正請求を排除するために、厳格な判断が必要かも知れません。この程度のことでも、日常生活上必要かを丁寧に検証するのでしょう。

 お役所はいつの時代も杓子定規、肝に銘じなければなりません。    

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 労働者に責任がある場合の支給調整?   (Q)出勤を急ぎ、踏み切りの遮断機をくぐって電車にはねられ死亡したのですが、通勤災害でしょうか?

 弊社の従業員の木村さんが、自宅近くの線路踏切で電車にはねられ死亡しました。事故は出勤途上の午前8時に発生しているのですが、当日、木村さんは寝坊をした様子で、いつもより遅く家を出て、踏み切りに差し掛かった際は、降りている遮断機をくぐり抜けようとして電車にはねられたものです。労災保険では、被災労働者の故意または重大な過失を原因とする災害は保険給付の対象とならないと理解しているのですが、本件はどのような取扱いがなされるのでしょうか?      (A)警報機が鳴り、遮断機が下りているにもかかわらず、これを無視して渡ろうとして電車にはねられたのであれば、歩行者といえども、一時停止、安全確認義務違反は明確で、労働者の重大な過失となります。この場合は、保険給付の全部もしくは一部の支給制限が実施されます。    労災保険法12条の2の2で、労災保険の支給制限が解説されています。   ① 労働者が故意に負傷、疾病、障害もしくは死亡またはその直接の原因と考えられる事故を生じさせたとき、

② 労働者が故意の犯罪行為もしくは重大な過失により負傷、疾病、障害もしくは死亡またはその直接の原因と考えられる事故を生じさせたとき、

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 通勤災害で多く寄せられる定番の質問です。   (Q)退勤途中、食事をした後に交通事故受傷したが、通勤災害になるでしょうか?    社員の山本さんが帰宅の途上で、交通事故受傷し入院したのですが、通勤経路にあるラーメン店に立ち寄り、食事をした後の交通事故受傷でした。退社は定時の5時30分、徒歩で400mほど離れた有楽町駅に向かう途中です。夕食まで待てないのでラーメン一杯、瓶ビールを一本空けました、時間にして30分くらいです。  その後、有楽町駅から電車で戸塚駅に向かい、そこから徒歩で自宅に戻る途中に交通事故受傷したのです。 なお、山本さんには妻子がおり、いつもなら夕食は自宅で摂っていると思われます。     (A)これは労災保険法7条の2、「通勤の逸脱、中断」に該当するかが検討されます。    まず、原則、寄り道は”通勤の逸脱・中断”ですので労災はダメです。    例外扱いとなる寄り道について、3つの点から検証してみましょう。   1、7条の2の但書には、「日常生活上必要な行為であって、労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のもの、」については、通常の通勤の経路に服した時点から通勤災害の適用がなされることとなっています。

 例えば、お弁当屋さんでの惣菜の購入や、クリーニング店でYシャツを受け取るための合理的経路による回り道は、”日常生活上必要な行為”に該当します。また、病院など治療機関への立ち寄り通院も”やむを得ない事由”に入ります。治療行為は歯医者含め、だいたい範囲内ですが、OLがエステやネイルに寄る、また、単なるマッサージは除外されると思います。これは”やむを得ない事由”ではなく、”自分へのご褒美”だからです。(我ながら上手い事を言う)

 飲食店での食事、飲み屋は単なる寄り道で、通勤行為からの逸脱ですから該当しません。

 スポーツジムや習い事(※)、映画・観劇なども、明らかな寄り道、”通勤行為からの逸脱・中断”とみなされます。 ※ 例外的に職業訓練学校はOkのようです。     2、飲食が寄り道となる一つの判断基準に、「腰をかけての飲食か?」が問われるようです。本例は「腰をかけて」になるので、この点から基準を外れます。

 おおむね、売店でのパンの立ち食いや、自販機で缶ビールを買って飲む程度は、通勤行為の逸脱とはみなされません。では、すべて「腰をかけて」いなければOKでしょうか? 例えば、立ち飲み屋ですが、これは程度問題で、飲酒量(おおむね1杯程度ならOK?)や滞在時間によって判断されるようです。

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Q 営業の佐藤さんは仕事を終え、「いつもの飲み屋で待っているよ、」と同僚に声をかけ、先に仕事を上がりました。いつもの飲み屋は佐藤さんの行きつけの店で、日比谷線八丁堀駅出口前にあり、佐藤さんの通勤経路上となります。その飲み屋に向かう途中の横断歩道で交通事故受傷したのですが、通勤災害の適用は可能でしょうか?

A 終業後、飲み屋に向かう途中の事故受傷であっても、事故場所が通勤の経路上にあれば、通勤災害の適用が可能です。

 確かに、飲み屋に出かける目的で会社を後にしているのですが、労災保険では通勤行為について、そこまで厳格に個人の意思を捉えているのではありません。 外形的に判断すれば、紛れもなく通勤途上となりますので、適用がなされます。

 ただし、飲み屋に寄った後は、通勤経路上であっても、寄り道となり、通勤目的から外れますので、適用できなくなります。     Q 妻の入院している病院から通勤の途上、交通事故受傷したが、通勤災害となるでしょうか?

 これは、妻の付添看護のため、夫が寝泊りしている病院から徒歩で通勤の途上に事故受傷したものです。 自宅ではありませんが、通勤災害の適用は可能でしょうか?

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Q 出勤を断念し、家へ帰る途中の事故受傷は、通勤災害となるのでしょうか?

  A これは、通勤行為の中断となり、通勤災害は認められません。

 本件は、遅刻が確実となったことから、会社に電話、有給の請求をして、再び家に戻る途中の事故受傷です。これには合理的な理由がなく、通勤行為を中断した後の被災事故は、就業の予定もないため私的行為となり、通勤災害とはなりません。

 同じケースでも、列車事故により到底、勤務先に向かうことが不可能な場合や、交通事情による遅延等は、通勤災害として認められます。     Q 出社後、眼鏡を取りに戻る際に事故受傷しましたが、通勤災害となるでしょうか?

A 退勤ではなく、出勤行為の連続で通勤災害となります。

 労災は、1日について1回のみを、通勤と認めているのではありません。パートの主婦が昼休みに自宅に戻って食事を摂ることは、午前中の業務を終了して帰り、午後の業務に就くために出勤すると認められています。

 本件では出社後、眼鏡を忘れたことに気がつき、眼鏡がないと仕事にならないと判断、取りに戻ったケースです。出勤途中に忘れ物を取りに戻っても、出勤行為中となります。 合理的な経路を逸脱しない限り、通勤災害として認められます。

 なお、先のケースで、会社から「眼鏡を取りに帰るように」との指示がなされた場合、これは業務災害となります。 ...

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 TFCC損傷は珍しい傷病名のはずです。確定的な診断など、専門医以外は困難です。しかし、この10年、その診断名を口にする被害者さんが激増しました。昔は単なる手首の捻挫でしたが、今や交通事故関連のHPには必ず解説されています。ある傷病名がネット情報で拡散され、ブレイクするのです。おかしな現象と思います。これを業界では”宮尾シンドローム”と呼んでいます。  そんな診断名は、まぼろし~

 さて、本件のミッションは橈骨骨頭部の骨折を起因とする、尺骨突き上げによるTFCC損傷の立証です。過去に類似例を経験していますので、まずは12級を目指しました。しかし、そう簡単ではありません。

 かつて、日本でも指折りの手関節専門医である3名の医師に面談しましたが、MRIの画像上、断裂やはく離が明確なものは手術適用ですが、不明瞭なものが圧倒的多数であり、真のTFCC損傷の診断名とするかは、かなり慎重でした。専門医は口を揃えて、「MRI画像は一つの要素であり、自覚症状の聴取はもちろん、触診や検査を重ねて、ようやく確定診断に至る」そうです。

 あいまいな所見の場合、「手術をするか、しないか?」が問われます・・本当に痛みがひどいのか否か、ある意味、踏み絵のようです。    話を変えましょう。自賠責が画像所見を絶対とする理由は、事故受傷との直接因果関係を重視するからです。つまり、事故による人体の破壊(器質的損傷)にこだわります。一方、労災は経年性の変性が原因の一端であっても、「痛みがある」状態を大事にしてくれます。その点、労災は12級が取り易い。双方の審査基準の違いを感じるところです。とくに、(あいまいな)TFCC損傷を追求すると、自賠14級&労災12級の結果が定番に思えます。  ←誰だ?  TFCC損傷は、どんだけ~?   

14級9号:橈骨骨頭部骨折(30代男性・埼玉県)

【事案】

バイクで直進中、左折自動車に巻き込まれ受傷、右腕の肘(橈骨骨頭部)と第3指(中指)末節骨を骨折したもの。その後、尺骨突き上げ症候群を併発、手首のTFCC損傷の診断名が加わった。 ...

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(Q1) 会社で禁止されているマイカー通勤で交通事故受傷したのですが、通勤災害の適用はできますか?

(A) 通常用いられる交通方法である限り、通勤災害となります。 労災保険法7条の2では、「通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路および方法によって往復することをいい、業務の性質を有するものを除く、」 と規定しています。つまり、勤務先がマイカー通勤を禁止していたとしても、先の要件に合致しているか否かで判断がなされます。したがって、労災はOKですが、会社は嫌な顔をすると思います。やはり、会社のルールも守るべきでしょうか。   (Q2) 出張中の事故?  弊社の社員の井上さんが鹿児島に出張しました。駅近くの酒屋で土産の焼酎を物色中に、酒屋の店舗に運転を誤って飛び込んだ自家用車の衝突を受け負傷し、現在入院を続けています。 土産物の物色中は、厳密には業務ではありませんが、業務災害の適用は可能でしょうか?

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 秋葉事務所では、交通事故被害者が労災も併せて請求できる場合、積極的にお手伝いをしています。自賠責で揃えた書類のコピーが使えますので、その申請作業など、行きがけの駄賃に等しいものです。

 後遺障害は労災と自賠、両方に請求はできますが、丸々二重取りはできません。どちらか先に入金した場合、片方は重なる部分を計算・控除します。これを、支給調整と言います。

 問題は労災7級以上の重傷者です。7級以上は一時金ではなく、年金払いとなりますので、支給調整の計算が困難です。そこで、特別給付金などの一時金は即時に支払われますが、年金は数年間、支給据え置きの措置となります。この据え置き年数は長らく3年でしたが、最近、改正されました。詳しくは、以下、労災の文章を読んでみましょう。(通達を原文のまま転載しました)

第三者行為災害事案に関する控除期間の見直しについて

{現状}

○ 災害事故が第三者の行為によって生じた事案については、被災労働者が、労災保険の請求権と第三者に対する損害賠償請求権を同時に取得する場合がある※。

※ 例えば、仕事中の交通事故について、被労働者が、労災保険の請求権に加え自賠責等の損害賠償請求権を取得する場合   ○ 被労働者が第三者から損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険供給を控除することができるとされており、現行では控除を行う期間を3年間としている※。

〔控除期間が3年である理由〕

○ ...

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 今月号の通信で特集した「労災」ですが、よくまとまっていましたので、こちらにも掲載したいと思います。    労災は大きく分けて、「業務災害」と「通勤災害」です。補償内容については、労働基準法に「災害補償」に関する条文が定められています。条文に沿って、補償内容を確認しましょう。   【1】補償内容(第8章 災害補償)    (1)療養補償(第75条)

・・・労働者が業務上、ケガもしくは病気にかかった場合、その治療費を支払います。

(2)休業補償(第76条)

・・・ケガや病気での療養で仕事を休んだ場合、賃金の60/100(平均賃金)を休業4日目から支払います。 (3)障害補償(第77条)

 ・・・ケガや病気で障害が残った場合、その程度(1級~14級)に応じて、補償金がでます。7級以上の重い障害には年金での支払いとなります。

(4)遺族補償(第79条)

(5)葬祭費(第80条)

 ・・・死亡の場合、平均賃金の1000日分が支払われます。   葬祭費は平均賃金の60日分。   【2】労災使用のメリット   続きを読む »

 自賠責保険の後遺障害認定基準は労災から派生したもので、内容の大部分は準用されたものです。しかし、細部には色々と違いがあります。私達がとくに違いを感じる部分は、「因果関係」に関して自賠責は異常に厳しい目をむけることです。当該事故による障害なのか否かについて、自賠責は厳格にジャッジしますが、労災は緩いものです。

 本件は加害者が誰かわからないものの、交通事故受傷によるケガ・後遺症が明らかだったと言えます。仮に自爆事故であっても労災はOKですから。いつもと違うのは、加害者が自動車・人間ではないことでしょうか。また、労災申請のほとんどは自賠責の申請に続く付帯作業ですが、労災オンリーの申請は珍しいものです。

 ちなみに動物は道路交通法上、「物」扱い、所有者がいれば動物のケガは対物賠償の対象となります。野生動物だから所有者はいないことになりますが・・。  

労災 7級3号:高次脳機能障害(60代男性・静岡県)

【事案】

山中の道路を2輪車で走行中、動物と衝突して受傷した。熊か鹿か猪か?・・いずれも自賠責保険未付保は間違いない。    続きを読む »

 行政機関の定めるルールはいつもなんの前触れもなく変更されます。人知れず、こっそりとは公表していますが、私達のような業者がそれをキャッチするのは、大抵、相談者からの情報です。

 労災も行政機関です。「行政機関への審査請求」と言えば、行政不服審査法が根拠条文となりますが、これはズバリ行政書士試験の課目です。(これも古い情報ですが、行政書士でも特定行政書士には行政不服審査法に基づく不服申立等における代理権が付与されました。)

 本題に戻ります。労災の認定理由の開示と審査請求(労災請求の結果への異議申立て)について、説明した文章を引用しますと、

 これまでは、労災保険の認定等級に不満がなくても、認定通知後60日以内に審査請求を行うとしていました。 なぜなら、労災保険は、等級認定の詳細情報を開示することなく、等級の通知だけを行っているからです。 ところが、近年、労災保険は認定理由の開示に積極的になっています。 したがって、労働基準監督署に出向いて、認定理由の開示請求を行ってください。  もちろん、労働基準監督署で不十分な対応がなされたときは、60日以内に審査請求に踏み切ることになります。 <交通事故110番HPより>    この60日ルールが、最近、労災請求を経た相談者さまからの情報で、以下に改定されておりました。    決定理由の詳細についてお聞きになりたい点があれば、表記の労働基準監督署まで照会して下さい。

(1)表記の保険給付に関する決定(以下「本件処分」といいます。)に不服がある場合には、本件処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に表記の労働基準監督署を管轄する都道府県労働局の労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」といいます。)に対して審査請求をすることができます。

(2)審査請求に対する審査官の決定に不服がある場合には、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2か月以内に労働保険審査会(以下「審査会」といいます。)に対して再審査請求をすることができます。また、審査請求をした日からか3か月を経過しても決定がないときは、決定を経ないで審査会に対して再審査請求をすることができます。

(3)本件処分に対する取消訴訟は、当該処分についての審査請求に対する審査官の決定を経た後に、国を被告として(訴訟において国を代表する者は法務大臣になります。)、決定があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に提起することができます。ただし、決定があったことを知った日から1年を経過した場合は、提起することができません。

 また、審査会に対して再審査請求をした場合には、裁決を経る前又は裁決があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に本件処分に関する取消訴訟を提起することができます。ただし、裁決があった日から1年を経過した場合は、提起することができません。

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佐藤も困った・・    先日、依頼者から「たった今、労災の面談に行ってきたのですが、顧問医の先生が手術した方がいいかもしれないから、一度診てもらってから労災の後遺障害申請をすべきではないか?と言われました。」と連絡がありました。つまり、労災・顧問医の後遺障害診断となるはずが、医師の判断で順延されてしまいました。後日、労災の担当者に電話をして確認したところ、担当者もこのような経験はなく、顧問医の独断であることが判明しました。

 顧問医の先生は依頼者の状態があまりにも悪い為、今後の身体のためを想って助言してくださったのでしょう。しかし、今回は交通事故の業務災害であるため、相手(加害者・保険会社)がいるのです。既に症状固定し、弁護士が賠償交渉を進めている中、「一度診てもらい、然るべき治療を行ってから再度面接に来てください。」と言われましても…。もちろん、顧問医の判断は間違っていないと思います。それが、医師の見解であり、推奨やアドバイスに留まれば問題ありません。しかし、申請者が将来の手術の可能性を理解した上で、後遺症申請を望んでいるにも関わらず、再度治療を行ってから出直しを命ずるのはどうでしょうか。この行動により被害者、保険会社、弁護士、労災の担当者、事故に関わる関係者の全てが困ってしまうのです。

 このような場合、各基準監督署には顧問医が1人?しかいないため、その顧問医の意見を無視して手続きを進めることはできないようです。このままでは手続きが宙ぶらりんのまま、事故を解決することが出来ません。そこで、担当者から上司に話を通していただきました。特例で別の基準監督署で面談を行い、手続きを進めてはどうか?と提案をしてくださり、手配も進めてくださいました。    日ごろから病院に同行し、医師の診察や検査、診断書の内容等に苦労している弊所ですが、保険会社や労災の担当者もまた然りと痛感しました。    ”診断権”をもつ権力者であり、医師という天才たちと一緒に仕事をすることがどれだけ難しいか、改めて思い知った今日この頃でした。  

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 自賠責が単なる保険請求の審査に比して厳しく見る点、この道に熟知している者は一様に口を揃えて言います。

相当因果関係

 簡単に言えば、「事故のせいで痛めた」事がはっきりしていなければなりません。後遺症を残すような大ケガの治療や診断が遅れることは、どんな言い訳(主治医がヤブで診断できなかった、他の部位を優先して治療していた・・)をしようとも、不自然極まりないのです。また、部位によっては既往症の疑いがあります。以前から痛めていたのではないか?との検討もしているのです。

 したがって、事故受傷にすべての原因があるか否かについて、白黒をつけるのは大変難しい時があります。その場合、「逃げ」ではありませんが、労災での認定をもって矛を収める現実路線をとることがあります。本ケースはその典型例です。労災からの給付だけですとやや少ない補償額となりますが、争って0円よりはずっとましです。

 すべての解決が明瞭ではありません。それでも私達は依頼者の利益の最大化を模索しているのです。  

労災 12級6号:TFCC損傷(30代男性・東京都)

【事案】

自動車で通勤中、交差点で後方よりの左折車の巻き込みで受傷、膝と手首を傷めた。後にTFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)が判明した。

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【問題点】

受傷後は膝の治療が中心となり、手関節の治療及び診断が遅れた。後に専門医から手関節の手術の示唆を受けるが、保存療法を選択した。治療経過から自賠責は因果関係を厳しく見てくると覚悟した。

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佐藤イラストsj佐藤が実務を解説!

 今回は労災を適用するまでの手順を説明したいと思います。(死亡事故を除く)

 みなさんが交通事故に遭われたとき、事故の対応は加害者の保険会社が色々とやってくれます。通勤途中の事故や業務中の事故だった場合にも、保険会社が手続きしてくれる場合も多いです。しかし、通勤途中の事故や業務中の事故だった場合でかつ、加害者が任意保険に入っていない場合等はご自身で労災手続き申請を行わなければなりません。会社によっては全て手続きをしてくれる場合もありますが、大抵はご自身で用意して、会社に必要な部分のみをお願いすることが多いかと思います。労災の手続きは書類が多く大変ですが、流れをこれから記載していきます。

 まず、必要な書類は①第三者災害届 ②念書 ③事故証明書です。

① 第三者災害届は全部で4枚(両面印刷の場合には2枚)で2部提出しなければなりません。

② 念書は3部必要です。

③ 事故証明書は原本1部が必要で。会社によってはコピーを1部添付してくださいと指示されることもあります。事故証明書が発行できない場合には事故発生届を2部提出します。

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