今回の問題点は、後遺障害の立証ではありません。交通事故双方が同じ損保会社のところ、賠償交渉もせずに、被害者側が加入している人身傷害保険で丸め込まれそうになった例です。

 ご存知の通り、交通事故の賠償金の基準は裁判等で認められる金額に対し、保険会社は著しく低い基準で示談を迫ってきます。民事上、双方が同意すれば、いくらで示談しようと問題ありません。しかし、純朴で知識のない人を相手に、保険会社基準をだますように押し付ける姿勢は、違法ではありませんが、反道徳的であると思います。本例は、ほとんど0:100の事故であるので、自分の加入している人身傷害を使う場面はなく、相手保険会社の対人賠償一本で交渉するのが普通です。しかし、自身の契約者を説得(丸め込む)為に人身傷害から(賠償金ではなく)保険金が提示され、それで解決を計ろうと、双方の担当者が裏で絵を書いたと思います。双方の損保が同じ会社であれば、どちらから払っても損得はありません。

 近年、このような人身傷害提示をよく目にするようになりました。つまり、対人賠償保険を使えば、保険会社の安い基準を押し付けても、被害者は紛争センターの利用や弁護士委任で、増額交渉をする余地を持ったままです。対して、人身傷害保険での交渉解決は、裁判でもしない限り、あくまで「保険会社基準」で押し切れます。それで、被害者が納得して保険金を手にすれば、被害者は承諾書にサインをすることになり、「相手への損害賠償請求権」を人身傷害社に譲ることになります。今後、相手への賠償交渉はできなくなるのです。

 つまり、双方の保険会社が一緒なら、加害者(側の保険会社)との交渉などすっ飛ばして、人身傷害のみに請求すれば、安易に安価に解決が計れるのです。これも、新たな保険会社の”被害者囲い込みの策”と思います。違法ではありませんが、かなり汚いやり方です。 

 保険会社は対人賠償と人身傷害がかぶる場合、まず、人身傷害を押し出してくる傾向です。本件、相談会に参加された被害者さんは、自身の保険会社から、「相手と交渉しても、当社の人身傷害に請求しても同じ額ですよ」と笑顔で説明を受けたそうです。本当かなぁ・・念のため、その提案書を相談会に持参くださってよかった。この提案書には自身加入の傷害一時金や費用保険金(合わせて14万円)までも合算されて100万円ほどになっていますが、これだけの重傷ながら後遺障害を申請もせずに、さっさと実質90万円位での解決を意図する悪質なものでした。

 もちろん、このような保険会社の企てを連携弁護士が蹴飛ばし、私達は真っ先に12級を申請して、まず224万円をゲットです。そして、続く賠償交渉で最終的な賠償金は700万円までにも膨らむでしょう。

  
 被害者の純粋な人柄や知識の無さにつけこむ・・・怒らなければなりません
 

12級13号:距骨骨折(50代女性・福島県)

【事案】

自動車搭乗中、センターラインオーバーの対抗車に衝突され、足(距骨)を骨折した。

【問題点】

相談時には既に1年半が経過しており、可動域制限を残さず回復し傾向であった。後遺障害なしの保険会社提示を拝見したところ、相手方の責任がほとんど100%ながら、加害者と自身所有の自動車保険の保険会社が同じであった為、安直に人身傷害保険(の支払基準)を適用した目に余る示談内容であった。

【立証ポイント】

すぐに病院同行し、患部の3DCTと両足関節が同時に写るようなXP撮影の依頼を行った。抜釘手術の際にスクリュー1本が骨内に残存しているため、MRIについては紹介状のみ取り付けるに留めた。主治医も協力的であり、それら全てを診断書に落とし込むことが出来た。また、「正座が出来ない」点について別紙でまとめ上げ、上記検査の画像打出しによって器質的損傷を明らかにした結果、機能障害ではなく神経症状の12級13号をおさえた。