最近、耳に入る業界情報ですが、やはり、交通事故の受任数が減っていることです。周囲の弁護士事務所にも聞いてみましたが、事件としての受任数は減少傾向だそうです。

 ここ数年の統計をみるに、確かに人身事故の件数そのものの減少は間違いありません。それよりも、受任件数の減少は、弁護士事務所の交通事故に対する宣伝が広く出揃った結果と思います。規制は厳しいにせよ、弁護士に自由な宣伝活動が解禁されたのはわずか19年前(平成12年)です。その後、ネット広告の席巻は、大手法人事務所による毎月1千万円の広告費を越えるようなリスティング広告に激化、それに続けと中堅事務所が続き、日本全国、弁護士はじめあらゆる参入業者の誰もが交通事故の専門家に・・これが現在までの流れです。つまり、過当競争による食い合いが案件減少の主原因ではないかと思います。弁護士さん同士は激しい競争の最中と言えます。

 その中で抜きん出る存在になるためには、仕事の成果や評判も大事ですが、スマホ時代を予想したようなネット宣伝が主力の事務所は先見の明ありです。生まれて初めての事故で右往左往することになる被害者さんにとって、適切な事務所と出会うことはそれなりに難しいものです。結果として、ネット集客が勝負を決めるようです。しかし、それでも重傷案件となれば、変わらず人伝いの「紹介」が多くを占めます。問題は紹介先が交通事故業務に熟知しているか否かでしょうか。やはり、他産業の盛衰に同じく、市場が成熟するにつれ、実力と評判は確固たる選択要素となります。弊所にとっても、紹介数の伸びが実力のバロメーターであり、将来の安心材料です。それでは掲題のライバルとは誰になるのでしょう。他の交通事故・行政書士は競争相手となるのでしょうか? 

 今でも、ネット上で交通事故を検索すれば、わずかに行政書士も残っています。しかし、依頼はほとんどないだろうな、と思います。これだけ、弁護士のHPが出揃って、行政書士の選択などあるはずないと思ってしまいます。自賠責保険の手続きだけなら、わざわざお金を払ってまで依頼する仕事とは判断されないでしょう。「いずれ、行政書士は交通事故から退場する」これは、私が9年前から予言していたことです。その中で、世に必要な存在として残るには、やはり被害者にとって有用となる医療調査機関です。被害者の被害状況を明らかにする医証(医学的証拠)を取得・収集する卓越した力、これが能えば、弁護士先生からニーズ・依頼があり、共存可能となります。つまり、損害の立証業務に秀でていれば、対弁護士では競争関係より協力関係が勝るのです。その点、多くの士業がこの医療調査を苦手としています。自らの資格に無関係な分野なので仕方ありません。大体、弁護士を刺激してきたのは、賠償交渉に手を染める赤本書士でした。もっとも、最近は弁護士会からの追及や判決で死滅状態なので、ライバルとしては自ら脱落したと言えます。

 それでは、反対の立場である加害者側の保険会社ですが・・さすが、しっかりと調査機関を活用しています。その点で言えば、私達の競争相手は調査会社となりますが、被害者・加害者と立場が分かれますので、直接の競争関係にはなりません。むしろ、人材や情報の交換を通じて、学び合う存在かもしれません。残念ながら、立場の違いから接触は難しそうですが・・。

 このように、私達、被害者側の医療調査業は、実は孤独な存在なのです。もちろん、それは覚悟の上、最初から新しいビジネスを立ち上げたと思っています。存在価値が潜在的である中、必要とされる存在であること、いずれ定番の存在を目標に、”交通事故外傷、被害者側の調査機関”として、唯一無二の存在を確立させたいものです。

本日も各方面から重傷案件の紹介が4件入りました。身の引き締まる思いです

 

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 北方領土問題の渦中、民間企業間の提携が進んでいるようです。三井住友さんはロシアへ進出でしょうか。遠い欧米諸国の中で、もっとも近く隣接している国はロシアのみです。私もロシアに行ったことがありますが、日本から最も近いヨーロッパを実感しました。(過去記事⇒イエローサブマリン

 10年20年先は、国境など関係なく保険販売網が広がるのでしょうか・・。    

 MS&ADホールディングス傘下の三井住友海上(「同社」)は、ロシア大手損害保険会社Ingosstrakh Insurance Company(以下「インゴストラッハ社」)と戦略的提携契約を締結した。 本提携により、ロシア全域に83支店、およびCIS(※)諸国6ヵ国に拠点を有するインゴストラッハ社のネットワークを活用し、今後日露経済協力等を通じて増加が見込まれる同地域における日系企業のお客さまに、より高品質なサービスを提供していく。 三井住友海上は、今後も海外事業で培ったノウハウや戦略パートナーシップ契約等を活用し、さらなるお客さまサービスの向上に努めていく。 (※)独立国家共同体(Commonwealth of Independent States)。旧ソビエト連邦諸国によって形成されたゆるやかな共同体。   続きを読む »

 連日、大坂なおみ選手の快挙、サッカーアジアカップの連勝、スポーツのニュースで賑わっています。勝ち続ける選手の技術・体力は言うまでもありませんが、メンタル面の調整がすばらしいと賞賛されています。行き詰った時の大坂選手が見せる「切り替え」が画面を通して伝わってきます。サッカー日本代表選手も、苦戦続きながら、周囲の不評をものともせず、準決勝のイラン戦で爆発!不屈の精神で決勝まで勝ち上がっています。

 スポーツの一瞬の勝敗を分ける精神力はすさまじいものです。一方、日々の仕事にそのような極限の精神力を必要とする場面はありません。それでも、難問題、徒労が続けば、精神的に凹むものです。そのとき事こそ、「切り替え」が必要です。いつまでもマイナスイメージを引き摺っていては、次の仕事のパフォーマンスが落ちるだけではなく、精神的疲労が加算していきます。

 参ってしまった時こそ、メンタル面の調整力が試されると思います。年初から生産性が低く、無駄な仕事、面倒な調整が続いて、かなり消耗させられました。それでも、同時に等級認定の報が続き、依頼者さまの喜び、安堵、感謝の言葉を頂いて、奮い立ちました。なかなか自立的に強くならないメンタルですが、私達の精神力を支えるものは、まさに交通事故被害者さん達の声なのです。それは、スポーツにおけるサポーターに等しいものかもしれません。  

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 シリーズの締めくくりは、重傷案件ではなく「むち打ち」にします。

 何度も口を酸っぱくして説明していますが、打撲捻挫での後遺障害認定は、骨折等と違い、本人が痛いと言っているだけの”証拠なき認定”を目指すものです。症状を信じてもらうために、様々な要素がありますが、その代表が「症状の一貫性」です。

 事故後は通院せずに途中から通いだした、途中1ヶ月間仕事が忙しく通えなかった、月に2回薬をもらいに診察だけ受けた、接骨院・整骨院の施術が中心で病院に通っていない・・・これらはすべて、「大したことない」と判断されます。

 本件も、症状固定前に通院をやめてしまいました。ここで等級認定上、黄色信号が点滅しているのに本人は気付きません。受任後なんとか取り繕い、認定に漕ぎ着けました。症状があるのに認定を受ける人と非該当となる人、通院の継続如何で運命が分かれてしまうのです。これは2~30万円の損失では済まされません。最終的に弁護士介入の結果、主婦でも150万円失うことになるのです。早めの相談をお待ちしております。 取り繕いにも限界があります。早めのご相談を!  

併合14級:頚椎・腰椎捻挫(40代女性・山梨県)

【事案】

自動車運転中、センターラインオーバーの自動車に正面衝突される。頚部痛や頭痛等、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

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 相手保険会社が治療費を負担してくれるのは、義務ではありません。彼らはいつでも治療費の一括払いを切ることが出来ます。これは裁判判例で決着していることです。

 では、治療費や休業損害が、自賠責保険の限度額120万はもちろん、保険会社の定める基準を越えた場合は・・? なんとか面倒を見てくれるよう、交渉することになりますが、保険会社としては、「後遺障害を含めた賠償金を支払いますから、早く症状固定して下さい」と、解決を急かします。しかし、本件のように感染症となった場合、骨癒合は大幅に遅れますし、症状固定は数年先に遠のきます。

 「公的保険の知識と実務に長けた事務所にめぐり合うか否か」で、被害者の運命は変わります。本件は幸い、依頼した連携弁護士から相談が入りましたので、以下の通り、労災の活用で解決までの道筋を作りました。多くのケースでは、依頼した弁護士も手をこまねき、松葉杖で片足を引き摺っている被害者自身ですべての労災手続きをしています。自身でできる被害者さんはまだ幸運です。相手保険会社ともめて、労働局とも平行線、会社の担当者からも疎まれて・・・窮した被害者さんは「明日の100万円より、今日の10万円」・・・泣く泣く、安い示談金を手にして解決することも少なくないのです。

 交通事故業務は弁護士の”賠償交渉”のみにあらず、公的保険を含めたあらゆる手段を用いる”被害者救済業務”なのです。      うちはそれが出来る事務所です  

併合5級:大腿骨・脛骨・腓骨多発骨折(20代女性・埼玉県)

【事案】

自転車通勤で交差点を横断中、後方からの左折自動車の巻き込みにあい受傷。左脚は大腿骨遠位端・脛骨骨幹部開放・腓骨を骨折、右足は鐘骨骨折、その他骨盤骨折も重なり、とくに左脛骨は開放骨折によって感染症を発症、10回ものデブリ洗浄で脚を切開した。多くの骨折箇所から骨のプレート・スクリュー固定、癒合不良箇所への骨移植・骨採取、皮膚採取・形成術を含めると、実に合計21回の手術を行ったことになる。結果として、症状固定まで4年を要することになった。

【問題点】

治療期間が長期になったことが最大の問題。相手損保に休業損害は当然として慰謝料の先払いを求めた結果、「もう過払いなので・・」と初期に支払いを切られてしまった。では、今後の治療をどうするのか? 感染症を発症していることから、長期の治療は避けられない。自賠責の後遺障害保険金入金もずっと先となる。

また、1下肢・下腿の後遺障害で最大等級は、「 1下肢を足関節以上で失ったもの」=5級5号である。本件の場合、膝から下だけで6級相当まで引き上げたい。その為には骨折の無い足指の用廃を得る必要があった。

【立証ポイント】

ここは、何としても労災の使用である。早速、管轄の労働基準局はじめ会社の担当者に働きかけ、労災を適用させて治療費と休業給付を確保した。この一連の調整は弊所の得意とするところ。以後、労基と会社との連絡・手続きを3年半担当、症状固定まで漕ぎ着けた。

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 平成31年も連日の過酷な業務に早くもバテ気味。

 先ほど、浜松から戻りました。これからサッカー・アジアカップを見ます。しかし、最後まで観る自信がありません。気がつくと薄明るくなっているでしょう。

 ちなみに、話題の「カメラを止めるな!」のブルーレイを買ったのは良いのですが、最初の30分しか持ちません。2度も観ましたが、毎度30分以降寝落ち、何が話題のゾンビ映画なのか、未だにわかりません。カメラを止めない意味がありません。眠気を止めてくれ!

リビングデッドのように働きたい

 

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 労災請求の問題点から支給調整まで、労災びっしりの2時間でした。実務上、距離のあるテーマと感じた方も多かったのではないかと思います。それでも、熱心に聴講頂きました。

 今年も様々な土地で、色々なテーマで、頑張りたいと思います。レジュメの作成時点ですでに、私も大変勉強になっています。セミナー講師をこなす事で、実力UPを実感しています。

 ご参加の皆様、お疲れ様でした。 明日は、遠州・浜松に参上します。よろしくお願いします。   

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 会社は労災の請求に消極的です。

 また、社員も労災を請求したのですが、会社の顔色をうかがって遠慮してしまいます。使われている側なので仕方ありません。

 問題は、会社側に正しい知識がないことです。とくに、「労災を使うと、掛金が上がるから・・」、これについて、調べました。

  以下に該当する会社については、一定規模の基準によって労災掛金が±40%の範囲で増減します。

○ 100人以上の労働者を使用する会社

○ 建設業等で労災保険料が年間100万円の会社

○ 20人以上100人未満の労働者を使用し、災害度係数が0.4以上の会社

災害度係数とは{社員数×(業種ごとの労災保険料率-非業務災害率)}で算出します。この非業務災害率は現在0.06%となっております。

従業員数80名の飲食業の場合、上記の計算式にあてはめると・・・ 80名×(0.3%-0.06%)=0.192≦0.4

・・・災害度係数は0.4未満となり、基準を満たさないため労災保険料が高くなることはありません。    つまり、労災保険料率が0.4%を超えない会社については、建設業(掛金100万超)を除き、100人未満であれば労災保険料率が高くなることはありません。20人未満の会社は当然に関係ありません。    また、通勤災害は、被害者者・社員か、加害者が悪いのであって、会社にまったく責任がありません。当然、労災掛金に影響はありません。  

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 労災と加害者側の賠償金(自賠責保険・任意保険)がかぶる場合、労災の障害給付は一時金でも年金であっても、「支給調整」を行います。ここが、皆様の知りたい核心ではないでしょうか。

○ 障害給付の支給調整

 第三者行為災害における損害賠償請求額と労災保険の給付の支給調整方法については、「求償」と「控除」の2種類があります。   ○「求償」とは、被災者等が第三者に対して有する損害賠償請求権を、政府が保険 給付の支給と引換えに代位取得し、この政府が取得した損害賠償請求権を第三者 や保険会社などに直接行使することをいいます。   ○「控除」とは、第三者の損害賠償(自動車事故の場合自賠責保険等)が労災保険の 給付より先に行われていた場合であって、当該第三者から同一の事由につき損害 賠償を受けたときは、政府は、その価格の限度で労災保険の給付をしないことを いいます。   ① 労災の支給調整の対象は「逸失利益」

 逸失利益とは・・・本来得られるべきであるにもかかわらず、債務不履行や不法行為が生じたことによって得られなくなった利益を指します。得べかりし利益(うべかりしりえき)とも言われます。逸失利益の算定では果たしてどこまでが本来得られるべきであった利益か、その確定は容易でなく訴訟などでもよく争点となります。

 自賠責保険ではこの逸失利益の限度額を明確に定めており、限度額を下回る80歳超の高齢者を除いては、ほとんど限度額で頭打ちとなります。これは弁護士さんにも多いのですが、自賠責保険の後遺障害保険金を定額の慰謝料と読み違えています。自賠責保険金額はあくまで、定額の慰謝料+計算された逸失利益(限度有)の合計です。

 障害給付金は一定の治療後、後遺症による将来に向けた補償ですから、逸失利益と性質が同じものとされます。したがって、逸失利益と二重に支払われることなく、逸失利益を超えた金額を給付することになります。逆に、労災先行で労災を全額支給した場合、後に自賠責に求償することになります。

 尚、賠償金の内の慰謝料は「精神的損害」ですから、民事上の「償い」であるところ、公共の補償と相殺すべきではなく、別物と考えられます。    つづく(いずれ、計算例をUPします)  

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【事案】

自動車運転中、センターラインオーバーの自動車に正面衝突される。頚部痛や頭痛等、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

相談を受けた時点でちょうど6ヶ月経過していたが、通院は5ヶ月半しかしておらず、6ヶ月目には一度も通院していなかった。

【立証ポイント】

すぐに病院同行して、後遺障害診断を実施してもらうことになった。通院回数は90回と申し分ない為、病院の窓口と医師に事情を説明し、症状固定日は遡らずに後遺障害診断日としてもらった。後遺障害診断書上では、きっちり半年間通院したことになった。調査事務所から最終月の通院について問合せがあったが、なんとか併合14級が認定された。

因みに、今回も腰部のMRIは撮影せず、自覚症状に”痛み”の記載のみで14級が認定されている。毎度の「ついで認定」か。

(平成30年12月)  

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【事案】

自転車通勤で交差点を横断中、後方からの左折自動車の巻き込みにあい受傷。左脚は大腿骨遠位端・脛骨骨幹部開放・腓骨を骨折、右足は鐘骨骨折、その他骨盤骨折も重なり、とくに左脛骨は開放骨折によって感染症を発症、10回ものデブリ洗浄で脚を切開した。多くの骨折箇所から骨のプレート・スクリュー固定、癒合不良箇所への骨移植・骨採取、皮膚採取・形成術を含めると、実に合計21回の手術を行ったことになる。結果として、症状固定まで4年を要することになった。

【問題点】

治療期間が長期になったことが最大の問題。相手損保に休業損害は当然として慰謝料の先払いを求めた結果、「もう過払いなので・・」と初期に支払いを切られてしまった。では、今後の治療をどうするのか? 感染症を発症していることから、長期の治療は避けられない。自賠責の後遺障害保険金入金もずっと先となる。

また、1下肢・下腿の後遺障害で最大等級は、「 1下肢を足関節以上で失ったもの」=5級5号である。本件の場合、膝から下だけで6級相当まで引き上げたい。その為には骨折の無い足指の用廃を得る必要があった。

【立証ポイント】

ここは、何としても労災の使用である。早速、管轄の労働基準局はじめ会社の担当者に働きかけ、労災を適用させて治療費と休業給付を確保した。この一連の調整は弊所の得意とするところ。以後、労基と会社との連絡・手続きを3年半担当、症状固定まで漕ぎ着けた。

→ 使い切っているので文句は言わせません!  症状固定に際しては、事前に設計図を描き、主治医との面談・打合せを重ね、すべての後遺障害を漏らすことなく認定を得る作業となった。これだけ長い治療期間だったので、今更慌てる必要はない。足指は別表で丁寧に記載頂いた。続いて、写真を多数撮影し、別途文章を作成、自賠責保険はもちろん、労災、障害年金の申請までじっくり取組んだ。

認定結果は懸念材料であった足指も、下肢全体の骨折に伴う神経障害を理由に機能障害を認めてもらい、この12級12号が加わることによって、左脚は6級相当に届いた。すべての後遺障害は以下の通り。

① 左下肢=6級相当「膝関節10級11号・足関節8級7号・足指機能障害12級12号」、     13級8号「短縮障害」 、12級相当「下肢醜状痕」 ② 右足=14級9号「神経症状」 ③ 骨盤=12級5号「変形」  ・・・以上から併合5級。

※ 併合の為、分離しています。

(平成30年10月)  

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【事案】

自転車通勤で交差点を横断中、後方からの左折自動車の巻き込みにあい受傷。左脚は大腿骨遠位端・脛骨骨幹部開放・腓骨を骨折、右足は鐘骨骨折、その他骨盤骨折も重なり、とくに左脛骨は開放骨折によって感染症を発症、10回ものデブリ洗浄で脚を切開した。多くの骨折箇所から骨のプレート・スクリュー固定、癒合不良箇所への骨移植・骨採取、皮膚採取・形成術を含めると、実に合計21回の手術を行ったことになる。結果として、症状固定まで4年を要することになった。

【問題点】

計測せずとも、見た目だけで手の平の三倍の面積を越える瘢痕。21回の手術で切開創だけではなく、皮膚は変色し、筋肉も痩せてしまった。12相当を越える認定等級すら望みたい。

【立証ポイント】

写真を多数撮影し、別途文章を作成、自賠責保険はもちろん、労災、障害年金の申請までじっくり取組んだ。

なお、皮膚移植や骨移植で採取した背部・臀部・腰部の瘢痕は面積が至らず、醜状痕の該当ではなかった。しかし、若い女性である故、後の賠償交渉で強く主張したいところである。   

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 交通事故の場合、真っ先に請求する相手は、通常、加害者の保険会社ではないでしょうか。

 それは通勤災害、業務災害の場面でも同じかと思います。まず、加害者が補償するのが筋です。多くの場合、労災適用など気にせずにスルー、相手の任意保険、その加入がない場合は自賠責保険に請求に留まることが多くを占めます。実際、労基に問い合わせも、「労災は、自賠責を使い切ってからですよ」と内規で制限しているような対応です。社会保障制度ですから、じゃぶじゃぶ使われるなど困ります。加害者に支払い能力、つまり何らかの保険がある場合は、そちらを優先させ、支払いを抑制しなければならないことは理解できます。

  

 しかし、労災の法律を紐解くと、健康保険に同じく、「使うか否か」、「その順番」でさえも、請求者の意思が第一です。とくに法律の規制などしていません。したがって、自己に過失がある場合の事故や、重傷で治療費が莫大となるケースは労災も併用すべきと思います。そして、最大の動機は、休業給付と障害給付で、相手からの賠償金とは別腹の「特別給付」がもらえることです。  さらに、再発申請やアフターケア制度もあります。至れり尽くせり、原則、労災使うべきと断言します。

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 そんなわけはありません。年金制度は国と国民の信用の根幹、これが反故にされたら、もはや国民国家ではありません。

 とは、言いたいものの、12年前、日本中を震撼させた「消えた年金問題」・・ミスで相当数の記録が消されました。昨年9月にも、労災の休業給付のデータがミスで抹消され、大幅な支給遅れとなったことは記憶に新しいと思います。

 亡くなった私の祖父は年金に関する疑念が強く、自営でしたがとうとう国民年金に加入せず、老後は年金がありませんでした。当時、戦争(報道)で国に騙されたと思った世代は、国家・行政への信頼が薄いのでしょうか。「消えた年金問題」とは、その疑念が本当になってしまった事件です。決して間違ってはいけない行政の制度ですが、所詮人のやること、ミスはどうしてもでてしまうものです。いつも思うのですが、何故か間違って多く払ってしまったケースが少ないことです。それはともかく、再発防止の努力と迅速なリカバリーをお願いしたいと思います。

 また、昨日の記事の通り、当時、私もたった12年前の厚生年金記録を消された1人です。「昔の手書きデータを電子化する際に漏れた」との言い訳が利かない年数です。今回の労災記録抹消も、何故バックアップしていなかったのか不思議に思います。やはり、国のやることであっても万全の信頼を置くことなく、自らがチェックすることが必要ではないかと思います。記録を修正してもらうことは当然ですが、責任を追及する手間はそれなりに大変です。ここで行政側のミスを責めても、苦言を呈しても、問題提議しても、何の得にもなりません。何事も取引は相互確認が大切です。それは、買い物をして、お釣りを確認する作業に等しいものかもしれません。  

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 少し古いニュースですが、昨年秋に厚労省から掲題のミスが報告されました。ちょうど、労災セミナーのレジュメを作成していましたので、改めて取り上げたいと思います。

 かつて、「消えた年金」が大問題になったことがありますが、当然、労災でもさもありなん、と思います。私も3年分の厚生年金の加入記録を見事に消されました(怒)。

 実際、労災請求の現場では、従前から「労災はできるだけ使わないように」と会社側が労災請求に消極的な姿勢を感じています。使われている側・社員も、会社に逆らってまで請求はできません。それが、パート・アルバイト、契約社員なら尚更です。構造的に労災はアンタッチャブルなのです。では、手続きを助けてくれる業者や士業の先生が望まれますが・・肝心の社労士先生は会社側から顧問料をもらっている、言わば会社側の立場です。会社の意向に逆らって従業員を助けるわけがありません。もちろん、福利厚生に理解ある社長、つまり、従業員を大切にしている企業であれば、顧問の社労士先生にお願いしていただけます。しかし、このような企業は少数ではないかと思っています。

 今回、問題となった休業給付の手続きも、まぁ面倒なもので、特別給付を知らない人も多い。一部上場企業ならまだしも、会社側の事務員が不慣れな書類作成に右往左往、社労士の先生の多くも会社の要請無くば、まして無償では手伝いません。そして、昭和のお役所体質は改善したとはいえ、厚労省職員の信じられない電子的なミス・・・やはり、誰かが、手続き面で目を光らせる必要があります。今のところ、交通事故絡みならば私達がそれを担っていますが・・。

 人は基本的にミスをするものです。二重三重にチェックをする必要があり、請求側=民間の自助努力として、労災事故で苦しむ被害者を救済する体制も望まれると思う次第です。、  

休業補償27億円、処理ミスで1.1万人分支給遅れ 厚労省

  厚生労働省は7日、休業中の賃金を補償する労災保険の休業給付と休業特別支給金について、約1万1千人分(総額約27億8千万円)の支払いが遅れていると発表した。職員のシステムの誤操作が原因。同省は14日までの支払いを目指すとしている。

休業給付と休業特別支給金は労働者災害補償保険法に基づき、業務上の負傷などで労働ができない場合、休業4日目から支給される。支給額は休業1日につき賃金相当額の8割程度。

同省によると、6日に担当職員が会計システム上で支給に関係ない事務処理をしていたところ、誤操作で支給に関するデータを消去。本来は7日または10日に支給予定だったが、ほとんどが復元できず、予定通りの支払いができなくなった。

会計システムの操作は通常、複数人でチェックする体制だった。同省は誤操作の理由を検証し、再発防止策を検討する。

これまでに支給の申請者から支払いの遅れに関する問い合わせの電話が100件以上寄せられているといい、ホームページに問い合わせ先を公表するなどして対応している。同省担当者は「発表が遅れ、多大なご迷惑をおかけして申し訳ない。適切に対処していきたい」としている。 <日本経済新聞 平成30年9月7日>  

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 今月末、行政書士試験の発表があります。秋葉事務所のスタッフさんや内定者さんの結果がでます。悲喜こもごもと言ったところでしょうか。

 私も10年前の平成21年1月に資格を取得しました。登録して事務所を開設したのはその年の6月でした。当時はまだ保険代理業が主業で、初年度は行政書士業としての売上はほとんど無く、保険業の域をでない事務所でした。その後数年を経て、保険代理店を地元の仲間に任せ、行政書士事務所に専念することになりました。都内に事務所を移転した頃です。では、完全に行政書士単独事務所になったかと言うと、そうでもありません。交通事故業務一本で突っ走っておりますので、他の行政書士業務、例えば許認可の代理申請は業務経験なしです。行政書士事務所を名乗りながら、行政手続きに連なる業務の経験は10年間数えるほどです。行政手続き以外ですと、昨年1年間ではわずかに相続2件、契約書作成1件程度でした。業務は交通事故に関する医療調査と保険手続き、これで10年間食べてきたと言っても過言ではありません。

 それでも、事務所を構えて10年、人並みの感慨を持つものです。今後は、私の手を離れて独立する後進の成長が楽しみでもあります。それはまだ数年先になりそうですが・・。

 基礎作りの10年を終えましたが、次の10年の目標を目指し、チーム一丸で取組んでいきたいと思います。6月にはささやかですが、10周年の会でも催そうかと思います。

 旧越谷事務所のプレート(現在も東京事務所に掲げています)

 

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 おかげさまで、年初から社員・バイトさん共に面接が続いております。この数年、あまりに求人が実らないことから、業を煮やしたハローワークさんや求人会社さんから、待遇面など広告の表記について色々とアドバイスを頂きました。それはとても参考になる意見で、なるほどと思うことばかりです。しかしながらですが、弊所の仕事は世間にそれほど周知されたものではなく、採用の第一条件は「この仕事をしたい」といった動機面です。

 これまでも、動機面から門を叩いてきた面接者しか採用できなかったと思っています。その方達は共通して、条件面など見ていないに等しく、業務内容”被害者側の医療調査”に興味を示してきました。逆に、行政書士に受かった、もしくは勉強中で行政書士事務所の求人を探している方達は、勘違いの応募に思えました。行政書士での実務経験を積むため・・これは弊所ではかないません。行政書士の主業である許認可などやっていないからです。それは、HP上に表記しています。

 行政書士事務所の求人は全国でも数件レベル、ほとんど無きに等しいものです。行政書士試験の合格者は実務経験なく、直ちに独立独歩を迫られます。これは業界全体の特徴でもありますが、行政書士は医師や弁護士のような修習制度がありません。理由は、業務の難易度はもちろん、その責任の重さも含め、軽易な職種だからと思います。行政書士の一般的な業務はマニュアル・雛形を購入すれば、ほとんど事足ります。(もちろん、歴戦の書士ならではのプロフェッショナルな技術は別物ではありますが。)一般的に資格合格=即、独立事務所開業なのです。

 もし、親戚に建設会社がある、前職の繋がりで仕事を確保できるなど、コネをバックに独立ならば生計の目処が立ちますが、それ以外の合格者が行政書士事務所を構えて食べて行くのは、相当のリスクが伴います。恐らく、裸一貫でベンチャー企業を立ち上げる覚悟と才能がなければ無理かと思います。およそ90%の行政書士は自宅外に事務所を持たず、家の応接間に電話1本、事務員は奥さん、このような体制が普通なのです。自宅外事務所を持ち、事務員を雇用できる書士の多くは、司法書士や税理士、社労士事務所と併設です。これは他士業に付帯して仕事が発生する、行政書士ならではのメリットを活かした結果です。それだけ、行政書士業を主業として生計を立てることは大変なのだと思います。専門学校、通信教育、出版会社等、あまたの資格産業が「行政書士で独立開業!」「行政書士で年収1000万!」「誰でも努力次第で成功!」などと、(行政書士を目指す人達の出費を煽って)甘い夢を喧伝していることに気付くべきです。

 弊所についても、医療調査・保険手続きを主業としていますので、併設事務所の形に近いと思っております。行政書士は余るほどおりますが、交通事故被害者の調査業、被害者救済業はかなりニッチな存在です。何度も繰り返し書きましたが、弁護士事務所だけでは手の及ばない救済業務が山ほどあるのです。一部の弁護士先生の理解から、その業務の委託を受けておりますが、まだまだ世間一般に浸透したものとは言い難いものです。したがって、入所希望者の皆様に対しては、新しい仕事を開拓する気概を要求したいのです。現在、弁護士の影を恐れつつ、こっそり賠償交渉に手を出して、裏で小ずるく報酬をせしめる従来の非弁・交通事故行政書士が死滅しつつあります。このような環境下、新しいメンバーとは、弁護士法に触れずむしろ弁護士から歓迎され、被害者救済に不可欠な存在を目指し、業界の10年20年先へ視線を共にしたいと考えています。  

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 これはどの業種・仕事にも言えますが、そこそこ経験を積んで自信を持つと、つい、結果を見切ってしまうことがあります。もちろん、経験に裏打ちされた「読み」から仕事の判断をすることは必要です。しかし、私達の仕事の結果は審査側の判断に委ねられるのですから、「読み」はあくまで予想に過ぎません。本件の認定は最初から難しいと思っていました。当然、再請求も結果は厳しいと覚悟しました。しかし、予想に反して後遺障害が認定されました。このような読み違いが最も生じる申請は、ずばり、神経症状の14級9号です。

 打撲捻挫で治療が長引いた場合、その多くは被害者感情からくる「大げさ」、保険金狙いの「詐病」、あるいは「心身症」による症状の遷延化が疑われます。これらを排除した真の症状に苦しむ被害者を、自賠責は症状の一貫性・信憑性から判断します。骨折のように明確な画像もなく、医師の診断が数値化できない、このような審査に自賠責保険の調査事務所の判断もぶれると思うのです。その点、もっとも読みづらい後遺障害と言えます。

 私達も年に数件、認定等級の予想を外すことがあります。その度に、経験や知識だけで軽率に判断してはいけないことを再確認させられます。

 本件は、抜群の戦功から今年、二階級特進(つまり昇給)の佐藤が担当しました。

   私、佐藤も4年目、仕事に自信がでてきましたが・・ゆえの慢心を戒めなければなりません  

非該当⇒併合14級:頚椎・腰椎捻挫(50代女性・千葉県)

【事案】

自動車に搭乗中、急な右折で専用レーンに割り込んできた車に衝突される。直後から頚腰部痛のみならず、手足の痺れ、頭痛、めまい等、強烈な神経症状に悩まされる。

【問題点】

相談時には既に8ヶ月が経過しており、相手保険会社に治療費を打ち切られた後だった。さらに、MRI検査が未実施、受傷機転も軽微な接触、事故も物件扱い、初診が事故から2日後・・・マイナス要素がいくつも絡んでいた。できるだけ全てを取り繕い、後遺障害申請を試みるも結果は非該当であった。

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 受任する何年も前で、事故とは無関係であっても、既に負った後遺障害(既存傷害)、これも十分に検証する必要があります。

 なぜなら、自賠責保険の後遺障害審査では、事故で生じた後遺症から、既存の後遺症が差し引いて等級認定をします。この判断を加重障害と呼びます。当然、事故前の障害は、後の賠償交渉で相手側の主要な反論材料にされます。当該事故による障害(賠償金)から、元々の障害分を差し引く・・大変難しい判断になりますが、ある意味、自賠責の加重障害のルールで明確化できます。賠償問題の解決に一定の合理的な考え方として重宝されるのです。

 本件の場合、事前の調査で既存障害の実態を把握したつもりでしたが、加重障害を想定できませんでした。結果は、政府の保障事業(引き逃げや無保険車による被害者を国が補償)の等級認定があったことが加重障害判断の決め手になりました。その点、依頼者様にはもちろん、自賠責保険・調査事務所に長い期間の調査負担をかけてしまったと反省しています。

政府の保障事業だったとは・・  

3級3号・加重障害:高次脳機能障害(80代男性・埼玉県)

【事案】

歩行中、自動車に衝突される。頭部を強打し、意識不明の状態で救急搬送、急性硬膜下血腫、脳挫傷の診断が下された。

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 続いて、1下肢における足関節の機能障害と変形障害の二つを立証した件です。

 弊所の実績ページをご覧になればおわかりと思いますが、下肢のあらゆる骨折の経験が蓄積されています。経験上、診断名から等級の予想がつきます。本件でも併合11級に収めるべく、「何をどうすべきか」計画的作業はお手の物です。とくに、腓骨の癒合不良は医師も歩行・日常生活に深刻な後遺症を残すものではないと、治療上軽視します。自賠責保険でも多少の変形では等級を認めませんが、それでも骨が癒合しない偽関節となれば、「長官骨の変形」=12級8号に合致します。

 本件のように骨折が複数に及ぶ場合、自賠責のアドバンテージを活かし、等級を一つ引き上げることが望まれます。これこそ経験の差がでるところではないかと思います。    多発骨折の場合、多くの被害者さんが等級を見逃していると思います  

12級7号:足関節内顆開放脱臼骨折、12級8号:腓骨遠位端粉砕骨折(50代女性・埼玉県)

【事案】

歩行中、バイクに衝突される。全身を強く打ち、下肢の多発骨折。救急搬送され他の地、すぐに手術が施行され、2ヶ月以上の入院を余儀なくされた。

【問題点】

足関節は抜釘手術を行わないことが決まっていた為、主治医は立証作業にそこまで協力的ではなかった。また、治療努力の成果もあり、可動域もどんどん回復していった。 対して、腓骨は癒合進まなかった。

【立証ポイント】

骨癒合も進んだ頃合いで病院同行し、まず、足関節の3DCTと両足関節が比較できるよう、同時に写るようなXP撮影の依頼を行った。その後、後遺障害診断では、可動域計測に立ち会い、12級の基準値であることを見届けた。後遺障害診断書が完成したが、診断名と可動域数値に不備があった為、修正依頼を実施して完璧な状態に仕上げてから申請した結果、狙い通り12級7号認定となった。

一方、腓骨はレントゲン画像をみたところ、骨折部にわずかの空隙があり、偽関節(くっつかなかった)となっていた。プレート固定している為、安定性は確保されており、医療的なアクションを起こすことはないが、医師に丁寧に説明して長管骨の変形欄に追記いただいた。過去の経験から自賠責は腓骨変形に関する等級認定に厳しい印象だか、偽関節の画像打出しを添付してアピールしたことから、こちらも狙い通り12級8号認定となった。結果、併合11級に収めて、連携弁護士に引き継いだ。

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