毎度、相手損保の回答は、「法人経営ですね、治療で休業中でも役員報酬はでていますよね、したがって休業損害は発生しておりませんのでお支払いはできません」です。確かに、書類的にはそうなります。

 確かに、大会社の取締役はケガで休んだとしても、役員報酬は確保されます。しかし、家族経営の三ちゃん企業の場合はそうもいきません。建設業の代表取締役兼現場監督のお父さんはケガで現場にでれません。現場作業の主要部分を社長自ら担っている、社長兼作業員であることも珍しくありません。法人の飲食店でも社長兼シェフだったりします。小さな法人企業では、本人の感覚としては個人事業主と変わならいのです。

 つまり、作業員が欠けることで、現場の作業量は減ることになります。業種によっては、注文に対して謝絶や、予約のキャンセルを強いられるかもしれません。代替の職人を呼ぶこともあります。損害は生じているのです。

 そこは、連携弁護士の交渉によって、相手損保と交渉、柔軟な回答を引き出しています。法人の売上減と、作業場のロスや負担増など、丁寧に証拠を示す交渉になります。相手損保も、家族経営の法人に対して杓子定規に「役員報酬がでてますので」で押し通すことはしません。ですので、簡単にあきらめず、損害が生じた資料を揃えて、交渉に臨むべきです。

 しかし、交渉の余地が乏しいケースもあります。そもそも、事故で社長が休んでいる間、売上が下がっていないケースです。数字上、損害が生じていないのです。仮に社長が現場にいなくても全社員でカバーし、注文に対してキャンセルもなく、つまり、会社全体の努力で売上減を防いだとします。その企業努力を損害として数字にするのは中々に大変なのです。

 また、社長の業務が経営と指揮だけの場合はいかがでしょう。脚の骨折で入院しても、ベットから電話で指示を行い、ネット回線で会議参加、もちろんパソコンでほとんどの業務が完結する完全な経営者であれば、会社経営にロスはほとんど生じないと言えます。重傷で意識喪失やICUに入院、電話も会話もできない状態でない限り、なんとか仕事はできてしまい、会社の業績も下がらない・・そうなると、損害を算出するのはさらに困難になるのです。

 法人役員の休業損害を立証する、弁護士にとって実に難問です。そして、会社が大きい程、社長が経営に特化する程、損害がほとんど見えないジレンマに陥るのです。