足関節不安定症(そくかんせつふあんていしょう)

(1)病態

 いわゆる捻挫癖で、なんども捻挫を繰り返し、痛みが持続する障害を足関節不安定症といいます。

 内返し捻挫で損傷した、外踝下にある外側靭帯、前距腓靭帯と踵腓靭帯が、十分修復されていないことを原因として、足関節不安定症が出現するのですが、さらに放置しておくと、足関節の軟骨も損傷し、変形性足関節症に増悪、日常歩行に、深刻なダメージを与えます。
  
(2)症状

 足関節の鈍痛、歩行や階段の昇降で、足首がぐらつく、頻繁に足首を捻挫する等。
 
(3)治療

 足首を強固に締結する主要な靱帯は、前距腓靱帯、踵腓靱帯、後距腓靱帯、脛腓靱帯の4つです。


 
 治療は、保存的に、装具による足首の筋力強化リハビリが中心です。改善しないとき、アスリートでは、靭帯の縫縮術や靭帯再建術が行われています。また幼少期の捻挫では、靭帯の断裂ではなく、靱帯の付着部が剥離骨折するのが一般的です。これが、稀には、骨の欠片として残り、スポーツ年齢になって痛みや捻挫ぐせを起こすこともあります。
 
(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 足関節不安定症は、内返し捻挫、足根骨の脱臼・骨折に伴う、外傷性の二次性疾患です。本来の捻挫とは、靭帯、半月板、関節包、腱などの軟部組織の部分的な損傷をいいます。

 現在でも、XPで骨折や脱臼が認められなければ、単なる捻挫の扱いで、治療が軽視されています。確かに、数週間の安静、固定で治癒するものが多数ではあるのですが、不十分な固定、その後の不適切なリハビリにより、部分的な損傷が完全な断裂に発展することや、本当は、完全に断裂していて、手術以外の治療では、改善が得られない見落としも、少なからず発生しています。

 いずれも、初期に適切な治療が実施されなかったことを理由として、不安定性を残し、捻挫を繰り返すことになり、軟骨をも損傷し、やがては、疼痛と歩行障害の変形性足関節症に行き着くのです。
  
Ⅱ. 足首がジクジク痛む、歩行時、階段の上がり下がりで足首がぐらつくなどの症状があるときは、受傷から2カ月以内に、専門医を受診しなければなりません。
 
Ⅲ. 単なる「捻挫」、「打撲」、「挫傷」の診断であっても、痛みが長びくケース。恐らく、足関節周辺の靭帯に軽度の損傷があったのかもしれません。MRI上で発見できない、不明瞭な損傷もあり得ます。その程度ですと、不安定性までは及びません。そもそも、MRIから微細な損傷を読み取ることができるのは、臨床経験豊富な専門医だけです。町の整形外科では、骨折が無ければ、痛み止めと湿布を処方され、ビタミン注射をするなど、対処療法に終始します。後は、炎症が収まらない?ことを不思議がるだけです。

 それでも、軽度の靭帯損傷であれば、数か月の内に軽快に向かいます。なんとなく、治療が終了しているものと思います。相手損保の支払いは3カ月まではみてくれますが、それ以上となれば、「たかが捻挫で、何か月もかかるのですか#」となります。

 そこで、弁護士さんに泣きついても、「捻挫では・・後遺障害の等級認定は難しいので・・。」と、受任してくれません。

 秋葉事務所では、診断名が打撲・捻挫・挫傷に留まろうと、症状の程度、患部の様子、訴えの深刻度を傾聴します。そして、症状の一貫性を整えて、少なからず14級9号に導いています。この点、自賠責保険は鬼ではないと思っています。
 
 鬼ではなかった例 👉 14級9号:右足挫傷(20代男性・東京都)
 
 あきらめずに立証しましょうの例 👉 14級9号:足関節捻挫(70代女性・千葉県)
 
 「時計屋はちゃんと修理してお金を取るが、医師は修理できなくてもお金を取る?」マーフィの法則ですが、交通事故では、大きな衝撃が働き、不可逆的な損傷をきたすこともあります。となれば、修理できないのは不可抗力であって、時計屋さんと同一視はできないことになります。医師の治療に文句をたれる暇があったら、良い医師を積極的に探せばいいだけのことです。
 
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