(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ. 後遺障害の対象は、膝関節の可動域制限と疼痛です。弊所の経験則では、脛骨顆部骨折の多くで「4分の3以下の可動域制限」=12級7号が認定されています。

 20年前までは、「2分の1以下の可動域制限」=10級11号も多く認定されていたそうですが、関節鏡術が進化したこともあり、10級11号は減少傾向となっています。いずれも、可動域制限の原因を画像で示す必要があります。3DCTで変形骨癒合を、MRIで軟骨損傷、併発した靭帯損傷の程度を立証しなければなりません。

 総じて、この部位の骨折からは軽重様々な障害を予断する必要があります。基本通り、受傷時~症状固定時までの画像を見守りながら、立証計画を策定します。後遺障害申請はくじ引きではありません。回復努力を第一としつつ、あらゆる認定パターンを念頭に観察していく必要があります。
 
 可動域制限の実例 👉 12級7号:脛骨プラトー骨折(40代男性・千葉県)
 
Ⅱ. 可動域制限なく回復した場合、それでも12級を狙うには、変形癒合、あるいは関節面の不整を立証しなければなりません。患側と健側を並べたXP正面像の撮影を受けます。2つの比較で、患側の関節裂隙の狭小化を明らかにします。軟骨はXPでは、関節のすき間となって描出されるからです。

 または、3DCTで関節面の不整、MRIで靭帯損傷を立証することで、局部の頑固な神経症状として12級13号が認定されます。可動域制限や動揺性により、機能障害で7号になれば、後の賠償交渉で逸失利益を67歳まで請求しますが、57歳を超える場合、13号でもかまいません。13号の喪失期間の相場は10年なので、同程度の賠償金になるからです。毎度、この辺りの計算を連携弁護士としています。
 
 その実例 👉 12級13号:脛骨プラトー骨折(50代女性・東京都)
 
 骨癒合後に変形がなく、関節面の不整もない場合でも、痛みや不具合は残るものです。その場合、あきらめず、14級9号「局部に神経症状を残すもの」を抑えます。秋葉事務所では、プレート固定術後で抜釘しないケースでも「痛み」で申請、多くの14級を取っています。
 
 その実例 👉 14級9号:脛骨プラトー骨折(40代男性・東京都)
 
 骨折は微妙ながら、なんとか 👉 14級9号:脛骨高原骨折(40代女性・山梨県)
 
Ⅲ. 骨移植による腸骨の変形は、体幹骨の変形として12級5号が加わり、等級が併合で一つ繰り上げですが、裸体で変形が確認できることが認定の要件です。脛骨顆部の陥没骨折であれば、骨採取も少なく、腸骨後方からの骨採取により変形が目立つこともなく、要件を満たさないことが大半です。

 人工骨を用いた骨移植は後遺障害として考慮されません。
 
Ⅳ. プレート固定や人工骨移植を行っても、安定しない場合、人工関節置換術の選択もあります。人工関節とした場合、10級11号の認定となります。
 
 事故から数年後に人工関節とした件 👉 12級7号⇒10級11号:脛骨近位端骨折 人工関節 異議申立(40代男性・静岡県)
 
Ⅴ. 完全に整復できない重度の骨折、あるいは不完全な治療が行われた結果、深刻な可動域制限、靭帯損傷を併発して動揺性を残したケース。治療先に問題があったのですが、それは無視して、症状固定を選択することになります。

 治療先でXP、画像診断クリニックで3DCT、MRI撮影を受け、変形性骨癒合、軟骨損傷、関節面の不整、軟骨下の骨硬化、靭帯の緩みを丁寧に立証すれば、10級11号が認定されます。さすがに、膝関節の完全硬直=8級7号のままはなく、ほとんどは複数回の手術で10級レベルまでの回復を目指します。
 
 重度の障害を残したケース 👉 併合5級:大腿骨・脛骨骨折 腓骨神経麻痺(50代男性・埼玉県)
 
 後遺障害認定も大事ですが、何より専門医による再固定術を検討します。靭帯断裂で再建術をした場合は、その手術のやり直しを検討します。

 この段階ですと、膝関節は陳旧性、古傷に変性しており、再固定術では、最低でも4カ月の入院を含めた治療期間が必要となります。すでに、受傷から3カ月以上の休業が続いており、新たに、6カ月の休業となれば、サラリーマンとしての人生は、そこで、完璧に終わってしまいます。さらに、陳旧性ですから、どこまで改善するのか? 保証の限りではありません。

 したがって、8級7号、10級11号を確定させてから、再手術のタイミングを計ることになります。骨折面の固定はできても、関節面の正確な整復は、専門医でないと不可能な状況です。靭帯の再建術でも、執刀医の腕の差がでるものです。医大系の膝関節外来を受診、評価の高い専門医を選択する必要があります。

 つまり、医師を選ぶ目が重要となるのです。秋葉事務所では、「様子を見ましょう」としか言わない医師の漫然治療に見切りをつけさせ、執刀数・実績に秀でた専門医に何度もお連れしています。


 
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