(4)後遺障害のポイント
 
Ⅰ.  秋葉事務所では、大人の脛骨顆間隆起骨折を、前十字靱帯損傷と捉えてアプローチしています。

 相談に来られる被害者さんの多くは、医師から「様子をみましょう」とだけ、さらに弁護士に委任したものの、終始「診断書を待っています」とだけ・・・無為無策で不安になった方々です。これら発見が遅れたもの、発見するも放置され陳旧化したものですが、まずはLachman(ラックマン)テストを行い、脛骨の前方引き出しの度合いを確認しています。

 膝を15~20°屈曲させ、前方に引き出します。前十字靱帯損傷では、脛骨が異常に引き出されます。


 
Ⅱ. 動揺性が認められるときは、ストレスXP検査で左右差を立証します。
 
 ストレス撮影とは、緩んだ膝関節を引っ張った状態でレントゲン撮影するものです。靭帯が断裂、延びていれば、異常に膝関節が離れます。
 

 
 経験上の目安として、5~15mmで12級7号、15mmを超えると10級11号が認定される傾向です(もちろん測定者、方法による誤差もあります)。20mm以上のグラグラ状態で8級7号もありえますが、𦙾骨顆間隆起骨折では、ここまでの動揺性を経験していません。たいてい靭帯再建術で動揺性を改善させるからです。大多数は12級7号に留まるようです。
 
 最大のポイントは、ストレスXP撮影による動揺性の立証にあります。その専用器具=テロスをすべての病院が備えているわけではありません。ストレス撮影ができる病院にお連れする必要があります。最近では動揺性の計測器=ニーラックスもよく見かけるようになりました。しかし、経験上、自賠責保険・調査事務所では、ニーラックスの計測値を重視していないようです。
 
 テロスとニーラックスについて 👉 膝の怪我について ⑤ 靱帯損傷について (2)
 
テロスSE使用によるストレスXP撮影

 また、テロスを使わず、医師が自ら徒手にて膝を引っ張り、撮影して下さったこともありました。X線で被曝するので、好ましいとは言えませんが、このような医師には敬意を感じます。
 
 テロスと徒手について 👉 実績投稿:ストレスXPは徒手による撮影が有効?
 
Ⅲ. 装具の使用状態による評価基準

 動揺関節では、労災に同じく、以下の3段階の基準が公表されています。
 
 8級7号 = 動揺関節で労働に支障があり、常時固定装具の装着を絶対に必要とするもの
 
 10級11号= 動揺関節で労働に支障があるが、固定装具の装着を常時必要としない程度のもの
 
 12級7号= 動揺関節で通常の労働には固定装具の装着の必要がなく、重激な労働等に際してのみ必要のある程度のもの
 
 この通り、装具の使用状況も判定の要素になります。
 
◆ 何より、膝関節・動揺性の診断と治療は、町の個人開業医では荷が重く、検査設備と専門医のいる大学病院に転院する必要があります。できれば、膝関節の専門外来を探します。毎度、秋葉事務所では専門医にお連れしいます。
  
 ヤブから専門医にお連れした例 👉 併合11級:脛骨顆間隆起骨折(50代女性・埼玉県)
  
 確定診断が遅れ、自賠責も軽率な審査で苦労した例 👉 12級13号⇒12級7号:前十字靭帯付着部骨折 異議申立(20代男性・埼玉県)
  
◆ 「Lachmanテストにより7mmの動揺性を認める?」、「装具を常時使用している」・・後遺障害診断書にこれらが記載されても、それだけでは立証したことにはなりません。繰り返しますが、ストレスXP撮影を受け、画像立証しなければ等級はでません。秋葉事務所では、ストレスXP画像を画像分析ソフトONISで解析、「左右差で○mmの動揺性あり」との打出しを作成して申請書類に添付しています。
 
 なお、動揺性が10mmを超えていれば、前十字靱帯は断裂していると診断されます。当然ながら、3DCT、MRIで脛骨顆間隆起骨折後の骨癒合レベルの立証も忘れてはなりません。
 
◆ 症状固定の判断ですが、相談に来られたときに6カ月以上が経過していれば、直ちに、症状固定を決断することになります。これからの手術となれば、手術を前に症状固定とするか、手術まで引っ張るか、2択となります。
  
 陳旧性の前十字靱帯再建術となると、最低でも、4カ月の入院+2カ月のリハビリ通院が必要です。さらに、どの程度まで改善が得られるかは、保証の限りではありません。しかも、必ずしも、その治療費を相手損保が負担してくれるとは限りません。もちろん、早期の確定診断で、受傷機転からも疑いが無い場合は、治療費支払いを続けてくれるはずです。それでも渋る場合は、健保使用も最後の一手とします。手術まで引っ張るのであれば、手術までは治療費の面倒をみてもらいたいところです。 

 手術で改善が得られれば、当然、後遺障害等級は下がります。被害者にとって改善こそ優先に決まっていますが、この辺の損得勘定も避けられません。

 さらに、問題は会社復帰です。ここから数カ月の休業を許してくれる職場はありません。こんなことを強行すれば、その時点で、被害者の会社人生は終わってしまうのです。職場の理解を得ることも、毎度、悩ましい問題です。キャリアを優先させる方もいらっしゃるでしょう。

 このような事情から、手術を前に症状固定させ、後遺障害保険金を含めた賠償金を手にして、一旦解決させる策も悪くはありません。解決後、しばらく様子をみて、悪化傾向となったら手術を決断、健保利用で進めることになります。
 
 顆間隆起骨折に限らず、交通事故外傷の原則は・・さっさと等級を取って、賠償金を手にして事故を解決させ、復職と日常生活の再建を図るべきなのです。
 
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