毎年、夏は相談会を控えて全国の弁護士さん達と勉強会を開いています。もう、かれこれ8年目を迎えます。まさに勉強の夏です。

 それにちなんで、本シリーズは後遺障害の立証上のポイントを、実際の取り組み例から復習したいと思います。該当する傷病名を抱えた被害者さんはもちろん、弁護士はじめ交通事故外傷に関連する業者さんの検索に引っかかると思います。ご参考になれば幸いです。
 
 初日は腰椎の圧迫骨折です。注意が必要な点は、陳旧性(事故以前から腰椎が潰れている)骨折です。高齢者や骨粗鬆症(こつそしょうしょう:骨量の減少と骨組織の微細構造の異常の結果、骨がもろくて弱くなり、骨折が生じやすくなる疾患)の方に多く見られます。腰の曲がったお年寄りは、腰椎が自然に潰れています。また、骨粗鬆症の方は、転んだり、運動しただけでも、腰椎が潰れてしまうことがあるのです。その骨折がそれ程の痛みもなく、そのままになっています。そして、事故で受傷した場合・・その骨折は事故受傷によるものか、MRI等から検討が必要なのです。漫然と医師の診断やレントゲン画像だけで判断すれば、自賠責から手痛いしっぺ返しを食らいます。つまり、その骨折が陳旧性であれば、「事故以前からあった骨折ですので、本件事故のケガではありませんよ」との回答です。
 
新鮮骨折か陳旧性か? ここがポイントです!
 

11級7号:腰椎圧迫骨折(50代女性・神奈川県)

【事案】

自動車走行中、交差点で右方から信号無視の自動車と衝突、受傷した。病院で腰椎圧迫骨折の診断を受ける。

【問題点】

圧迫骨折するときは激痛で動くことができないことが一般的であるが、本件では痛みを我慢し、翌日に病院に行ってから初診を受ける。また、途中で医師が変わったため、最初の医師がMRIを撮ると言っていたが、後任の医師にそのことが伝わっておらず、MRIを撮影せずに症状固定していた。

【立証ポイント】

医師はXP(レントゲン)から圧迫骨折を認めていた。確かに、臨床上ではそれで十分であるが、保険手続上では圧迫骨折が事故受傷による新鮮骨折か、さらに、どの程度圧壊しているかをMRIで確認する必要がある。本件の医師は業者を嫌うタイプと聞いていたので、病院同行はせず、依頼者にMRIを医師に依頼する話法を具体的に指示した。幸い、医師と信頼関係を築いており、前任の医師が撮影する約束をしていたこともあり、無事に検査に進んだ。


圧迫骨折の画像を比較(参考画像)

続いて、被害者請求で使用するためにCDに焼いて頂き、かつ、画像所見について書面でまとめて頂くように指示した。後日届いた画像、診断書を確認したところ、事故からしばらく経過した後の撮影だったためか、明らかな新鮮骨折を示す高輝度を確認できなかった。このまま提出しても陳旧性(古傷)から非該当の危険があった。そこで、具体的な画像所見を説明した打ち出しを作成・添付した上で被害者請求に付した。微妙な判断で12級13号の可能性もあったが、結果として、無事に11級7号が認定された。