病院との違いや、そもそも接骨院・整骨院(以後、接骨院とだけ表記)のかかり方について、誤解しがちと言うか、正しい知識が周知されていないように感じます。また、同じ治療機関でありながら、病院と仲が悪いように思います。双方の意見が耳に入ります。
 
病院「接骨院は画像を観ずに、施術するから・・どうかと思う」
 
接骨院「病院はレントゲン撮って、薬をだすだけ、これでは良くならない」
 
 それぞれ、ごもっともな意見と思います。では、患者を前に双方敵対するだけ・・で良いのでしょうか。私は常々、こう考えています。
 
 「連携治療」
 
 やはり、症状の初期的な診断は医師がするべきです。長年の経験や勘で施術にあたる柔道整復師が多い中、それが正しいとしても、まずは、医師の診断を基に治療方針を検討すべきと思います。そして、徒手による筋肉の整復、過緊張の緩和などが効果的であると判断すれば、医師が接骨院・整骨院にコンサル(紹介)する流れこそ自然で、多くの患者にとって安心かと思います。実際、少ないながらそのように連携治療をしている病院⇔接骨院も存在します。また、整形外科内に、理学療法士だけではなく、柔道整復師を配置している院もあるのです。

 接骨院の健保治療については明示されています。以下、協会けんぽのパンフレットから抜粋、「接骨院・整骨院のかかり方」について復習しましょう。赤字で私達の立場からコメントしました。

 結局、患者第一ではない「大人の事情」が連携治療を阻んでいるのだと思います。どの業界も一緒ですね。

 

【1】健康保険の対象となる場合
 
 急性などの外傷性の骨折・脱臼・打撲及び捻挫

 ※ 骨折、脱臼は応急処置を除き、医師の同意を得ることが必要です。
 
1、負傷の原因を正しく伝えましょう。

 何が原因で負傷したのかをきちんと話しましょう。負傷が原因が明らかではない場合は健康保険の対象とはならない場合があります。

 この書き方一つで、健保利用の可否が決まります。例えば、腰が長年痛い状態=慢性疼痛の治療はダメです。転んで痛めた場合はOKです。説明一つでどちらにでもできそうです。ちょっとグレーな部分ですが、明らかな虚偽説明を勧める柔道整復師がそこそこ存在しますので注意が必要です。本当は、五十肩(慢性です)なのに、「転んでぶつけた」ことにして健保治療すれば、その肩に保険金詐欺の片棒を担がされますよ。
 
2、療養費支給申請書の記載内容をよく確認しましょう

 柔道整復師による施術(治療)を受けた際の費用について、健康保険への請求を柔道整復師へ委任する場合、療養費支給申請書の委任欄への署名が必要です。署名する際には、申請書に記載された負傷原因、負傷名、日数、金額をよく確認しましょう。

 この申請書が健保の不正請求の温床になりえます。最近は減りましたが、チョイ悪感覚で、盛り盛りに部位を重ねた請求書を健保に提出する柔道整復師があまりにも多かったのです。健保や労災は厳しい目で監視するようになり、この数年、毎月多くの院の不正を摘発・処分しました。業界は体の不整を整復ではなく、請求の不正を整復したかのようです。
 
3、領収書をもらいましょう

 柔道整復師は施術(治療)を行った場合、領収書の発行が義務付けられています。領収書は必ず受取り、金額を確認した上で大切に保管して下さい。

 昔ながらの職人気質で自由診療のみの院では、「領収書など書いたことない」と言う柔道整復師もおりました。最近はそれでは通じません。どんな商売でも領収書発行は常識です。当然、保険や賠償金の請求にも必要です。診断書が書けない柔道整復師こそ、施術証明書と領収書が必須の証明書類になります。

 
【2】健康保険の対象とならない場合
 
・単なる肩こり、肉体疲労

 成人の実に70%が、肩こりや腰痛、関節痛など何らかの症状を持っています。これら慢性疼痛で健保を使えば、健保はパンクします。急性の「ケガ」しか健保は使えませせん。この線引きは健康保険制度の根幹です。
 
・神経痛、リウマチ、ヘルニアなど慢性の病気

 これらは慢性疾患に類するものです。病院での健保治療は「病気」なのでOKですが、さすがに接骨院での健保治療は線引きしています。あたかも、損保の傷害保険(病気はダメ)の有責条件に似ています。 
 
・仕事中のケガ

 労災の対象です。労災と健保は健康保険法のルールで併用できません。仕事中(通勤含む)は労災が原則なのです。現場ではそうもいかないことが多く・・苦慮しています。
 
・病院や診療所などで同じ負傷等の治療を受けている時

 特別に医師の指示がない限り、同部位の並行治療はダメです。健保は「どっちかにして!」と思っています。

 ルール上、別部位の施術なら問題ないようです。また、整形外科で一定期間治療後、接骨院へ転院のケースはあります。つまり、同じ部位でも同時並行の治療でなければOKと解釈しています。それでも、このルールを恐れてか、急性期治療の原則を守ってか、整形外科で中止・治癒後であっても、健保治療を拒む接骨院もあるようです。