たくさんの交通事故相談を頂きますが、質問の内容は30程度のパターンに分けることができます。皆同じような悩みを抱えています。それらに対し、的確・正確・迅速な回答を心がけています。しかし法律に照らした回答、言葉による指示ではらちが明かない問題もあります。その一つに「通院中の病院がよく見てくれない。検査をしてくれない。医師の診断に不安がある」等、治療先にまつわることが挙げられます。

 まず基本として患者も医師を見極める目を持たねばなりません。そうは言っても一体どこの病院が自身の傷病に精通しているか?きちんと診てくれる医師は?転院の仕方は?など、なかなか踏み越えられない壁があるものです。

 以前、ある弁護士事務所から、その事務所への依頼人の後遺障害について助言を求められました。それは・・・

1、何級の後遺障害が想定されるか?

2、そのためにどのような検査が必要か?

3、どのような事を診断書に書いてもらうか?
 
 私たちにとっては極めてオーソドックスな質問です。対して、
 
>1、変形なら12級、偽関節ならそれ以上→「XPを見せて」、 可動域制限なら10級か12級、「可動域を測ってみましょう」

>2、周辺靭帯の損傷も明らかにしたいのでMRIも撮りましょう。神経麻痺があるなら「神経伝達速度検査」を。

>3、自覚症状と医師の診断、そして上記の検査を落とし込みます。3つ揃って等級認定です。

 このように回答します。そして指示通りに弁護士が医師へのアプローチを始めました。結果は?
 
医師:「そんな検査は必要ないよ、今更何で検査が必要なの。それに骨は癒着し始めているよ」

 と一蹴されました。
 
 ついに弁護士先生自ら医師面談に乗り込みました。しかし同じ対応です。
 
弁護士:「秋葉さん、指示通りに被害者から医師にお願いしたけどダメだったよ。それでうちの弁護士からも言ってみたけどこれもダメ。・・・このまま等級申請してみるしかないかな」

秋葉:「(内心:予想通りだな) では私が何とかしましょう。本件は私に一任して下さい。」

 そして、一応一度は医師面談をして、医師の(どのようなタイプの医師か)反応を確認します。ダメな医師でも少なくとも関係を壊すことはしません。検査してくれないなら別院への紹介状だけでももらいます。できるだけ自然な流れで転院させる配慮も大事です。
 

医師:「(面倒くさそうに)私の一存では紹介状を書けません、ごにょごにょ・・・」

秋葉:「(あなたの一存で書くものでしょ!)わかりました。先生今までありがとうございました。自宅でリハビリ頑張ります」

 医師とは笑顔で決別です。

 この医師は「無責任スーダラ節型医師」でした。治ろうが治るまいが、まして後遺障害など我関せず、のタイプです。

弁護士:「秋葉さん、今後はどうするのですか?」

秋葉:「私が知っている(虎の子の)病院へお連れします。そこで一定の治療を重ね、改善すれば良し、改善しきれなければ後遺障害診断をお願いします。任せて下さい!」

 そして紹介先病院へ被害者をお連れします。事情は私から説明します。

 まず改善への見通し、検査の依頼、後遺障害診断の内容、時期について医師と打ち合わせです。

新医師:「偽関節化しています。徒手整復、観血的手術は既に時期を逸しています。理学療法でできるだけ苦痛を伴わないよう可動域改善に努めます。そして後日MRIも撮ってみましょう。できるだけの事を尽くします。」

被害者:「目からウロコです。お医者さんによって全然違いますね。今までのお医者さんはなんだったのでしょう?」

 

 あとはリハビリと、間違いのない後遺障害診断へまっしぐら。これが被害者さんの運命を変えるミッションです。

 
 もうおわかりですね。病院のネットワークがなければ、後遺障害の立証など絵に描いた餅です。裁判に勝っている弁護士は医師を抑えているのです。本件の弁護士は私と連携していたことにより、後遺障害の立証に成功します。逆を言えば、立証作業ができない弁護士は立ち往生、裁判でも証拠不足で負けます。
 
 なんか調子が出てきました。このテーマは明日も続けましょう。